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百はな

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第5章 ゴールデン・ドリーム

67.黒猫ランドI

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CASE 三郎

ハロウィンシーズンに入った黒猫ランドは、少し早い仮装をした客達で溢れかえっていた。

名前の通り、黒猫をモチーフとしたアトラクションやオブジェが至る所に設置されている。

子供から大人まで、数多くの黒猫ランドファンがいるそう。

黒猫に変したコスプレをしている女子高生や子供を横目に見る。

煌びやかなイルミネーションの中、行き交う人達は楽しそうに笑う。

子供連れの親子や恋人達が、この空間にいる事で笑顔になっていた。

その中でも一際目に付くのが、四郎とモモちゃん。

2人は大きな黒猫の形をした観覧車に乗り込み、空中から見える夜景を楽しむのだろう。

俺は少し離れたベンチに座りながら、2人の姿を見ていた。

パレードを楽しそうに見つめる大人や子供達は、お気楽な人達と思う。

あと何時間、何分、何秒後に日常が壊されるとは思ってもいないんだろうな。

そんな事すら、考えてもいないんだろう。

変装で掛けた丸眼鏡を指で持ち上げ、角度を変えた。

少し長くなった髪をハーフアップにし、ラフな服装で訪れたのには理由がある。

四郎とモモちゃんが辰巳(たつみ)さんに黒猫ランドに行こうと誘われたからだ。

数日前ー

六郎の手により、黒かった四郎の髪が綺麗なブロンド色まで落ちた。

四郎は居眠りしながら、六郎に髪を触られていた。

顔を覗き込むと、静かな寝息を立ているのが分かる。

「凄い!!四郎の髪は私と同じ色になった!!」

モモちゃんがキラキラと瞳を輝かせ、四郎を見つめる。

「懐かしい、18歳の時以来じゃない?金髪なの」

「そう言えばそうね。四郎は肌が青白いから金髪が似合うと思ったのよ」

「六郎、その時の写真ない?」

俺と六郎の会話を聞いたモモちゃんが、六郎の腕に抱き付く。

「もー!!モモちゃん可愛すぎるんですけど!!」

六郎は最近、もっぱらモモちゃんにゾッコンだ。

「四郎が18歳の時の写真…か。おっ、あったぞ」

ソファーで寝転んでスマホを操作していた五郎が、ムクッと起き上がる。

「本当?見たい!!」

「ほら、見てみろよ」

「隣、座るねっ」

五郎の隣に腰を下ろしたモモちゃんは、スマホを覗き込んだ。

「俺にも見してよ」

「うわっ!?三郎、いきなり背後に立つな!!」

五郎の声を無視し、背後からスマホの画面を覗き込む。

画面には、今よりも襟足が長い四郎の横顔の写真が映し出されていた。  

その隣には当然ながら、俺も写っていたのだが…。

モモちゃんは俺よりも四郎の横顔を見て、頬を桃色に染め上げた。 

「あれあれぇ?モモちゃん、四郎の写真を見て照れて
るぅ!!可愛いっ」

そう言って、六郎はモモちゃんを後ろから抱き締めた。

「五郎が四郎の写真を撮ってるなんてねぇ。珍しいじゃん」

「たまたまだよ。別に深い意味はねーし」

「まぁ、五郎がやる事に意味はないか」

「なんだと!?」

カッとなった五郎が俺の胸ぐらを掴もうとしたが、後ろに下がり腕を叩く。

「ッチ」

「お前の動きは単調なんだよ。前から言ってるじゃん」

「マジで、そう言う所が腹立つ!!」

「うるせぇぞ、五郎」

ドスの効いた四郎の声が部屋に響き渡る。

「し、四郎。お、起こしちまった?」

「テメェのうるせぇ声のおかげでな」

四郎は苛々しながら煙草の箱を取り出し、口で1本咥えて取ろうとした。

「っ、四郎!!」

パシッ!!

