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第4章 Jewelry Pupil 狩り
51. 強奪 III
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同時刻 16:00 とある市内の病院にて
𣜿葉孝明と辰巳零士の交戦は、今だに続いていた。
次々と死体達が起き上がり、2人を襲い掛かろうとしていた。
「ッチ、キャンディの効果か。斬っても、斬っても
キリがねぇっな!!」
ドカッ!!
ズシャ!!
𣜿葉孝明は乱暴に向かって来た死体の腹を蹴り、ナイフを頭に突き刺さす。
「死人が動き出すってのは、本当みたいだな。」
辰巳零士は話しながら、動き出す死体の頭に向かっ
て、引き金を引く。
パンパンパンッ!!
ブシャッ、ブシャッ、ブシャッ!!
「あ、あ、あ、ああああ。」
「あががががが。」
動きを止めない死体を見て、九条美雨はゾッとしながら見つめていた。
「ひっ?!う、動いてる…。」
「ゾンビ映画みたいだな。ゾンビだと、頭を潰せば死ぬのにな。」
「薫君は、怖い映画を見るんだね…。美雨は無理だよ…。」
「ま、まぁね。ゾンビ…、動く死体…。兄貴!!頭を潰せば動かなくなるかも!!」
𣜿葉薫はそう言って、𣜿葉孝明に向かって叫ぶ。
「頭を潰す?!あ、そうか。薫、悪いが力を使うぞ。」
シュッ。
𣜿葉孝明は手のひらから、石頭ハンマーを2本取り出した。
およそ全長:256mm・重量:1.2kg・打撃面サイズ:33×33mmの石頭ハンマーだ。
もう1つは辰巳零士に渡した。
「辰巳、数を減らして病院を出るぞ。」
「こっちは、怪我人なんだがなっ!!」
ゴンッ!!
辰巳零士に近寄って来た死体の頭に向かって、石頭ハンマーを思いっきり叩き付ける。
ブシャッ!!
ドサッ!!
頭から血を噴き出した死体は、床に倒れたまま動かなくなった。
「やっぱ、俺の薫の予感は当たってたなっ!!」
ドカッ!!
𣜿葉孝明は動き出す死体の頭を殴りながら、誇らしげに笑う。
「ば、馬鹿じゃねーの!?うわっ!!こっちにも来
た!!美雨ちゃん、こっち!!」
ベット周辺に近付いて来た死体達から逃げるように、𣜿葉薫は九条美雨の手を掴み、ベットの下から抜け出す。
ドカッ!!
𣜿葉薫はそのまま、ハンマーを取り出し、死体の頭
を叩き付けた。
「わわわっ!?」
「怪我してない?美雨ちゃん。」
「う、うん。凄いね、薫君!!倒しちゃうなんて!!」
「危ないから、後ろにいてね。」
「分かった!!」
2人の光景を見ていた辰巳零士は、眉を顰める。
「ギャハハ!!辰巳、ヤキモチ妬いてんのかぁ?ウケる。」
「殺すぞ、𣜿葉。」
「おー、怖い。おーい、お嬢!!あんまり、薫と仲良くしてると、辰巳がヤキモチ妬いてますよー。」
「なっ!?お前、マジで殺すぞ。」
ドカッ!!
辰巳零士は八つ当たりするように、死体の頭を叩き付けた。
「え、え!?美雨は、辰巳が大好きだよ!!」
「お、お嬢?!あ、ありがとうございます。俺も、お嬢が大好きですよ。」
「辰巳…。」
「はーいそこ、いちゃつかないで下さーい。」
ドカッ!!
