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第1章 少女の価値
8.Jewelry Words
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四郎達を乗せた車は無事にミッドナイトタワーの立体駐車場に入った。
車ごと地下に降りるエレベーターに乗ると、モモが少し興奮気味に四郎の肩を叩いた。
トントンッ!!
「何だよ。」
「凄いっ。ロボットみたい。」
「ロ、ロボット?」
「ウィーンって音が鳴ってるし。ガシャンガシャンしてる。」
「モモちゃん。ご機嫌だね。」
四郎とモモが話している間に三郎が入って来た。
「うん。」
「「「「お、おおおおおおお…。」」」
三郎の言葉にモモが返事をすると、二郎と三郎、六郎の声が重なった。
「へ、返事をした。」
モモに話し掛けた本人の三郎は驚きをあまり目をパチクリさせていた。
「四郎が言ったから?」
「そうだよ。」
二郎の問いにモモは答えた。
「マジで懐かれてるじゃん。何したの?四郎。」
六郎はそう言って、四郎に尋ねた。
「知らねーよ。」
「ふーん。」
四郎と六郎が話していると、モモが四郎にしがみ付いた。
「どうしたの?モモちゃん。」
モモの様子を不思議に思った二郎が声を掛けた。
「別に。」
「あ、そ、そう?」
「着きました。頭と伊織さんがお待ちになってますよ。」
星影はそう言って、四郎達に声を掛けた。
星影の言葉を聞いた四郎達は、車が停車した事を確認して車を降りた。
モモは車を降りた後、四郎の手を取り歩き出した。
パタンッ。
「あの人、誰?」
モモはそう言って四郎に尋ねた。
「俺達のボス。」
「ボスって?」
「あ?あー…。ボスはボスだ。」
「四郎、意味分かんないよ。」
「はぁ…。面倒くせー質問すんなよ…。」
四郎の言葉を聞いたモモは口を閉じた。
「おい、四郎。モモにそんな冷たい事を言うんじゃない。」
そう声を掛けたのは兵頭雪哉だった。
「ボ、ボス!?お、お疲れ様です。」
六郎は慌てて兵頭雪哉に頭を下げると、「お疲れ様です。」と言って四郎達も頭を下げた。
「すいません、ボス。失言が過ぎました。」
兵頭雪哉に謝る四郎を見たモモは、口を開けようとした。
その瞬間、モモの小さな鼻から鼻血が垂れた。
「モモちゃん!?」
「だ、だだ大丈夫!?」
二郎と六郎が慌ててモモに近寄った。
鼻血を見た兵頭雪哉は四郎に近寄り拳を振り上げた。
ゴンッ!!!
兵頭雪哉の拳が四郎の右頬に入った。
「モモの服と手に血が付いてる。そして、この鼻血の説明をしろ四郎。」
兵頭雪哉はそう言って四郎を睨み付けた。
四郎と兵頭雪哉の間にスッと入ったのは三郎だ。
「ボス、四郎はちゃんとやってましたよ。あの子が
鼻血を出したのはこれだけじゃないんですよ。」
「三郎。許可なく頭の前に立つな。」
兵頭雪哉の元に駆け寄りながら言葉を放ったのは岡崎伊織であった。
「ボス、三郎の言っている通りです。モモちゃんが
鼻血を出したのは四郎の所為じゃありません。鼻血を出す前に不可解な…事が起きまして…。」
二郎が弁解するように言葉を放った後、モモが三郎の横に立った。
その光景にこの場にいる全員が驚いた。
「私が…、おじさんに"死んで"って言おうとしたから。」
この言葉を聞いた兵頭雪哉は驚きながら、モモの視線に合わせるように膝を付いた。
「モモちゃん、それはどう言う事?」
「四郎に酷い事したおじさんは嫌い。」
パタパタッ。
そう言ってモモは四郎の後ろに周り兵頭雪哉を睨み付けた。
「四郎、中で説明して貰うぞ。」
「分かりました。」
歩き出した兵頭雪哉の後ろを歩くように四郎達も歩き出した。
CASE 四郎
殴られるとは思わなかった。
ボスが近寄って来た瞬間に分かったが、避けては行けないと思い避けようとする体を抑え込んだ。
「四郎。痛い?」
モモが不安そうな顔をして俺の顔を見て来た。
「平気だからそんな顔すんな。」
「で、でも…。」
「はぁ…。気にすんな。」
長い廊下を歩いている間、モモは俺の手を離さなかった。
伊織が玄関の扉を開けボスを先に入れると、一郎が出迎えた。
「お疲れ様ですボス。すみません、二郎達を出迎えて貰ってしまって。」
「一郎、爺さんに連絡しろ。」
「え?どこか怪我でもされたんですか?ボス。」
一郎がそう言うと、ボスが一郎に耳打ちをした。
「分かりました。すぐに連絡します。」
スマホを手に取った一郎が電話を掛けていた。
「さ、モモちゃん。中へどうぞ。」
ボスがモモに話し掛けても、モモは返事をせずに俺の手をギュッと握った。
モモの表情を見ると、ボスの事を警戒しているのが分かる。
小さい時の七海を思い出した。
ボスが七海を連れて来た時の表情と同じだった。
俺を殴ったから警戒してんのか?
