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第4章 Jewelry Pupil 狩り
41. 狩られる者達 lll
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数時間前ー
四郎達のアジトに辰巳零士が現れた時まで遡る。
CASE 四郎
「辰巳さん?何で、ここに…。」
辰巳さんの体は沢山の傷と頭から血を流していた。
「俺が連れて来た。」
そう言ってのは、伊織だった。
「お嬢が攫われた。」
「やっぱり、コイツ等の仕業か。」
美雨が攫われ、俺達のアジトや九条組に襲撃。
そして、コイツ等がここにいるって事はモモ狙いなのは確実だ。
椿の野郎が動き出したって事だよな。
「四郎、コイツ等にお嬢の居場所を吐き出させる。兵頭会の地下室に連れてくぞ。」
兵頭会の地下室は所謂、"拷問部屋"だ。
今の辰巳さんは昔の辰巳さんに戻っている。
殺しの仕事していた時の辰巳零士に。
美雨のお世話係になってからの辰巳さんは、柔らかくなったが…。
「分かりました。奥にコイツの仲間が1人います。」
「分かった。」
辰巳さんはそう言って、廊下を歩いて行った。
「四郎っ。」
ギュッ。
モモが俺に抱き付いて来た。
「四郎、四郎。」
「どうした。」
「美雨ちゃんがコイツ等に攫われたの?」
「だろうな、このタイミングで辰巳さんが来たって事はそうだろ。」
「美雨ちゃん、酷い事されてないよね?」
分からない。
美雨が今、どんな目に遭っているのか。
何もされてない保証はない。
Jewelry Pupilの賭博場での光景が頭の中を過った。
目玉を抉られた子供が何人か倒れていた。
その光景を見た辰巳さんは気が気じゃないだろう。
モモは不安そうな顔をして、ジッと見つめる。
俺はモモを抱き上げ、ポンポンッと背中を優しく叩く。
その光景を見ていた伊織が一瞬、驚いた顔をした。
「四郎がモモちゃんを抱っこするなんてな。」
「あ?」
「モモちゃん、嬉しそうだよ。」
伊織の言葉に促され、モモに視線を向けた。
するとモモはニコニコしながら、俺の首に腕を回した。
「辰巳さん、女を連れて来ました。そこの男をお願いしても良いですか。」
「あぁ。」
伊織は軽々と気絶している伊助を持ち上げた。
「四郎、モモちゃんに怪我はない?」
返り血を浴びた二郎と五郎が歩いて来た。
「してねーよ。」
「そう、なら良かった。そろそろ出よう、応援が来てもいけないしね。」
「そうだな、星影が車を回してくれてんだろ。」
俺は片手でモモを抱き上げ、もう片方の手で荷物を持った。
「九条組の応援に俺達は行かなくて良いのか?伊織。」
「あぁ、三郎を呼んだから大丈夫だろう。」
「三郎を?」
「四郎の方にも椿会の連中が向かったと言ったら、
すぐに飛んで来た。全く、三郎の四郎好きには困ったものだ。」
伊織はそう言って、苦笑いをした。
「伊織さん!!車の準備が出来ました!!四郎さん達も乗って下さい。」
駐車場に出ると、黒のアルファードの外に立っている星影の姿が見えた。
俺達は車に乗り込んで俺達は兵頭会の本家に向かった。
そして、現在に至る。
俺と二郎は辰巳さんと一緒に地下室を訪れていた。
辰巳さんは意識を取り戻した伊助の顔を、バールで殴った。
ゴンッ!!
ピチャッ!!
伊助は口から血を吐き出した。
「容赦ないなー、辰巳さん。」
「居場所?言う訳ないじゃん。ガハッ!!」
辰巳さんはさっきとは逆の方向から、バールで伊助の顔を殴った。
ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ!!
数回バールで殴った後、辰巳さんは伊助の胸ぐらを掴んだ。
ガシッ。
「どこだ、言え。」
「知らねーって。」
「ちょっと、伊助を殴るのやめてよ!!」
カチャッ。
ドンッ!!
