8 / 82
第1章 少女の価値
7.任務完了
しおりを挟む
CASE 四郎
モモを抱えながら、会場の出入り口に向かって走った。
タタタタタタタッ!!
「しっかし、四郎が女の子を抱っこしてる姿は見慣れないなー。」
パシュッ、パシュッ!!
二郎はFive-seveNを構え、次々に兵頭会と敵対している人間を撃っていた。
「うるせーな。二郎はしっかり俺のサポートしろよ。」
「はいはい。お姫様もいる事だしね。」
そう言って、二郎は俺の腕の中にいるモモに向かってウィンクをした。
タタタタタタタッ!!!
「おい!!商品を持ち出した奴等がいるぞ!!!」
「Jewelry Pupilを返せ!!」
闇市場側の人、数名が俺と二郎に銃口を向けた。
やっぱ、1階は人でごった返してるか。
いざ、1階に降りてみれば一般客と闇市場側の奴等に、兵頭会と敵対してる連中で溢れかえっていた。
銃を向けている連中を無視して走る事も出来ねーし。
「嘘!!あれって、今回の目玉商品じゃない!?」
「Jewelry Pupilをこっちに渡せ!!!」
「大金を払わずに済むじゃないか!!私が先だ!!」
モモに気が付いた客達は俺と二郎に群がろうとしていた。
「この数じゃ、弾も当たりにくいなっ。ライフル銃とか持ってこれば良かったなっ…。」
ブジャァァァァ!!!
人の群れが出来ている後ろから血飛沫が飛んだ。
「ギャァァァァァ!!!」
「いやぁぁぁぁあ!!!」
「や、やめろ!!ギャァァァァァ!!!」
叫び声がフロアに響いた。
その声を聞いた人達は一斉に出口に向かい始めた。
すると、顔までベールを被っていたモモがスッとベール上げた。
そして、小さな口を開けた。
「邪魔。」
モモがそう言うと、俺と二郎の前にいる数十人の闇市場側の人達が持っていた銃で自ら頭を撃った。
パァァァァン!!!
ブジャァァァァ!!!
モモが目を合わせ言葉を放った瞬間、また目の前で人が死んだ。
これを見た二郎は、冷や汗を流していた。
「は、は?う、うそ…でしょ?」
「だから、俺が言った通りだろ。」
「い、いや、だって…。そんな超能力みたいな事ある?」
ポタッ。
手の甲に何かが垂れた感触がした。
「モモちゃん?!だ、大丈夫!?」
二郎がモモの顔を見て慌て出した。
俺もモモの顔に視線を向けると、モモの鼻から血が出ていた。
手の甲に落ちて来たのはモモの血だったようだ。
「お、おい。鼻血…、出てるぞ。」
「大丈夫。いつもの事。」
俺の問いに答えたモモは、平然としたまま手で鼻血を拭った。
「いつもの事って、病気かなんかか?」
「違う。たまにこうなるの。」
「たまに?」
「うん。」
たまにって…。
ブブッ。
考え事をしていると、インカムが振動した。
「こちら、一郎。四郎、二郎達とは合流したのか。」
インカムから一郎の声が聞こえて来た。
「こちら、二郎。四郎とモモちゃんとは俺が先に合流したよ。三郎達とはまだ合流出来てないけど、一
般客が多すぎて外に出れないんだよね。」
俺の代わりに二郎が一郎に答えていた。
タタタタタタタッ。
後ろから2人分の足音が聞こえた。
この足音は俺の知っている人物達のモノだった。
「お疲れー、四郎。」
後ろから現れたのは血塗れの三郎と六郎だった。
どうやら後ろから聞こえて来た叫び声は、三郎と六郎が何かしていたのだろう。
2人の手には金属バットと愛銃が握られていた。
「この人達だれ?」
モモが不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込んだ。
「俺の同僚。」
「あ、この子がモモちゃん?うわっ、可愛いー。」
「本当、お人形みたい。」
三郎と六郎がモモの顔を見て言葉を放った。
「真っ白ー。羨ましい…。」
「六郎だって、肌白いだろ。」
俺がそう答えと、六郎は照れ臭くさそうに頬を掻いた。
その光景を見たモモは俺のワイシャツをグイッと掴んだ。
「何だよ。」
「別に。」
ギュウッ。
モモはそう言って、俺にしがみ付いた。
何なんだよ…。
このガキの考えてる事が分かんねーな…。
「え、あー分かった。うん、了解。」
二郎はそう言って、俺達の方に振り返った。
「ボスからの命令だよ。さっさとこのフロアから出て来いって、5分後に逃亡用の車が来るって。」
「一郎達は?もう、ここから離れたの?」
六郎はそう言って、二郎に尋ねた。
「勿論。ボスを危険な目に遭わせられないからね。急いでここを出るよ。」
「「「了解。」」」
俺達は出入り口に向かって走り出した。
モモに手を出そうとする一般客の頭を撃ち抜きながら、人の波を乱暴に掻き分けた。
パシュッ、パシュッ。
ゴンッ!!
