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第4章 Jewelry Pupil 狩り
49.強奪 I
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同時刻 15:00 とある市内の病院
[辰巳零士]と書かれてある病室の前に、𣜿葉孝明(ゆずりはこうめい)と𣜿葉薫が立っていた。
𣜿葉孝明の手には、桃や葡萄、林檎の入ったカゴが握られていた。
「兄貴の友達が、ここに?」
「そうだよ。あと、お前と同じ歳の女の子がいるかも。」
「え。」
𣜿葉孝明は扉に手を掛け、ゆっくりと開けた。
ガラッ。
広い病室の中は大きなベッドと、ソファーとテレビが置かれていた。
ベットの上で、包帯だらけで点滴に繋がれた辰巳零士と、隣には九条美雨が座っていた。
「辰巳、お客かんが来た…。𣜿葉お兄ちゃん!?」
九条美雨は、𣜿葉孝明の姿を見て驚いていた。
「よっ、辰巳。調子はどうだ。お嬢、お久しぶりですね。」
「うわぁ、久しぶりだね!!」
「𣜿葉か、何しに来たんだ?」
辰巳零士は九条美雨を抱き上げ、𣜿葉孝明を少し睨む。
「見舞いに来てやったんだろー。お前が大怪我するなんて、珍しいな。大丈夫なのか?」
「大した事ねーよ。その子は…、弟君か?」
「そうだよ。薫、挨拶出来るか?」
「う、うん。こ、こんにちは…。」
𣜿葉薫は恥ずかしそうにしながら、辰巳零士に挨拶をした。
「こんにちは、挨拶が出来てえらいね。」
「ど、どうも。」
「こんにちは。」
九条美雨は挨拶をしながら、𣜿葉薫に笑い掛ける。
「こんにちは。」
「蘇武は死んだぞ。ほら、ネットニュースにも書かれてる。」
𣜿葉孝明は、スマホ画面を辰巳零士に見せる。
記事の内容は、こう書かれていた。
[ 蘇武容疑者、都内の倉庫内にて死亡。薬物を大量に摂取していた為、反社会勢力と揉めた形跡があり。倉庫内や周辺に、反社会勢力と見られる遺体が発見される。警察は反社会勢力との揉め事と言う事で、捜査を続けている。]
倉庫の写真と、蘇武の顔写真が添付されていた。
「蘇武は昔から、お前とお嬢に執着してたし、良かったんじゃないか。これで、厄介者は消えたわけだ。」
「まぁな、今だに死んだって実感が湧かない。キャンディの効き目は、凄まじいものだった。」
「薬物だろ、それ。うちの職場でも、噂になってるわ。高値で、すげーハイテンションになれるらしいって。」
「お前の現場の奴等も知ってんのか。」
𣜿葉孝明の現在の職業は、鳶職である。
今では鳶職の会社の社長をしていおり、兵頭雪哉に仕事を回してもらっている。
そして、辰巳零士は𣜿葉孝明にキャンディの情報を集めを頼んでいた。
「お前の言った通り、キャンディの出所は椿会だった。
それと、キャンディの製造に関わってる連中も分かった。こっちは少し、厄介な所だ。」
「どこだ?」
「泉病院。」
「泉病院!?東京で、1番大きい病院だろ?まさか、院長が…?」
「裏の情報だから、間違いはねぇ。」
𣜿葉孝明はそう言って、窓に目を向ける。
「薫君、フルーツありがとう。美味しそうだね。」
「あ、兄貴が買った物だけど…。どれか食べる?」
「え!?い、いいのかなぁ?」
「良いよ、どれが良いの?」
九条美雨と𣜿葉薫は、フルーツを見ながら話をしていた。
2人はソファーに座り、𣜿葉薫は恥ずかしそうにしている。
「じゃあ…、葡萄!!」
「分かった。お皿、出すよ。」
𣜿葉薫が言葉を放った後、空中に皿が現れた。
「え!?」
「はい。」
「ありがとう…、お皿を出せるの?」
「まぁ、想像した物は出せるよ。」
「ほえ…。凄いんだね、薫君…。」
「そ、そんな事は…。ほ、ほら、食べて。」
シャッ!!