何かさっきもボスの事を睨んでたしな…。
「モモ。部屋に入るぞ。」
「うん。」
俺が言葉を投げ掛けるとモモは素直に従った。
リビングに入ると、五郎と七海が既に戻って来ていた。
「「ボス、お疲れ様です。」」
リビングに入って来たボスを見て、ソファーに座っていた2人は立ち上がり頭を下げた。
「2人共、ご苦労だったな。座れ。」
ボスに言われた通りに2人はソファーに腰を下ろした。
「ボス、15分後に到着するそうです。」
「分かった。四郎、顔貸せ。」
一郎と話した後にボスが俺に声を掛けた。
恐らくモモの鼻血の話だろう。
「分かりました。」
「どこ行くの?」
モモはそう言って俺を見つめた。
不安そうな顔をして俺のジャケットの袖を掴んだ。
「ボスと話があるからこの部屋を出るだけだ。」
「私も一緒に行きたい。」
「モモちゃん、四郎が戻って来るまで俺達といよ。」
そう言ったのは二郎だった。
「やだ。」
「や、やだ…?」
二郎の言葉にモモは即答で拒否した。
「分かった。リビングで話しをしよう。ごめんね、モモちゃん。」
ボスがそう言うとモモはホッとした表情を浮かべた。
「すいませんボス。」
「いや、俺の配慮が足りなかった。」
ボスは言葉を吐きながらソファーに座り込むと、伊織はボスの後ろに立った。
俺達もボスが座った後にソファーに腰を下ろした。
すると、モモは俺の隣ではなく膝の上に座った。
その光景を見た五郎と七海は驚いていた。
勿論、一郎や二郎達もだった。
「え、え?」
「どう言う事?」
「モモちゃん、四郎がお気に入りなんだよねー。」
戸惑う五郎と七海に声を掛けたのは三郎だった。
「話して貰おうか四郎。」
ボスはそう言いながら煙草を咥えると、伊織が素早く煙草に火を付けた。
「はい、俺がモモと最初に会った時に、目の前で人が自害しました。」
「自害した…だと?どう言う事だ?」
「俺にも分かりませんが…。モモの瞳、モモの言葉を聞いた後に自害しました。それは二郎も見ています。」
「二郎、四郎の言ってる通りなのか。」
ボスがそう言うと、二郎は短い返事をした。
「その後にモモは鼻血を出しました。本人が言うにはこの不可解な現象が起きた時に出すそうです。」
「それはJewelry Words(ジュエリーワード)の能力じゃろ。」
声のした方に視線を向けると、白髪頭の爺さんがリビングのドアを捻って現れた。
「遅かったな爺さん。」
「馬鹿野郎!!テメェ、何時だと思ってんだ!?夜中だぞ!?普通に寝ていたわ!」
「大きい声を出すな。モモちゃんが驚くだろ。」
ボスがそう言うと、爺さんは口を閉じモモを見つめた。
「この子がモモちゃんか。」
「そうだ。診てくれ。」
爺さんは持っていた鞄から診察をする為の道具を出していた。
この爺さんは、言わゆる闇医者だ。
俺達が怪我をした時に診てくれるのはこの爺さんだ。
診察料は結構高い。
「モモちゃん、ちょっと目を見せてくれるかなー?」
爺さんは優しい笑顔でモモに話し掛けた。
「四郎…。」
「俺も診て貰った事がある。」
「…むぅ。」
モモは小さな声を出した後、大人しく診察を受けていた。
「目が充血しておる。それと軽度の栄養失調を起こしておるな。鼻血を出したのは粘膜が傷付いて出してしまったのじゃろうな。」
「それで、さっき言った Jewelry Words って何だ。」
ボスがそう言うと、爺さんは聴診器を耳から外した。
「Jewelry Wordsと言うのは言葉の通り宝石言葉じゃよ。花言葉があるだじゃろ、言葉はそれと同じじゃが…。」
「同じだが?」
「Jewelry Pupilを持っている人間は、瞳の宝石の言葉の意味の能力を使える。モモちゃんの宝石、アパタイトの意味は"惑わす"、"誘惑"。」
「つまり、モモちゃんの言葉を聞いた奴等は惑わされるように自害した…。」
爺さんの言ってる事に理解が追いつかなかった。
何だ?