バキッ!!
二郎達は俺のサポートをするように前後に分かれて走っていた。
出入り口に出ると、黒いナンバープレートが貼られていない車が俺達の前に停車した。
俺達は急いで車に乗り込もうとすると、闇市場側の人達が追い掛けて来た。
ブジャ!!
ブシャッ、ブシャッ!!
闇市場側の人達は次々に、倒れて行った。
ビルの屋上ー
パシュッ、パシュッ、パシュッ。
五郎はARES MS700スナイパーライフルBKフルセットのライフルスコープを見ながら引き金を引いていた。
「右、左、斜め45°。」
望遠鏡を見ながら七海は五郎に簡単な指示をした。
難しい言葉を並べても、五郎が理解しないと分かっている七海だからこそ出来る指示だ。
七海は、距離と風上、を計算しながら五郎に指示をした。
五郎は七海の指示通りに引き金を引いた。
四郎達に近寄ろうとする人達の頭を次々に撃ち抜いた。
「次、右からも来るよ。」
「了解。」
パシュッ、パシュッ、パシュッ。
四郎達が車に乗り込んだ事を確認し、四郎達の乗った車を追い掛けるように走り出した車のタイヤに向かって何発が銃弾を放った。
キィィィ!!!
パァァァァン!!!
タイヤの破裂音が夜の静かさの中ではとても目立った。
車から出た黒い煙が夜空に吸い込まれて行く。
望遠鏡から目を離した七海は、五郎の肩を叩いた。
「お疲れ。」
七海の声を聞いた五郎はライフルスコープから視線を外した。
「お疲れ。七海の指示はやり易いから助かるわ。」
「そりゃ、どうも。」
七海はそう言って、パソコンに視線を移した。
「お前を時々15歳じゃなく感じるわ。」
Hero Of Justiceのメンバーの中で、七海だけが未成年である。
だが、未成年とは思わせない程の頭脳を持つ七海は四郎達や兵頭雪哉から高く評価を受けている。
「三郎達を見ていたスナイパーがいなくなった。」
「お前、どうやって三郎達の事を見てたんだよ。」
キュルル…。
五郎がそう言うと、空からドローンが飛んで来た。
「ドローンで見てたんだよ。」
「ど、どうやって同時に操作してたんだよ?!」
「スマホだよ、スマホ。簡単に出来るようにアプリを作ったんだよ。」
「は、はぁ…。」
「僕達以外の殺し屋だと思うけど…。一応は頭に入れといた方が良いだろうね。」
ブブッ。
五郎と七海のインカムが振動した。
「こちら一郎。お疲れ様、2人共ここから離脱してくれて構わないとボスが言っている。」
「了解。すぐ出るよ。」
「すぐにアジトに戻ってくるように。」
「分かってるよ。」
五郎がそう言うと、インカムが切れた。
「じゃ、さっさと離れよ。早く片付けてよ。」
「今、片付けてんだろ。」
五郎は手際良くARES MS700スナイパーライフルを鞄の中に閉まった。
CASE 四郎
「何とかなりましたね。」
黒いサングラスを掛けたスキンヘッドの男が俺達に話し掛けて来た。
兵頭会の組員の"星影(ほしかげ)と言う男だ。
時々、こうやって俺達を迎えをしてくれる。
言わば俺達の仕事の手伝いをするグループの頭をやってる男。
「星影さん、助かりました。タイミングバッチリですね。」
助手席に座った二郎が運転している星影に話し掛けた。
「えぇ。頭の言った通りに動いただけですから。」
二郎と星影が話してる中、俺は被っていたウィッグを外すすと、モモが髪を触った。
「頭、水色。」
「あ?あー、こっちが本当の髪。」
モモは俺の膝の上に座り髪を触りまくる。
何故、俺の側から離れないのだろうか。
「え、何?モモちゃんに懐かれてんの四郎。」
「理由は聞くなよ。俺にも分かんねーんだから。」
「四郎の事、お気に入りなんだねー?モモちゃん。」
「…。」
モモは三郎の言葉には反応をしなかった。