𣜿葉孝明はカーテンを閉め、口を開けた。
「なぁ、辰巳。今日は、"嵐"だな。」
「は?嵐って…、晴れてるけど…。どうしたの、兄貴?」
「っ!!お嬢、薫君。ベットの下に隠れて。」
𣜿葉薫の反応とは逆に、辰巳零士は2人をベットの下に入れた。
兵頭会に居た頃、辰巳零士と𣜿葉孝明は殺しの仕事
を共にする事が多かった。
その為、敵対している組員が侵入して来た事を、2人の間で嵐と呼んでいた。
これはいわゆる、2人だけのサインである。
「た、辰巳?」
九条美雨は辰巳零士に声を掛ける。
「何人くらいだ、𣜿葉。」
「ザッと30だな。この病院には、光臣さんはいねーな?」
「あぁ、俺とは別の病院を手配してある。30か、それよりも多いだろうな。」
「ね、ねぇ、何の話してるの?」
𣜿葉薫は、𣜿葉孝明に声を掛ける。
「薫、絶対にそこから出るな。お嬢と一緒にいてくれ。」
「あ、兄貴…。」
「大丈夫だから。心配すんな、にいちゃんを信じろ。」
𣜿葉孝明はフルーツ籠の中に入った、ペティナイフを取り出す。
「辰巳、これ。お爺ちゃんから。」
九条美雨のテディベアのバックの中から、銃と銃弾を取り出した。
「お嬢!?何で、そんな物を持ってるんですか!?」
「え?だって、辰巳の物だから…。いるかなって…?」
「ぷっ!!流石、お嬢だ!!そうだろ、辰巳?」
大笑いしている𣜿葉孝明を他所に、辰巳零士は大きな溜め息を吐く。
「はぁ…、お嬢。次からは、こんな危ない物は持って来てはいけません。」
「ご、ごめんね。」
「ですが、ありがとうございます。」
スッと辰巳零士は屈み、ベットの下にいる九条美雨の額に唇を落とす。
「へへっ。」
「兄貴、これ出しといたから。」
九条美雨の持っていた銃に触れていた𣜿葉薫は、銃を作り出し、𣜿葉孝明に渡した。
「薫、あんまり力を使うなよ?体に悪いんだからな。」
「兄貴が頼りねーから、使ったんだろ!!」
「ありがとうな、そこから動かないでくれ。」
スッと笑顔を消し、𣜿葉孝明は銃をズボンの後ろポケットに入れる。
コンコンッ。
病室の扉が叩かれた。
「すいません、空調の点検に来た業者の者ですがー。中に入っても、よろしいですか?」
辰巳零士が扉に近寄ろうとしたが、𣜿葉孝明が止め、代わりに歩き出した。
「へぇ、空調ですか?こちらとしては、問題ありませんが?」
「いやいや、全部の部屋を点検するように言われてますんで。それとも、入ってはいけない理由でも?こちらは仕事として、来ているんですがねー?」
「そうですかー。」
𣜿葉孝明はそう言って扉を開け、男の首元の動脈を切った。
ブシャアアアア!!!
男の首元から赤い血が大量に噴き出す。
「狙うのは、ガキ2人だ!!殺せ、殺せ、殺せ!!」
男達は病室に入ろうとしたが、辰巳零士が射撃をする。
パンパンパンッ!!
ブシャッ、ブシャッ、ブシャッ!!
