Alice Zero

百はな

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第3章 Black Princess

仮面の男 I

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翌日、ロイドの家にジャック達が訪れた。

リビングにはアリス殺しの犯人を見つけるメンバーが揃った。

ボクはジャックやミハイル、エースにアリスの噂の事、そしてピンク街での事を話した。

「う、嘘だろ?アリスがそんな事を?」

エースは顔を真っ青にしながら呟いた。

「すまないがそうらしい。」

「ゼロちゃんが謝る事じゃないよ。女王がアリスの事を調べていた事の説明がついたよ。」

そう言ったミハイルは冷静な態度だった。

ジャックはと言うと…。

ボクは恐る恐るジャックに視線を向けた。

顔面蒼白と言う言葉が似合う顔色をしていた。

ジャックの姿を見て心苦しい。

「ジャック…大丈夫か?」

ボクはジャックの背中を摩りながら尋ねた。

「悪い…。吐きそう。」

「悪い少し席を外す、行こうジャック。」

力ないジャックを立たせトイレへ連れて行った。

「ほら、水だ。飲めるか?」

「わ、悪い。」

「大丈夫だ。ボクは出てるからゆっくり出て来い。」

そう言ってボクはトイレの中にいるジャックに水を渡し扉を閉めた。

ジャックが鼻を啜る音がした。

もしかしたら泣いているのかもしれない。

自分の恋人が男遊びにDragの売買をしていると普通は思わないだろう。

15分くらいでジャックはトイレから出て来た。

「ゼロ悪いな話の途中に…。」

「大丈夫だ。それよりもさっきから謝り過ぎだ。」

「あ、あぁ…。」

こんな弱々しいジャックを見るのはこの世界に来て初めてだ。

どうにかして覇気を取り戻してやりたい。

「行こうゼロ。話の続きをしよう。」

「あ、あぁ。」

ボクとジャックはリビングに戻った。

「顔色が悪いが大丈夫かジャック。」

「あぁ…なんとか。」

ロイドが心配してジャックに話しかけた。

「ロイドは平気なの?こんな話…。」

エースがロイドに尋ねた。

「最初は信じられなかったよ。ゼロの集めた情報を聞きたくないって気持ちの方が大きかった。だけど、真実を知りたいと思ったんだ。」

そうだったのか…。

「でも、ゼロちゃんの世界でも起きていた十字架事件の事も気になるな。」

「その件についてはもう少し待って欲しいんだ。情報が集まり次第また話す。」

ボクはミハイルに軽く説明した。

「了解。」

「Edenのメンバーはまだ見つからないの?」

CATがジャックに尋ねた。

「Edenのメンバーどころかアジトも見つかっていない。足取りが掴めないままだ。」

「え?2年もその状態なの?」

「Trick Cardの能力のせいかもしれない。証拠や痕跡を消す能力があってもおかしくない。」

「Trick Cardが面倒な能力だと実感するな。」

CATとジャックは険しい顔をしながら話していた。

「ダムとディと言う双子はEdenのメンバーだと思うぞ。」

ボクが2人の会話に入りそう言うと皆んなギョッとしていた。

「本当なのゼロ!?」

エースが前のめりになってボクに尋ねてきた。

「恐らくな。ボク達を襲撃して来た時に何度かEdenと言う言葉を聞いたし、こっちの団に入って
正解と言っていたから間違いない。双子を迎えに来た仮面の男もEdenのメンバーだろうな。」

ボクはそう言って煙草を咥えた。

「アリスの死はもしかしたらEdenと関係しているのかもしれないとボクは思っている。十字架事件もアリスに全く関係がないとは言えないだろうな。」

「つまりゼロが言いたいのは俺が調べたアリス殺しの容疑者達は関係ないって事か?」

ロイドがそう言ってボクに尋ねてきた。

「帽子屋とインディバーは抜いて大丈夫だ。マリーシャとマレフィレスは1回ボク自身がコンタクトを取った方がいいかもしれないな。ズゥーと言う奴も殺すようなタイプには見えないしな。」

