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第3章 赤く黒く染まる
25.拐われた六郎
しおりを挟むCASE 四郎
ガシャーンッ!!
六郎(ろくろう)の使っていた食器の皿が割れた。
俺は持っていたジャガイモとピーラーを置き、割れた皿の破片を拾い始めた。
「四郎(しろう)、私も手伝う。」
モモはそう言って、手を伸ばそうとして来た。
「触るな。」
モモの手を止め、黙々と皿の破片を拾った。
「ごめんなさい…。」
何故かモモはシュンッとしてしまった。
「別に怒ってない。口が悪いのは元からだから慣れろ。」
「あ、そっか。」
「ほら、冷蔵庫からハム取って来い。」
「うん!!」
パタパタパタ!!
足音を立てながらモモは冷蔵庫の中を開け、ハムを取り出していた。
今、作っているのはポテトサラダで4品目だ。
肉じゃが、タコとワカメの酢の物、煮込みハンバーグやらを大きめのタッパに入れ冷蔵庫に保存する。
「四郎、ハム取って来た!!」
「おー、サンキュー。ハムをキッチンバサミで細か
く切ってくれ。」
「分かった!!」
「手、ほら、ここをこうして持て。」
俺はモモの後ろから手を掴み、持つ場所を教えた。
だが、モモの顔が真っ赤になった。
「何で、赤くなるんだ?」
俺は思った事を口にすると、勢いよく振り返って来た。
「し、四郎が急に後ろから手を触るから…。」
「あー、悪い悪い。」
そう言ってから手を離し、茹玉子の殻を剥き始めた。
「うぅー。し、四郎って、料理上手だね!!どうして、お料理が上手なの!!」
「自分の作った飯しか、食えなかったから。ここにいる連中は皆んなそうだ。」
他人の作った飯なんか、口に入れれない。
何が入っているかも分からないし、信用してない奴の飯なんか食えない。
だから、自動的に自分で作るしかなかった。
「その気持ち分かる。私も食べれなかったよ。」
「そうか。」
「二郎の作ったご飯は、あったかいし、美味しい。
変な味もしないし…。」
「そうか。」
「四郎のご飯なら、尚更!!」
「あんまし、期待すんな。」
「るんるんー!!」
モモは上機嫌になり、ハムを切っていた。
ソファーには七海がココアを飲みながら、パソコンを見ていた。
「何だ?」
七海がパソコン画面を見ながら言葉を吐いた。
「何かあったのか。」
「あ、四郎。いや、知らないメアドから動画が送られて来てさ。」
「七海のパソコンにか?」
「うん。えっ?ちょ、四郎!!」
俺は七海に呼ばれてソファーに向かった。
「何だよ。」
「この動画、見て!!」
七海はそう言って、パソコンを渡して来た。
画面を見て見ると、女が椅子に座っていて手足が手錠で拘束されていた。
女の足元には血溜まりが出来ていて、手足の爪が剥がされ足には釘が刺されていた。
髪も乱暴に切られていて、太もものタトゥーを見て俺は驚愕した。
雪の結晶のタトゥーは、六郎の太ももに入ってるタトゥーだ。
この女は六郎なのか!?
「六郎…、なのか?」
ドタドダドタドタ!!!
廊下から乱暴な足音が2つ聞こえて来た。
バンッ!!
「落ち着けよ、一郎!!」
「落ち着けるわけねーだろ!!」
リビングに一郎と二郎が入って来た。
一郎が怒鳴った姿を見るのは初めてで、モモの体がピクッとなった。
バンッ!!
一郎は封筒を乱暴に机の上に叩き付けた。
パサッ。
封筒の中から、六郎の長い髪と血の付いた爪が数枚
が出て来た。
爪のネイルも六郎の物だ。
「二見(ふたみ)だ。二見瞬(しゅん)が六郎を拐ったんだよ、俺に喧嘩売って来やがった。」
二見瞬…、確か集会の時に辰巳(たつみ)さんと話してた男か。
九龍(くりゅう)会の若頭だって、ボスが言っていた。
「何で、九龍会の若頭が六郎を…。」
「ボスの命令で九龍会の組員と若頭の二見瞬の監視をしてた。だが、二見瞬が俺にこの封筒を渡して来た。」
七海の問いに一郎はそう答えた。
CASE 一郎
特に…、動きはないようだな。
物陰から二見瞬達の監視をして数時間。
今の所は何も変わりもないヤクザ達が歩いているだけ。
大阪の組なのに何故、集会が終わっても東京にいるんだ。
移動した。
タッ。
俺はビルの屋上に飛び移り、上から二見瞬達の監視を再び開始する。
二見瞬達が路地裏に入って行った。
路地裏に入ると、紙袋を持った売人が二見瞬に声を掛けた。
九龍会が薬を売買してるって言う情報は、正しかったみたいだな。
ボスの傘下に入ってる以上、薬は御法度(ごはっと)だ。
二見瞬の姿がない?
カチャッ。
頸(うなじ)に冷たい感触がした。
「盗み見なんて、趣味が悪いなぁ。」
「っ!?」
バッ!!