「こんのっ、ガハッ!!」
「首が空いてんぞ。」
𣜿葉孝明は次々と、男達の首元を切って行く。
その動きは早く、倒れた男達の足の腱を切る。
「ギャアアアア!!!」
「や、やめっ!!」
「黙れ、クズ野郎。」
「グハッ!!」
𣜿葉薫は、𣜿葉孝明の人殺しの姿から目が離せなかった。
同時刻
新宿御苑の周辺には、車に乗った一郎と三郎、四郎が待機ていた。
七海の体に埋め込んだGPSの機械から、会話も聞こえるようにされていた。
3人の耳にはインカムが嵌められ、椿達の会話が聞こえていたのだった。
「七海君は、紅茶は好きかな?」
「何でも良いよ、飲み物なんて。」
「怖い顔をしない方が良いよ。ただの、話し合いなんだから。」
椿と七海の当たり障りのない会話が、繰り広げられていた。
「ボスが、星影さんをお供にするとはねー。意外だったな。」
「今は運転手をしてるが、星影さんも殺し屋だったそうだ。ボスがスカウトしたらしいぞ。」
三郎の問いに答えた一郎は、煙草を咥えた。
新宿御苑内
「七海君、僕は君が欲しいんだよね。パソコンの技術も高いしね?」
「キャンディを作るのに、アルビノの血がいるからでしょ?どうせ、僕が調べていた事も知ってるんだろ。」
「知ってるよ?僕の事をコソコソと嗅ぎ回ってる事も。拓也の死の事も調べてるんだろ?どうだった?当たり障りのない理由だったろ?」
「他にも理由があるんでしょ?その理由の中に、白雪さんが関わってる。」
ガチャッ。
七海の言葉を聞いた椿は、少し乱暴にカップを置いた。
「白雪さんはアルビノのでしょ。キャンディを大量生産するには、白雪さんだけじゃ足りない。拓也さ
んを殺したのは、この為?」
「少し黙ろうか、クソガキ。」
ゴキッ!!
椿がそう言うと七海の右手の小指が、本来は曲がら
ない方向に向かって、曲がられていた。
「七海さん!?」
「星影ー、お前も動くなよ。ナイフを置け。」
星影は握っていたナイフを持ったまま、椿を睨み付ける。
「聞こえなかったのか?ナイフを置け。」
椿は星影を睨みながら、指示をする。
「星影さんっ、僕は大丈夫だから。」
「な、七海さん…。分かりました。」
カタッ。
七海の言葉を聞いた星影は、ゆっくりナイフを置いた。
「キャンディの製造の為に、拓也を殺したか…。白雪の体を傷付ける訳はないだろ?他のアルビノを殺せば、良いんだから。君の持論は、実にくだらないな。」
「アンタに好かれようなんて、思ってないから。」
「天音君とノア君だったかな?七海君の大切な人。」
ピクッと七海の眉毛が動く。
「2人は果たして…。君に会って、どう思うんだろうね。」
「どう言う意味。」
「言葉のままだよ。2人は君を殺す気で、こっちに来たんじゃない?」
「っ!?」
椿の言葉を聞いて、七海は言葉を飲み込んだ。
車内ー
「椿の奴、揺さぶりを掛けて来たな。」
インカムの会話聞きながら、四郎は呟いた。
「んー、ヤバイ状況かも。」
「三郎、何が見えた。」
「椿と佐助達は、お互いの目にオレンジダイヤモンドのJewelry Pupilがあるけど…。椿がもう一つ持ってるJewelry Pupilの方の能力がヤバイかも。」
四郎の問いに三郎は答えた。
「どんな能力までかは、分からないんだな。」
「うん。」
「中に行くか。」
「あ、待って。」
車を出ようとする一郎を三郎は止めた。
コンコンッ。
車の窓が不意に叩かれた。
一郎は外にいる人物を見て驚きながら、窓を開けた。
そこにいたのは、黒髪の短髪に眼鏡をしたスーツを着た男が立っていた。
年齢は30代、見た目はどこにでもいる、サラリーマンのような男だ。
三郎も四郎も、この男とは顔見知りであった。
何故なら、この男は兵頭雪哉の左腕の男であったからだ。
「齋藤(さいとう)さん、何で?」
「久しぶりだな、一郎。幸也さんから頼まれて来た、中には俺が行く。お前等は、ここで待機してろ。」
「分かりました。」
見た目とは裏腹に、声は低く乱暴な話し方だった。
一郎の返事を聞いた齋藤は、新宿御苑の中に入って行った。
「齋藤さんが来る未来が見えたから、止めたんだよ。」
「お前、それを早く言えよ。」
三郎の言葉を聞いた四郎は、軽く三郎を殴った。
新宿御苑内に入った齋藤の前に、黒いスーツを着た男が数人立っていた。
「おい、止まれ。」
「テメェ、立ち入り禁止が見えなかったのか?あ?」
男達は齋藤を取り囲む。
「いやー、すいません。こっちも仕事出来たんですよね?」
「あ?テメェ、馬鹿な事い…。」
齋藤の胸ぐらを掴んだ男の首から、血が噴き出した。
ブシャアアアア!!