九条美雨と辰巳零士のやり取りを見た𣜿葉孝明は、
呆れながらも、死体達の頭を叩き付けていた。
「あらかた、片付いたな。薫、こっちにおいで。」
「うん。」
そう言って、𣜿葉孝明は𣜿葉薫に向かって、右手を広げる。
𣜿葉孝明に近寄った𣜿葉薫は、差し出された手を掴む。
「辰巳っ。」
ギュッ。
「お嬢、お怪我はありませんか?」
スッ。
辰巳零士は、抱き付いて来た九条美雨を抱き上げた。
「大丈夫だよ、薫君が守ってくれたから。辰巳っ、大好き。」
九条美雨は辰巳零士の首に腕を回し、抱き付いた。
「薫君、お嬢の事を守ってくれて、ありがとう。」
「大した事、してないけど…。兄貴、怪我は。」
「大丈夫だ。早く外に…。」
𣜿葉孝明が𣜿葉薫の手を引き、歩き出そうとした時だった。
カツカツカツ。
静まる廊下から、足音が響き渡る。
その足音は、𣜿葉孝明達がいる病室に向かって来ていた。
「誰か来る。」
スッと、𣜿葉孝明は𣜿葉薫を後ろに隠す。
辰巳零士も同様に、九条美雨を降ろしてから、後ろに下がらす。
「辰巳…。」
「兄貴…。」
九条美雨と𣜿葉薫の声が重なり、2人同時に同じ言葉を放つ。
「「Jewelry Pupil の気配がする。」」
その言葉を聞いた辰巳零士と𣜿葉孝明は、警戒度を高める。
カツカツカツカツンッ。
「おー、派手にやったなぁ。久しぶり、孝明。」
転がる死体を見ながら、𣜿葉孝明に話し掛けたのは芦間啓成だった。
「テメェ…、二度と俺の前に現れんなって、言ったよな。」
ギリッ。
「あ、にき…?」
𣜿葉薫は、歯を食いしばっている𣜿葉孝明を見て、困惑した。
「それは昔の話だろー?時効だよ、時効。」
「啓成、自分のした事を忘れた訳じゃないよな。」
「した事…、ねぇ…。何だったっけ。まぁ、良いじゃん?今日は、紹介だけしに来たんだよなー。」
「…、紹介?」
「ほら、出て来い。」
芦間啓成は後ろを向き、腰の方に視線を落とす。
「う、うん…。」
現れたのは、男の子なのか女の子か分からない子供
だった。
黒髪のセミロングに色白の肌、女の子のような顔立ちで、スフェーンのJewelry Pupilを持っていた。
格好も体に合ってない大きめの黒いシャツを着ている。
「その子…、どうしたんだ。」
「あ?頭が連れ来たんだよなぁ。あ、これってさ?
誘拐になんのか?」
「テメェ等、マジで殺すぞ。」
「何、怒ってんだよ。お前には関係ねぇじゃん。俺、お前のそう言う真面目な所、嫌いだったんだよな。」
𣜿葉孝明と芦間啓成の間に、不穏な空気が流れる。
「兄貴…。俺、この人を…知ってる。忘れた事なんて、ねぇ…。はぁ、はぁ、はぁ…。」
「か、薫君?だ、大丈夫っ?」
「薫っ!?」
九条美雨と𣜿葉孝明は、𣜿葉薫の様子の異変に気が付いた。
息が荒くなり、顔色も真っ青になっていたからだ。
「薫、アイツを見るな。大丈夫、大丈夫だからな。」
ギュッ。
𣜿葉孝明は𣜿葉薫を抱き締め、背中を摩る。
「そーか、弟君は覚えてたんだなぁ。俺が、ご両親を殺した事を。居たんだったな、その時。」
「っ…、そうだよ。お前がっ、母さんと父さんを殺したんだ!!はぁ、はぁ、はぁ。殺す、お前だけは殺す!!!」
「あははは!!今にも死にそうな顔してるのに、殺せるの?」
「啓成!!」
𣜿葉孝明は大きな声を上げて、芦間啓成を黙らす。
「俺達、兄弟に何の用だ。思い出話をするつもりで、来たんじゃねーだろ。」
「何だよ、つまんねーな。お前等、七海って奴を助ける気はある?」
芦間啓成はそう言って、不適な笑みを浮かべる。
同時刻 16:00 兵頭会
その頃、六郎はモモに日焼け止めを塗っていた。
「モモちゃん、次は目薬だよ。」
「うん。」
六郎は手慣れた手付きで、モモの瞳に目薬を一滴落とす。
「六郎、四郎まだかなぁ。」
「そうねぇ、少し遅いわね。大丈夫よ、四郎だもの。」
「うん…。何か、嫌な感じがするの。」
「嫌な?どんな感じ?」
「分からないけど…、嫌な感じ。」
モモはそう言って、テーブルに置いてあったお菓子に手を伸ばす。
ドタドダドタドタッ!!