俺は咄嗟に四郎の手から煙草を取り上げる。

「四郎っ、ダメだよ」

「あ?あー…、そうだな」

四郎は俺の様子を見て納得した様子で、取り出した煙草をしまう。

「何?どうしたの」

不思議に思った六郎は四郎に尋ねた。

「肺に炎症を起こしてるから煙草が吸えねーの忘れてた。それを三郎が止めただけ」

「は、は?肺に炎症って…。病気とかになった訳じゃないんでしょ?」

「大した事じゃねーよ。コイツが過剰になってんだよ」

「三郎がアンタを過剰に思ってんのは知ってる。じゃあ、このビールは没収」

そう言って、六郎は四郎の手に握られていた350mlのビール缶を取り上げた。

「おい、六郎」

「だーめ、これは没収でーす。これは、私がいただきます」

六郎はプシュッと音を立てながらビール缶を開け、美味しそうに飲み出した。

「へー、四郎でも体のどっかを悪くする事があんだなぁ」

冷蔵庫からビール350mlの缶を取り出した五郎は、驚いた顔をしていた。

「何?四郎はサイヤ人でもないんだから、悪くする事もあるでしょ」

三郎は煙草を咥えながら、五郎の言葉に答える。

「いや、そうだけどよ。俺が言いたいのは…、なんて言えば良いのかな…。四郎はヤバイ状況でも怪我せずに帰って来てただろ?だから…、あーっと…」

頭を押さえながら五郎がソファーにへたり込む。

「もしかして、四郎の肺…。私の所為?」

モモちゃんが不安そうな顔をして四郎に尋ねた。
そうだよ。

モモちゃんの力を使った所為だよ。

口に出したい気持ちを押し殺して、煙草に火を付ける。

そんな事を言った所で何も変わらない。

Jewelry Wordsを四郎に使わせなきゃ良いだけ。

きっと、四郎は本当の事を言わないんだろうな。

「ちげーよ。爺さんが煙草の吸いすぎだってよ」

「そうなんだ…。四郎、煙草吸っちゃだめだよ?」

「分かってるって」

そう言って、四郎が乱暴にモモちゃんの頭を撫でた。

モモちゃんは嬉しそうな顔をして、四郎の右腕に抱き付く。

「四郎、ヘアマニキュア塗るから動かないでよ」

六郎が水色の液体が入ったチューブを取り出し、黒のビニール手袋の手のひらに搾り出す。

「へいへい」

「じゃあ、塗るわね」

ピンポン玉ぐらいの大きさのヘアマニキュアを金髪の髪に丁寧に塗り込む。

手慣れたように六郎は金髪の髪を水色に染め上げる。

ブー、ブー。

自身のスマホが振動したのか、四郎がポケットからスマホを取り出した。

画面を見た四郎は、六郎に画面を見せる。

「電話?辰巳さんからでしょ、出て良いわよ」

六郎の返答を聞いてから、四郎は通話ボタンを押し耳に当てた。

「お疲れ様です、どうかしましたか。え、スピーカー
にしろ?分かりました」

四郎は不思議そうな顔をしながらも、スピーカー機能を押した。

その瞬間、四郎のスマホから可愛らしい女の子の声が聞こえた。

「あ、もしもし?モモちゃん?」

「え、美雨(みう)ちゃん?」

「久しぶりだね。今、少し良い?」

「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」

モモちゃんは、美雨と言う女の子と話が出来て嬉しそ

うに見える。

「モモちゃん、黒猫ランドって知ってる?」

「黒猫ランド?なぁに?それ」

「今ね、大人気のテーマパーク?なの。それでね、辰巳がね?黒猫ランドのチケット6枚貰ったの。良かったら、モモちゃんと一緒に行きたいなって」

どうやら、モモちゃんを黒猫ランドに誘いたいらしい。

子供だからさ、説明と話し方が遅い。

「四郎、お嬢がこう言ってるんだがどうだ?」

「今の所は依頼の予定がないので良いですよ。モモ、お前は行きたいか?」

辰巳さんに返答した後、四郎がモモちゃんに尋ねた。

モモちゃんはモジモジしながら頷く。

「モモも行きたいみたいなんで構いませんよ」

「良かった。あとは𣜿葉兄弟を誘おうと思うんだ」

「𣜿葉さん達を?分かりました。また、予定が分かったら連絡下さい」

「分かった、また連絡するよ」

そう言って、辰巳さんは通話を終わらせた。

「へー、モモちゃん黒猫ランドに行くのか。良かったじゃねーか」

「でも、私…。黒猫ランド知らない」

「マジか。モモちゃん、隣に来なよ。黒猫ランドってこう言うのだよ」

五郎がモモちゃんを隣に座らせ、スマホ画面を見せる。

「わぁ、黒猫がいっぱい!!」

「そりゃ、黒猫ランドだからな。まぁ、簡単に言えば遊園地のデカイバージョンだよ」

「へぇぇ…、可愛いねぇ」

「ほら、これなんかも面白そうだぜ」

「どれ?」

五郎とモモちゃんが楽しそうに話す中、四郎がヘアマニキュアを洗い流す為にリビングを出て行った。

「辰巳さんも変わったね。美雨ちゃんって子の事、相当好きみたいね」

「だろうねぇ。そうじゃなきゃ、あの辰巳さんが変わる訳ないよ」

ブー、ブー、ブー。

そう言った時、ポケットに入れていたスマホが振動した。

スマホを取り出し、画面を見ると晶からだった。

「もしもし?俺に電話して来るって珍しいじゃん」

「お前、今1人?」

「今?いや、アジトにいるけど」

「あっそう。周りにメンバーがいるなら、いない所に移動して欲しいんだけど」

晶の口ぶりからして、周りに聞かれたらまずい話か。

スマホを耳に当てながらリビングを出て、自分の部屋に戻る。

俺達の部屋の壁は防音設備もされている為、部屋での会話が外から聞こえない。

ここなら気がれなく話が出来る。

「部屋に移動したけど、何?」

「少し長くなるだけど、4ヶ月前に四郎が依頼で助けた女がいたんだわ。その女、木下穂乃果って言うだけど、数日前に椿会の殺し屋の募集に参加したんだけどよ。どうやら、受かったみたいなんだわ」