「は?」
齋藤の手には、懐から出した柳刃包丁が握られていた。
*種類: 柳刃包丁刃の素材: 青ニ鋼 (鋼 -錆びやすい素材です)刃の硬度: HRC 61-62 刃付け: 片刃 刃渡り: 330mm
刃幅: 37.5mm 刃厚: 4.5mm 桂の素材: 水牛の角
柄の素材: 黒檀(両側水牛リング付き)
柄の長さ: 158mm 重さ: 295g*
「いつの間にっ、ぐあぁあぁあ!!」
齋藤は右隣にいた男の胸を刺し、首に向かって切り裂く。
ブシャアアアア!!!
「なっ!?」
「何なんだよ、コイツ!!」
「お前等、元兵頭会の人間だろ?俺の顔、忘れたのか。」
齋藤の言葉を聞いた男達は、顔を真っ青にした。
「さ、齋藤さん。な、何で…っ?」
「兵頭会を避けたんじゃっ…っ。」
「そんな事はどうでも良い。お前等みたいな、ゴミは死ね。」
スッと柳刃包丁を男達の首元に向かって、振り翳された。
[辰巳零士]と書かれてある病室の前に、𣜿葉孝明(ゆずりはこうめい)と𣜿葉薫が立っていた。
𣜿葉孝明の手には、桃や葡萄、林檎の入ったカゴが握られていた。
「兄貴の友達が、ここに?」
「そうだよ。あと、お前と同じ歳の女の子がいるかも。」
「え。」
𣜿葉孝明は扉に手を掛け、ゆっくりと開けた。
ガラッ。
広い病室の中は大きなベッドと、ソファーとテレビが置かれていた。
ベットの上で、包帯だらけで点滴に繋がれた辰巳零士と、隣には九条美雨が座っていた。
「辰巳、お客かんが来た…。𣜿葉お兄ちゃん!?」
九条美雨は、𣜿葉孝明の姿を見て驚いていた。
「よっ、辰巳。調子はどうだ。お嬢、お久しぶりですね。」
「うわぁ、久しぶりだね!!」
「𣜿葉か、何しに来たんだ?」
辰巳零士は九条美雨を抱き上げ、𣜿葉孝明を少し睨む。
「見舞いに来てやったんだろー。お前が大怪我するなんて、珍しいな。大丈夫なのか?」
「大した事ねーよ。その子は…、弟君か?」
「そうだよ。薫、挨拶出来るか?」
「う、うん。こ、こんにちは…。」
𣜿葉薫は恥ずかしそうにしながら、辰巳零士に挨拶をした。
「こんにちは、挨拶が出来てえらいね。」
「ど、どうも。」
「こんにちは。」
九条美雨は挨拶をしながら、𣜿葉薫に笑い掛ける。
「こんにちは。」
「蘇武は死んだぞ。ほら、ネットニュースにも書かれてる。」
𣜿葉孝明は、スマホ画面を辰巳零士に見せる。
記事の内容は、こう書かれていた。
[ 蘇武容疑者、都内の倉庫内にて死亡。薬物を大量に摂取していた為、反社会勢力と揉めた形跡があり。倉庫内や周辺に、反社会勢力と見られる遺体が発見される。警察は反社会勢力との揉め事と言う事で、捜査を続けている。]
倉庫の写真と、蘇武の顔写真が添付されていた。
「蘇武は昔から、お前とお嬢に執着してたし、良かったんじゃないか。これで、厄介者は消えたわけだ。」
「まぁな、今だに死んだって実感が湧かない。キャンディの効き目は、凄まじいものだった。」