組員達が、忙しなく廊下を走る足音が響く。
トントンッ。
襖が軽く叩かれた後、組員の1人が六郎の名前を読んだ。
「六郎さん、頭がお呼びです。」
「ボスが?モモちゃん、すぐに戻るから待ってて。」
「分かった。」
六郎はモモの髪を撫でてから、部屋を出た。
「いない…よね。」
モモは六郎がいなくなった事を確認した後、押入れの戸を開ける。
押入れの中に入り、奥の方から大きめの箱を取り出す。
箱に付いた埃を祓ってから、箱を開封する。
パカッ。
箱の中に入っていたのは、数冊のアルバムにうさぎの人形、子供用の玩具達だった。
モモは1冊のアルバムを取り出し、中身を見て行く。
アルバムの表紙に書かれていたのは、白雪と言う女性の名前だった。
パラッ、パラッ。
モモと同じアルビノの女性と、男性の仲睦まじい写
真が沢山載っていた。
「白雪…、私と同じ顔。」
ペラッ。
アルバムから写真を抜き取り、ジッと見つめる。
CASE モモ
「雪哉おじさんが言ってた、白雪ってこの人か。」
四郎達の会話を盗み聞きして、気になった人。
私のお母さんだって、言ってた。
雪哉おじさんは、私のおじいちゃん?だった。
私のお父さんは…、椿に殺されたって。
「この人が、お母さん…。」
生きてるみたいだけど、どこにいるか分からないらしい。
椿が誘拐したって、言ってたっけ。
パラパラとアルバムを見ながら、疑問に思っていた事を口にした。
「私はいらない子だったのかな。」
お母さん、お父さんとの思い出はない。
思い出すのは、大きな鳥籠の中に閉じ込められてい
た事。
仮面をした大人達が私を見て、次々と値段を言って行く。
500万、1000万、1億…。
目を閉じれば、すぐに頭に浮かぶ。
だけど、四郎と出会って生活が大きく変わった。
人を信じれなかった私が、四郎に一目惚れした。
私に興味を持たない人。
私を殺そうとした人。
銃を持った四郎の姿が、とても綺麗だと思ったから。
男の人に綺麗って、思った事はなかった。
四郎は血だらけの姿になっても、綺麗だった。
2冊目のアルバムに手を伸ばし、中を見て行く。
「妊娠5ヶ月目、早くお腹の子に会いたい。」
丁寧な字で、お母さんの写真の横に書かれていた。
お父さんもお母さんも、お腹を撫でる顔が優しかった。
「妊娠6ヶ月目、拓也さんが玩具を大量に買って来た。産まれるのは、まだまた先なのに。」
「妊娠7ヶ月目、拓也さんが仕事から帰って来れない日が続いた。私達の為に働いてくれてる。だけど、寂しいな。」
ペラッ。
次のページを捲ると、小さな赤ちゃんを抱いてるお
母さんの写真と長い文章が書かれていた。
「やっと、娘に会えた。拓也さんも泣いて喜んでくれた。これ以上に無い程の幸せを手に入れた。私は闇市場で売られていた所を、拓也さんに助けてもらった。拓也さん、拓也さん、私の全て、私の最愛の人。これからは、娘と3人で幸せに暮らせると思っていた。
なのに、私の生活を壊した恭弥を許せない。
拓也さんを恭弥に殺された。許せない、許せない、許せない、許せない。
恭弥は初めから、拓也さんを殺すつもりだった。今度は、私の娘を殺そうとしている。
恭弥の目的は、私を側に置く事だ。
雪哉さんに頼んで、モモを恭弥に見つからない所に隠して貰える事になった。
母親がこんな事をしたら、いけないのは分かってる。
だけど、モモを守る為には、こうするしかなった。ごめんね、モモ。こんなお母さんを許して。」
「お母さんが私を売ったのは…、私の為だった?それも雪哉おじさんも関係していた?」
本当に?
