MOMO

百はな

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第3章 赤く黒く染まる

31.未来を書き換える

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CASE  一郎

「一郎が、お兄ちゃん…だったんだね。」

ユマは掠れた声で、俺に尋ねて来た。

ドゴォォォーン!!

上から爆発音が聞こえた。

俺はユマの体を抱き上げ、地下室を出た。

タタタタタタタッ!!

ドゴォォォーン!!

グラッ!!

爆発音と共に激しい揺れが起き、足元が揺れた。

倒れないように足に力を入れ、揺れに耐える。

ガタガタガタガタ!!

「お兄ちゃん…。」

「大丈夫だ、大丈夫。」

「お兄ちゃん…。」

「ユマ、お兄ちゃんの事を離すな。」

揺れに耐えながら、俺は階段を駆け上がる。

バン!!

足で乱暴に扉を開け、庭に出る。

「ゴホッ!!」

ビチャ!!

ユマが手で押さえながら咳をした。

口から離された手のひらには、赤い血がべっとり付いていた。

「ユマ!?どうしたんだ、その血は!?」

「脇腹の骨が折れてるの、ゴホッ!!骨がどこかに刺さったのかもっ。」

それで、ユマは吐血したのか。

急いで外に出て、ユマを爺さんに見て貰わないと…。

「見つけた。」

声のした方に視線を向けると、そこにはセーラー服を来た包帯だらけの女子高生がいた。

女子高生の手には刀が握られていた。

俺はユマを抱えながら、デザートイーグル50AEを構えた。

セーラ服に包帯…、それにオレンジ色の瞳…。

この子は、四郎がやり合った相手か!?

だとしたら、この子はJewelry Pupilだ。

今、Jewelry Pupilを相手に戦えない状態で俺自身、立っているだけでも精一杯だ。

ユマに視線を落とす。

こんなに酷い事をされても、俺が来るのを待っていた。

ユマを死なせる訳にはいかない。

俺が死んだとしても、ユマは守る。

「死んで下さい。」

タッ!!

女子高生が刀を抜き、俺に向かって振り下ろした。

バッ!

大きく後ろに飛び、デザートイーグル50AEの引き金を引いた。

パシュッ!!

銃弾は真っ直ぐ放たれたが、女子高生の目の前で動きを止めた。

弾が止まった!?

四郎が言っていた通りだな。

これも、Jewelry Words の能力なのか?

「お返しします。」

ビュン!!

ドピュッ!!

女子高生は止まった弾を指で弾き、弾き飛ばされた弾が俺の体に練り込んだ。

「ヴッ!!」

「お兄ちゃん?!」

やばい。

今の攻撃で、痛みを感じ出した。

今までは痛みを感じなかったのに、痛みが激しくなった。

「ガハッ!!」

胃から込み上げて来た物を吐き出した。

ビチャ!!

吐き出されたのは血の塊だった。

ユマを本家から出し、四郎達に渡す。

俺は砂利を蹴り上げ、砂埃を作り女子高生の目をくらませた。

「ゴホッ、ゴホッ。」

タタタタタタタ!!

俺は砂埃に乗じて、庭を飛び出した。

本家の中に入り廊下を真っ直ぐ走り、玄関に向かった。

「お兄ちゃん!!無理しないで!!そんなに走ったら、傷口が開くよ!!」

「大丈夫だから、心配するな。」

「だけど、だけど!!」

「逃す訳ないでしょ。」

真後ろから女子高生の声がした瞬間、背中に激痛が走った。

ブシャッ!!

「お兄ちゃん!!血、血が!!背中から、血が!!」

グラッ。

視界が揺れた。

斬られたのか?

ドサッ!!

ユマを抱き締めた状態で、俺は床に倒れた。

「お兄ちゃん!!しっかりして!!」

「ユ、マ…。」

「お兄ちゃん!!」

「逃げろ。」

「やだ、やだやだやだ!!」

「ユマ!!」

「っ!!」

俺が大きな声を出すと、ユマの体がビクッと跳ねた。

「アイツの狙いは俺だ。俺が残って、時間を稼ぐ。ユマ、走って玄関に行け。」

「お喋り出来る余裕はあるんだ。死にかけなのに。」

グサッ!!

右足の脹脛(ふくらはぎ)に痛みが走る。

女子高生は刀を、俺の脹脛に刺していた。

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」

「やめろ!!」

カチャッ。

パシュッ!!

