Alice Zero

百はな

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第3章 Black Princess

十字架事件 I

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ボク達はそのままピンク街にいるミハイル達と合流すべくピンク街に向かっていた。

ロイドの車はなんとか無事だったのでボクとCATは車に乗り込み、ジャックはバイクでロイドの車の後ろを走っていた。

「本当にあの双子は何だったんだよ…。」

ロイドはそう言って煙草に火を付けた。

双子の狙いは…ボクと接触する事?

それとも…もっと他にあるのだろうか。

ピンク街に現れたのもたまたま?

あの双子は何かの団に入っているのは確かだ。

双子は"Eden"って言っていたけど…。

Eden…、意味は楽園だが…。

分からない。

「ゼロ、ゼロ?大丈夫?」

CATが不安そうな顔をしてボクの顔を覗き込んで来た。

「あ、えっと…少し考え事をしていた。大丈夫だ。」

「そっか…。考え事って?」

ボクはクラブで聞いた話を2人にした。

Dragの事、そしてそのDragをアリスが男と売買していた事を。

「嘘だろ…アリスがそんな事を?」

ロイドの声が震えていた。

「成る程ね。アリスはロイドの目を盗んでピンク街に行きクラブで男遊びをしながらDragを売買してたって事か。」

「お、おい!!CAT、もう少しオブラートに…。」

ボクは慌ててCATの口を塞いだ。

またロイドが取り乱しかねないからな…。

CATの奴め、もう少し気を利かせて欲しいモノだな。

ボクは恐る恐るロイドを背中を見つめた。

するとロイドは取り乱す様子もなく黙々とハンドルを動かしていた。

あ、あれ?

大丈夫そう?

「ロイド平気か?」

ボクがそう言うとロイドの口がゆっくりと開いた。

「本当は…、アリスの行動に違和感を感じていた事があったんだ。」

「「えっ!?」」

ボクとCATの声が合わさった。

「じゃあ、ロイドはアリスに違和感を感じてたって
事なの?いつからそう思ってたんだよ。」

CATがロイドに尋ねた。

「アリスが夜中に家を出て行く所を何度か目撃した事があったし、フードを被った男がアリスの事を迎えに来ていた。」

「え、マジ?その男がジャックだった可能性とかないの?だってアリスと付き合ってたじゃん。」

チクッ。

心臓に針をチクチク刺されてる感覚がした。

ボクは優しく自分の胸に手を当てた。

「その頃はジャックとアリスは会ってなかったよ。ハートの騎士団が忙しい時期だった。後は体格からしてジャックじゃなかったな。フードの男はジャックよりも身長が少し低かった。」

「ハートの騎士団が忙しかった時…。あー、あの事件の時か。」

「ん?事件って何だCAT。」

ボクはロイドとCATの会話に参加した。

「あのね、アリスが殺される2年前にアリスぐらいの歳の女の子が大きな十字架に両手足を釘で刺されて殺されたんだよね。それも1回だけじゃなくてもう数十人の女の子が殺されてるの。」

ボクはCATの説明を聞いた。

「詳しい話はジャックとミハイルに聞いたら良い。もうすぐピンク街に着くぞ。」

ロイドはそう言って少しスピードを上げた。

十字架に両手足を釘に刺されて殺された…。

どこかで聞いた事がある事件だ。

どこで聞いた?

初めて聞いた感じがしない。

どこで聞いたのか思い出せない。

考え込んでいるとあっという間にピンク街に到着した。

ピンク街の入り口はハートの騎士団が封鎖して、入り口には沢山のギャラリーが集まっていた。

ロイドが車を止めたのでボク達も車から降りた。
「おーい!!」

ミハイルが人を掻き分けながらボク達の方に向かって来た。

「遅かったけど何かあったのジャック。」

「あぁ。ディとダムにロイド達が銃撃を受けていたから加勢してた。」

「はぁ!?え、大丈夫だったの…?」

ミハイルがそう言うとジャックがボクの肩を掴んだ。

「ゼロが撃退したから。」

トクンットクンッ!!

「え!?そ、そうだったの!?ってお前、名前言っちゃって良いの?」

「大丈夫だろ。今のゼロの格好はアリスじゃねーし。な?」

ジャックはそう言ってボクの顔を覗き込んで来た。

トクンットクンットクンッ。

心臓が跳ね上がった。

耳の後ろがジワジワと暑くなってるのが分かる。

ジャックの赤い瞳がボクを写している。

苺みたいに真っ赤な瞳に吸い込まれそうだ。

「ん?どうしたゼロ?」

ジャックに名前を呼ばれるとボクの心臓がおかしい。

何で?