私の為だったら…。
あんな、あんな場所に置いて行ったりしないよ。
何度も何度も何度も何度も何度も、死にそうなになって。
殺されそうになって、目をくり抜かれそうになって。
どれだけ、我慢したと思うの。
感情を無くした方が、生きやすいって思ったから、感情を殺した。
「こんな玩具、いらない。」
ガシッ。
ガシャーンッ!!
玩具を乱暴に掴み、壁に投げ付ける。
「四郎…、四郎…。」
胸が苦しい。
胸が痛い。
ぐるぐると黒いモヤが体の中を駆け巡る。
パタッ。
私はその場で倒れ込むように、床に倒れる。
「四郎…、早く帰って来て。」
同時刻 16:00
CASE 四郎
パァァアンッ!!
新宿御苑の中から、発砲音がきこえた。
「ヤバイな。四郎、中に行こう。一郎は、反対側の入り口に回って。」
三郎は、日本刀と愛銃であるCz75を構えた。
「「了解。」」
俺はトカレフTT-33を手に取り、一郎はデザートイーグル50AEに銃弾を仕込む。
バンッ!!
俺と三郎は車から降り、新宿御苑の中に入った。
タタタタタタタッ!!
「真っ直ぐ行くと、二見がいる。ちょっと、遠回して七海の所に行こう。」
「分かった。」
「残念だけど、星影さんは椿に殺された。七海も致命傷を負ってるし、スナイパーも潜んでる。警戒して行こう。」
「スナイパーか。また、厄介なのがいるな。」
「だけど、あと2人…、知らない奴がいる。」
「一般人か?」
俺は走りながら、三郎に尋ねる。
「同業者っぽいんだけど、七海の知り合いだよ。あ、いた!!」
俺達が到着すると、椿の肩から血が噴き出していた。
ブシャッ!!
「っ!?椿様!!」
佐助は驚きながら、椿に向かって叫んでいた。
緑頭の男が持っている刀には、べっとりと血が付着している。
どうなってんだ?
あの男が、椿を斬ったかのか?
「マスターから手を離せ、赤髪野郎。」
「テメェッ!!」
パシュッ、パシュッ!!
ブシャッ!!
伊助が緑頭に向かって、ナイフを刺そうとしたが、金髪の男に発泡され、足から血が噴き出していた。
コイツ等、結構やるな。
「ゔっ?!」
パシュッ、パシュッ!!
俺と三郎の足元に、銃弾が練り込んだ。
弾丸の位置からすると…、あそこからか。
俺は、左側にあるビルの屋上に視線を向ける。
「三郎、左側に注意を払え。」
「りょーかい。サクッと、七海を助けますか。」
カチャッ。
三郎は刀を構えようとした時だった、緑頭が三郎に
向かって、刀を振り下ろして来た。
キィィィンッ!!
「おわっ!?ちょ、何!?」
「お前等、赤髪の仲間か。」
「は、はぁ?いや、俺達は七海の仲間だけど…?」
「マスターの?失礼した。」
緑頭はスッと、刀を三郎から離した。
「あははは!!天音君、やるねぇ。だけど、甘かったみたい。」
椿は笑いながら、肩を抑える。
「許さない。お前、殺す。」
ビュンッ!!
佐助は怒りの表情のまま、緑頭に刀を振り下ろした。
キィィィン!!
緑頭は佐助からの攻撃を塞ぎ、金髪の男が射撃する。
パシュッ、パシュッ、パシュッ!!
シュンッ!!
放たれた銃弾は全て、動きを止め、金髪の男に向かって跳ね返った。
「よっとっ。」
金髪の男は、身軽に跳ね返った銃弾を次々に避けて行く。
「じゃあ、この痛みを返そうかな。」
椿はそう言って、指を鳴らした。
パチンッ!!
ブシャッ!!