「四郎が助けた女…?へぇ、四郎を追っ掛けて殺し屋になったんだ。わざわざ椿会に足を踏み入れたわけね。その木下穂乃果って女がどうしたの?」

「知り合いから聞いたんだけど、椿に調教されてるらしくってな。もしかしたら、四郎の事や俺の事をポロッと言う可能性もあるんだよ。そうなったらよ…、めんどくせぇだろ」

そう言って、晶は溜め息混じりに言葉を吐く。

「だから、俺に連絡して来たの?」

「お前は容赦なく四郎に害を出す奴を殺せるだろ」

「まぁねー」

「木下穂乃果は必ず四郎の周りをうろつく。俺からの依頼って事で頼むわ」

「ねぇ、その木下穂乃果って子の情報を教えてよ」

晶は簡単に木下穂乃果の事を説明した。

四郎がとあるクラブで木下穂乃果を保護したらしい。

その事がきっかけなのか、木下穂乃果が四郎に崇拝に似た恋心を抱いた事。

ボスに直談判し、晶が世話役になり木下穂乃果を少し育てた事。

木下穂乃果が独断で、椿会の元に向かったらしいとの事だ。

椿恭弥が木下穂乃果の事を調べない訳がない。

遅かれ早かれ、ボスや晶の存在には気付くだろう。

「じゃあさー、晶が殺せば良くない?その子、晶には気を許してんでしょ?」

「あ?俺は別に殺したい奴がいんだよ。アイツに時間を割く余裕はねーし。良いだろ、別に」

「へぇー、晶が殺したい奴ってさ。かつての恋人を殺した幼馴染み?」

俺の言葉を聞いた晶は大きな舌打ちをした。

「ッチ。テメェのそう言う所、本当に嫌い」

ブチッと音を立てなから、通話が切れた。

ポスッ。

ベットに倒れ込み、自分でくり抜いた左目に触れる。

真っ黒だった瞳も、今は光り輝くハイライトオパールの瞳だ。

嘉助の提案を飲み、痛みを感じない体に感謝した。

今までやって来た事もこれからやる事も…。

全部、四郎の為だ。

晶からの頼みを聞いてみようか。

そんな事を考えていると、部屋の廊下から四郎の気配がした。

ガチャッと扉を開けて、タオルで髪を拭きながら四郎が入って来る。

いつもみたいに気怠げに歩いて、俺の横に腰を下ろす。

「晶から電話が掛かって来ただろ」

「あ、Jewelry Wordsで見えた?だけど、内容はひみ…」

「羽奏(うた)」

そう言って、四郎が俺の本名を言って見下ろす。

真っ黒な瞳が俺と言う人間を捉えている。

四郎が本名を言う時、俺達2人だけのルールが発動する時だ。

俺が四郎の本名を呼んだ時、四郎が俺の本名を呼んだ時は隠し事は絶対にしないと言うルール。

これは俺達がボスに拾われた時に決めた事。

四郎が俺の本名を呼んだ以上、晶との会話の内容を話さないといけないのだ。

「はぁ、何で呼ぶの?名前ー」
 
「どうせ、俺がらみだろ。羽奏が黙る時って」

「はいはい、分かりました。ちゃんと話します」 

晶との会話の内容を話すと、四郎が取り上げた煙草に手を伸ばした。
 
「ちょっと…っ、四郎」

「1本だけ良いだろ、羽奏?」

口に煙草を咥えながらニヤリと笑う。

「はぁ、1本だけだからね」

「お前が俺に弱いのは知ってんだよ」

「四郎は俺に弱くないよね」

「羽奏、お前は俺の理解者だって思ってる。昔から一緒に居れば、お前の考えてる事もやりそうな事も分かる。木下穂乃果って女を殺すつもりだろ」

そう言って、四郎は煙草に火を付ける。