つまりはJewelry Pupilを持っている人間は不思議な能力を使えるって事なのか?
だが、俺が見た光景の説明はこの話を聞いて解決した。
「え、何?つまりは超能力的な?」
「それとは違うな。Jewelry Pupilを持つ人間、つまりはJewelry Pupilを繰り抜き持っている人間もまたその能力を使えるんじゃよ。」
三郎の問いに爺さんが答えた。
「そんな事ってあるの?だから、Jewelry Pupil を欲しがる連中が多いの?」
「まー、恐らくそうじゃろう。」
六郎の問いに爺さんは答えた。
「とりあえず、モモちゃんには目薬を処方しとくぞ。」
そう言って爺さんは鞄から目薬の入った袋と、日焼け止めを出した。
「これは普通の瞳ようじゃないぞ?Jewelry Pupil ようの目薬じゃ。」
「爺さん、そんなの作れんのか?」
「他にもいるんじゃよJewelry Pupil の患者がな。」
「え!?他のJewelry Pupil に会った事あるの!?」
爺さんと普通に話していた五郎だが、最後の言葉を聞いて驚いていた。
「そりゃ、そうじゃろ。ワシはJewelry Pupil 専門の医師じゃからな。」
これには俺も驚いた。
爺さんがまさかJewelry Pupilの医者だっとは、思わなかったからだ。
「雪哉、ワシはもう行くぞ。金は振り込んでおけよ。」
「分かってる。伊織、爺さんを玄関まで送ってやれ。」
「分かりました。」
「じゃあ、目薬と日焼け止めが切れたら連絡しろよ。」
そう言って、爺さんと伊織はリビングを出て行った。
「でもさー、俺達はモモちゃんの言葉を聞いても自害しないじゃん?それは何でだろうね。」
三郎の言葉を聞いた俺達は、ハッとした。
確かに、俺達は何で死んでないんだ?
モモと会話をしたり、目を合わせたりしているのに。
「私が死ねって思ってないから。」
「それは俺達に殺意を持ってないって事か?」
一郎がそう言ってモモに尋ねた。
「四郎が怖くないって言ったから思ってないよ。」
「ほ、ほぉ…。」
モモの言葉を聞いた七海は唖然としていた。
どうしてこんなに懐いてんだ?
俺に…。
「四郎。」
不意にボスが俺に声を掛けて来た。
「はい。」
「お前はモモちゃんと24時間共に行動しろ。」
「はい?」
「モモちゃんはお前に懐いている。その方が良いだろう。」
「ま、待って下さいよボス…。」
俺がそう言うと、ボスは腰を上げた。
「ここにいる全員に命令だ。モモの世話と護衛をしろ。死んでもこの子は守れ。」
あえてボスがモモと呼び捨てにしたのは、俺達に命令する為だろう。
Jewelry Pupilを守れと言う事で合ってるのだろうか。
俺達はボスの命令は絶対だ。
だからどんな命令でも俺達は従わなくちゃいけない。
だけど、何で俺がモモと24時間いないといけないんだよ。
「「「了解です、ボス。」」」
俺達はそう、返事をするしかなった。
膝の上にいるモモは嬉しそうに俺の顔を見ていた。
俺は深い溜め息を吐くしかなかった。
俺とモモの24時間生活がスタートしたのだった。
車ごと地下に降りるエレベーターに乗ると、モモが少し興奮気味に四郎の肩を叩いた。
トントンッ!!