「薬物だろ、それ。うちの職場でも、噂になってるわ。高値で、すげーハイテンションになれるらしいって。」
「お前の現場の奴等も知ってんのか。」
𣜿葉孝明の現在の職業は、鳶職である。
今では鳶職の会社の社長をしていおり、兵頭雪哉に仕事を回してもらっている。
そして、辰巳零士は𣜿葉孝明にキャンディの情報を集めを頼んでいた。
「お前の言った通り、キャンディの出所は椿会だった。
それと、キャンディの製造に関わってる連中も分かった。こっちは少し、厄介な所だ。」
「どこだ?」
「泉病院。」
「泉病院!?東京で、1番大きい病院だろ?まさか、院長が…?」
「裏の情報だから、間違いはねぇ。」
𣜿葉孝明はそう言って、窓に目を向ける。
「薫君、フルーツありがとう。美味しそうだね。」
「あ、兄貴が買った物だけど…。どれか食べる?」
「え!?い、いいのかなぁ?」
「良いよ、どれが良いの?」
九条美雨と𣜿葉薫は、フルーツを見ながら話をしていた。
2人はソファーに座り、𣜿葉薫は恥ずかしそうにしている。
「じゃあ…、葡萄!!」
「分かった。お皿、出すよ。」
𣜿葉薫が言葉を放った後、空中に皿が現れた。
「え!?」
「はい。」
「ありがとう…、お皿を出せるの?」
「まぁ、想像した物は出せるよ。」
「ほえ…。凄いんだね、薫君…。」
「そ、そんな事は…。ほ、ほら、食べて。」
シャッ!!
𣜿葉孝明はカーテンを閉め、口を開けた。
「なぁ、辰巳。今日は、"嵐"だな。」
「は?嵐って…、晴れてるけど…。どうしたの、兄貴?」
「っ!!お嬢、薫君。ベットの下に隠れて。」
𣜿葉薫の反応とは逆に、辰巳零士は2人をベットの下に入れた。
兵頭会に居た頃、辰巳零士と𣜿葉孝明は殺しの仕事
を共にする事が多かった。
その為、敵対している組員が侵入して来た事を、2人の間で嵐と呼んでいた。
これはいわゆる、2人だけのサインである。
「た、辰巳?」
九条美雨は辰巳零士に声を掛ける。
「何人くらいだ、𣜿葉。」
「ザッと30だな。この病院には、光臣さんはいねーな?」
「あぁ、俺とは別の病院を手配してある。30か、それよりも多いだろうな。」
「ね、ねぇ、何の話してるの?」
𣜿葉薫は、𣜿葉孝明に声を掛ける。
「薫、絶対にそこから出るな。お嬢と一緒にいてくれ。」
「あ、兄貴…。」
「大丈夫だから。心配すんな、にいちゃんを信じろ。」
𣜿葉孝明はフルーツ籠の中に入った、ペティナイフを取り出す。
「辰巳、これ。お爺ちゃんから。」
九条美雨のテディベアのバックの中から、銃と銃弾を取り出した。
「お嬢!?何で、そんな物を持ってるんですか!?」
「え?だって、辰巳の物だから…。いるかなって…?」
「ぷっ!!流石、お嬢だ!!そうだろ、辰巳?」
大笑いしている𣜿葉孝明を他所に、辰巳零士は大きな溜め息を吐く。
「はぁ…、お嬢。次からは、こんな危ない物は持って来てはいけません。」
「ご、ごめんね。」
「ですが、ありがとうございます。」
スッと辰巳零士は屈み、ベットの下にいる九条美雨の額に唇を落とす。
