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第四章 三蔵一行旅事変
水上戦線 参
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一方、その頃ー
源蔵三蔵と玉は、鯰震(ネンシン)を倒すべく結界の
中で策略を立ている中で、三蔵の作った結果を鯰震は容赦なく攻撃をし続けていた。
ドゴーンッ!!
ドゴーンッ!!
「うわっわ!?」
結界の中で三蔵は玉を庇うように抱き上げ、揺れに耐えていた。
源蔵三蔵 十九歳ー
どうしたものかな…。
結界を張ったまま、強い術は使えない。
水中から出ない限りコイツを滅する事は出来ない。
「玉、結界を張ったまま強い術は使えないんだ。だからどうにかして水中から出たい。」
「コイツの動きを止めつつ私達は水中から出るって事?」
「それが理想だけどっ!!と!!」
俺はそう言って、結界の中から札を飛ばした。
そして、指を素早く動かし左手で人差し指と中指以
外の指を押さえて刀印を作った。
「オンアラビラウンキャン、シャラクタン!!」
今、俺が使ったのは退魔系の技だ。
あまり強力ではないが、ある程度の攻撃は弾ける筈だ。
飛ばされた札から光の槍が現れ、鯰が出した稲妻を裂くように槍が鯰に向かって飛んで行った。
稲妻は裂けるようだな。
キンッ!!
俺の飛ばした槍が鯰の前で止まった。
止まったと言うよりかは、止められたと言った方が良いだろう。
キンキンキンキンッ!!
「最年少の陰陽師の実力はこんな物か。」
バキッ!
バキバキ!!
鯰はそう言って、槍を噛み砕いた。
「ハッ、こっちは結界も張ってるんでね…。アンタはやりやすいよなー。」
俺が軽口を叩くと、玉が口を開けた。
「アイツの前に結界があるわ。」
「結界…?って、見えるのか玉!?」
「えぇ、あの結果はかなり強力な物ね。ねぇ、首に巻いてあるリボンを解いて頂戴。」
「え?リボン?」
俺は玉の首元に視線を向けた。
大きな鈴付きの真っ赤なリボンが首元に巻かれていた。
「そんなに我と戦いたいなら…、お望み通りにしてやろうか。」
鯰がそう言うと、水で作られた龍が何体も現れた。
「おいおい…。アイツ、何かおっ始(パジ)める気だぞ!?」
「大丈夫。」
「へっ?」
「早く解いて。」
俺は玉に言われた通りにリボンを解くと、鯰が作った水の龍が大きく口を開けてこっちに向かって来た。
チリンッ…。
ボフッ!!
結界の中が白い煙で充満した。
決して息苦しい煙ではなかった為、呼吸をするのには困らなかった。
何がどうなってる!?
水の龍が結果を噛み砕こうとした瞬間、大きく結果が揺れた。
ドゴーンッ!!
ドゴドゴトゴーンッ!!
「キュルルルー!!!」
何かの鳴き声?
それよりも…。
水中がすっごく揺れてるんだが!?
何だこれ!?
グラグラと視界が揺れ、結界の中で倒れ込んでしまった。
ドサッ!!
「いってぇ…って、うおっ!?」
「キュルルル!!!」
ドゴーンッ!!
フサッ。
大きな揺れの後に柔らかい物に当たった感触がした。
「大丈夫?…そうじゃないわね。坊や?」
玉の声が聞こえた。
煙がなくなった結果の中には玉はいなかった。
まさか…。
海の中に出ちゃったのか!?
「玉!?どこにいるんだ!?」
俺は慌てて立ち上がり、周りを見渡した。
視界に黒い何かが映った。
「ここにいるわよ。」
「ここって…。」
俺の入っている結果を包むように黒いふさふさの尻尾が2本見えた。
「尻尾…?」
「後ろよ。」
そう言われて後ろを振り返って見ると、綺麗な顔立ちの大きな黒狐がいた。
「誰か分かってないみたいね。玉よ。」
「た、た、玉!?」
「式神か。」
俺の声と鯰の声が重なった。
「た、玉が大きくなった!?」
「本来はこの姿なのよ。あのリボンは観音菩薩が巻いた物。」
「これが…、玉の本当の姿…。」
猫又の本来の姿…。
鯰の周りにいた水の龍がいつの間にかいなくなって
いた。
「玉が水の龍を消したのか?」
「私の能力は、私が守る物には傷を付けれない。触れる事さえ出来ない。」
玉の能力…って、かなり凄い物じゃないのか!?
「厄介な獣を飼い慣らしおったか…。水の中でも平気で息をしておる。」
「私は普通の妖とは違うからね。」
「ほう…。観音菩薩の駒と言う事か。」
「っ!?」
アイツ…。
今、観音菩薩って言ったよな…?
「アンタ、観音菩薩の事を知ってるのか?妖怪が神の事を知ってるのはおかしくないか?」
俺がそう言うと、鯰は笑い出した。
「ワッハッハー!!おかしな事を言うな。お前の方こそ観音菩薩の友人であっただろう?」
「…は?」
鯰の言った言葉に理解が出来なかった。
俺と観音菩薩は他人だ。
お師匠と知り合いと言う認識しかない。
「あ、そうか。お前は前世の記憶がなかったんだったな。」
「なっ?!」
鯰は…、俺の前世って言ったけど、どう言う事なんだ?
