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第四章 三蔵一行旅事変
水上戦線 四
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悟空と鯰震が再開した中、猪八戒と哪吒太子達はー
猪八戒ー
この女、全く隙がない。
どうやって攻めようかイメージしても、俺はこの女に斬られる。
俺が銃と鉄扇しかないからなのか。
それとも、この女が戦場に慣れている所為なのか。
額に冷や汗がら流れる。
この感覚、いつぶりだ…?
刀や剣の場合だったら、どうだ?
頭をフル回転させながら戦術を練る。
パキッ…。
パキパキパキパキ…。
「お、おい。お前の周りに鉄?みてーのが集まってるけど…。」
後ろにいる捲簾に声を掛けられ、ふと周りに視線を向けた。
俺の周りに小さな鉄の欠片が集まって来ていて、欠片同士がくっ付き始めた。
パキパキパキパキッ!!
鉄で出来た刀に姿が変化した。
どうやら本当に俺の意思で黄風の力を扱えるようだ。
手にズッシリと重みを感じた。
「貴方のその、刀は…。黄風の物では?」
女の隣にいる金髪の男が、俺が持っている刀について尋ねて来た。
黄風の事を知っている…のか。
だとしたら、黄風の仲間か?
「だったら?アンタ等はアイツの仲間?それとも、敵さん?」
「それは貴方には関係ありません。その力が黄風の物だと分かっただけで、こちらは満足です。」
男はそう言って、刀を構え直した。
「1人増えようがどうでも良い。全て斬り落とすまでの事。」
ズンッ!!
男が刀を構え直した瞬間、体に重みがのし掛かった。
「何っだ?急に体が重く…、うがっ!!」
ズンッ!!
ドンッ!!
そう呟いた瞬間だった。
体が地面に吸い付くように引き寄せられ、体が言う
事を聞かなかった。
この場にいる俺達だけが地面に倒れたまま起き上がれなかった。
何だ…これっ!?
「ちょ…はっかいさんっ。これ、重力ですよ…っ。」
隣にいる黒風が声を掛けて来た。
「重力…って、そんなのアリかよっ!?」
ググググッ…!!
力を入れて重力に逆らおうとしたが、すぐに地面にくっ付いてしまう。
シュシュシュシュッ!!
黒い影が地面を走って行くのが分かった。
それと同時に白い煙が俺達を包み込んだ。
陽春と緑来か?
チャプンッ…。
水の滴る音が聞こえた。
白い煙に包まれた哪吒と石は全く動揺していなかった。
気配を察知した哪吒が口を開けた。
「石。」
「御意。」
シュシュシュシュッ!!
陽春が影を使い、影を尖らせた状態で哪吒と石に向かって来ていた。
緑来も姿を煙に変えながらナイフを飛ばした。
石は素早く指を動かして九字を切りながら「オン、
アジャラダセンダハタヤ、ウン。」と呟いた。
*退魔術*
パァァァァァァァァンッ!!
爆発音と共に白い光に包まれた。
「キャァアァァァ!!」
「あがっ!!」
陽春と緑来が人の姿に戻され弾き飛ばされてしまった。
シュンッ!!
石が前に意識を集中させている時に、鏡花水月の技を使い沙悟浄が石に向かって刀を振り下ろした時だった。
キィィィンッ!!
哪吒が素早い動きで沙悟浄の攻撃を受け止めたのだった。
「ッチ。反射神経良すぎて気持ち悪いな。」
沙悟浄は苦笑いしながら呟いた。
「死にたいのなら殺してやるよ。」
哪吒はそう言って、沙悟浄の攻撃を弾き、すぐさま哪吒は刀を振り下ろした。
キィィィンッ!!