「何だよ。」
「凄いっ。ロボットみたい。」
「ロ、ロボット?」
「ウィーンって音が鳴ってるし。ガシャンガシャンしてる。」
「モモちゃん。ご機嫌だね。」
四郎とモモが話している間に三郎が入って来た。
「うん。」
「「「「お、おおおおおおお…。」」」
三郎の言葉にモモが返事をすると、二郎と三郎、六郎の声が重なった。
「へ、返事をした。」
モモに話し掛けた本人の三郎は驚きをあまり目をパチクリさせていた。
「四郎が言ったから?」
「そうだよ。」
二郎の問いにモモは答えた。
「マジで懐かれてるじゃん。何したの?四郎。」
六郎はそう言って、四郎に尋ねた。
「知らねーよ。」
「ふーん。」
四郎と六郎が話していると、モモが四郎にしがみ付いた。
「どうしたの?モモちゃん。」
モモの様子を不思議に思った二郎が声を掛けた。
「別に。」
「あ、そ、そう?」
「着きました。頭と伊織さんがお待ちになってますよ。」
星影はそう言って、四郎達に声を掛けた。
星影の言葉を聞いた四郎達は、車が停車した事を確認して車を降りた。
モモは車を降りた後、四郎の手を取り歩き出した。
パタンッ。
「あの人、誰?」
モモはそう言って四郎に尋ねた。
「俺達のボス。」
「ボスって?」
「あ?あー…。ボスはボスだ。」
「四郎、意味分かんないよ。」
「はぁ…。面倒くせー質問すんなよ…。」
四郎の言葉を聞いたモモは口を閉じた。
「おい、四郎。モモにそんな冷たい事を言うんじゃない。」
そう声を掛けたのは兵頭雪哉だった。
「ボ、ボス!?お、お疲れ様です。」
六郎は慌てて兵頭雪哉に頭を下げると、「お疲れ様です。」と言って四郎達も頭を下げた。
「すいません、ボス。失言が過ぎました。」
兵頭雪哉に謝る四郎を見たモモは、口を開けようとした。
その瞬間、モモの小さな鼻から鼻血が垂れた。
「モモちゃん!?」
「だ、だだ大丈夫!?」
二郎と六郎が慌ててモモに近寄った。
鼻血を見た兵頭雪哉は四郎に近寄り拳を振り上げた。
ゴンッ!!!
兵頭雪哉の拳が四郎の右頬に入った。
「モモの服と手に血が付いてる。そして、この鼻血の説明をしろ四郎。」
兵頭雪哉はそう言って四郎を睨み付けた。
四郎と兵頭雪哉の間にスッと入ったのは三郎だ。
「ボス、四郎はちゃんとやってましたよ。あの子が
鼻血を出したのはこれだけじゃないんですよ。」
「三郎。許可なく頭の前に立つな。」
兵頭雪哉の元に駆け寄りながら言葉を放ったのは岡崎伊織であった。
「ボス、三郎の言っている通りです。モモちゃんが
鼻血を出したのは四郎の所為じゃありません。鼻血を出す前に不可解な…事が起きまして…。」
二郎が弁解するように言葉を放った後、モモが三郎の横に立った。
その光景にこの場にいる全員が驚いた。
「私が…、おじさんに"死んで"って言おうとしたから。」
この言葉を聞いた兵頭雪哉は驚きながら、モモの視線に合わせるように膝を付いた。
「モモちゃん、それはどう言う事?」
「四郎に酷い事したおじさんは嫌い。」
パタパタッ。
そう言ってモモは四郎の後ろに周り兵頭雪哉を睨み付けた。
「四郎、中で説明して貰うぞ。」
「分かりました。」
歩き出した兵頭雪哉の後ろを歩くように四郎達も歩き出した。
CASE 四郎
殴られるとは思わなかった。
ボスが近寄って来た瞬間に分かったが、避けては行けないと思い避けようとする体を抑え込んだ。
「四郎。痛い?」
モモが不安そうな顔をして俺の顔を見て来た。
「平気だからそんな顔すんな。」
「で、でも…。」
「はぁ…。気にすんな。」
長い廊下を歩いている間、モモは俺の手を離さなかった。
伊織が玄関の扉を開けボスを先に入れると、一郎が出迎えた。
「お疲れ様ですボス。すみません、二郎達を出迎えて貰ってしまって。」
「一郎、爺さんに連絡しろ。」
「え?どこか怪我でもされたんですか?ボス。」
一郎がそう言うと、ボスが一郎に耳打ちをした。
「分かりました。すぐに連絡します。」
スマホを手に取った一郎が電話を掛けていた。
「さ、モモちゃん。中へどうぞ。」
ボスがモモに話し掛けても、モモは返事をせずに俺の手をギュッと握った。
モモの表情を見ると、ボスの事を警戒しているのが分かる。
小さい時の七海を思い出した。
ボスが七海を連れて来た時の表情と同じだった。
俺を殴ったから警戒してんのか?