その瞬間、緑頭の男の肩から血が噴き出した。
𣜿葉孝明と辰巳零士の交戦は、今だに続いていた。
次々と死体達が起き上がり、2人を襲い掛かろうとしていた。
「ッチ、キャンディの効果か。斬っても、斬っても
キリがねぇっな!!」
ドカッ!!
ズシャ!!
𣜿葉孝明は乱暴に向かって来た死体の腹を蹴り、ナイフを頭に突き刺さす。
「死人が動き出すってのは、本当みたいだな。」
辰巳零士は話しながら、動き出す死体の頭に向かっ
て、引き金を引く。
パンパンパンッ!!
ブシャッ、ブシャッ、ブシャッ!!
「あ、あ、あ、ああああ。」
「あががががが。」
動きを止めない死体を見て、九条美雨はゾッとしながら見つめていた。
「ひっ?!う、動いてる…。」
「ゾンビ映画みたいだな。ゾンビだと、頭を潰せば死ぬのにな。」
「薫君は、怖い映画を見るんだね…。美雨は無理だよ…。」
「ま、まぁね。ゾンビ…、動く死体…。兄貴!!頭を潰せば動かなくなるかも!!」
𣜿葉薫はそう言って、𣜿葉孝明に向かって叫ぶ。
「頭を潰す?!あ、そうか。薫、悪いが力を使うぞ。」
シュッ。
𣜿葉孝明は手のひらから、石頭ハンマーを2本取り出した。
およそ全長:256mm・重量:1.2kg・打撃面サイズ:33×33mmの石頭ハンマーだ。
もう1つは辰巳零士に渡した。
「辰巳、数を減らして病院を出るぞ。」
「こっちは、怪我人なんだがなっ!!」
ゴンッ!!
辰巳零士に近寄って来た死体の頭に向かって、石頭ハンマーを思いっきり叩き付ける。
ブシャッ!!
ドサッ!!
頭から血を噴き出した死体は、床に倒れたまま動かなくなった。
「やっぱ、俺の薫の予感は当たってたなっ!!」
ドカッ!!
𣜿葉孝明は動き出す死体の頭を殴りながら、誇らしげに笑う。
「ば、馬鹿じゃねーの!?うわっ!!こっちにも来
た!!美雨ちゃん、こっち!!」
ベット周辺に近付いて来た死体達から逃げるように、𣜿葉薫は九条美雨の手を掴み、ベットの下から抜け出す。
ドカッ!!
𣜿葉薫はそのまま、ハンマーを取り出し、死体の頭
を叩き付けた。
「わわわっ!?」
「怪我してない?美雨ちゃん。」
「う、うん。凄いね、薫君!!倒しちゃうなんて!!」
「危ないから、後ろにいてね。」
「分かった!!」
2人の光景を見ていた辰巳零士は、眉を顰める。
「ギャハハ!!辰巳、ヤキモチ妬いてんのかぁ?ウケる。」
「殺すぞ、𣜿葉。」
「おー、怖い。おーい、お嬢!!あんまり、薫と仲良くしてると、辰巳がヤキモチ妬いてますよー。」
「なっ!?お前、マジで殺すぞ。」
ドカッ!!
辰巳零士は八つ当たりするように、死体の頭を叩き付けた。
「え、え!?美雨は、辰巳が大好きだよ!!」
「お、お嬢?!あ、ありがとうございます。俺も、お嬢が大好きですよ。」
「辰巳…。」
「はーいそこ、いちゃつかないで下さーい。」
ドカッ!!