沙悟浄は何とか、哪吒の攻撃を受け止めたが、ビリビリとした感触が剣から手に伝わった。
重さと剣と刀が響き合う。
煙が晴れ、重力から解放された猪八戒と黒風は目の前の光景を見て驚いた。
「陽春!?緑来!?」
猪八戒の目の前には血だらけの体になった陽春と緑来が倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
黒風は慌てて2人に近寄った。
2人はゆっくりと体を起こし、上がり切った息を整えて始めた。
「だい…、じょうぶよ。」
「それよりも、アイツの使った技は…?見た事も聞いた事もない技だ…。」
「抗うと言うのならお相手しましょう。」
石はそう言って、自分の周りに人形の形をした札をばら撒いた。
人形の形をした札はヒラヒラと石の周りを浮きながら回っている。
「も、もしかしてっ。」
黒風は石と札、そして女を交互に見てハッとした様子で言葉を続けた。
「どうしたんだ?」
「猪八戒さん…。僕、この人達を見た事があります。いえ、知っています…。」
黒風の言葉を聞いた猪八戒を含め沙悟浄達は驚いていた。
黒風を見た石は暫く考え込んだ後に「あぁ…。」と短い言葉を吐いた。
「よく見たら…、貴方は牛魔王の仲間でしたよね?六大魔王なのに使えない妖の。」
石の言葉を聞いた猪八戒は眉間がピクッと動いた。
「あ?」
猪八戒の低い声を聞いた石はクスッと笑った。
「あ、もしかして気に触りました?でも、事実ですので…。それは貴方自身が分かってる事ですよ
ね。」
石はそう言って黒風に視線を向けた。
「こ、この人の言っている事は正しいです。だって、この人達は毘沙門天さんが作った半妖(ハンヨウ)なんですから…。」
「「「半妖!?」」」
猪八戒と沙悟浄、陽春と緑来の声が重なった。
「半妖って…、半分妖怪で半分は人間…って事?」
「そ、そうです。」
「で、でも、神が何で半妖を作ったのよ?!何の為に?それと、コイツ等がさっきから呪文?みたいなヤツも何!?」
答えた黒風に陽春は詰め寄った。
「落ち着つけよ陽春。黒風が喋れねーだろ。」
猪八戒はそう言って、陽春を黒風から引き剥がした。
「太陽神聖と言う妖怪退治の部隊の人々です。その人達が使った技は陰陽術です。」
「陰陽術?!三蔵と同じ技が使えんのか!?」
「はい。陽春さんと緑来さんの傷が治っていませんよね?それが何よりも証拠です。」
黒風の言葉を聞いた猪八戒は、陽春と緑来の傷が治っていない事に気が付いた。
「普通の攻撃だったら、すぐに治りますが…。まともに術を受けたら僕達は死にます。」
「そう言う事かよ。」
沙悟浄はそう言って、哪吒の方に視線を送った。
「だから、俺の術が通用しなかった訳か。半妖のくせに妖怪狩りをすんのか。同類殺し?」
バリバリッ!!
石の周りにいた札が勢いよく沙悟浄の左腕に張り付いた。
グルンッ!!
ボキッ!!
沙悟浄の左腕が本来、曲がらない方向に曲がり骨の折れる音が聞こえた。
「ぐぁぁぁぁああ!!」
「捲簾!?」
猪八戒は慌てて、左腕を押さえながら蹲っている沙
悟浄に駆け寄ろうとした時だった。
シュンッ!!
猪八戒の足元に短剣が突き刺さった。
「哪吒太子を、我々を侮辱するなんて妖風情が生意気なんだよ。」
穏やかで涼しい顔をしていた石の顔から笑顔が消えた。
丁寧な言葉から、乱暴な口調に変わった。
「な、何?アイツ、急に口調が変わった?」
石の変貌に陽春は付いて行けていなかった。
「い、いや、この人の本質はこっちなんです…。」
「そ、そうなのか?」
「外面が良いって事…?」
黒風から石の本性を聞いた陽春と緑来は苦笑いをした。
「ペラペラとうるせぇーな。何?牛魔王に捨てられたお前が何で、そっち側にいるわけ?」
そう言って石は、乱暴に頭を掻いた。
「石。口調が戻ってるけど…。」
「僕の姫が侮辱されたら腹が立つだろ。僕は貴方の道を邪魔する奴等はぶっ殺すって決めてるんで。」
「コイツを殺すのはやめろよ石。」
「分かってますよ。経文の居場所を吐かせる為でしょ?」
「分かってるなら良い。」
カツカツカツ…。
沙悟浄に近付いた哪吒は被っていたフードを取り、沙悟浄の髪を乱暴に掴んだ。
ガシッ!!
「お、おい!!」
猪八戒が沙悟浄の髪を掴んでいる哪吒の手を払おうとした瞬間。
シュンッ!!
猪八戒の首筋に石の刀の刃が刺さった。
ツゥ…。
猪八戒の首筋に赤い血が流れた。
「汚い手で哪吒太子に触るな。」
石はそのまま猪八戒の肩を掴み、近くにある大きな岩に投げ飛ばした。
ドガーンッ!!!
「ガハッ!!」
「猪八戒さん!!!」
ビュンッ!!
猪八戒の元に駆け寄ろうとした黒風の右足に、石が人形の形をした札を飛ばした。
石が指をグイッと曲げると、黒風の右足が逆の方向に曲がった。
ボキッ!!
「あ、ぁぁあぁぁぁぁあ!!!」
黒風は右足を抑えながら地面に転がった。
「「頭!!!」」
陽春と緑来が沙悟浄の元に走り出そうとした瞬間、石は素早く指を動かし両手を叩いた。
パンッ!!
「ジャクウン、バンコク。」
石が両手を叩いたと同時に光の蜘蛛の巣が現れ、陽春と緑来の体を拘束した。
ギュュュウ!!
「なっ!?」
「くっそっ!!何なのよ!!この糸!!」
「お前等はそこで黙って見てろ。」
ズルッ…、ズルッ…。
黒風は曲がった足を引き摺りながら、猪八戒の元に向かっていた。
岩の尖った部分に体が刺さってしまい、一時的に意識を失ってしまっていた。
「ちょ…、はっ、かいさんっ!!」
黒風は足の痛みに耐えながら、前に進んでいた。
「なっに、すんだっ!!」
沙悟浄はそう言って、哪吒を睨み付けた。
哪吒の黄色くて丸い瞳が沙悟浄の姿を捉えた。
「ここに経文がある事は分かっている。経文をどこ
に隠した。」
グイッと哪吒が沙悟浄の顔を近寄せた。
だが、沙悟浄は経文と言う言葉を初めて聞いたし、
経文がどう言う物なのか分からなかった。
「そっん、なの知らねーよ!!」
ゴンッ!!
沙悟浄の言葉を聞いた哪吒は、沙悟浄の顔を地面に強く打ち付けた。
「ガッハ!!」
「「頭!!!」」
顔を地面に打ち付けたられた沙悟浄を見て陽春と緑来が叫んだ。
ゴンッ!!
ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ!!
哪吒は黙って沙悟浄の顔を地面に打ち付けた。
「や、やめて!!やめてよ!!!それ以上したら、頭が死んじゃうよ!!!」
陽春の言葉を聞いた哪吒は、陽春の方に視線を向けた。
「妖なんだから傷は治る。死ぬ訳じゃないだろ。」
「っ!!?」
哪吒は真顔のまま陽春に言葉を放った。
「本当に知らないのか?」
「知らねーって言ってるだろ…?」
「だが、お前は知っている筈だろ。」
「は…?」
哪吒は再び血だらけの沙悟浄の顔を覗き込んだ。
「見つけた。」
「見つけた…?って…。」
「お前が飼い慣らしてる猫。」
「っ、玉が何だって言うだよ。」
哪吒の瞳は相手の記憶を見る事ができ、経文の気配を辿る事が出来る。
「テメェ…。玉に何かしてみろ。殺すぞ。」
沙悟浄は強く哪吒を睨み付けた。
ズルッ…、ズルッ。
カツカツカツ…。
猪八戒の元に向かっている黒風の元に、石が足速に
向かっていた。
ガシッ。
「ゔっ!!」
黒風に追い付いた石は、黒風の背中を強く踏み付けた。
「お前、役に立たないのに何?役に立とうと頑張ってる訳?」
グリグリと踵を強く黒風の背中に練り込んだ。
ガシッ!!
そのまま石は黒風の髪を乱暴に掴み、頬を強く殴り付けた。
ゴンッ!!
「ゔっ!!」
石は黙ったまま、何度も何度も黒風を殴り続けた。
黒風ー
痛い、痛い、痛い…。
足も凄く痛いし、顔だってめちゃくちゃ痛い…。
僕は、僕は…。
牛魔王さんの元にいた時は、自分の存在意義が分からなかった。
牛魔王さんは僕を必要とはしなかった。
僕の能力はちっぽけな物で、戦えもしない僕はいつも屋敷に残されていた。
他の皆んなも僕の事を邪魔扱いはしなかったものの、心のどこかではきっと邪魔だったんだろう。
そんな感じはしていた。
だから、僕は皆の邪魔にならないようにしていた。
そんな中、大きな宴の時に牛魔王さんが1人の男を連れて来た。
今でもハッキリと覚えている。
赤茶色の髪を靡かせ、凛々しく強いオーラを放っていた悟空さんを…。
この時の僕は、悟空さんを新しく六大魔王に入れ僕を抜けさせるんだと思っていた。
だけど、牛魔王さんは悟空さんと盃を交わしたのに、あの人を地獄に落とす計画を立てていた。
どうして牛魔王さんは、悟空さんを落とそうとしているのか分からなかった。
悟空さんは、僕の事を弟のように可愛がってくれた。
僕を否定せず、僕をそのまま理解してくれた。
悟空さんの役に立ちたい。
そんな気持ちが僕の中で芽生えた。
牛魔王さんじゃなかったら良かったのに。
僕を見つけてくれたのが、悟空さんだったら良かったのに。
何年か経った頃、僕の目の前に広がった光景は最悪な物だった。
悟空さんの裁判が行われていた。
体はボロボロで、瞳に覇気を感じられなかった。
悟空さんは、悟空さんは…。
ただ、大切な人が出来ただけなのに…。
どうして、こんな酷い事が出来るんだ!?
僕はキッと牛魔王さんを見つめた。
牛魔王さんは、毘沙門天さんとニヤニヤしながら悟空さんの事を見ていた。
この人達は…、"鬼"だ。
この計画を立てたのは毘沙門天さんだ。
毘沙門天さんは神でありながらも、妖怪を使って
色々な実験を行っていた。
人を殺し、妖を殺し。
一体、どれだけの者を殺せば毘沙門天さんの気は済むんだ?
毘沙門天さんと一緒になって、牛魔王さんは変わった。
冷酷さは増し、僕の事を捨てた。
捨てられる覚悟は出来ていたし、寧ろ捨ててくれて良かった。
だけど、僕はあの裁判の日。
黙って悟空さんの審判を見る事しか出来なかった。
流れ出しそうな涙を堪えながら傷付いた悟空さんを
ただ、見つめる事しか出来なかった。
僕は…、好きだって思えた人を守れるのだろうか…。
僕は観音菩薩さんに貰った天地羅針盤(テンチラシンバン)を使い、悟空さんの居場所を調べた。
500年経ったから、悟空さんは外に出て来ている筈だ!!
僕は天地羅針盤を頼りに、悟空さんの元に向かった。
会いたい気持ちと、怖い気持ちが一緒だった。
悟空さんは、僕と会っても…。
前と変わらずに接してくれるだろうか…。
悟空さんは、やっぱり…。
凄く優しかった。
再開した僕を受け入れてくれた。
今度こそ、僕は悟空さんを、悟空さんが大事にしている人々を守りたい。
だからこそ、僕は悟空さんを探したんだ。
ゴンッ!!
僕は石と言う男に殴られながらも、気を失っている猪八戒の元に向かった。
「こんのっ、糞妖怪が!!」
石はそう言って、僕の腹を強く蹴った。
「ゔっ!!」
僕はあまりの痛さに、蹲ってしまった。
「お前なんかに何が出来るって言うだ。」
「僕はっ、僕は、後悔したくないんだ!!」
今まで生きてきた中で、こんな大きな声を出したのは初めてだった。
僕はもう、後悔なんてしたくない。
こうしていれば良かった。
行動していれば良かった。
僕は、僕は…。
何も出来なかった500年をずっと、後悔していた。
「君があの子を思うのと、お、同じようにっ。僕は、僕は…、あの人の役に立ちたい。」
ズキズキと痛む体に鞭を打ちながら立ち上がった。
「僕は、あの人の為になる事をしたい。もう、二度と悟空さんにあんな顔をさせない。」
もう、見たくないんだ。
悟空さんの全てに絶望してしまった表情を。
させたくないんだ。
「僕とお前が同じだと?笑わせるな。」
石はそう言って、刀を持つ手に力を入れた。
「弱い者に価値なんてない。死ね。」
ビュンッ!!
石が僕に向かって刀を振り下ろしたその時だった。
ザバァァァァァァンッ!!!
大きな波飛沫が立った。
「グァァァァァァ!!!」
聞き覚えのある声がした。
波飛沫の中から見えたのは、血を吐いている鯰震さんの姿だった。
「鯰震さんっ!?」
鯰震さんは誰かの攻撃を受け血反吐を吐いていた。
一体、誰が…?
ビュンッ!!
赤い棒が鯰震さんの体を突いていた。
この赤い棒は…。
「お、おい!!悟空!!」
「振り落とされねーように、玉にしがみついとけ!!今、良いとこなんだよ!!」
悟空さんが意地悪な顔をして、楽しそうにしていた。
やっぱり、悟空さんだったんだ!!
三蔵さんの隣には黒い大きな狐がいた。
悟空さん、カッコイイ!!
「悟空さん!!!」
「あ?黒風…って、ボロボロじゃねーか。」
「えっ!?えぇぇ!!?ど、どうなって…って、猪八戒ー!?」
猪八戒さんの姿を見た三蔵さんは驚きを隠しきれていなかった。
石は黙ったまま僕に近寄り斬ろうとしていた。
「死ね。」
ビュンッ!!
しまった!!
僕はギュッと目を瞑った。
キィィィンッ!!!
ドカッ!!
「ぐっ!!」
石の小さな声が聞こえた。
目を開けると、そこにいたのは悟空さんだった。
石は僕達と少し距離を空けて脇腹を押さえていた。
「何だお前。」
悟空さんはそう言って、石を睨み付けた。
「おい、黒風。平気か。」
「は、はい!!」
「なら、猪八戒の所に行ってくれ。」
ご、悟空さんが僕に頼み事を!?
パァァァァァァァァ!!
「は、はい!!」
僕は急いで猪八戒さんの元に向かった。
玉の姿を見つけた哪吒は玉の元に向かい刀を振り下ろした。
キィィィンッ!!
だが、玉の元に向かったのは哪吒だけではなかった。
「け、捲簾!?」
沙悟浄の姿を見た玉は驚きのあまり捲簾の名を叫んだ。
「なっ!?だ、誰だその子!?」
三蔵もまた、哪吒の姿を見て驚いた。
「この女の狙いは玉なんだよ!!良いからお前も玉を守れ!!」
「え、えっ!?玉を狙ってる!?」
「見つけた。経文。」
困惑している三蔵を他所に哪吒が静かに呟いた。
猪八戒ー
この女、全く隙がない。
どうやって攻めようかイメージしても、俺はこの女に斬られる。
俺が銃と鉄扇しかないからなのか。
それとも、この女が戦場に慣れている所為なのか。
額に冷や汗がら流れる。
この感覚、いつぶりだ…?
刀や剣の場合だったら、どうだ?
頭をフル回転させながら戦術を練る。
パキッ…。
パキパキパキパキ…。
「お、おい。お前の周りに鉄?みてーのが集まってるけど…。」
後ろにいる捲簾に声を掛けられ、ふと周りに視線を向けた。
俺の周りに小さな鉄の欠片が集まって来ていて、欠片同士がくっ付き始めた。
パキパキパキパキッ!!
鉄で出来た刀に姿が変化した。
どうやら本当に俺の意思で黄風の力を扱えるようだ。
手にズッシリと重みを感じた。
「貴方のその、刀は…。黄風の物では?」
女の隣にいる金髪の男が、俺が持っている刀について尋ねて来た。
黄風の事を知っている…のか。
だとしたら、黄風の仲間か?
「だったら?アンタ等はアイツの仲間?それとも、敵さん?」
「それは貴方には関係ありません。その力が黄風の物だと分かっただけで、こちらは満足です。」
男はそう言って、刀を構え直した。
「1人増えようがどうでも良い。全て斬り落とすまでの事。」
ズンッ!!
男が刀を構え直した瞬間、体に重みがのし掛かった。
「何っだ?急に体が重く…、うがっ!!」
ズンッ!!
ドンッ!!
そう呟いた瞬間だった。
体が地面に吸い付くように引き寄せられ、体が言う
事を聞かなかった。
この場にいる俺達だけが地面に倒れたまま起き上がれなかった。
何だ…これっ!?
「ちょ…はっかいさんっ。これ、重力ですよ…っ。」
隣にいる黒風が声を掛けて来た。
「重力…って、そんなのアリかよっ!?」
ググググッ…!!
力を入れて重力に逆らおうとしたが、すぐに地面にくっ付いてしまう。
シュシュシュシュッ!!
黒い影が地面を走って行くのが分かった。
それと同時に白い煙が俺達を包み込んだ。
陽春と緑来か?
チャプンッ…。
水の滴る音が聞こえた。
白い煙に包まれた哪吒と石は全く動揺していなかった。
気配を察知した哪吒が口を開けた。
「石。」
「御意。」
シュシュシュシュッ!!
陽春が影を使い、影を尖らせた状態で哪吒と石に向かって来ていた。
緑来も姿を煙に変えながらナイフを飛ばした。
石は素早く指を動かして九字を切りながら「オン、
アジャラダセンダハタヤ、ウン。」と呟いた。
*退魔術*
パァァァァァァァァンッ!!
爆発音と共に白い光に包まれた。
「キャァアァァァ!!」
「あがっ!!」
陽春と緑来が人の姿に戻され弾き飛ばされてしまった。
シュンッ!!
石が前に意識を集中させている時に、鏡花水月の技を使い沙悟浄が石に向かって刀を振り下ろした時だった。
キィィィンッ!!
哪吒が素早い動きで沙悟浄の攻撃を受け止めたのだった。
「ッチ。反射神経良すぎて気持ち悪いな。」
沙悟浄は苦笑いしながら呟いた。
「死にたいのなら殺してやるよ。」
哪吒はそう言って、沙悟浄の攻撃を弾き、すぐさま哪吒は刀を振り下ろした。
キィィィンッ!!
沙悟浄は何とか、哪吒の攻撃を受け止めたが、ビリビリとした感触が剣から手に伝わった。
重さと剣と刀が響き合う。
煙が晴れ、重力から解放された猪八戒と黒風は目の前の光景を見て驚いた。
「陽春!?緑来!?」
猪八戒の目の前には血だらけの体になった陽春と緑来が倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
黒風は慌てて2人に近寄った。
2人はゆっくりと体を起こし、上がり切った息を整えて始めた。
「だい…、じょうぶよ。」
「それよりも、アイツの使った技は…?見た事も聞いた事もない技だ…。」
「抗うと言うのならお相手しましょう。」
石はそう言って、自分の周りに人形の形をした札をばら撒いた。
人形の形をした札はヒラヒラと石の周りを浮きながら回っている。
「も、もしかしてっ。」
黒風は石と札、そして女を交互に見てハッとした様子で言葉を続けた。
「どうしたんだ?」
「猪八戒さん…。僕、この人達を見た事があります。いえ、知っています…。」
黒風の言葉を聞いた猪八戒を含め沙悟浄達は驚いていた。
黒風を見た石は暫く考え込んだ後に「あぁ…。」と短い言葉を吐いた。
「よく見たら…、貴方は牛魔王の仲間でしたよね?六大魔王なのに使えない妖の。」
石の言葉を聞いた猪八戒は眉間がピクッと動いた。
「あ?」
猪八戒の低い声を聞いた石はクスッと笑った。
「あ、もしかして気に触りました?でも、事実ですので…。それは貴方自身が分かってる事ですよ
ね。」
石はそう言って黒風に視線を向けた。
「こ、この人の言っている事は正しいです。だって、この人達は毘沙門天さんが作った半妖(ハンヨウ)なんですから…。」
「「「半妖!?」」」
猪八戒と沙悟浄、陽春と緑来の声が重なった。
「半妖って…、半分妖怪で半分は人間…って事?」
「そ、そうです。」
「で、でも、神が何で半妖を作ったのよ?!何の為に?それと、コイツ等がさっきから呪文?みたいなヤツも何!?」
答えた黒風に陽春は詰め寄った。
「落ち着つけよ陽春。黒風が喋れねーだろ。」
猪八戒はそう言って、陽春を黒風から引き剥がした。
「太陽神聖と言う妖怪退治の部隊の人々です。その人達が使った技は陰陽術です。」
「陰陽術?!三蔵と同じ技が使えんのか!?」
「はい。陽春さんと緑来さんの傷が治っていませんよね?それが何よりも証拠です。」
黒風の言葉を聞いた猪八戒は、陽春と緑来の傷が治っていない事に気が付いた。
「普通の攻撃だったら、すぐに治りますが…。まともに術を受けたら僕達は死にます。」
「そう言う事かよ。」
沙悟浄はそう言って、哪吒の方に視線を送った。
「だから、俺の術が通用しなかった訳か。半妖のくせに妖怪狩りをすんのか。同類殺し?」
バリバリッ!!
石の周りにいた札が勢いよく沙悟浄の左腕に張り付いた。
グルンッ!!
ボキッ!!
沙悟浄の左腕が本来、曲がらない方向に曲がり骨の折れる音が聞こえた。
「ぐぁぁぁぁああ!!」
「捲簾!?」
猪八戒は慌てて、左腕を押さえながら蹲っている沙
悟浄に駆け寄ろうとした時だった。
シュンッ!!
猪八戒の足元に短剣が突き刺さった。
「哪吒太子を、我々を侮辱するなんて妖風情が生意気なんだよ。」
穏やかで涼しい顔をしていた石の顔から笑顔が消えた。
丁寧な言葉から、乱暴な口調に変わった。
「な、何?アイツ、急に口調が変わった?」
石の変貌に陽春は付いて行けていなかった。
「い、いや、この人の本質はこっちなんです…。」
「そ、そうなのか?」
「外面が良いって事…?」
黒風から石の本性を聞いた陽春と緑来は苦笑いをした。
「ペラペラとうるせぇーな。何?牛魔王に捨てられたお前が何で、そっち側にいるわけ?」
そう言って石は、乱暴に頭を掻いた。
「石。口調が戻ってるけど…。」
「僕の姫が侮辱されたら腹が立つだろ。僕は貴方の道を邪魔する奴等はぶっ殺すって決めてるんで。」
「コイツを殺すのはやめろよ石。」
「分かってますよ。経文の居場所を吐かせる為でしょ?」
「分かってるなら良い。」
カツカツカツ…。
沙悟浄に近付いた哪吒は被っていたフードを取り、沙悟浄の髪を乱暴に掴んだ。
ガシッ!!
「お、おい!!」
猪八戒が沙悟浄の髪を掴んでいる哪吒の手を払おうとした瞬間。
シュンッ!!
猪八戒の首筋に石の刀の刃が刺さった。
ツゥ…。
猪八戒の首筋に赤い血が流れた。
「汚い手で哪吒太子に触るな。」
石はそのまま猪八戒の肩を掴み、近くにある大きな岩に投げ飛ばした。
ドガーンッ!!!
「ガハッ!!」
「猪八戒さん!!!」
ビュンッ!!
猪八戒の元に駆け寄ろうとした黒風の右足に、石が人形の形をした札を飛ばした。
石が指をグイッと曲げると、黒風の右足が逆の方向に曲がった。
ボキッ!!
「あ、ぁぁあぁぁぁぁあ!!!」
黒風は右足を抑えながら地面に転がった。
「「頭!!!」」
陽春と緑来が沙悟浄の元に走り出そうとした瞬間、石は素早く指を動かし両手を叩いた。
パンッ!!
「ジャクウン、バンコク。」
石が両手を叩いたと同時に光の蜘蛛の巣が現れ、陽春と緑来の体を拘束した。
ギュュュウ!!
「なっ!?」
「くっそっ!!何なのよ!!この糸!!」
「お前等はそこで黙って見てろ。」
ズルッ…、ズルッ…。
黒風は曲がった足を引き摺りながら、猪八戒の元に向かっていた。
岩の尖った部分に体が刺さってしまい、一時的に意識を失ってしまっていた。
「ちょ…、はっ、かいさんっ!!」
黒風は足の痛みに耐えながら、前に進んでいた。
「なっに、すんだっ!!」
沙悟浄はそう言って、哪吒を睨み付けた。
哪吒の黄色くて丸い瞳が沙悟浄の姿を捉えた。
「ここに経文がある事は分かっている。経文をどこ
に隠した。」
グイッと哪吒が沙悟浄の顔を近寄せた。
だが、沙悟浄は経文と言う言葉を初めて聞いたし、
経文がどう言う物なのか分からなかった。
「そっん、なの知らねーよ!!」
ゴンッ!!
沙悟浄の言葉を聞いた哪吒は、沙悟浄の顔を地面に強く打ち付けた。
「ガッハ!!」
「「頭!!!」」
顔を地面に打ち付けたられた沙悟浄を見て陽春と緑来が叫んだ。
ゴンッ!!
ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ!!
哪吒は黙って沙悟浄の顔を地面に打ち付けた。
「や、やめて!!やめてよ!!!それ以上したら、頭が死んじゃうよ!!!」
陽春の言葉を聞いた哪吒は、陽春の方に視線を向けた。
「妖なんだから傷は治る。死ぬ訳じゃないだろ。」
「っ!!?」
哪吒は真顔のまま陽春に言葉を放った。
「本当に知らないのか?」
「知らねーって言ってるだろ…?」
「だが、お前は知っている筈だろ。」
「は…?」
哪吒は再び血だらけの沙悟浄の顔を覗き込んだ。
「見つけた。」
「見つけた…?って…。」
「お前が飼い慣らしてる猫。」
「っ、玉が何だって言うだよ。」
哪吒の瞳は相手の記憶を見る事ができ、経文の気配を辿る事が出来る。
「テメェ…。玉に何かしてみろ。殺すぞ。」
沙悟浄は強く哪吒を睨み付けた。
ズルッ…、ズルッ。
カツカツカツ…。
猪八戒の元に向かっている黒風の元に、石が足速に
向かっていた。
ガシッ。
「ゔっ!!」
黒風に追い付いた石は、黒風の背中を強く踏み付けた。
「お前、役に立たないのに何?役に立とうと頑張ってる訳?」
グリグリと踵を強く黒風の背中に練り込んだ。
ガシッ!!
そのまま石は黒風の髪を乱暴に掴み、頬を強く殴り付けた。
ゴンッ!!
「ゔっ!!」
石は黙ったまま、何度も何度も黒風を殴り続けた。
黒風ー
痛い、痛い、痛い…。
足も凄く痛いし、顔だってめちゃくちゃ痛い…。
僕は、僕は…。
牛魔王さんの元にいた時は、自分の存在意義が分からなかった。
牛魔王さんは僕を必要とはしなかった。
僕の能力はちっぽけな物で、戦えもしない僕はいつも屋敷に残されていた。
他の皆んなも僕の事を邪魔扱いはしなかったものの、心のどこかではきっと邪魔だったんだろう。
そんな感じはしていた。
だから、僕は皆の邪魔にならないようにしていた。
そんな中、大きな宴の時に牛魔王さんが1人の男を連れて来た。
今でもハッキリと覚えている。
赤茶色の髪を靡かせ、凛々しく強いオーラを放っていた悟空さんを…。
この時の僕は、悟空さんを新しく六大魔王に入れ僕を抜けさせるんだと思っていた。
だけど、牛魔王さんは悟空さんと盃を交わしたのに、あの人を地獄に落とす計画を立てていた。
どうして牛魔王さんは、悟空さんを落とそうとしているのか分からなかった。
悟空さんは、僕の事を弟のように可愛がってくれた。
僕を否定せず、僕をそのまま理解してくれた。
悟空さんの役に立ちたい。
そんな気持ちが僕の中で芽生えた。
牛魔王さんじゃなかったら良かったのに。
僕を見つけてくれたのが、悟空さんだったら良かったのに。
何年か経った頃、僕の目の前に広がった光景は最悪な物だった。
悟空さんの裁判が行われていた。
体はボロボロで、瞳に覇気を感じられなかった。
悟空さんは、悟空さんは…。
ただ、大切な人が出来ただけなのに…。
どうして、こんな酷い事が出来るんだ!?
僕はキッと牛魔王さんを見つめた。
牛魔王さんは、毘沙門天さんとニヤニヤしながら悟空さんの事を見ていた。
この人達は…、"鬼"だ。
この計画を立てたのは毘沙門天さんだ。
毘沙門天さんは神でありながらも、妖怪を使って
色々な実験を行っていた。
人を殺し、妖を殺し。
一体、どれだけの者を殺せば毘沙門天さんの気は済むんだ?
毘沙門天さんと一緒になって、牛魔王さんは変わった。
冷酷さは増し、僕の事を捨てた。
捨てられる覚悟は出来ていたし、寧ろ捨ててくれて良かった。
だけど、僕はあの裁判の日。
黙って悟空さんの審判を見る事しか出来なかった。
流れ出しそうな涙を堪えながら傷付いた悟空さんを
ただ、見つめる事しか出来なかった。
僕は…、好きだって思えた人を守れるのだろうか…。
僕は観音菩薩さんに貰った天地羅針盤(テンチラシンバン)を使い、悟空さんの居場所を調べた。
500年経ったから、悟空さんは外に出て来ている筈だ!!
僕は天地羅針盤を頼りに、悟空さんの元に向かった。
会いたい気持ちと、怖い気持ちが一緒だった。
悟空さんは、僕と会っても…。
前と変わらずに接してくれるだろうか…。
悟空さんは、やっぱり…。
凄く優しかった。
再開した僕を受け入れてくれた。
今度こそ、僕は悟空さんを、悟空さんが大事にしている人々を守りたい。
だからこそ、僕は悟空さんを探したんだ。
ゴンッ!!
僕は石と言う男に殴られながらも、気を失っている猪八戒の元に向かった。
「こんのっ、糞妖怪が!!」
石はそう言って、僕の腹を強く蹴った。
「ゔっ!!」
僕はあまりの痛さに、蹲ってしまった。
「お前なんかに何が出来るって言うだ。」
「僕はっ、僕は、後悔したくないんだ!!」
今まで生きてきた中で、こんな大きな声を出したのは初めてだった。
僕はもう、後悔なんてしたくない。
こうしていれば良かった。
行動していれば良かった。
僕は、僕は…。
何も出来なかった500年をずっと、後悔していた。
「君があの子を思うのと、お、同じようにっ。僕は、僕は…、あの人の役に立ちたい。」
ズキズキと痛む体に鞭を打ちながら立ち上がった。
「僕は、あの人の為になる事をしたい。もう、二度と悟空さんにあんな顔をさせない。」
もう、見たくないんだ。
悟空さんの全てに絶望してしまった表情を。
させたくないんだ。
「僕とお前が同じだと?笑わせるな。」
石はそう言って、刀を持つ手に力を入れた。
「弱い者に価値なんてない。死ね。」
ビュンッ!!
石が僕に向かって刀を振り下ろしたその時だった。
ザバァァァァァァンッ!!!
大きな波飛沫が立った。
「グァァァァァァ!!!」
聞き覚えのある声がした。
波飛沫の中から見えたのは、血を吐いている鯰震さんの姿だった。
「鯰震さんっ!?」
鯰震さんは誰かの攻撃を受け血反吐を吐いていた。
一体、誰が…?
ビュンッ!!
赤い棒が鯰震さんの体を突いていた。
この赤い棒は…。
「お、おい!!悟空!!」
「振り落とされねーように、玉にしがみついとけ!!今、良いとこなんだよ!!」
悟空さんが意地悪な顔をして、楽しそうにしていた。
やっぱり、悟空さんだったんだ!!
三蔵さんの隣には黒い大きな狐がいた。
悟空さん、カッコイイ!!
「悟空さん!!!」
「あ?黒風…って、ボロボロじゃねーか。」
「えっ!?えぇぇ!!?ど、どうなって…って、猪八戒ー!?」
猪八戒さんの姿を見た三蔵さんは驚きを隠しきれていなかった。
石は黙ったまま僕に近寄り斬ろうとしていた。
「死ね。」
ビュンッ!!
しまった!!
僕はギュッと目を瞑った。
キィィィンッ!!!
ドカッ!!
「ぐっ!!」
石の小さな声が聞こえた。
目を開けると、そこにいたのは悟空さんだった。
石は僕達と少し距離を空けて脇腹を押さえていた。
「何だお前。」
悟空さんはそう言って、石を睨み付けた。
「おい、黒風。平気か。」
「は、はい!!」
「なら、猪八戒の所に行ってくれ。」
ご、悟空さんが僕に頼み事を!?
パァァァァァァァァ!!
「は、はい!!」
僕は急いで猪八戒さんの元に向かった。
玉の姿を見つけた哪吒は玉の元に向かい刀を振り下ろした。
キィィィンッ!!
だが、玉の元に向かったのは哪吒だけではなかった。
「け、捲簾!?」
沙悟浄の姿を見た玉は驚きのあまり捲簾の名を叫んだ。
「なっ!?だ、誰だその子!?」
三蔵もまた、哪吒の姿を見て驚いた。
「この女の狙いは玉なんだよ!!良いからお前も玉を守れ!!」
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「見つけた。経文。」
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