「俺の為にいつまで動くつもりだ」

「そんなの死ぬまでに決まってるでしょ?これからもこの先も変わらない」

「だろうな。三郎ならそう答えると思ったわ」
四郎は表情を変えずに白い煙を深く吐いた。


四郎達が辰巳さん達と黒猫ランドに行く日が10月15日の土曜日に決まった。

モモちゃんの体に合わせて日が落ちてからの時間、18時に集合になったらしい。

現在の時刻は17時30分。

俺は車で四郎とモモちゃんを黒猫ランドまで送る事にした。

黒の長袖のワンピースを着たモモちゃんは、後部座席
で鼻歌を歌っている。
 
「やけにご機嫌じゃん?モモちゃん」

「まぁね」

嫌味で言った筈の言葉をモモちゃんは素直に答える。

助手席に座る四郎は、窓から流れる景色を眺めていた。

黒猫ランドの駐車場に入ると既に満車状態で、入り口付近に回る事に。

モモちゃんは見慣れない景色に興奮しながら、窓にへばり付く。
 
すると、入り口に辰巳さん達の姿が見えた。

美雨ちゃんが手を振りながら、モモちゃんの名前を呼んでいた。

すぐに車を止め四郎とモモちゃんを素早く下ろし、その場をは離れる事に。

何故なら、後ろから車が列を作ろうとしていたからだ。

再び駐車場に戻り、空いたスペースに素早く来るを止める。

ブー、ブー、ブー。

車を駐車した瞬間、スマホが振動した。

着信相手を確認すると、嘉助の名前を見た瞬間だった。

脳裏に黒猫ランドで爆発が起きる映像が流れた後、俺が誰かと斬り合っている映像に切り替わる。

これは…、数分後に起きる未来か。

嘉助からの通話に出たまま、車を降りた。


CASE 四郎

三郎が車で去った後、黒のレースのワンピースを着た美雨がモモに近寄った。

辰巳さんは、ネイビー色のジーンズのセットアップと言ったカジュアルな服装をしていた。

「モモちゃん、おはよう!!体調はどう?」

「大丈夫だよ、日焼け止めも塗ったし日傘も持って来たから」

「そっか!!あ、モモちゃんに紹介するね?薫君だよ」

美雨がそう言って、隣にいるし男の子をモモに紹介した。

𣜿葉薫は黒の大きな目のワイシャツに黒のソックス、ラバーソールを履いている。

𣜿葉さんの弟だと一眼で分かるし、Jewelry Pupilなのも分かる。

瞳からして、パープルスピネルだろう。

「よ、よろしく…。今日は誘ってくれてありがとう」
 
𣜿葉薫は顔を赤くしながらモモに自己紹介する。

「初めてましてだな、モモちゃん。俺は𣜿葉孝明(こうめい)だ。薫の兄貴って所だな、宜しくな」

ラフな格好をした𣜿葉さんは腰を低くし、モモの目線に合わせる。

「よろしくお願いします。薫君も仲良くしてね?」

「う、うん」

「良かったなー、薫?おっと、ちびっこ達はこれをしねーとな?」

そう言って、𣜿葉さんは3つの黒の猫耳のカチューシャを取り出す。

𣜿葉さんがモモ、美雨、薫の頭に猫耳のカチューシャを装着する。

「お嬢、凄く可愛いです。似合ってますね」

「えへへっ、そうかな?ありがとう!!」

「お嬢の猫耳にはピンクのリボンが付いてるんですね?」

「ミニィちゃんのだ!!」

「ミニィちゃん?あぁ、黒猫ランドのキャラクターですね」

辰巳さんと美雨が楽しそうに話している中、モモが俺に近寄って来た。

「どうかな…?」 
 