九条美雨と辰巳零士のやり取りを見た𣜿葉孝明は、
呆れながらも、死体達の頭を叩き付けていた。
「あらかた、片付いたな。薫、こっちにおいで。」
「うん。」
そう言って、𣜿葉孝明は𣜿葉薫に向かって、右手を広げる。
𣜿葉孝明に近寄った𣜿葉薫は、差し出された手を掴む。
「辰巳っ。」
ギュッ。
「お嬢、お怪我はありませんか?」
スッ。
辰巳零士は、抱き付いて来た九条美雨を抱き上げた。
「大丈夫だよ、薫君が守ってくれたから。辰巳っ、大好き。」
九条美雨は辰巳零士の首に腕を回し、抱き付いた。
「薫君、お嬢の事を守ってくれて、ありがとう。」
「大した事、してないけど…。兄貴、怪我は。」
「大丈夫だ。早く外に…。」
𣜿葉孝明が𣜿葉薫の手を引き、歩き出そうとした時だった。
カツカツカツ。
静まる廊下から、足音が響き渡る。
その足音は、𣜿葉孝明達がいる病室に向かって来ていた。
「誰か来る。」
スッと、𣜿葉孝明は𣜿葉薫を後ろに隠す。
辰巳零士も同様に、九条美雨を降ろしてから、後ろに下がらす。
「辰巳…。」
「兄貴…。」
九条美雨と𣜿葉薫の声が重なり、2人同時に同じ言葉を放つ。
「「Jewelry Pupil の気配がする。」」
その言葉を聞いた辰巳零士と𣜿葉孝明は、警戒度を高める。
カツカツカツカツンッ。
「おー、派手にやったなぁ。久しぶり、孝明。」
転がる死体を見ながら、𣜿葉孝明に話し掛けたのは芦間啓成だった。
「テメェ…、二度と俺の前に現れんなって、言ったよな。」
ギリッ。
「あ、にき…?」
𣜿葉薫は、歯を食いしばっている𣜿葉孝明を見て、困惑した。
「それは昔の話だろー?時効だよ、時効。」
「啓成、自分のした事を忘れた訳じゃないよな。」
「した事…、ねぇ…。何だったっけ。まぁ、良いじゃん?今日は、紹介だけしに来たんだよなー。」
「…、紹介?」
「ほら、出て来い。」
芦間啓成は後ろを向き、腰の方に視線を落とす。
「う、うん…。」
現れたのは、男の子なのか女の子か分からない子供
だった。
黒髪のセミロングに色白の肌、女の子のような顔立ちで、スフェーンのJewelry Pupilを持っていた。
格好も体に合ってない大きめの黒いシャツを着ている。
「その子…、どうしたんだ。」
「あ?頭が連れ来たんだよなぁ。あ、これってさ?
誘拐になんのか?」
「テメェ等、マジで殺すぞ。」
「何、怒ってんだよ。お前には関係ねぇじゃん。俺、お前のそう言う真面目な所、嫌いだったんだよな。」
𣜿葉孝明と芦間啓成の間に、不穏な空気が流れる。
「兄貴…。俺、この人を…知ってる。忘れた事なんて、ねぇ…。はぁ、はぁ、はぁ…。」
「か、薫君?だ、大丈夫っ?」
「薫っ!?」
九条美雨と𣜿葉孝明は、𣜿葉薫の様子の異変に気が付いた。
息が荒くなり、顔色も真っ青になっていたからだ。
「薫、アイツを見るな。大丈夫、大丈夫だからな。」
ギュッ。
𣜿葉孝明は𣜿葉薫を抱き締め、背中を摩る。
「そーか、弟君は覚えてたんだなぁ。俺が、ご両親を殺した事を。居たんだったな、その時。」
「っ…、そうだよ。お前がっ、母さんと父さんを殺したんだ!!はぁ、はぁ、はぁ。殺す、お前だけは殺す!!!」
「あははは!!今にも死にそうな顔してるのに、殺せるの?」
「啓成!!」
𣜿葉孝明は大きな声を上げて、芦間啓成を黙らす。
「俺達、兄弟に何の用だ。思い出話をするつもりで、来たんじゃねーだろ。」
「何だよ、つまんねーな。お前等、七海って奴を助ける気はある?」
芦間啓成はそう言って、不適な笑みを浮かべる。
同時刻 16:00 兵頭会
その頃、六郎はモモに日焼け止めを塗っていた。
「モモちゃん、次は目薬だよ。」
「うん。」
六郎は手慣れた手付きで、モモの瞳に目薬を一滴落とす。
「六郎、四郎まだかなぁ。」
「そうねぇ、少し遅いわね。大丈夫よ、四郎だもの。」
「うん…。何か、嫌な感じがするの。」
「嫌な?どんな感じ?」
「分からないけど…、嫌な感じ。」
モモはそう言って、テーブルに置いてあったお菓子に手を伸ばす。
ドタドダドタドタッ!!