「へへっ。」
「兄貴、これ出しといたから。」
九条美雨の持っていた銃に触れていた𣜿葉薫は、銃を作り出し、𣜿葉孝明に渡した。
「薫、あんまり力を使うなよ?体に悪いんだからな。」
「兄貴が頼りねーから、使ったんだろ!!」
「ありがとうな、そこから動かないでくれ。」
スッと笑顔を消し、𣜿葉孝明は銃をズボンの後ろポケットに入れる。
コンコンッ。
病室の扉が叩かれた。
「すいません、空調の点検に来た業者の者ですがー。中に入っても、よろしいですか?」
辰巳零士が扉に近寄ろうとしたが、𣜿葉孝明が止め、代わりに歩き出した。
「へぇ、空調ですか?こちらとしては、問題ありませんが?」
「いやいや、全部の部屋を点検するように言われてますんで。それとも、入ってはいけない理由でも?こちらは仕事として、来ているんですがねー?」
「そうですかー。」
𣜿葉孝明はそう言って扉を開け、男の首元の動脈を切った。
ブシャアアアア!!!
男の首元から赤い血が大量に噴き出す。
「狙うのは、ガキ2人だ!!殺せ、殺せ、殺せ!!」
男達は病室に入ろうとしたが、辰巳零士が射撃をする。
パンパンパンッ!!
ブシャッ、ブシャッ、ブシャッ!!
「こんのっ、ガハッ!!」
「首が空いてんぞ。」
𣜿葉孝明は次々と、男達の首元を切って行く。
その動きは早く、倒れた男達の足の腱を切る。
「ギャアアアア!!!」
「や、やめっ!!」
「黙れ、クズ野郎。」
「グハッ!!」
𣜿葉薫は、𣜿葉孝明の人殺しの姿から目が離せなかった。
同時刻
新宿御苑の周辺には、車に乗った一郎と三郎、四郎が待機ていた。
七海の体に埋め込んだGPSの機械から、会話も聞こえるようにされていた。
3人の耳にはインカムが嵌められ、椿達の会話が聞こえていたのだった。
「七海君は、紅茶は好きかな?」
「何でも良いよ、飲み物なんて。」
「怖い顔をしない方が良いよ。ただの、話し合いなんだから。」
椿と七海の当たり障りのない会話が、繰り広げられていた。
「ボスが、星影さんをお供にするとはねー。意外だったな。」
「今は運転手をしてるが、星影さんも殺し屋だったそうだ。ボスがスカウトしたらしいぞ。」
三郎の問いに答えた一郎は、煙草を咥えた。
新宿御苑内
「七海君、僕は君が欲しいんだよね。パソコンの技術も高いしね?」
「キャンディを作るのに、アルビノの血がいるからでしょ?どうせ、僕が調べていた事も知ってるんだろ。」
「知ってるよ?僕の事をコソコソと嗅ぎ回ってる事も。拓也の死の事も調べてるんだろ?どうだった?当たり障りのない理由だったろ?」
「他にも理由があるんでしょ?その理由の中に、白雪さんが関わってる。」
ガチャッ。
七海の言葉を聞いた椿は、少し乱暴にカップを置いた。
「白雪さんはアルビノのでしょ。キャンディを大量生産するには、白雪さんだけじゃ足りない。拓也さ
んを殺したのは、この為?」
「少し黙ろうか、クソガキ。」
ゴキッ!!