何かさっきもボスの事を睨んでたしな…。
「モモ。部屋に入るぞ。」
「うん。」
俺が言葉を投げ掛けるとモモは素直に従った。
リビングに入ると、五郎と七海が既に戻って来ていた。
「「ボス、お疲れ様です。」」
リビングに入って来たボスを見て、ソファーに座っていた2人は立ち上がり頭を下げた。
「2人共、ご苦労だったな。座れ。」
ボスに言われた通りに2人はソファーに腰を下ろした。
「ボス、15分後に到着するそうです。」
「分かった。四郎、顔貸せ。」
一郎と話した後にボスが俺に声を掛けた。
恐らくモモの鼻血の話だろう。
「分かりました。」
「どこ行くの?」
モモはそう言って俺を見つめた。
不安そうな顔をして俺のジャケットの袖を掴んだ。
「ボスと話があるからこの部屋を出るだけだ。」
「私も一緒に行きたい。」
「モモちゃん、四郎が戻って来るまで俺達といよ。」
そう言ったのは二郎だった。
「やだ。」
「や、やだ…?」
二郎の言葉にモモは即答で拒否した。
「分かった。リビングで話しをしよう。ごめんね、モモちゃん。」
ボスがそう言うとモモはホッとした表情を浮かべた。
「すいませんボス。」
「いや、俺の配慮が足りなかった。」
ボスは言葉を吐きながらソファーに座り込むと、伊織はボスの後ろに立った。
俺達もボスが座った後にソファーに腰を下ろした。
すると、モモは俺の隣ではなく膝の上に座った。
その光景を見た五郎と七海は驚いていた。
勿論、一郎や二郎達もだった。
「え、え?」
「どう言う事?」
「モモちゃん、四郎がお気に入りなんだよねー。」
戸惑う五郎と七海に声を掛けたのは三郎だった。
「話して貰おうか四郎。」
ボスはそう言いながら煙草を咥えると、伊織が素早く煙草に火を付けた。
「はい、俺がモモと最初に会った時に、目の前で人が自害しました。」
「自害した…だと?どう言う事だ?」
「俺にも分かりませんが…。モモの瞳、モモの言葉を聞いた後に自害しました。それは二郎も見ています。」
「二郎、四郎の言ってる通りなのか。」
ボスがそう言うと、二郎は短い返事をした。
「その後にモモは鼻血を出しました。本人が言うにはこの不可解な現象が起きた時に出すそうです。」
「それはJewelry Words(ジュエリーワード)の能力じゃろ。」
声のした方に視線を向けると、白髪頭の爺さんがリビングのドアを捻って現れた。
「遅かったな爺さん。」
「馬鹿野郎!!テメェ、何時だと思ってんだ!?夜中だぞ!?普通に寝ていたわ!」
「大きい声を出すな。モモちゃんが驚くだろ。」
ボスがそう言うと、爺さんは口を閉じモモを見つめた。
「この子がモモちゃんか。」
「そうだ。診てくれ。」
爺さんは持っていた鞄から診察をする為の道具を出していた。
この爺さんは、言わゆる闇医者だ。
俺達が怪我をした時に診てくれるのはこの爺さんだ。
診察料は結構高い。
「モモちゃん、ちょっと目を見せてくれるかなー?」
爺さんは優しい笑顔でモモに話し掛けた。
「四郎…。」
「俺も診て貰った事がある。」
「…むぅ。」
モモは小さな声を出した後、大人しく診察を受けていた。
「目が充血しておる。それと軽度の栄養失調を起こしておるな。鼻血を出したのは粘膜が傷付いて出してしまったのじゃろうな。」
「それで、さっき言った Jewelry Words って何だ。」
ボスがそう言うと、爺さんは聴診器を耳から外した。
「Jewelry Wordsと言うのは言葉の通り宝石言葉じゃよ。花言葉があるだじゃろ、言葉はそれと同じじゃが…。」
「同じだが?」
「Jewelry Pupilを持っている人間は、瞳の宝石の言葉の意味の能力を使える。モモちゃんの宝石、アパタイトの意味は"惑わす"、"誘惑"。」
「つまり、モモちゃんの言葉を聞いた奴等は惑わされるように自害した…。」
爺さんの言ってる事に理解が追いつかなかった。
何だ?