辰巳さんは銃を取り出し、叫んでいる喜助の太ももに銃弾を放った。
「ヴッ!!はぁ、はぁ…。」
「余計な言葉を発するな。俺の求める答えだけ言え。」
「っ…。」
「辰巳、持って来たぞ。」
カツカツ。
伊織が持って来たのは、点滴セットだった。
それと謎の注射器。
「ありがとうございます。点滴刺して貰って良いですか。」
「あぁ、自白剤もぶち込んどく。」
*自白剤(じはくざい)は諜報機関や警察などの捜査機関等が使うとされる薬物で、注射されるとあらゆる秘密を自白し、また説によっては自白剤を注射された人物は「廃人」状態または死に至るとされる。*
「や、やだ!!やめてよ!!」
パシッ!!
騒ぐ喜助の頬を辰巳さんが強めに叩いた。
ガシッ。
固まっている喜助の服の胸ぐらを掴み、乱暴に引き寄せた。
「ガタガタうるせーぞ、あ?テメェ、殺し屋なんだったらテメェも命を狙われると思え。おら、喋れ。」
カタカタと震える喜助の腕に伊織は針を刺し、気絶している伊助にも刺した。
数分後ー
「それで、美雨の居場所はどこだ。」
「蘇武(そぶえ)って…、おじさんが…、倉庫…。」
蘇武って…、確か九条組にいた奴だったか?
「出て来てたのか?蘇武。」
伊織はそう言って、辰巳さんに尋ねた。
「えぇ、椿の野郎が保釈金払ったらしくて。何度か美雨に接触して来てました。倉庫…、お嬢を最初に攫った場所か。」
最初に?
「何回もあるんですか?攫われた事が…。」
「あぁ、これを合わせて3回だな。」
そう言ったのは、ボスだった。
「「ボス、お疲れ様です。」」
俺と二郎はボスに向かって、頭を下げる。
「頭、お疲れ様でした。」
「あぁ。コイツ等、美雨お嬢の居場所を吐いたのか。」
「はい、先程。どうやら、蘇武が美雨お嬢を攫い倉庫に居るそうです。辰巳には心当たりがあるそうで…。」
「蘇武か。」
「雪哉さん、頭は大丈夫ですか?」
ボスと伊織が話している間に辰巳さんが入った。
「光臣さんはかなりの深傷を負っていたが、大丈夫そうだ。病院に搬送させて貰ったよ。組員の奴等が
必死で光臣さんを守っていたからな。」
「そうですか…、それなら安心しました。ありがとうございます、雪哉さん。」
そう言って、辰巳さんはボスに深く頭を下げた。
「お前の方が大丈夫なのか。」
「はい、俺は大丈夫です。今から行って来ます。」
「私も行く。」
いつの間にかモモが地下室の入り口に立っていた。
「モモちゃん!?行くって…、美雨ちゃんの所
に?」
「うん、美雨ちゃんは私の友達だから。助けないといけないの。二郎、美雨ちゃんを助ける為には私の力が必要なの。感じるの、美雨ちゃん以外のJewelry Pupilの気配を。」
「感じる?」
二郎はモモの言葉を聞いて、不思議そうにしていた。
「モモちゃんの言ってる事は当たってるよ。」
「三郎!?帰って来てたのか?」
「血をいっぱい浴びたからねー。」
三郎の左目を見て俺は驚愕した。
何故なら、キラキラと輝くハイアライトオパールの瞳になっていたからだ。
「お前、左目はどうした。」
「あぁ、これね?嘉助(かすけ)に入れて貰ったんだ。Jewelry Pupilを持っていた方がやり易いと思ってね。倉庫に二見って野郎とJewelry Pupilの子供も一緒にいるよ。」
「何で、三郎がそんな事分かるの?」
二郎はそう言って、三郎に尋ねた。
「頭の中に流れて来たんだよね。ハイアライトオパールのJewelry Words(ジュエリーワード)の能力、テレパシーで分かった。それに前以上に体を動かせてるんだ。」
「体は平気なのか。」