ユマがデザートイーグル50AEを構え、女子高生に向かって弾を撃っていた。

だが、弾は女子高生の前で止まってしまう。

「ユマ!!何してんだ!!さっさと、逃げろって言っただろ!!」

「何で、ボスがあたしにデザートイーグル50AEを渡したのか分かった。お兄ちゃんとお揃いの銃だったんだ。あたしとお兄ちゃんはもう、二度と離れちゃ駄目なの!!」

「ユマ…、お兄ちゃんの言う事を聞いてくれ。」

体が動かない。

情けない。

ユマだけは逃してやらないといけないのに。

「お兄ちゃん…、何でそんな事を言うの?やっと、迎えに来てくれたのに、また置いて行くの?」

「っ…。」

ユマ、そんな泣きそうな顔をするなよ。

俺は…、ユマに生きて欲しいだけなんだ。

ユマを守れない俺は…、生きてる意味がない。

「佐助、ここにいたんだ。そろそろ殺さないと、ガスが蔓延するよ。」

ユマの後ろから現れたのはマッシュ頭の男だった。

カチャッ。

男はユマの頭に銃口を突き付けた。

「伊助、まだ残ってたの。」

「佐助を残していく訳ないじゃん?あ、この人達が?ターゲットの間宮兄妹?」

俺が間宮海莉だと、知っている口ぶりで話すな…。

俺は重たい体を非翳りながら、ユマの元に行きユマを背中に隠した。

「え!?その体でまだ、動けんの?凄すぎでしょ。」

「ユマに手を出すな。」

「アハハハハハ!!そんな体で言われても、効果ないよ。」

「お兄ちゃんを笑うな、糞野郎。」

後ろにいるユマも伊助を睨み付けた。

「何か悪者みたい?僕達。」

「私達は裁きを下す者。悪者と言われようが関係ない。死んで下さい、椿様の為にも。」

やっぱり、コイツ等は椿の所の殺し屋か。

「そうだよね、君達は僕達の敵。敵を殺したら悪者も何もないよね。」

カチャッ。

俺の額に銃口を当てて来た。


数十分前ー

CASE 八代和樹

槇島ネネが俺に口付けをした後だった。

「な、何してんの!?槙島さん!?」

裕二は驚きながら槙島ネネに尋ねた。

俺は脳裏にある言葉が流れて、口に出していた。

「Jewelry Pupilなのか?」

「え!?」

俺の言葉を聞いた裕二は、驚いた。

「気付かなかったんですか?」

「気付く訳ないだろ…。」

「私は、オブシディアンと言う黒曜石のJewelry Pupilを持っています。オブシディアンの宝石言葉は、変革の力。そして、神の声の導きに従う者です。」

「君はJewelry Pupilと言う事か。難しい事は分からないが、どうして俺にキスをした。」

俺はそう言って、槙島ネネに視線を送る。

「Jewelry Pupilには騎士(ナイト)様が必要なんです。私と運命共同体になって下さい。貴方は私を欲しがる未来が見えています。私も貴方が欲しいんです。」

「Jewelry Pupilと共にいる人間を騎士と呼ぶって、何かの書物に書いてあったが…。本当なのか?」

「はい。私達Jewelry Pupilは1人じゃ、力を発揮出来ないんです。だけど、一緒にいてくれる騎士様がいれば私はもっと、力を出せる。」

「…。」

「この状況を変えれるのは、私しかいません、誓って、私を選ぶと。」

俺とアイツの目的の為には、Jewelry Pupilが必要だ。

そして、この状況を変える力も欲しいと思っている。

槇島ネネが俺を欲するように、俺も槇島ネネも欲している。

槙島ネネとキスをした後、何かが1つになった感覚がした。

これは、一体…?

「時間が無いんです。早く、選んで。」

ドゴォォォーン!!

槙島ネネの言葉の後に爆発音が聞こえた。

俺は、俺達は槙島ネネが必要だ。

「槙島、お前の力を俺に貸してくれ。君の事は全力で、守ると誓う。」

「貴方なら、そう言うと思っていました。」

カチャンッ。

手に何か…。

そう思い、手首に視線を向けると…。

シルバーの手錠が右手首に巻かれていた。

それは槙島ネネも同じで、俺達の周りには白い光が浮き上がっていた。

「私達の命は今、ここから繋がりました。行きますよ、中に。」

繋がった…。

その言葉は妙にしっくり来てしまった。

「中にって、九龍会本家の中に行くのか!?危ないだろ?!」

「大丈夫、私がいる限りは。」

シンッ…。

槙島ネネが言葉を放った瞬間、全ての物の動きが止まった。

時間が止まっているような…。

「私が止めましたよ。」

「は、はぁ!?時間を止めた!?ど、どうやって?!」

「私のJewelry Words です。」

「そ、そうか…。」

「さぁ、行きますよ。未来を書き換えに。」

槙島ネネはそう言ってから、俺の手を掴み九龍会本
家へと足を踏み入れた。


CASE 一郎

カチカチカチカチ…。

時計の針の男が聞こえた。

「あ、良かった。間に合いましたね、八代警部補。」

「間に合った内に入らねーだろ。おい、大丈夫か?」

俺達の目の前に現れたのは赤茶髪の女の、ネイビー色の髪をした男だった。

「お、お兄ちゃん…、周り見て。」

ユマに言われた通りに周りに視線を向けると、全ての物の動きが止まっていた。

俺とユマ、目の前にに2人以外の物が止まっている。

「ど、どう言う事なんだ?」

「あ、動かない方が良いよ。貴方達、2人の体の痛みも止めてるけど…。」

真っ黒な瞳が俺を捕える。

「警察がどうして、あたし達を助けるのよ。」

「んー、そうした方が良いって。神が言ってるから。」

「は、は?神?神って、あの神様の事?」

「私は神の声が聞こえるの。まぁ、私がJewelry 
Pupilだからって、言えば分かる?」

「「っ!?」」

俺とユマは女の言葉に驚いた。

Jewelry Pupil!?

「俺と槙島はお前達を助けに来た。俺の友人の所に君達を送る。」

「さぁ、立って。」

槙島と呼ばれた女は懐中時計を持って、玄関の方に視線を向ける。

「Jewelry Pupilがいると、能力が長く持たないの。話は後で。今は、貴方達の安全と治療出来る環境を手に入れる事よ。」

俺はユマの手を掴み、立ち上がった。

「話はちゃんと聞かせ…ろよ。」

「お兄ちゃん!!」

俺の意識が切れた。
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