「ありゃ。」
三郎はモモの反応を見て、話し掛けなくなった。
「星影さん、助かりました。タイミングバッチリですね。」
「えぇ。頭の言った通りに動いただけですから。」
「ボスはよく頭が回りますね。念の為に遠回りして行きますね。」
星影はそう言って、車を走らせた。
闇市場側の人達が追っ掛けて来る可能性はあるし。
星影の判断は正しいか。
「どこに行くの?」
「俺達の家。」
「四郎のお家?」
「そうそう。」
「四郎のお家は冷たくない?」
「冷たい?冷たくはねーな。それに中々の広さもあるな。」
俺がそう答えると、モモは質問攻めして来た。
「本当に四郎の言葉しか返さないのねこの子。」
六郎はそう言って、モモを見つめた。
「おい。」
「モモ。」
「あ?」
「モモって呼んで。おいじゃない。」
モモは言葉を放った後、ジッと俺の顔を見て来た。
「分かったよ。モモ、コイツ等の事は無視すんな。モモの敵じゃないし、俺の仲間だから。」
「仲間…。分かった。」
「なら、良い。」
「頭、撫でて。」
「は?」
「言う事、聞くから頭。」
モモはそう言って、俺の手を自分の頭に置いた。
俺は小さく溜め息を吐いた後、モモの頭を優しく撫でた。
その光景を見た俺を除いたこの車に乗っている全員が驚いた顔をした。
「え、えー…。」
三郎の声が小さくなった。
「マジで、四郎に懐き過ぎじゃない?」
「初めて会った時からこうだったぞ六郎。」
「え、えー…。」
「あははは!!おもろー。」
戸惑っている2人を他所に、二郎はケラケラと笑っていた。
「任務が無事に終わって良かったですね。」
星影は俺の顔を一瞬だけ見てそう呟いた。
とくにかく、無事に任務完了。
この時の俺はまだ知らずにいた。
モモを無事に奪還出来たのはアイツの手のひらの上だった事。
そして、これから起きる大きな抗争の鍵になっていた事に知らずにいたんだ。
モモを抱えながら、会場の出入り口に向かって走った。
タタタタタタタッ!!
「しっかし、四郎が女の子を抱っこしてる姿は見慣れないなー。」
パシュッ、パシュッ!!
二郎はFive-seveNを構え、次々に兵頭会と敵対している人間を撃っていた。
「うるせーな。二郎はしっかり俺のサポートしろよ。」
「はいはい。お姫様もいる事だしね。」
そう言って、二郎は俺の腕の中にいるモモに向かってウィンクをした。
タタタタタタタッ!!!
「おい!!商品を持ち出した奴等がいるぞ!!!」
「Jewelry Pupilを返せ!!」
闇市場側の人、数名が俺と二郎に銃口を向けた。
やっぱ、1階は人でごった返してるか。
いざ、1階に降りてみれば一般客と闇市場側の奴等に、兵頭会と敵対してる連中で溢れかえっていた。
銃を向けている連中を無視して走る事も出来ねーし。
「嘘!!あれって、今回の目玉商品じゃない!?」
「Jewelry Pupilをこっちに渡せ!!!」
「大金を払わずに済むじゃないか!!私が先だ!!」
モモに気が付いた客達は俺と二郎に群がろうとしていた。
「この数じゃ、弾も当たりにくいなっ。ライフル銃とか持ってこれば良かったなっ…。」
ブジャァァァァ!!!
人の群れが出来ている後ろから血飛沫が飛んだ。
「ギャァァァァァ!!!」
「いやぁぁぁぁあ!!!」
「や、やめろ!!ギャァァァァァ!!!」
叫び声がフロアに響いた。
その声を聞いた人達は一斉に出口に向かい始めた。
すると、顔までベールを被っていたモモがスッとベール上げた。
そして、小さな口を開けた。
「邪魔。」
モモがそう言うと、俺と二郎の前にいる数十人の闇市場側の人達が持っていた銃で自ら頭を撃った。
パァァァァン!!!
ブジャァァァァ!!!