モモの頭に装着している猫耳カチューシャには、白いリボンが付いている。

これも猫耳ランドのキャラクターの1つなのだろう。

モモは俺の反応を伺うように、不安げな眼差しを向ける。

その場でしゃがみ、モモと視線を合わせながら言葉を吐く。

「似合ってる」

「本当?」
 
「何だよ、納得してねーじゃん」

「そんな事ない!!」

「そうか」

俺は腰を上げると、モモが手を握って来る。

「お前も似合ってんぞー?薫、可愛い」

「なっ!?男に可愛いとか言うな!!」

「何だよー、ブサイクって言われた方が良いのか?」

「んなわけあるか!!」

「あいた!?」

薫が𣜿葉さんの脹脛に蹴りを入れた。

本来なら避けれる筈なのに、わざと蹴られている。

「そろそろ中に入ろうか。人も多くなって来たし、逸れないように行動しよう」

「やった!!早く行こう!!」

「お嬢」

そう言って辰巳さんが美雨に手を差し出すと、美雨は手を握った。

𣜿葉さんと薫も手を繋ぎ歩き出す。

側から見たら、俺とモモも仲が良い兄妹と思われるだろうな。

黒猫ランドの中に入ると、仮装をした客達で溢れかえっていた。

どうやら、ハロウィンシーズンの真っ只中らしい。

「わぁっ、凄い人っ」

「マジで凄いなー。黒猫ランドは年がら年中人で溢れかえってんな」
 
美雨と𣜿葉さんが人の多さに呆気に取られている。

ズキッ。

頭痛がした後、脳裏に映像が流れ出した。

黒猫ランドのとあるアトラクションが爆破、客体が騒ぎ立てながら逃げ回る。

謎の男が薫を攫おうとし、𣜿葉さんが何者かに撃たれ。
 
その中で三郎が誰かと斬り合う中、俺とモモ、辰巳さんと美雨が…。

映像がそこで途絶えると、鼻から何かが垂れた。

指で拭うと赤い血が付着していた。

モモにバレないように服で血を拭い、辰巳さんと𣜿葉さんに視線を向ける。

俺の体がJewelry Wordsの影響を受けやすくなったのか?

モモのJewelry Wordsを使って以来、体調が悪い。

何にせよ、使う時を選ぶ必要があるのか。

「ねぇ、モモちゃん!!見て見て!!」

「え?なぁに?」

「ほら、薫君も!!」

美雨がモモと薫の手を引き、目の前の噴水に走り出す。

噴水の中を覗いてみると、キラキラと光る玩具の宝石で出来た指輪が大量に落ちていた。

子供達が無我夢中で噴水の中の指輪を救い上げている。

どうやら、自由に取って良いらしい。

「わぁ、キラキラ」

美雨が噴水の中を覗き込み、興味深そうに呟く。

「これ、指輪?あ、自由に取っていいみたい。美雨ちゃん、どれがいい?とってあげるよ。モモちゃんも取ってあげる」

薫はそう言って、袖を捲り上げる。

今のうちに2人に声を掛ける事にした。

「辰巳さん、𣜿葉さん。少し良いですか」

俺の言葉を聞いた2人はすぐに顔付きを変え、視線をこちらに向けた。


黒猫ランドの入り口に黒のバンが止まり、後部座席のドアが開く。

芦間啓成とリンが先に降り、後ろから伊助が降りる。

「今日から宜しくねぇ?弥助ちゃん」

芦間啓成が振り返り、弥助と呼んだ女の見つめた。

女の目は虚で、右手首には大量のリストカットの跡が袖から覗いた。
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