何で、ジャックに名前を呼ばれただけでこんなに胸が苦しいんだ。

「い、いや何でもない。それより近い。」

そう言ってジャックの頬をペチンッと軽く叩いた。

「ロイドとCATが睨んでるぞー。そろそろ離れた方が良いと思うよ?」

ミハイルの言葉を聞いたジャックがロイドとCATの

顔を交互に見てからボクの肩から手を話した。

あ…。

ジャックの手が離れちゃった。

その代わりにCATがボクの腕を自分の腕と絡めさせていた。

ロイドもスッとボクとジャックの間に立った。

この状況は何?

「ップ!!ゼロちゃんの騎士は怖いねー。」

「ジャック!!ミハイル!!」

耳を揺らしながらエースがこっちに走って来た。

ピンク街にアリス殺しを探しているメンバーが集結した。

「エース?どうしてここに?」

「え?ゼロ達がどうしてここに…。」

ボクがエースに尋ねると質問返しされてしまった。

「ゼロ達はディとダムと銃撃戦をしてたんだよ。」

ボクの代わりにジャックが答えた。

「え!?大丈夫なの?」

「あぁ、何とかな。エースはどうしてピンク街に?」

「あー。ゼロには言ってなかったけど、僕ハートの騎士団に入ってるんだよね。」

「え。」

エースがハートの騎士団に入っていたのか?

今日のエースの服装はハートの騎士団の制服を着ていた。

やはりエースはハートの騎士団に所属しているようだな。

「エース。殺害された女性の死体は?」

「うん。大きな十字架に両手足を釘に刺されて殺された。」

エースとジャックの会話に耳を疑った。

「十字架事件ってロイドがボクに話してくれた事件だよな?」

ボクはロイドに尋ねた。

「あぁ。あの事件の犯人は捕まっていない。ゼロが来る数ヶ月前で十字架事件の騒動はピタッと止まったんだが…。」

「まさか、また十字架事件が起きるなんて。」

ロイドとCATが真剣な顔付きになった。

数ヶ月前までは何も音沙汰がなかったって事か。

数ヶ月前…。

「あ。」

「どうしたゼロ?」

ジャックが不思議そうな顔をしてボクを見て来た。
思わず声が出ていた事に気付かなかった。

数ヶ月前、ボクのいた世界。

つまりロシアの教会で似たような事件が起きていた。

ロイドから聞いた被害者の女性も教会で死んでいた女性と一致する。

「十字架事件…。ボクのいた世界にも起きていた。」

そう言うとボクの周りにいたジャック達は驚いた顔をした。

「いや、この世界の十字架事件と関係しているか分からないから気にしないでくれ。」

「ゼロの世界でも十字架事件があったの?」
CATがボクに尋ねて来た。

「あぁ。被害者の女性の特徴も殺され方も同じ。」

「ちょっと待て。もっと詳し…。」

「ジャック団長!!ミハイル副団長!!」

ジャックの言葉を遮るようにハートの騎士団数名がジャックに近付いた。

「時間切れだねジャック。」

溜め息を吐きながらミハイルは呟いた。

「ジャック団長のお知り合いですか?」

ハートの騎士団数名がボク達を見てきた。

「事情聴取を取ってた。それよりどうした?」

「そうでしたかすみません。死体現場にジャック団長達をお連れしろとの事で。」

「分かった。すぐに行くから先に行ってろ。」

ジャックがそう言うと敬礼をし走って行った。

「悪い俺達そろそろ行かねーと。明日ロイドの家で
ゼロの話を聞きたい。」

「分かった。なら俺達はもう行く。」

「ごめんね!また明日!!」

そう言ってジャック達は再びピンク街に戻って行った。

「俺達も戻るぞ。」

「はーい。」

ボク達はロイドの車に向かった。

向かっている途中にギャラリー達の話が耳に入った。

「また十字架事件かよ。」

「落ち着いたと思ったのに…。犯人はまだ捕まってないし。」

「ディとダムがここで暴れたのに十字架事件までくっ付いて来たのかよ…。」

「まさか…、Edenが動き出したのか?」

ボクは思わず足を止めてしまった。

「Edenが?あの殺し団?」

「やべーよ。」

Edenってあの双子が言っていた言葉…。

もしかしてEdenと言うのは団の名前で殺しを行う団なのか?

あの双子がこの十字架事件に関係してるのか?

「おーい!!早く帰ろうよー。」

CATが大きな声でボクに声を掛けて来た。

「今…行く。」

ボクは足速にCAT達の元に向かった。

家に着くロイドとCATを置いてボクは急いで部屋に向かった。

バン!!

ドアを勢いよく閉めて真っ先に鏡に向かった。

「おい!!ヤオ!!」

ボクが鏡に向かって叫ぶと鏡が歪んだ。
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