「うん、大丈夫。ちゃんと慣らして来たから。」
「だが、モモちゃんを連れて行く訳には…。」
「私じゃないと、その子は殺せないよ。」
ボスの言葉を聞いたモモが言葉を放った。
モモの言葉を聞いたボスや伊織は少しギョッとしていた。
「付け加えると、二見と一緒にいる子が六郎(ろくろう)を痛め付けたみたいだね。だから、六郎は攫われたんだと思うよ。この子、かなりヤバイ。頭のネジが一本飛んでるからね。」
「殺さなきゃいけないよね。そんな子はいらないよね。」
ゾクッ。
モモの目を見て寒気が走った。
キラキラと輝くアパタイトの瞳が不気味だったからだ。
目を見て分かる。
モモは本気で、そのガキを殺す気だと。
Jewelry Pupil同士の殺し合いが始まろうとしている。
「六郎にも手を出したなら、尚更だよ。私の好きな人に手を出した償いをさせる。行こう、四郎。四郎が隣に居たら私、嬉しい。」
そう言って、モモは俺の手を握った。
どうしてだろうか。
モモが繋いで来た手を振り解けなかった。
体がそれをしなかった。
理由なんて分からない、本能がそうしたからだ。
俺はモモの手を繋ぎ、ボスの方を向いた。
「美雨は俺とモモ、辰巳さんで助けに行きます。三郎、お前も来い。」
「了解、当たり前だよ。」
三郎は少し嬉しそうに答えた。
「分かった。」
「辰巳さん、モモの血を飲んで。傷を治した方が良いよ。」
「え?モモちゃんの?」
モモは包帯を解き、腕を強く握った。
ジワッ。
傷口から血が溢れ、近くにあったコップに入れた。
ポタポタポタポタ…。
「モモちゃん、やめなさい。」
パシッ。
ボスはモモの腕を掴み、コップから離した。
手早く手当をし、包帯を撒き直しながらボスはモモに言葉を放った。
「モモちゃん、血を流すのやめてくれ。君を傷付けさせたくはない。」
「良いの。だって、私がそうしたいからしたの。辰巳さん、飲んで。」
「あ、あぁ…。」
辰巳さんはモモからコップを受け取り、血を口の中に流し込んだ。
すると、辰巳さんの傷が見る見るうちに回復して行った。
「化け物じゃん、そんなの。」
「あ?」
目を覚ました伊助の言葉を聞いたボスは、低い声を出した。
「血で傷を治す?おかしいだろ、そんなの人間じゃね…ゴフッ!?」
伊助の腹を思いっきりボスが蹴飛ばした。
「テメェ、ふざけた事言ってんじゃねーぞ。あ?四郎、辰巳行け。俺はコイツに用が出来た。」
俺達は軽く頷き、地下室を後にした。
地下室を出ると、三郎と俺の武器の入った鞄を持っ
た星影が立っていた。
「お疲れ様です、お二人の武器鞄をお持ちしました。必要になるかと思いまして。」
「あ、俺の鞄もある。助かるなー、ありがとう星影さん。」
「いえ、持って来たのは四郎さんですから。」
「四郎は気が気くからなー。倉庫の場所は分かってるから、俺が運転してくよ。先に車に行って回らしてくる。」
そう言って、三郎はそそくさと廊下を歩いて行った。
「三郎もネジが外れてると思うがな、お前に対してだけだけど。」
「まぁ、昔からそうですからね。」
「蘇武は俺が殺す。お前等は二見をやれ。」
「分かりました。」
「アイツはもう、生かしておかねぇ。死ぬべき人材だからな。」
辰巳さんは静かに言葉を放った。
二見か、九龍(くりゅう)会の本家で会った降りだ。
Jewelry Pupil相手とやり合うのは、骨が折れる。
普通の人間相手じゃねーからな…。
「私がいるから大丈夫だよ、四郎。」
俺の心を見透かしたような言葉をモモは放った。
「あぁ、そうだな。」
俺はモモの言葉に短く答える。
「お待たせー、行こうか。」