モモが目を合わせ言葉を放った瞬間、また目の前で人が死んだ。
これを見た二郎は、冷や汗を流していた。
「は、は?う、うそ…でしょ?」
「だから、俺が言った通りだろ。」
「い、いや、だって…。そんな超能力みたいな事ある?」
ポタッ。
手の甲に何かが垂れた感触がした。
「モモちゃん?!だ、大丈夫!?」
二郎がモモの顔を見て慌て出した。
俺もモモの顔に視線を向けると、モモの鼻から血が出ていた。
手の甲に落ちて来たのはモモの血だったようだ。
「お、おい。鼻血…、出てるぞ。」
「大丈夫。いつもの事。」
俺の問いに答えたモモは、平然としたまま手で鼻血を拭った。
「いつもの事って、病気かなんかか?」
「違う。たまにこうなるの。」
「たまに?」
「うん。」
たまにって…。
ブブッ。
考え事をしていると、インカムが振動した。
「こちら、一郎。四郎、二郎達とは合流したのか。」
インカムから一郎の声が聞こえて来た。
「こちら、二郎。四郎とモモちゃんとは俺が先に合流したよ。三郎達とはまだ合流出来てないけど、一
般客が多すぎて外に出れないんだよね。」
俺の代わりに二郎が一郎に答えていた。
タタタタタタタッ。
後ろから2人分の足音が聞こえた。
この足音は俺の知っている人物達のモノだった。
「お疲れー、四郎。」
後ろから現れたのは血塗れの三郎と六郎だった。
どうやら後ろから聞こえて来た叫び声は、三郎と六郎が何かしていたのだろう。
2人の手には金属バットと愛銃が握られていた。
「この人達だれ?」
モモが不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込んだ。
「俺の同僚。」
「あ、この子がモモちゃん?うわっ、可愛いー。」
「本当、お人形みたい。」
三郎と六郎がモモの顔を見て言葉を放った。
「真っ白ー。羨ましい…。」
「六郎だって、肌白いだろ。」
俺がそう答えと、六郎は照れ臭くさそうに頬を掻いた。
その光景を見たモモは俺のワイシャツをグイッと掴んだ。
「何だよ。」
「別に。」
ギュウッ。
モモはそう言って、俺にしがみ付いた。
何なんだよ…。
このガキの考えてる事が分かんねーな…。
「え、あー分かった。うん、了解。」
二郎はそう言って、俺達の方に振り返った。
「ボスからの命令だよ。さっさとこのフロアから出て来いって、5分後に逃亡用の車が来るって。」
「一郎達は?もう、ここから離れたの?」
六郎はそう言って、二郎に尋ねた。
「勿論。ボスを危険な目に遭わせられないからね。急いでここを出るよ。」
「「「了解。」」」
俺達は出入り口に向かって走り出した。
モモに手を出そうとする一般客の頭を撃ち抜きながら、人の波を乱暴に掻き分けた。
パシュッ、パシュッ。
ゴンッ!!
バキッ!!
二郎達は俺のサポートをするように前後に分かれて走っていた。
出入り口に出ると、黒いナンバープレートが貼られていない車が俺達の前に停車した。
俺達は急いで車に乗り込もうとすると、闇市場側の人達が追い掛けて来た。
ブジャ!!
ブシャッ、ブシャッ!!
闇市場側の人達は次々に、倒れて行った。
ビルの屋上ー
パシュッ、パシュッ、パシュッ。
五郎はARES MS700スナイパーライフルBKフルセットのライフルスコープを見ながら引き金を引いていた。
「右、左、斜め45°。」
望遠鏡を見ながら七海は五郎に簡単な指示をした。
難しい言葉を並べても、五郎が理解しないと分かっている七海だからこそ出来る指示だ。
七海は、距離と風上、を計算しながら五郎に指示をした。
五郎は七海の指示通りに引き金を引いた。
四郎達に近寄ろうとする人達の頭を次々に撃ち抜いた。
「次、右からも来るよ。」
「了解。」
パシュッ、パシュッ、パシュッ。
四郎達が車に乗り込んだ事を確認し、四郎達の乗った車を追い掛けるように走り出した車のタイヤに向かって何発が銃弾を放った。
キィィィ!!!
パァァァァン!!!