組員達が、忙しなく廊下を走る足音が響く。
トントンッ。
襖が軽く叩かれた後、組員の1人が六郎の名前を読んだ。
「六郎さん、頭がお呼びです。」
「ボスが?モモちゃん、すぐに戻るから待ってて。」
「分かった。」
六郎はモモの髪を撫でてから、部屋を出た。
「いない…よね。」
モモは六郎がいなくなった事を確認した後、押入れの戸を開ける。
押入れの中に入り、奥の方から大きめの箱を取り出す。
箱に付いた埃を祓ってから、箱を開封する。
パカッ。
箱の中に入っていたのは、数冊のアルバムにうさぎの人形、子供用の玩具達だった。
モモは1冊のアルバムを取り出し、中身を見て行く。
アルバムの表紙に書かれていたのは、白雪と言う女性の名前だった。
パラッ、パラッ。
モモと同じアルビノの女性と、男性の仲睦まじい写
真が沢山載っていた。
「白雪…、私と同じ顔。」
ペラッ。
アルバムから写真を抜き取り、ジッと見つめる。
CASE モモ
「雪哉おじさんが言ってた、白雪ってこの人か。」
四郎達の会話を盗み聞きして、気になった人。
私のお母さんだって、言ってた。
雪哉おじさんは、私のおじいちゃん?だった。
私のお父さんは…、椿に殺されたって。
「この人が、お母さん…。」
生きてるみたいだけど、どこにいるか分からないらしい。
椿が誘拐したって、言ってたっけ。
パラパラとアルバムを見ながら、疑問に思っていた事を口にした。
「私はいらない子だったのかな。」
お母さん、お父さんとの思い出はない。
思い出すのは、大きな鳥籠の中に閉じ込められてい
た事。
仮面をした大人達が私を見て、次々と値段を言って行く。
500万、1000万、1億…。
目を閉じれば、すぐに頭に浮かぶ。
だけど、四郎と出会って生活が大きく変わった。
人を信じれなかった私が、四郎に一目惚れした。
私に興味を持たない人。
私を殺そうとした人。
銃を持った四郎の姿が、とても綺麗だと思ったから。
男の人に綺麗って、思った事はなかった。
四郎は血だらけの姿になっても、綺麗だった。
2冊目のアルバムに手を伸ばし、中を見て行く。
「妊娠5ヶ月目、早くお腹の子に会いたい。」
丁寧な字で、お母さんの写真の横に書かれていた。
お父さんもお母さんも、お腹を撫でる顔が優しかった。
「妊娠6ヶ月目、拓也さんが玩具を大量に買って来た。産まれるのは、まだまた先なのに。」
「妊娠7ヶ月目、拓也さんが仕事から帰って来れない日が続いた。私達の為に働いてくれてる。だけど、寂しいな。」
ペラッ。
次のページを捲ると、小さな赤ちゃんを抱いてるお
母さんの写真と長い文章が書かれていた。
「やっと、娘に会えた。拓也さんも泣いて喜んでくれた。これ以上に無い程の幸せを手に入れた。私は闇市場で売られていた所を、拓也さんに助けてもらった。拓也さん、拓也さん、私の全て、私の最愛の人。これからは、娘と3人で幸せに暮らせると思っていた。
なのに、私の生活を壊した恭弥を許せない。
拓也さんを恭弥に殺された。許せない、許せない、許せない、許せない。
恭弥は初めから、拓也さんを殺すつもりだった。今度は、私の娘を殺そうとしている。
恭弥の目的は、私を側に置く事だ。
雪哉さんに頼んで、モモを恭弥に見つからない所に隠して貰える事になった。
母親がこんな事をしたら、いけないのは分かってる。
だけど、モモを守る為には、こうするしかなった。ごめんね、モモ。こんなお母さんを許して。」
「お母さんが私を売ったのは…、私の為だった?それも雪哉おじさんも関係していた?」
本当に?