俺達は三郎が回した車に乗り込み、倉庫に向かった。
四郎達のアジトに辰巳零士が現れた時まで遡る。
CASE 四郎
「辰巳さん?何で、ここに…。」
辰巳さんの体は沢山の傷と頭から血を流していた。
「俺が連れて来た。」
そう言ってのは、伊織だった。
「お嬢が攫われた。」
「やっぱり、コイツ等の仕業か。」
美雨が攫われ、俺達のアジトや九条組に襲撃。
そして、コイツ等がここにいるって事はモモ狙いなのは確実だ。
椿の野郎が動き出したって事だよな。
「四郎、コイツ等にお嬢の居場所を吐き出させる。兵頭会の地下室に連れてくぞ。」
兵頭会の地下室は所謂、"拷問部屋"だ。
今の辰巳さんは昔の辰巳さんに戻っている。
殺しの仕事していた時の辰巳零士に。
美雨のお世話係になってからの辰巳さんは、柔らかくなったが…。
「分かりました。奥にコイツの仲間が1人います。」
「分かった。」
辰巳さんはそう言って、廊下を歩いて行った。
「四郎っ。」
ギュッ。
モモが俺に抱き付いて来た。
「四郎、四郎。」
「どうした。」
「美雨ちゃんがコイツ等に攫われたの?」
「だろうな、このタイミングで辰巳さんが来たって事はそうだろ。」
「美雨ちゃん、酷い事されてないよね?」
分からない。
美雨が今、どんな目に遭っているのか。
何もされてない保証はない。
Jewelry Pupilの賭博場での光景が頭の中を過った。
目玉を抉られた子供が何人か倒れていた。
その光景を見た辰巳さんは気が気じゃないだろう。
モモは不安そうな顔をして、ジッと見つめる。
俺はモモを抱き上げ、ポンポンッと背中を優しく叩く。
その光景を見ていた伊織が一瞬、驚いた顔をした。
「四郎がモモちゃんを抱っこするなんてな。」
「あ?」
「モモちゃん、嬉しそうだよ。」
伊織の言葉に促され、モモに視線を向けた。
するとモモはニコニコしながら、俺の首に腕を回した。
「辰巳さん、女を連れて来ました。そこの男をお願いしても良いですか。」
「あぁ。」
伊織は軽々と気絶している伊助を持ち上げた。
「四郎、モモちゃんに怪我はない?」
返り血を浴びた二郎と五郎が歩いて来た。
「してねーよ。」
「そう、なら良かった。そろそろ出よう、応援が来てもいけないしね。」
「そうだな、星影が車を回してくれてんだろ。」
俺は片手でモモを抱き上げ、もう片方の手で荷物を持った。
「九条組の応援に俺達は行かなくて良いのか?伊織。」
「あぁ、三郎を呼んだから大丈夫だろう。」
「三郎を?」
「四郎の方にも椿会の連中が向かったと言ったら、
すぐに飛んで来た。全く、三郎の四郎好きには困ったものだ。」
伊織はそう言って、苦笑いをした。
「伊織さん!!車の準備が出来ました!!四郎さん達も乗って下さい。」
駐車場に出ると、黒のアルファードの外に立っている星影の姿が見えた。
俺達は車に乗り込んで俺達は兵頭会の本家に向かった。
そして、現在に至る。
俺と二郎は辰巳さんと一緒に地下室を訪れていた。
辰巳さんは意識を取り戻した伊助の顔を、バールで殴った。
ゴンッ!!
ピチャッ!!
伊助は口から血を吐き出した。
「容赦ないなー、辰巳さん。」
「居場所?言う訳ないじゃん。ガハッ!!」
辰巳さんはさっきとは逆の方向から、バールで伊助の顔を殴った。
ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ!!
数回バールで殴った後、辰巳さんは伊助の胸ぐらを掴んだ。
ガシッ。
「どこだ、言え。」
「知らねーって。」
「ちょっと、伊助を殴るのやめてよ!!」
カチャッ。
ドンッ!!