俺は素早く距離を取りデザートイーグル50AEを構えた。
「へぇ、Jewelry Words(ジュエリーワード)の能力無しで、そんなに素早く動けるんやー。兵頭さん良い人材を拾って来たんやなぁ。」
Jewelry Wordsの能力無しでって…、二見瞬はいつの間に屋上に来た?
瞬間移動して来たのか?
それよりも何故、俺の名前を知っている?
「何で、名前を知ってるか?って顔してはるなぁ。」
「お前が俺を調べたのか、椿が俺を調べたかのどっちかだろ。」
「ほぉー、正解。最後に言ったヤツが当たりやぁ。兵頭さんに言われて後を付けて来たんやろ?」
「お前に言う言葉は何もない。」
「良い教育をしてはるなぁ、六郎ちゃんにも。」
パシュッ!!
二見瞬の頬に銃弾が掠った。
サイレンサーを付けている為、発砲音はしない。
「あ、怒った?」
「六郎に何かしたのか。」
そう言うと、二見瞬が封筒を俺の足元に投げて来た。
パサッ。
封筒から出て来たのは、グリーンアッシュの長い髪と血の付いた爪が出て来た。
ブチッ。
俺の中で六郎の記憶が蘇り、怒りが湧いた。
「六郎ちゃんをお預かりしてまーす。」
「テメェ…、六郎に何をした。」
「モモちゃんや兵頭さんが君等を匿ってる場所とかー?色々聞こうとしても口をわらないんよぉ。そし
たら双葉(ふたば)が…。」
ドサッ!!
俺は二見瞬の足を蹴り床に寝かせ首を掴み、銃口を口の中に突っ込んだ。
「どこにいる。」
「へ?」
「六郎はどこにいるかって、聞いてんだ。さっさと吐け。」
「へー?」
「瞬に触るな。」
グサッ!!
右腕に痛みが走った。
視線を右腕に向けると、栗色のツイテールヘアーをした少女が俺の腕にドライバーを突き刺していた。
「瞬に触るな!!!」
クリソベリルキャッツアイの瞳…、二見瞬が一緒に
いる少女はJewelry Pupil(ジュエリーピューピル)だったのか。
「Jewelry Pupilか。」
「触るなー!!!」
ポコポコ!!
「双葉ー、大丈夫やでー。」
二見瞬は口から銃を外し、起き上がった。
「瞬!!コイツ殺して良い?」
「だーめ。」
「だって、コイツ!!瞬に酷い事した!!」
「大丈夫や、言う事聞いて双葉。」
「ゔぅ…。」
二見瞬は双葉の事を調教してる…のか。
「六郎ちゃんを解放して欲しいなら、モモちゃんと四郎君を連れておいで。」
「それはでき…。」
「出来ないなら殺す。分かっとるやろ、君のだいーじな六郎ちゃんを殺させたくないやろ。」
スッ。
スマホ画面を見せ動画をスタートさせ写っていたのは、縛られた六郎だった。
「モモちゃんはどこにいるのかなー?教えてくれへん?」
「…。」
「まーた、黙りかいな。」
カツカツカツ…。
二見瞬が六郎に近寄り頬を叩いた。
パシッ!!
それだけでも腹立たしいのに、二見瞬は釘を持ってトンカチで膝に突き刺した。
グサッ!!
「ゔっ!!」
六郎は苦痛の声を上げた。
そこで動画は止まり、二見瞬は俺の顔を覗き込んで来た。
そして、耳元で囁いた。
俺はその言葉を聞いてゾッとした。
CASE 六郎
バシャ!!
冷た…。
「起きろ、糞女。」
目を開けると、ガラの悪い男が空のバケツを持っていた。
痛ったぁ…。
身体中痛いし…、膝も痛い。
釘が刺さってる…。
「顔は結構、可愛いーじゃん。」
不細工な面した男が、あたしの顔を覗き込む。
「二見さんに言われてんだろ、この女には手を出すなって。」
「いないからいーじゃん!!」
男はそう言って、あたしの体に触れようとした。
だが、男の頭が吹っ飛んだ。
ブシャッ!!
「ヒッ!?」
「や、やば…。双葉さんがどこかで見てるんだ!!」
あのガキか…。
「おら!!女、さっさと情報を吐け!!」
恐怖に駆られた男は、あたしに怒鳴り付けて来た。
「…。」
「答えろつってんだろ?!」
パシッ!!
「いってぇ…な。糞野郎。」
「ヒィ!?」
あたしが睨むと男達はビビって後ろに下がった。
「ビビるぐらいなら最初から叩くな。」
こうなる事は予想はしていた。
だけど、まぁ、今じゃないとは思ってた。
こうする奴等の理由はボスの事とモモちゃんの事を聞きたいだけだ。
あたし等は絶対にボスは売らない。
例えそれが、どんなに酷い事をされてもだ。
「死んでも言わねーよ、ばーか。」
あたしはボスを裏切らない。
お兄ちゃんを見つけるまでは、絶対に。
「お兄ちゃんに会わせてあげよーか?」
そう言って、現れたのは二見瞬だった。
「な、何で…、お前がお兄ちゃんの事を…っ!?」
「だから、教えてくれへん?」
二見瞬が怖く恐ろしい男だと悟らされた。
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