椿がそう言うと七海の右手の小指が、本来は曲がら
ない方向に向かって、曲がられていた。
「七海さん!?」
「星影ー、お前も動くなよ。ナイフを置け。」
星影は握っていたナイフを持ったまま、椿を睨み付ける。
「聞こえなかったのか?ナイフを置け。」
椿は星影を睨みながら、指示をする。
「星影さんっ、僕は大丈夫だから。」
「な、七海さん…。分かりました。」
カタッ。
七海の言葉を聞いた星影は、ゆっくりナイフを置いた。
「キャンディの製造の為に、拓也を殺したか…。白雪の体を傷付ける訳はないだろ?他のアルビノを殺せば、良いんだから。君の持論は、実にくだらないな。」
「アンタに好かれようなんて、思ってないから。」
「天音君とノア君だったかな?七海君の大切な人。」
ピクッと七海の眉毛が動く。
「2人は果たして…。君に会って、どう思うんだろうね。」
「どう言う意味。」
「言葉のままだよ。2人は君を殺す気で、こっちに来たんじゃない?」
「っ!?」
椿の言葉を聞いて、七海は言葉を飲み込んだ。
車内ー
「椿の奴、揺さぶりを掛けて来たな。」
インカムの会話聞きながら、四郎は呟いた。
「んー、ヤバイ状況かも。」
「三郎、何が見えた。」
「椿と佐助達は、お互いの目にオレンジダイヤモンドのJewelry Pupilがあるけど…。椿がもう一つ持ってるJewelry Pupilの方の能力がヤバイかも。」
四郎の問いに三郎は答えた。
「どんな能力までかは、分からないんだな。」
「うん。」
「中に行くか。」
「あ、待って。」
車を出ようとする一郎を三郎は止めた。
コンコンッ。
車の窓が不意に叩かれた。
一郎は外にいる人物を見て驚きながら、窓を開けた。
そこにいたのは、黒髪の短髪に眼鏡をしたスーツを着た男が立っていた。
年齢は30代、見た目はどこにでもいる、サラリーマンのような男だ。
三郎も四郎も、この男とは顔見知りであった。
何故なら、この男は兵頭雪哉の左腕の男であったからだ。
「齋藤(さいとう)さん、何で?」
「久しぶりだな、一郎。幸也さんから頼まれて来た、中には俺が行く。お前等は、ここで待機してろ。」
「分かりました。」
見た目とは裏腹に、声は低く乱暴な話し方だった。
一郎の返事を聞いた齋藤は、新宿御苑の中に入って行った。
「齋藤さんが来る未来が見えたから、止めたんだよ。」
「お前、それを早く言えよ。」
三郎の言葉を聞いた四郎は、軽く三郎を殴った。
新宿御苑内に入った齋藤の前に、黒いスーツを着た男が数人立っていた。
「おい、止まれ。」
「テメェ、立ち入り禁止が見えなかったのか?あ?」
男達は齋藤を取り囲む。
「いやー、すいません。こっちも仕事出来たんですよね?」
「あ?テメェ、馬鹿な事い…。」
齋藤の胸ぐらを掴んだ男の首から、血が噴き出した。
ブシャアアアア!!
「は?」
齋藤の手には、懐から出した柳刃包丁が握られていた。
*種類: 柳刃包丁刃の素材: 青ニ鋼 (鋼 -錆びやすい素材です)刃の硬度: HRC 61-62 刃付け: 片刃 刃渡り: 330mm
刃幅: 37.5mm 刃厚: 4.5mm 桂の素材: 水牛の角
柄の素材: 黒檀(両側水牛リング付き)
柄の長さ: 158mm 重さ: 295g*
「いつの間にっ、ぐあぁあぁあ!!」
齋藤は右隣にいた男の胸を刺し、首に向かって切り裂く。
ブシャアアアア!!!
「なっ!?」
「何なんだよ、コイツ!!」
「お前等、元兵頭会の人間だろ?俺の顔、忘れたのか。」
齋藤の言葉を聞いた男達は、顔を真っ青にした。
「さ、齋藤さん。な、何で…っ?」
「兵頭会を避けたんじゃっ…っ。」
「そんな事はどうでも良い。お前等みたいな、ゴミは死ね。」
スッと柳刃包丁を男達の首元に向かって、振り翳された。
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カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
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