タイヤの破裂音が夜の静かさの中ではとても目立った。
車から出た黒い煙が夜空に吸い込まれて行く。
望遠鏡から目を離した七海は、五郎の肩を叩いた。
「お疲れ。」
七海の声を聞いた五郎はライフルスコープから視線を外した。
「お疲れ。七海の指示はやり易いから助かるわ。」
「そりゃ、どうも。」
七海はそう言って、パソコンに視線を移した。
「お前を時々15歳じゃなく感じるわ。」
Hero Of Justiceのメンバーの中で、七海だけが未成年である。
だが、未成年とは思わせない程の頭脳を持つ七海は四郎達や兵頭雪哉から高く評価を受けている。
「三郎達を見ていたスナイパーがいなくなった。」
「お前、どうやって三郎達の事を見てたんだよ。」
キュルル…。
五郎がそう言うと、空からドローンが飛んで来た。
「ドローンで見てたんだよ。」
「ど、どうやって同時に操作してたんだよ?!」
「スマホだよ、スマホ。簡単に出来るようにアプリを作ったんだよ。」
「は、はぁ…。」
「僕達以外の殺し屋だと思うけど…。一応は頭に入れといた方が良いだろうね。」
ブブッ。
五郎と七海のインカムが振動した。
「こちら一郎。お疲れ様、2人共ここから離脱してくれて構わないとボスが言っている。」
「了解。すぐ出るよ。」
「すぐにアジトに戻ってくるように。」
「分かってるよ。」
五郎がそう言うと、インカムが切れた。
「じゃ、さっさと離れよ。早く片付けてよ。」
「今、片付けてんだろ。」
五郎は手際良くARES MS700スナイパーライフルを鞄の中に閉まった。
CASE 四郎
「何とかなりましたね。」
黒いサングラスを掛けたスキンヘッドの男が俺達に話し掛けて来た。
兵頭会の組員の"星影(ほしかげ)と言う男だ。
時々、こうやって俺達を迎えをしてくれる。
言わば俺達の仕事の手伝いをするグループの頭をやってる男。
「星影さん、助かりました。タイミングバッチリですね。」
助手席に座った二郎が運転している星影に話し掛けた。
「えぇ。頭の言った通りに動いただけですから。」
二郎と星影が話してる中、俺は被っていたウィッグを外すすと、モモが髪を触った。
「頭、水色。」
「あ?あー、こっちが本当の髪。」
モモは俺の膝の上に座り髪を触りまくる。
何故、俺の側から離れないのだろうか。
「え、何?モモちゃんに懐かれてんの四郎。」
「理由は聞くなよ。俺にも分かんねーんだから。」
「四郎の事、お気に入りなんだねー?モモちゃん。」
「…。」
モモは三郎の言葉には反応をしなかった。
「ありゃ。」
三郎はモモの反応を見て、話し掛けなくなった。
「星影さん、助かりました。タイミングバッチリですね。」
「えぇ。頭の言った通りに動いただけですから。」
「ボスはよく頭が回りますね。念の為に遠回りして行きますね。」
星影はそう言って、車を走らせた。
闇市場側の人達が追っ掛けて来る可能性はあるし。
星影の判断は正しいか。
「どこに行くの?」
「俺達の家。」
「四郎のお家?」
「そうそう。」
「四郎のお家は冷たくない?」
「冷たい?冷たくはねーな。それに中々の広さもあるな。」
俺がそう答えると、モモは質問攻めして来た。
「本当に四郎の言葉しか返さないのねこの子。」
六郎はそう言って、モモを見つめた。
「おい。」
「モモ。」
「あ?」
「モモって呼んで。おいじゃない。」
モモは言葉を放った後、ジッと俺の顔を見て来た。
「分かったよ。モモ、コイツ等の事は無視すんな。モモの敵じゃないし、俺の仲間だから。」
「仲間…。分かった。」
「なら、良い。」
「頭、撫でて。」
「は?」
「言う事、聞くから頭。」
モモはそう言って、俺の手を自分の頭に置いた。
俺は小さく溜め息を吐いた後、モモの頭を優しく撫でた。
その光景を見た俺を除いたこの車に乗っている全員が驚いた顔をした。
「え、えー…。」
三郎の声が小さくなった。
「マジで、四郎に懐き過ぎじゃない?」
「初めて会った時からこうだったぞ六郎。」
「え、えー…。」
「あははは!!おもろー。」
戸惑っている2人を他所に、二郎はケラケラと笑っていた。
「任務が無事に終わって良かったですね。」
星影は俺の顔を一瞬だけ見てそう呟いた。
とくにかく、無事に任務完了。
この時の俺はまだ知らずにいた。
モモを無事に奪還出来たのはアイツの手のひらの上だった事。
そして、これから起きる大きな抗争の鍵になっていた事に知らずにいたんだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる