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第陸章 花は咲いて枯れ、貴方を
汚れた世界
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同時刻 天界
パシンッ!!
毘沙門天邸の宴会場で、吉祥天が哪吒を平手打ちする音が響いた。
「経文を取って来れなかっただと?何しに、ここに帰って来たんだ。」
「申し訳ありま…っ、ゴホッ!!」
哪吒は咳き込むと口から赤い血が噴き出し、吉祥天の白い着物に付着してしまった。
「貴様、妾の服を汚したな?」
「ヴッ!!」
パシンッ!!
ガシッ!!
吉祥天は持っていた扇子で哪吒の頬を叩き、髪を乱暴に掴んだ。
「床の血を舐め取れ、哪吒。妾と同じ顔と言うだけでも腹が立つのに、苛々させるな。」
「ヴッ、ゴホッ、ゴホッ!!」
血を吐く哪吒の顔を無理矢理、床に押し付け血を舐め取らせようとしていた。
「あははは!!私の妻のご機嫌を頑張って取れよ?」
毘沙門天は酒を飲みながら、その光景を笑いながら見ている。
「我は、小娘が起きる方に賭けようかのう。」
「私は、起きなさい方に…。」
「「「あははは!!!」」」
かつて、吉祥天に仕えていた神々達が金貨を取り出し、賭け事を始めていた。
まるで、哪吒が叩かれている姿を余興として見ているようだった。
神獣の肉を食べ、酒を飲みながら、楽しそうな笑い声。
その光景を紫希と邶球(ハイキュウ)は、まともに哪吒の顔を見れなかった。
殴られ続ける哪吒を見て、邶球は思わず吐きそうになり口元を手で押さえる。
あまりにも酷い殴られ方をしていた哪吒、その姿は悲惨なものだった。
「ヴッ。」
「吐くなら、外で吐きなさいよ邶球。」
「ひ、酷い…。哪吒、動かなかくなっちゃった。し、紫希、哪吒っが…。」
「黙って、お客様に酒を注ぎな。」
紫希が神々達に酒を注ぎ始てるのを見た邶球も、黙って酒を注ぎ回る。
「さっさと舐めな。」
「はい…。」
哪吒は重い体を引き摺りながら、床に付着した血を舐め取り始める。
「あははは!!舐めよったぞ!!」
「惨めなものよなぁ。」
「美しい吉祥天様の衣服を汚した罰じゃ!!」
「「「あははは!!!」」」
異様な光景が広がる中、神々達は哪吒を見て嘲笑う。
神々達の下品な笑い声が、宴会場の外まで響き渡った。
「やめて下さい!!何をしているんですか!?」
パリーンッ!!
グシャ!!
宴会場に料理を運んで来た石は、床に料理を落とす。
タタタタタタタッ!!
吉祥天の元まで走った石は、哪吒を守るように前に立つ。
「手を離して下さい、吉祥天様。」
「お前、妾に口答えするのか?人形の分際で、妾に!!」
ガシッ!!
パリーンッ!!
近くにあった空になっていた酒瓶を持った吉祥天は、石の頭に叩き付ける。
「哪吒っ…!!」
石は瓶の破片が哪吒に飛ばないように、哪吒の体に覆い被さった。
「石、哪吒から離れなさい。」
「…嫌です。毘沙門天様、何故ですか?何故、哪吒にこんな…。こんな、酷い事が出来るのですか!?」
グシャ!!
毘沙門天に意見する石に向かって、誰かが料理を投げ付けた。
「人形のくせに、毘沙門天様に口答えするな!!!」
「そうだ、身の程を弁えろ!!!」
グシャ、グシャ、グシャ!!!
神々達は、次々に石に料理を投げ付け始める。
「そうか、なら。お前が余興の催し物になれ。」
パチンッ。
ブンッ!!
吉祥天が指を鳴らすと、石の体が宙に浮き壁に張り付いた。
ドンッ!!
「ヴッ…!!」
石は壁に引っ付いた体を引き剥がそうともがくが、体は離れる事は無かった。
「さぁ、お前達。的当て遊びの時間じゃ。」
スッ。
短剣を取り出した吉祥天は、短剣を宙に浮かせ神々達に配る。
シュッ!!
グサッ!!
「ヴッ!?」
石の右足の太ももに、吉祥天が投げた短剣が刺さった。
「頭を当てた者には、褒美をやろう。そうだなぁ、
3日後に狩に行く神獣の死体を丸々やろう。」
「「「っ!!?」」」
ガタガタッ!!
吉祥天の言葉を聞いた神々達は、慌てて席を立ち、短剣を握る手に力が入る。
「ほ、本当ですか!?吉祥天様!!」
「し、神獣を丸々…、た、食べれる!!」
「は、はぁ、はぁ。や、やるぞ!!私はやる
ぞ!!」
「私が貰うんだ!!」
言い争う神々達を嘲笑いながら、毘沙門天の隣に吉祥天が座る。
神々達は容赦なく、石の体に短剣を投げ付けた。
悲痛に叫ぶ石の声を無視し、己の欲の為に神々達は短剣を投げ続ける。
吉祥天の肩を抱き、毘沙門天は酒を美味そうに飲み干す。
まるで、この場に居る神々達を支配している事に酔いしれているようだった。
「酷い有り様だ。」
毘沙門天邸に勤めている使用人に変装した天部が、扉の隙間から部屋の光景を目撃していた。
「天部。3日後に忍び込む話だったが、早めた方が良いんじゃないか。哪吒の体が保たないだろう、あれじゃあ。」
如来もまた使用人に変装し、天部と共に毘沙門天邸に潜入していた。
2人の潜入した目的は、神々達が毘沙門天邸に集まり、賭け事をしている噂の真意を確かめる為だった。
「石と言う少年の意思を尊重したい所でしたが、致し方ないで…。」
如来が言葉を続けようとした時だった。
空気に重圧が掛かり、黒い靄が廊下に広がり始める。
「如来、何がが来ます。」
「気配を消して、隠れるぞ。」
天部と如来は近くにあった物置部屋に身を潜め、黒い靄の状態を確かめる事にした。
ズズズズッ、ズズズズッ。
何かを引き摺るような音が廊下に響くと、神々達の笑い声が止まった。
目玉が幾つも付いた異様な黒い化け物達を従え、歩いて来たのは顔を黒い布で隠した男。
化け物達に囲まれているせいで、容姿までは確認出来ない。
「何だ、あの異様な者は…。」
「気配からして、妖怪ではなさそうですが。いずれにせよ、我々の手に負えない人物ですよ。」
「妖怪じゃないと言う事は?」
「言いたくありませんが、我々と同類でしょう。」
天部は嫌な顔をしなから、言葉を放つ。
「同類って…、神って事か?」
「えぇ、見た事のない神ですね。」
「天部、この事を観音菩薩に伝えねぇとな。」
「そうですね、バレる前に出た方が良いでしょう。」
如来と天部が話していると、化け物を従えている男が宴会場に入って行った。
「お待ちしておりました、天之御中主神(アメノミナカヌシ)様。」
「「っ!?」」
*天之御中主神 宇宙の根源となる「天之御中主神」
この世界に最初に生まれたのは、「天之御中主神」(あめのみなかぬしのかみ)です。 天之御中主神は宇宙の根源となる存在であり、宇宙そのものであると考えられています。*
毘沙門天の言葉を聞いて、如来と天部の顔が青ざめる。
「は、は?う、嘘だろ?天之御中主神って、最初に生まれた神だよな?」
「えぇ、ですが…。彼が今、生きている事は有り得ない筈です。」
「どう言う意味だ?」
如来はそう言って、天部に尋ねる。
すると、天部の口から出た言葉は衝撃的なものだった。
「彼は既に亡くなっているんですよ。それも、数百年も前に。」
「は、は?じゃあ…、何で。死んだ筈の神が何で、この場に現れたんだよ。」
「そんなの分かりませんよ、彼がこの場に居る理由など。ただ、一つ言えるのは、彼は毘沙門天達と行動を共にしている事だけ。」
「死んだ筈の神が次々と生き返りやがって…。」
ガシガシガシ!!
天部の言葉を聞いた如来は、乱暴に頭を掻く。
「今のうちに行きますよ、如来。」
「あぁ。」
シュシュシュシュッ!!
天部は素早く指を動かし、札を床に貼り付ける。
すると、床に大きな穴が空き、如来と天部を飲み込んだ。
哪吒太子ー
「哪吒、哪吒…。」
石の声が聞こえたので目を開けると、傷だらけの石が視界に映った。
どうやら、僕は石に抱えられているらしい。
宴会場に居た筈が、何故に石に運ばれているのだろうか。
「石か…、宴会はどうなったんだ。」
「引き続き続いてるよ。僕達は宴会場から、摘み出されたんだ。」
「そうか。」
言葉を吐く気力がない為、一言で答える。
体中に毒が侵食して行っているのが、分かる程に疲弊しきっているな。
どうして、こんな事までされて、生きているのだろうか。
僕を作った時の優しい毘沙門天様は、いない。
初めて僕を見た毘沙門天様は、優しく抱き締めてくれた。
僕が歩ける様に世話をしてくれて、言葉を教えてくれて、優しくしてくれた。
まるで、自分の子供をお世話するように。
道具として扱われるだけでも、毘沙門天様の役に立
てるなら良いと…。
だけど、悟空と出会ってから変わってしまった。
僕も毘沙門天様も、違う意味で変わってしまった。
僕が、悟空を助けたいと思う気持ちとは裏腹に、毘沙門天様は悟空を貶めようとする行動をした。
「どうして…。」
「え?」
「どうして、こんな世界に生まれたのだろう。」
初めて目を覚ました時、この世界に生まれて来て良
かったと思った。
見た事のない景色や食べた事のない食べ物、全てが新鮮で美しくて。
これから、僕はこの美しい世界で生きるのだと思った。
人々が助け合い、笑い合っていたこの世界を。
だけど、それは夢物語だったと思い知らせる事を知らなかっただけだった。
毘沙門天様の命令で、妖怪と言う化け物を初めて殺した。
妖怪だけだったのが、次は人、人、人、人。
泣き叫ぶ声をどれだけ聞いただろうか。
斬った傷口から溢れる血をどれだけ浴びただろうか。
僕の次に作られた人形達も、同様に妖や人を殺す命令を受けた。
毘沙門天様の邪魔になる者達を殺し続け、感情が無くなるのを感じた。
どうして、僕達は奪った命の上で生きている?
真秋が消えたのに、毘沙門天様は悲しむ様子は無か
った。
その瞬間、僕の中で毘沙門天様に対する感情が、消えてた。
悟空、君の行く道は光り輝いて見えていたんだ。
何故だろう、彼が神々しく見えているのは。
分からないけど、彼の放つ光を止めていけないと思うのは。
この世界で見た、一番綺麗な光だった。
「っ…、哪吒…。泣かないでくれよ。」
そう言って、石は僕の瞳から流れ落ちた涙を指で拭う。
いつの間にか、泣いていたのか僕は。
泣いた事なんて無かったのに。
頭の中にふと、先程の宴会場での光景が頭を過ぎる。
吉祥天に叩かれ続け、嫌らしい笑みを浮かべた神々
達の笑い声が耳に残っていた。
思い出したら、凄く自分が惨めに思えて。
何をしてるんだろう、僕は…。
そう思っていると、石から言葉が降りて来た。
「哪吒、君は幸せになるべきだ。」
予想外の言葉に、僕は目を丸くしてしまった。
「石…?何を言っているんだ?」
「僕は君が好きだから、そう願うんだ。」
「…石、それは、お前も幸せになる権利はあるんだぞ。」
僕の言葉を聞いた石は、泣きそうな顔をして笑う。
何で、石はそんな顔をするんだ。
お前だって、幸せになる権利はあるんだよ?
自分の事を犠牲にしてまで、僕を助ける必要はないんだよ。
「君は優しいな、哪吒。今はゆっくり休むんだ。」
「石?」
「大丈夫、哪吒は眠るだけで良いから。」
石が僕の瞼に触れ、ゆっくりと瞼を降ろした。
小さな寝息を立てる哪吒を、石は優しく抱き締める。
哪吒の涙を初めて見た時、石の中で憎しみの感情が沸々と湧き上がっていた。
毘沙門天に対する憎しみ、憎悪と呼べる感情が石を支配する。
カツカツカツ。
「石、大丈夫?」
酒瓶を何本も持ち上げている紫希が、石に声を掛けた。
「紫希、宴会場に居なくて良いのか?」
「酒を取りに行く所だから、平気。凄いね、アンタ。」
「え?」
「毘沙門天様に逆らえて、哪吒もそう。」
石は哪吒を見つめたまま、紫希の問いに答える。
「僕は哪吒が好きだから、守りたいんだ。哪吒を傷付けるものから。」
「アンタ、殺されても良いの?そんな事で、死んでも良いの?」
「紫希、君も誰かを愛せば分かるよ。僕の気持ちがね。」
「石、あたしはアンタの事を心配してるの。何か、しようとしてるんでしょ?」
紫希には、石の様子の異変を察知していたのだ。
彼の何処か、消えてしまいそうな表情を見逃せずにいた。
「ねぇ、石。何をしようとしてるの…?答えなさい、石!!!」
「僕は行くね、哪吒を部屋に運んで来るよ。」
紫希の問いに答えずに、石は廊下を歩き出した。
石の背中を見つめ、先程の言葉が紫希の頭の中に残っていた。
「誰かを愛す…。」
その言葉を口に出した時、紫希の頭の中に邪の顔が浮かんだ。
トクンッ、トクンッ、トクンッ。
「どうして、アイツの顔が浮かんで来るのよっ。」
高鳴る胸を押し殺し、紫希は宴会場に向かった。
天帝邸ー
観音菩薩は眠り続けている天帝の側に、腰を下ろした。
「天帝、貴方の絵巻通りに進んでいますよ。」
「…。」
「実は、貴方が起きる未来も見えたんですよ。僕の
未来予知の能力でね。早く起きて下さいよ、天帝。」
「くぁぁぁぁあ…、おはよう観音菩薩。」
天帝は欠伸をしながら、観音菩薩に挨拶をした。
「おはようじゃないですよ。いつ、呪いが解けたんですか?」
「ふふ、それは内緒。」
「はぐらかさないで下さいよ!?こっちは大変なんですよ!?」
「毘沙門天を泳がす為に仕方なくね?わざと術に掛かったんだ。君には、苦労を掛けたね。それに、彼が動き出してしまったからね、起きない訳にはいかなくなった。」
そう言って、天帝は観音菩薩の頭を優しく撫でる。
ドタドタドタドタ!!
ガラッ!!
「天帝、起きたのか!?」
乱暴に襖を開けたのは、明王だった。
「やぁ、明王。相変わらず五月蝿いね、君は。」
「呪いが解けたのか!?」
「ははは、見ての通りさ。如来と天部も呼ぼう。」
パチンッ。
天帝が大きく手を叩くと、天井に大きな穴が現れ、如来と天部が穴から落ちて来た。
ドサドサドサ!!
「痛たた…、ここは天帝の寝室ですか?」
「久しぶりだね、天部。」
「て、ててて天帝!??」
「起きたのか、天帝。」
慌てる天部を他所に、如来は冷静な態度を見せる。
「今さっきね?君達こそ、何処かに行っていたようだけど?」
「はい、毘沙門天邸に少し。天帝と観音菩薩にお伝えしないといけない事が…。」
そう言って、天部は毘沙門天邸での出来事を話した。
「はぁ?死んだ筈の神が居たぁ?何を言ってんだ、お前等は。」
「天帝、さっき彼と言っていたけど…。まさか、天之御中主神の事ですか?」
呆れ返る明王の隣から、観音菩薩は天帝に尋ねる。
「その通り、天之御中主神は亡くなったんだ。ある
日突然ね。」
「突然…ですか?」
天部はつかさず、天帝に尋ねた。
「うん、詳しい事は分からないけどね。天部と如来が見たのは、悪神になった彼だね。」
「ど、どう意味ですか?我々が見た天之御中主神は、悍ましい姿でした。伝承に載っていた彼とは、装いも雰囲気も大違いでした。」
*悪神(あくしん) 悪い神。 人に災禍をなす神。 神に付き従う悪鬼や悪神を恐れるからこそ、神社ではことさらに行列の先払いをしなければならない理由があるのだ。
*
「彼の事を記した伝承は、作り物なんだ。」
「「「「っ!?」」」」
天帝の言葉を聞いた観音菩薩は、驚きのあまり言葉を失ってしまった。
「やっぱり、偽装された伝承だったか。」
観音菩薩の言葉を聞いた天部は、驚きながら尋ねた。
「観音菩薩!?貴方、分かっていたのですか?」
「天之御中主神様の伝承だけね?妖気が微かに残っていたんだ。保管されている伝承達には、妖気は憑いていなかったし。」
「観音菩薩にしか分からない、微かな妖気が憑いてたんですね。彼が何故、毘沙門天と吉祥天と共に居たのでしょうか。」
「盲点だったな、天之御中主神の存在を見逃していたな。」
天部と如来の言葉を聞いた天帝が、ゆっくりと口を開く。
その言葉を聞いた4人は、唖然とした。
神々達は、初めて世界の理に触れてしまった事を実感したのだ。
そして、天之御中主神が最大の脅威だと言う事を…。
三蔵達はまだ、知らない事だった。
パシンッ!!
毘沙門天邸の宴会場で、吉祥天が哪吒を平手打ちする音が響いた。
「経文を取って来れなかっただと?何しに、ここに帰って来たんだ。」
「申し訳ありま…っ、ゴホッ!!」
哪吒は咳き込むと口から赤い血が噴き出し、吉祥天の白い着物に付着してしまった。
「貴様、妾の服を汚したな?」
「ヴッ!!」
パシンッ!!
ガシッ!!
吉祥天は持っていた扇子で哪吒の頬を叩き、髪を乱暴に掴んだ。
「床の血を舐め取れ、哪吒。妾と同じ顔と言うだけでも腹が立つのに、苛々させるな。」
「ヴッ、ゴホッ、ゴホッ!!」
血を吐く哪吒の顔を無理矢理、床に押し付け血を舐め取らせようとしていた。
「あははは!!私の妻のご機嫌を頑張って取れよ?」
毘沙門天は酒を飲みながら、その光景を笑いながら見ている。
「我は、小娘が起きる方に賭けようかのう。」
「私は、起きなさい方に…。」
「「「あははは!!!」」」
かつて、吉祥天に仕えていた神々達が金貨を取り出し、賭け事を始めていた。
まるで、哪吒が叩かれている姿を余興として見ているようだった。
神獣の肉を食べ、酒を飲みながら、楽しそうな笑い声。
その光景を紫希と邶球(ハイキュウ)は、まともに哪吒の顔を見れなかった。
殴られ続ける哪吒を見て、邶球は思わず吐きそうになり口元を手で押さえる。
あまりにも酷い殴られ方をしていた哪吒、その姿は悲惨なものだった。
「ヴッ。」
「吐くなら、外で吐きなさいよ邶球。」
「ひ、酷い…。哪吒、動かなかくなっちゃった。し、紫希、哪吒っが…。」
「黙って、お客様に酒を注ぎな。」
紫希が神々達に酒を注ぎ始てるのを見た邶球も、黙って酒を注ぎ回る。
「さっさと舐めな。」
「はい…。」
哪吒は重い体を引き摺りながら、床に付着した血を舐め取り始める。
「あははは!!舐めよったぞ!!」
「惨めなものよなぁ。」
「美しい吉祥天様の衣服を汚した罰じゃ!!」
「「「あははは!!!」」」
異様な光景が広がる中、神々達は哪吒を見て嘲笑う。
神々達の下品な笑い声が、宴会場の外まで響き渡った。
「やめて下さい!!何をしているんですか!?」
パリーンッ!!
グシャ!!
宴会場に料理を運んで来た石は、床に料理を落とす。
タタタタタタタッ!!
吉祥天の元まで走った石は、哪吒を守るように前に立つ。
「手を離して下さい、吉祥天様。」
「お前、妾に口答えするのか?人形の分際で、妾に!!」
ガシッ!!
パリーンッ!!
近くにあった空になっていた酒瓶を持った吉祥天は、石の頭に叩き付ける。
「哪吒っ…!!」
石は瓶の破片が哪吒に飛ばないように、哪吒の体に覆い被さった。
「石、哪吒から離れなさい。」
「…嫌です。毘沙門天様、何故ですか?何故、哪吒にこんな…。こんな、酷い事が出来るのですか!?」
グシャ!!
毘沙門天に意見する石に向かって、誰かが料理を投げ付けた。
「人形のくせに、毘沙門天様に口答えするな!!!」
「そうだ、身の程を弁えろ!!!」
グシャ、グシャ、グシャ!!!
神々達は、次々に石に料理を投げ付け始める。
「そうか、なら。お前が余興の催し物になれ。」
パチンッ。
ブンッ!!
吉祥天が指を鳴らすと、石の体が宙に浮き壁に張り付いた。
ドンッ!!
「ヴッ…!!」
石は壁に引っ付いた体を引き剥がそうともがくが、体は離れる事は無かった。
「さぁ、お前達。的当て遊びの時間じゃ。」
スッ。
短剣を取り出した吉祥天は、短剣を宙に浮かせ神々達に配る。
シュッ!!
グサッ!!
「ヴッ!?」
石の右足の太ももに、吉祥天が投げた短剣が刺さった。
「頭を当てた者には、褒美をやろう。そうだなぁ、
3日後に狩に行く神獣の死体を丸々やろう。」
「「「っ!!?」」」
ガタガタッ!!
吉祥天の言葉を聞いた神々達は、慌てて席を立ち、短剣を握る手に力が入る。
「ほ、本当ですか!?吉祥天様!!」
「し、神獣を丸々…、た、食べれる!!」
「は、はぁ、はぁ。や、やるぞ!!私はやる
ぞ!!」
「私が貰うんだ!!」
言い争う神々達を嘲笑いながら、毘沙門天の隣に吉祥天が座る。
神々達は容赦なく、石の体に短剣を投げ付けた。
悲痛に叫ぶ石の声を無視し、己の欲の為に神々達は短剣を投げ続ける。
吉祥天の肩を抱き、毘沙門天は酒を美味そうに飲み干す。
まるで、この場に居る神々達を支配している事に酔いしれているようだった。
「酷い有り様だ。」
毘沙門天邸に勤めている使用人に変装した天部が、扉の隙間から部屋の光景を目撃していた。
「天部。3日後に忍び込む話だったが、早めた方が良いんじゃないか。哪吒の体が保たないだろう、あれじゃあ。」
如来もまた使用人に変装し、天部と共に毘沙門天邸に潜入していた。
2人の潜入した目的は、神々達が毘沙門天邸に集まり、賭け事をしている噂の真意を確かめる為だった。
「石と言う少年の意思を尊重したい所でしたが、致し方ないで…。」
如来が言葉を続けようとした時だった。
空気に重圧が掛かり、黒い靄が廊下に広がり始める。
「如来、何がが来ます。」
「気配を消して、隠れるぞ。」
天部と如来は近くにあった物置部屋に身を潜め、黒い靄の状態を確かめる事にした。
ズズズズッ、ズズズズッ。
何かを引き摺るような音が廊下に響くと、神々達の笑い声が止まった。
目玉が幾つも付いた異様な黒い化け物達を従え、歩いて来たのは顔を黒い布で隠した男。
化け物達に囲まれているせいで、容姿までは確認出来ない。
「何だ、あの異様な者は…。」
「気配からして、妖怪ではなさそうですが。いずれにせよ、我々の手に負えない人物ですよ。」
「妖怪じゃないと言う事は?」
「言いたくありませんが、我々と同類でしょう。」
天部は嫌な顔をしなから、言葉を放つ。
「同類って…、神って事か?」
「えぇ、見た事のない神ですね。」
「天部、この事を観音菩薩に伝えねぇとな。」
「そうですね、バレる前に出た方が良いでしょう。」
如来と天部が話していると、化け物を従えている男が宴会場に入って行った。
「お待ちしておりました、天之御中主神(アメノミナカヌシ)様。」
「「っ!?」」
*天之御中主神 宇宙の根源となる「天之御中主神」
この世界に最初に生まれたのは、「天之御中主神」(あめのみなかぬしのかみ)です。 天之御中主神は宇宙の根源となる存在であり、宇宙そのものであると考えられています。*
毘沙門天の言葉を聞いて、如来と天部の顔が青ざめる。
「は、は?う、嘘だろ?天之御中主神って、最初に生まれた神だよな?」
「えぇ、ですが…。彼が今、生きている事は有り得ない筈です。」
「どう言う意味だ?」
如来はそう言って、天部に尋ねる。
すると、天部の口から出た言葉は衝撃的なものだった。
「彼は既に亡くなっているんですよ。それも、数百年も前に。」
「は、は?じゃあ…、何で。死んだ筈の神が何で、この場に現れたんだよ。」
「そんなの分かりませんよ、彼がこの場に居る理由など。ただ、一つ言えるのは、彼は毘沙門天達と行動を共にしている事だけ。」
「死んだ筈の神が次々と生き返りやがって…。」
ガシガシガシ!!
天部の言葉を聞いた如来は、乱暴に頭を掻く。
「今のうちに行きますよ、如来。」
「あぁ。」
シュシュシュシュッ!!
天部は素早く指を動かし、札を床に貼り付ける。
すると、床に大きな穴が空き、如来と天部を飲み込んだ。
哪吒太子ー
「哪吒、哪吒…。」
石の声が聞こえたので目を開けると、傷だらけの石が視界に映った。
どうやら、僕は石に抱えられているらしい。
宴会場に居た筈が、何故に石に運ばれているのだろうか。
「石か…、宴会はどうなったんだ。」
「引き続き続いてるよ。僕達は宴会場から、摘み出されたんだ。」
「そうか。」
言葉を吐く気力がない為、一言で答える。
体中に毒が侵食して行っているのが、分かる程に疲弊しきっているな。
どうして、こんな事までされて、生きているのだろうか。
僕を作った時の優しい毘沙門天様は、いない。
初めて僕を見た毘沙門天様は、優しく抱き締めてくれた。
僕が歩ける様に世話をしてくれて、言葉を教えてくれて、優しくしてくれた。
まるで、自分の子供をお世話するように。
道具として扱われるだけでも、毘沙門天様の役に立
てるなら良いと…。
だけど、悟空と出会ってから変わってしまった。
僕も毘沙門天様も、違う意味で変わってしまった。
僕が、悟空を助けたいと思う気持ちとは裏腹に、毘沙門天様は悟空を貶めようとする行動をした。
「どうして…。」
「え?」
「どうして、こんな世界に生まれたのだろう。」
初めて目を覚ました時、この世界に生まれて来て良
かったと思った。
見た事のない景色や食べた事のない食べ物、全てが新鮮で美しくて。
これから、僕はこの美しい世界で生きるのだと思った。
人々が助け合い、笑い合っていたこの世界を。
だけど、それは夢物語だったと思い知らせる事を知らなかっただけだった。
毘沙門天様の命令で、妖怪と言う化け物を初めて殺した。
妖怪だけだったのが、次は人、人、人、人。
泣き叫ぶ声をどれだけ聞いただろうか。
斬った傷口から溢れる血をどれだけ浴びただろうか。
僕の次に作られた人形達も、同様に妖や人を殺す命令を受けた。
毘沙門天様の邪魔になる者達を殺し続け、感情が無くなるのを感じた。
どうして、僕達は奪った命の上で生きている?
真秋が消えたのに、毘沙門天様は悲しむ様子は無か
った。
その瞬間、僕の中で毘沙門天様に対する感情が、消えてた。
悟空、君の行く道は光り輝いて見えていたんだ。
何故だろう、彼が神々しく見えているのは。
分からないけど、彼の放つ光を止めていけないと思うのは。
この世界で見た、一番綺麗な光だった。
「っ…、哪吒…。泣かないでくれよ。」
そう言って、石は僕の瞳から流れ落ちた涙を指で拭う。
いつの間にか、泣いていたのか僕は。
泣いた事なんて無かったのに。
頭の中にふと、先程の宴会場での光景が頭を過ぎる。
吉祥天に叩かれ続け、嫌らしい笑みを浮かべた神々
達の笑い声が耳に残っていた。
思い出したら、凄く自分が惨めに思えて。
何をしてるんだろう、僕は…。
そう思っていると、石から言葉が降りて来た。
「哪吒、君は幸せになるべきだ。」
予想外の言葉に、僕は目を丸くしてしまった。
「石…?何を言っているんだ?」
「僕は君が好きだから、そう願うんだ。」
「…石、それは、お前も幸せになる権利はあるんだぞ。」
僕の言葉を聞いた石は、泣きそうな顔をして笑う。
何で、石はそんな顔をするんだ。
お前だって、幸せになる権利はあるんだよ?
自分の事を犠牲にしてまで、僕を助ける必要はないんだよ。
「君は優しいな、哪吒。今はゆっくり休むんだ。」
「石?」
「大丈夫、哪吒は眠るだけで良いから。」
石が僕の瞼に触れ、ゆっくりと瞼を降ろした。
小さな寝息を立てる哪吒を、石は優しく抱き締める。
哪吒の涙を初めて見た時、石の中で憎しみの感情が沸々と湧き上がっていた。
毘沙門天に対する憎しみ、憎悪と呼べる感情が石を支配する。
カツカツカツ。
「石、大丈夫?」
酒瓶を何本も持ち上げている紫希が、石に声を掛けた。
「紫希、宴会場に居なくて良いのか?」
「酒を取りに行く所だから、平気。凄いね、アンタ。」
「え?」
「毘沙門天様に逆らえて、哪吒もそう。」
石は哪吒を見つめたまま、紫希の問いに答える。
「僕は哪吒が好きだから、守りたいんだ。哪吒を傷付けるものから。」
「アンタ、殺されても良いの?そんな事で、死んでも良いの?」
「紫希、君も誰かを愛せば分かるよ。僕の気持ちがね。」
「石、あたしはアンタの事を心配してるの。何か、しようとしてるんでしょ?」
紫希には、石の様子の異変を察知していたのだ。
彼の何処か、消えてしまいそうな表情を見逃せずにいた。
「ねぇ、石。何をしようとしてるの…?答えなさい、石!!!」
「僕は行くね、哪吒を部屋に運んで来るよ。」
紫希の問いに答えずに、石は廊下を歩き出した。
石の背中を見つめ、先程の言葉が紫希の頭の中に残っていた。
「誰かを愛す…。」
その言葉を口に出した時、紫希の頭の中に邪の顔が浮かんだ。
トクンッ、トクンッ、トクンッ。
「どうして、アイツの顔が浮かんで来るのよっ。」
高鳴る胸を押し殺し、紫希は宴会場に向かった。
天帝邸ー
観音菩薩は眠り続けている天帝の側に、腰を下ろした。
「天帝、貴方の絵巻通りに進んでいますよ。」
「…。」
「実は、貴方が起きる未来も見えたんですよ。僕の
未来予知の能力でね。早く起きて下さいよ、天帝。」
「くぁぁぁぁあ…、おはよう観音菩薩。」
天帝は欠伸をしながら、観音菩薩に挨拶をした。
「おはようじゃないですよ。いつ、呪いが解けたんですか?」
「ふふ、それは内緒。」
「はぐらかさないで下さいよ!?こっちは大変なんですよ!?」
「毘沙門天を泳がす為に仕方なくね?わざと術に掛かったんだ。君には、苦労を掛けたね。それに、彼が動き出してしまったからね、起きない訳にはいかなくなった。」
そう言って、天帝は観音菩薩の頭を優しく撫でる。
ドタドタドタドタ!!
ガラッ!!
「天帝、起きたのか!?」
乱暴に襖を開けたのは、明王だった。
「やぁ、明王。相変わらず五月蝿いね、君は。」
「呪いが解けたのか!?」
「ははは、見ての通りさ。如来と天部も呼ぼう。」
パチンッ。
天帝が大きく手を叩くと、天井に大きな穴が現れ、如来と天部が穴から落ちて来た。
ドサドサドサ!!
「痛たた…、ここは天帝の寝室ですか?」
「久しぶりだね、天部。」
「て、ててて天帝!??」
「起きたのか、天帝。」
慌てる天部を他所に、如来は冷静な態度を見せる。
「今さっきね?君達こそ、何処かに行っていたようだけど?」
「はい、毘沙門天邸に少し。天帝と観音菩薩にお伝えしないといけない事が…。」
そう言って、天部は毘沙門天邸での出来事を話した。
「はぁ?死んだ筈の神が居たぁ?何を言ってんだ、お前等は。」
「天帝、さっき彼と言っていたけど…。まさか、天之御中主神の事ですか?」
呆れ返る明王の隣から、観音菩薩は天帝に尋ねる。
「その通り、天之御中主神は亡くなったんだ。ある
日突然ね。」
「突然…ですか?」
天部はつかさず、天帝に尋ねた。
「うん、詳しい事は分からないけどね。天部と如来が見たのは、悪神になった彼だね。」
「ど、どう意味ですか?我々が見た天之御中主神は、悍ましい姿でした。伝承に載っていた彼とは、装いも雰囲気も大違いでした。」
*悪神(あくしん) 悪い神。 人に災禍をなす神。 神に付き従う悪鬼や悪神を恐れるからこそ、神社ではことさらに行列の先払いをしなければならない理由があるのだ。
*
「彼の事を記した伝承は、作り物なんだ。」
「「「「っ!?」」」」
天帝の言葉を聞いた観音菩薩は、驚きのあまり言葉を失ってしまった。
「やっぱり、偽装された伝承だったか。」
観音菩薩の言葉を聞いた天部は、驚きながら尋ねた。
「観音菩薩!?貴方、分かっていたのですか?」
「天之御中主神様の伝承だけね?妖気が微かに残っていたんだ。保管されている伝承達には、妖気は憑いていなかったし。」
「観音菩薩にしか分からない、微かな妖気が憑いてたんですね。彼が何故、毘沙門天と吉祥天と共に居たのでしょうか。」
「盲点だったな、天之御中主神の存在を見逃していたな。」
天部と如来の言葉を聞いた天帝が、ゆっくりと口を開く。
その言葉を聞いた4人は、唖然とした。
神々達は、初めて世界の理に触れてしまった事を実感したのだ。
そして、天之御中主神が最大の脅威だと言う事を…。
三蔵達はまだ、知らない事だった。
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