辰巳さんは銃を取り出し、叫んでいる喜助の太ももに銃弾を放った。
「ヴッ!!はぁ、はぁ…。」
「余計な言葉を発するな。俺の求める答えだけ言え。」
「っ…。」
「辰巳、持って来たぞ。」
カツカツ。
伊織が持って来たのは、点滴セットだった。
それと謎の注射器。
「ありがとうございます。点滴刺して貰って良いですか。」
「あぁ、自白剤もぶち込んどく。」
*自白剤(じはくざい)は諜報機関や警察などの捜査機関等が使うとされる薬物で、注射されるとあらゆる秘密を自白し、また説によっては自白剤を注射された人物は「廃人」状態または死に至るとされる。*
「や、やだ!!やめてよ!!」
パシッ!!
騒ぐ喜助の頬を辰巳さんが強めに叩いた。
ガシッ。
固まっている喜助の服の胸ぐらを掴み、乱暴に引き寄せた。
「ガタガタうるせーぞ、あ?テメェ、殺し屋なんだったらテメェも命を狙われると思え。おら、喋れ。」
カタカタと震える喜助の腕に伊織は針を刺し、気絶している伊助にも刺した。
数分後ー
「それで、美雨の居場所はどこだ。」
「蘇武(そぶえ)って…、おじさんが…、倉庫…。」
蘇武って…、確か九条組にいた奴だったか?
「出て来てたのか?蘇武。」
伊織はそう言って、辰巳さんに尋ねた。
「えぇ、椿の野郎が保釈金払ったらしくて。何度か美雨に接触して来てました。倉庫…、お嬢を最初に攫った場所か。」
最初に?
「何回もあるんですか?攫われた事が…。」
「あぁ、これを合わせて3回だな。」
そう言ったのは、ボスだった。
「「ボス、お疲れ様です。」」
俺と二郎はボスに向かって、頭を下げる。
「頭、お疲れ様でした。」
「あぁ。コイツ等、美雨お嬢の居場所を吐いたのか。」
「はい、先程。どうやら、蘇武が美雨お嬢を攫い倉庫に居るそうです。辰巳には心当たりがあるそうで…。」
「蘇武か。」
「雪哉さん、頭は大丈夫ですか?」
ボスと伊織が話している間に辰巳さんが入った。
「光臣さんはかなりの深傷を負っていたが、大丈夫そうだ。病院に搬送させて貰ったよ。組員の奴等が
必死で光臣さんを守っていたからな。」
「そうですか…、それなら安心しました。ありがとうございます、雪哉さん。」
そう言って、辰巳さんはボスに深く頭を下げた。
「お前の方が大丈夫なのか。」
「はい、俺は大丈夫です。今から行って来ます。」
「私も行く。」
いつの間にかモモが地下室の入り口に立っていた。
「モモちゃん!?行くって…、美雨ちゃんの所
に?」
「うん、美雨ちゃんは私の友達だから。助けないといけないの。二郎、美雨ちゃんを助ける為には私の力が必要なの。感じるの、美雨ちゃん以外のJewelry Pupilの気配を。」
「感じる?」
二郎はモモの言葉を聞いて、不思議そうにしていた。
「モモちゃんの言ってる事は当たってるよ。」
「三郎!?帰って来てたのか?」
「血をいっぱい浴びたからねー。」
三郎の左目を見て俺は驚愕した。
何故なら、キラキラと輝くハイアライトオパールの瞳になっていたからだ。
「お前、左目はどうした。」
「あぁ、これね?嘉助(かすけ)に入れて貰ったんだ。Jewelry Pupilを持っていた方がやり易いと思ってね。倉庫に二見って野郎とJewelry Pupilの子供も一緒にいるよ。」
「何で、三郎がそんな事分かるの?」
二郎はそう言って、三郎に尋ねた。
「頭の中に流れて来たんだよね。ハイアライトオパールのJewelry Words(ジュエリーワード)の能力、テレパシーで分かった。それに前以上に体を動かせてるんだ。」
「体は平気なのか。」
「うん、大丈夫。ちゃんと慣らして来たから。」
「だが、モモちゃんを連れて行く訳には…。」