つまりはJewelry Pupilを持っている人間は不思議な能力を使えるって事なのか?
だが、俺が見た光景の説明はこの話を聞いて解決した。
「え、何?つまりは超能力的な?」
「それとは違うな。Jewelry Pupilを持つ人間、つまりはJewelry Pupilを繰り抜き持っている人間もまたその能力を使えるんじゃよ。」
三郎の問いに爺さんが答えた。
「そんな事ってあるの?だから、Jewelry Pupil を欲しがる連中が多いの?」
「まー、恐らくそうじゃろう。」
六郎の問いに爺さんは答えた。
「とりあえず、モモちゃんには目薬を処方しとくぞ。」
そう言って爺さんは鞄から目薬の入った袋と、日焼け止めを出した。
「これは普通の瞳ようじゃないぞ?Jewelry Pupil ようの目薬じゃ。」
「爺さん、そんなの作れんのか?」
「他にもいるんじゃよJewelry Pupil の患者がな。」
「え!?他のJewelry Pupil に会った事あるの!?」
爺さんと普通に話していた五郎だが、最後の言葉を聞いて驚いていた。
「そりゃ、そうじゃろ。ワシはJewelry Pupil 専門の医師じゃからな。」
これには俺も驚いた。
爺さんがまさかJewelry Pupilの医者だっとは、思わなかったからだ。
「雪哉、ワシはもう行くぞ。金は振り込んでおけよ。」
「分かってる。伊織、爺さんを玄関まで送ってやれ。」
「分かりました。」
「じゃあ、目薬と日焼け止めが切れたら連絡しろよ。」
そう言って、爺さんと伊織はリビングを出て行った。
「でもさー、俺達はモモちゃんの言葉を聞いても自害しないじゃん?それは何でだろうね。」
三郎の言葉を聞いた俺達は、ハッとした。
確かに、俺達は何で死んでないんだ?
モモと会話をしたり、目を合わせたりしているのに。
「私が死ねって思ってないから。」
「それは俺達に殺意を持ってないって事か?」
一郎がそう言ってモモに尋ねた。
「四郎が怖くないって言ったから思ってないよ。」
「ほ、ほぉ…。」
モモの言葉を聞いた七海は唖然としていた。
どうしてこんなに懐いてんだ?
俺に…。
「四郎。」
不意にボスが俺に声を掛けて来た。
「はい。」
「お前はモモちゃんと24時間共に行動しろ。」
「はい?」
「モモちゃんはお前に懐いている。その方が良いだろう。」
「ま、待って下さいよボス…。」
俺がそう言うと、ボスは腰を上げた。
「ここにいる全員に命令だ。モモの世話と護衛をしろ。死んでもこの子は守れ。」
あえてボスがモモと呼び捨てにしたのは、俺達に命令する為だろう。
Jewelry Pupilを守れと言う事で合ってるのだろうか。
俺達はボスの命令は絶対だ。
だからどんな命令でも俺達は従わなくちゃいけない。
だけど、何で俺がモモと24時間いないといけないんだよ。
「「「了解です、ボス。」」」
俺達はそう、返事をするしかなった。
膝の上にいるモモは嬉しそうに俺の顔を見ていた。
俺は深い溜め息を吐くしかなかった。
俺とモモの24時間生活がスタートしたのだった。
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