私の為だったら…。
あんな、あんな場所に置いて行ったりしないよ。
何度も何度も何度も何度も何度も、死にそうなになって。
殺されそうになって、目をくり抜かれそうになって。
どれだけ、我慢したと思うの。
感情を無くした方が、生きやすいって思ったから、感情を殺した。
「こんな玩具、いらない。」
ガシッ。
ガシャーンッ!!
玩具を乱暴に掴み、壁に投げ付ける。
「四郎…、四郎…。」
胸が苦しい。
胸が痛い。
ぐるぐると黒いモヤが体の中を駆け巡る。
パタッ。
私はその場で倒れ込むように、床に倒れる。
「四郎…、早く帰って来て。」
同時刻 16:00
CASE 四郎
パァァアンッ!!
新宿御苑の中から、発砲音がきこえた。
「ヤバイな。四郎、中に行こう。一郎は、反対側の入り口に回って。」
三郎は、日本刀と愛銃であるCz75を構えた。
「「了解。」」
俺はトカレフTT-33を手に取り、一郎はデザートイーグル50AEに銃弾を仕込む。
バンッ!!
俺と三郎は車から降り、新宿御苑の中に入った。
タタタタタタタッ!!
「真っ直ぐ行くと、二見がいる。ちょっと、遠回して七海の所に行こう。」
「分かった。」
「残念だけど、星影さんは椿に殺された。七海も致命傷を負ってるし、スナイパーも潜んでる。警戒して行こう。」
「スナイパーか。また、厄介なのがいるな。」
「だけど、あと2人…、知らない奴がいる。」
「一般人か?」
俺は走りながら、三郎に尋ねる。
「同業者っぽいんだけど、七海の知り合いだよ。あ、いた!!」
俺達が到着すると、椿の肩から血が噴き出していた。
ブシャッ!!
「っ!?椿様!!」
佐助は驚きながら、椿に向かって叫んでいた。
緑頭の男が持っている刀には、べっとりと血が付着している。
どうなってんだ?
あの男が、椿を斬ったかのか?
「マスターから手を離せ、赤髪野郎。」
「テメェッ!!」
パシュッ、パシュッ!!
ブシャッ!!
伊助が緑頭に向かって、ナイフを刺そうとしたが、金髪の男に発泡され、足から血が噴き出していた。
コイツ等、結構やるな。
「ゔっ?!」
パシュッ、パシュッ!!
俺と三郎の足元に、銃弾が練り込んだ。
弾丸の位置からすると…、あそこからか。
俺は、左側にあるビルの屋上に視線を向ける。
「三郎、左側に注意を払え。」
「りょーかい。サクッと、七海を助けますか。」
カチャッ。
三郎は刀を構えようとした時だった、緑頭が三郎に
向かって、刀を振り下ろして来た。
キィィィンッ!!
「おわっ!?ちょ、何!?」
「お前等、赤髪の仲間か。」
「は、はぁ?いや、俺達は七海の仲間だけど…?」
「マスターの?失礼した。」
緑頭はスッと、刀を三郎から離した。
「あははは!!天音君、やるねぇ。だけど、甘かったみたい。」
椿は笑いながら、肩を抑える。
「許さない。お前、殺す。」
ビュンッ!!
佐助は怒りの表情のまま、緑頭に刀を振り下ろした。
キィィィン!!
緑頭は佐助からの攻撃を塞ぎ、金髪の男が射撃する。
パシュッ、パシュッ、パシュッ!!
シュンッ!!
放たれた銃弾は全て、動きを止め、金髪の男に向かって跳ね返った。
「よっとっ。」
金髪の男は、身軽に跳ね返った銃弾を次々に避けて行く。
「じゃあ、この痛みを返そうかな。」
椿はそう言って、指を鳴らした。
パチンッ!!
ブシャッ!!
その瞬間、緑頭の男の肩から血が噴き出した。
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