Un Livre du Destin

Frаwr

文字の大きさ
上 下
2 / 7
Chanson

-2-

しおりを挟む
 目の前には身の丈を越える巨大な金色の十字架クロスが存在し、威圧感さえも感じてしまうほどだ。
 形としては何処にでもある十字架クロスなのだが、問題はその手前に存在する凱旋門のような門だ。高さは優に30メートルは越えており、幅も40メートルはあるだろうか。銀弾シルバーブレッドのような輝く門は神聖さを放ちながら人を寄せ付けぬ威厳を放っていた。そして、その門の上には一人の青年が今もなお謳い続けており、まるでこちらが見えていないかのようだ。

 背格好は170センチの群青色アズライトの青年より背が高く、180センチといったところだろうか?
 白いゆったりとした衣に広がった七分丈の袖、足に沿うようなピッタリとした紺色のボトムを着ておりラフな印象を受ける。
 自身の葡萄酒色ワインレッドの髪とは真逆の瑠璃色アズールの柔らかな髪を靡かせ、光の無い真紅ルビーの眼が広がる天空を映し出していた。

 耳を優しく撫でる歌声は未だに光が灯る事の無い悲しさを紡ぎ続ける。

 ふと、真紅ルビーの青年と眼が交差した。
 先程まで魅せていた深い闇を宿した眼とは裏腹に鮮やかな惹き寄せる真紅ルビーに意識が引き寄せられそうになる。
 その眼を見ていると、何故だか懐かしさを感じた。まるで、初めから出会っていたかのような錯覚に運命の物語現実へと還った懐かしさが感情を支配する。

 どれ程見つめあっていたのか分からないが、静寂の支配権を破り捨てるかのように真紅ルビーの青年が言葉を紡いだ。

「もし、この世界が初めから創造されていたらどうする? 」

「どういう意味だ? 」

「誰かの創造の中に存在することしか許されないのならば、この生に意味はあるんだろうか? 」

 真紅ルビーの青年からの質問の意図が次第に図式のように広がっていく。
 恐らく、もしこの世界が誰かの物語の世界なのだとしたらどうする……ということだろう。この世界は運命の一冊によって支配され、有るべき物語に導かれる定め。もし、そんな世界でしか生きる事を許されないのならば自身達の生にどんな意味があるというのか?
 群青色アズライトの青年は暫く考え込むと言葉を紡いだ。

「人それぞれ答えは違うかもしれないが、俺ならそんな世界にも意味はあるんだと思う」

「意味? 」

「運命の一冊が語り部として統治する意味」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

処理中です...