「私じゃないと、その子は殺せないよ。」
ボスの言葉を聞いたモモが言葉を放った。
モモの言葉を聞いたボスや伊織は少しギョッとしていた。
「付け加えると、二見と一緒にいる子が六郎(ろくろう)を痛め付けたみたいだね。だから、六郎は攫われたんだと思うよ。この子、かなりヤバイ。頭のネジが一本飛んでるからね。」
「殺さなきゃいけないよね。そんな子はいらないよね。」
ゾクッ。
モモの目を見て寒気が走った。
キラキラと輝くアパタイトの瞳が不気味だったからだ。
目を見て分かる。
モモは本気で、そのガキを殺す気だと。
Jewelry Pupil同士の殺し合いが始まろうとしている。
「六郎にも手を出したなら、尚更だよ。私の好きな人に手を出した償いをさせる。行こう、四郎。四郎が隣に居たら私、嬉しい。」
そう言って、モモは俺の手を握った。
どうしてだろうか。
モモが繋いで来た手を振り解けなかった。
体がそれをしなかった。
理由なんて分からない、本能がそうしたからだ。
俺はモモの手を繋ぎ、ボスの方を向いた。
「美雨は俺とモモ、辰巳さんで助けに行きます。三郎、お前も来い。」
「了解、当たり前だよ。」
三郎は少し嬉しそうに答えた。
「分かった。」
「辰巳さん、モモの血を飲んで。傷を治した方が良いよ。」
「え?モモちゃんの?」
モモは包帯を解き、腕を強く握った。
ジワッ。
傷口から血が溢れ、近くにあったコップに入れた。
ポタポタポタポタ…。
「モモちゃん、やめなさい。」
パシッ。
ボスはモモの腕を掴み、コップから離した。
手早く手当をし、包帯を撒き直しながらボスはモモに言葉を放った。
「モモちゃん、血を流すのやめてくれ。君を傷付けさせたくはない。」
「良いの。だって、私がそうしたいからしたの。辰巳さん、飲んで。」
「あ、あぁ…。」
辰巳さんはモモからコップを受け取り、血を口の中に流し込んだ。
すると、辰巳さんの傷が見る見るうちに回復して行った。
「化け物じゃん、そんなの。」
「あ?」
目を覚ました伊助の言葉を聞いたボスは、低い声を出した。
「血で傷を治す?おかしいだろ、そんなの人間じゃね…ゴフッ!?」
伊助の腹を思いっきりボスが蹴飛ばした。
「テメェ、ふざけた事言ってんじゃねーぞ。あ?四郎、辰巳行け。俺はコイツに用が出来た。」
俺達は軽く頷き、地下室を後にした。
地下室を出ると、三郎と俺の武器の入った鞄を持っ
た星影が立っていた。
「お疲れ様です、お二人の武器鞄をお持ちしました。必要になるかと思いまして。」
「あ、俺の鞄もある。助かるなー、ありがとう星影さん。」
「いえ、持って来たのは四郎さんですから。」
「四郎は気が気くからなー。倉庫の場所は分かってるから、俺が運転してくよ。先に車に行って回らしてくる。」
そう言って、三郎はそそくさと廊下を歩いて行った。
「三郎もネジが外れてると思うがな、お前に対してだけだけど。」
「まぁ、昔からそうですからね。」
「蘇武は俺が殺す。お前等は二見をやれ。」
「分かりました。」
「アイツはもう、生かしておかねぇ。死ぬべき人材だからな。」
辰巳さんは静かに言葉を放った。
二見か、九龍(くりゅう)会の本家で会った降りだ。
Jewelry Pupil相手とやり合うのは、骨が折れる。
普通の人間相手じゃねーからな…。
「私がいるから大丈夫だよ、四郎。」
俺の心を見透かしたような言葉をモモは放った。
「あぁ、そうだな。」
俺はモモの言葉に短く答える。
「お待たせー、行こうか。」
俺達は三郎が回した車に乗り込み、倉庫に向かった。
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