帽子屋とインディバーがNight'sに所属している事は伏せておいた。

「それだけ絞れたら探しやすいね。ディとダムと接触し、Edenの事を聞き出せたら良いんだけどな。」

そう言ってエースは両腕を組んだ。

ディとダムに接触するのはかなり危険だが…。

Edenに繋がる手がかりは入手出来る。

アリスはどうやって殺されたのだろう。

十字架事件のような殺され方をされたのだろうか…。

殺され方が分かればEdenの誰かが殺したのか。

それともマリーシャかマレフィレスが殺したのか。

どっちかに絞れるはずだが…。

「アリスの殺され方はどんな風だったんだ?」
ボクは皆んなに尋ねた。

重い空気の中、最初に口を開いたのはジャックだった。

「バラバラにされていた。まるで壊れた人形みたいに。赤い血が薔薇の花びらのように飛び散っていた。」

ジャックの手が震えていた。

「そうか…。場所は?」

「ジャックとアリスが育った教会だった。」

そう答えたのはミハイルだった。

「教会でバラバラになったアリスを見つけた…と。」

「あぁ。思い出したくもねぇよ。」

「悪い。嫌な思いをさせてしまったな。」

「いや、いずれこう言う話をしないといけない日があるだろうと思っていたから…。それがたまたま今日だっただけだ。」

ボクはジャックの為に探してやりたいと思った。

ジャックがどんな思いでアリスを殺した犯人を探しているのかは分からない。

だけど、ボクはジャックの相棒なんだから何とかしてやりたい。

「今日はここまでにしようか。これ以上はジャックの気力が持たないよ。」

そう言ってミハイルがジャックに近付いた。

「そうだな、3人とも今日は帰れ。俺達もEdenについて調査してみるから。」

「ありがとうロイド。ジャック、ミハイル今日は帰ろ。」

エースがロイドにお礼を言いジャックとミハイルをリビングから出した。

ボクはジャック達を玄関まで見送った。

何も言葉をかけなかった。

むしろ何を言っても今のジャックの耳に入らないと思ったからだ。

静かに閉まる玄関の扉をただ、見つめる事しか出来なかった。


ジャックside

信じられなかった。

アリスが本当に俺以外の男とキスをしたり肌を重ね合っていたのか?

ゼロの事を疑っている訳じゃない。

アリスの噂が本当なのか調べる為にピンク街に足を運んでくれた。

俺の見ていたアリスは嘘だったと信じたくなかった。

2年前の俺は十字架事件の捜査に駆り出されアリスと過ごせる時間が殆どなかった。

だから、落ち着くまではアリスに思いを告げる事をしなかった。

俺とアリスの空白の2年間だった。

俺の知らないアリスの2年間。

この2年で何があったのか。

ミハイルとエースが俺に話しかけていたみたいだが、耳に入って来なかった。

どうやって自分の家に着いたか分からなかった。

ただ、ただ、早くベットに寝転がりたかった。

何も考えずにベットに寝転がった。

静かに瞼を閉じた。

「ん…?俺…寝てたのか。」

いつの間にか眠っていたらしく明るかった空が暗くなっていた。

「おはようジャック。いい夢は見れたかな?」
「っ!?」

機械音声みたいな声が聞こえた。

「誰だテメェ。」

カチャッ。

俺は枕元に置いてあった銃を構えた。

部屋が暗いせいか、相手の顔が見えなかった。

「ジャックの知らないアリスを知る者。」

男がそう言うと部屋の中が月の光に照らされた。

照らされた男は仮面をしていた。

あの銃撃戦のあった日に会った男だった。

「お前は!?」

「僕をご存知で。」

「白々しい態度すんな。双子を迎えに来たのお前だろ。」

「おやおや、見られていましたか。」

仮面の男の態度に腹が立ってくる。

「俺の知らないアリスってなんだよ。」

「言葉のままですよ。」

「答えになってねぇだろ!!」

俺がそう言うと仮面の男が近付いて来た。

俺は反射的に銃弾を放ったが、仮面の男には当たらず銃を奪われた。

「なっ、。」

「アリスと瓜二つの少女を殺しなさい。」

仮面の男は俺の耳元で悪魔の囁きをした。
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