俺は…、俺の前世に観音菩薩は関係…してる?
悟空も俺と初め会った時、"金蝉(コンゼン)"って言ってた。
ドクンッ。
心臓が跳ねた。
「アンタ…。」
ビリッ!!
肌にヒリヒリとする感触がした。
玉を見上げて見ると、玉の周りに白い電気が走っていた。
「勝手な事ばっかり言ってんじゃないわよ、鯰野郎。」
「おうおう、威勢の良い獣だな。だが、我にも役目があるのでな。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
鯰もそう言って稲妻を水中に落とした。
パァァアン!!
だが、鯰が発した稲妻が俺達に当たる事はなく、白い光と共に稲妻が消えた。
「これが玉の力…なのか。」
「私が坊やを守る。だから坊やはその銃を使ってあの鯰をやって。」
玉は結界の外から俺の顔を見つめて来た。
俺は霊魂銃を握り直し札を数枚取り出した。
指を素早く動かした。
「オンキリク、シュチリビリタカナダ、ナサヤサタンバヤ、ソワカ。」
そう言って指を鳴らした。
パチンッ!!
シュュンッ…。
ハンドガンの形をしていた霊魂銃がエアガンの形に変わった。
*三蔵が使ったのは霊力補助の術である。霊魂銃に霊力を注ぎ込み形を変形させた。*
「銃の形が変わった…だと?」
「俺も本気なんでね。それに、水中から出たらアンタに聞きたい事がある。」
霊魂銃に霊力を注ぎ込んだから結界が割れる可能性が高い。
ここは一か八かの賭けだ。
俺の息が持つか、鯰が先にやれるかの…賭け。
俺は霊魂銃を構え弾き金を引いた。
ドドドドドドドッ!!!
パリーンッ!!
銃弾が結界を破り鯰に向かって飛ばされた。
鯰は水で作った渦で玉の動きを止めようとしたが、
玉が白い電気を渦に放ち鯰の体に電気が走った。
ビリビリビリッ!!
「ウガッ!!」
鯰の体が大きく揺れた。
今だ!!
俺は霊魂銃を左手に持ち変え銃弾を放った。
ドドドドドドドッ!!
プシュップシュッ!!
霊魂銃の弾が鯰の体に何発か当たった。
「貴様ぁぁあぁぁあ!!」
鯰は叫びながら俺の体に尻尾を叩き落とした。
ドゴォォォーン!!
「坊や!!」
「おっとっ。」
シュルルルッ!!
鯰震が尻尾を使って玉の体を縛り上げた。
「うっぐぐっ!!」
「おっと。暴れるともっと体が締め付けられるぞ。」
「離せ!!離せ!!」
「我の大将からの命令でな。アンタには1つ聞きたい事がある。」
鯰震はそう言って、玉の顔に自分の顔を近寄せた。
「経文はどこにある。どこに隠しておる。」
鯰震の言葉を聞いた玉は、鯰震の尻尾に噛み付いた。
ガブッ!!
「アンタなんかに経文の居場所は教えない。」
「フッ。やはり経文の居場所を知っておるな。」
ドゴォォォーン!!
海の中でもがく三蔵の体は水中では言う事を効かなかった。
源蔵三蔵 十九歳ー
「ゴッポッ!!」
くっそ…!!
息がっ!!
口を押さえながらどうにかして上に上がろうとしていた。
だが、一向に上に着かなかった。
「ガハッ…!!」
やばい…。
本当に息がっ…。
体が下に沈んで行くのが分かる。
「ご…くう…。」
無意識に悟空の名前を呼んだ瞬間だった。
ガシッ!!
誰かが三蔵の腕を掴んだ。
「臨兵闘者皆陣裂在前(リン、ピョウ、トウ、シャ、カイ、ジン、ザイ、ゼン)。」
ポワンッ!!
三蔵を包むように大きな結界が現れた。
意識のない三蔵の頬を強く叩いた人物は、ただ1人。
「おい、起きろ!!」
バシンッ!!
三蔵の頬に激痛が走った。
三蔵はあまりの痛みに目を覚ました瞬間、声を上げた。
「いってえぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「おう、起きたか。」
「え、え?ご、悟空!?」
三蔵の頬に張り手をした人物は悟空であった。
「な、何で?!悟空がここに!?て、この結界は!?」
「あ?んなもん俺が張ったに決まってんだろ。」
「は、はぁ!?何で!?悟空が術を使えるんだ!?」
三蔵が驚くのも無理はないだろう。
何故、妖が陰陽師の術を使えるのか不思議でならないだろう。
「あー。まぁ、爺さんから教わったんだよ。」
「あ、そうなんだ…?でも、ここ海の中だぜ?どうやって俺の居場所が分かったの?」
三蔵の問いに答えるように悟空が説明を始めた。
数十分前ー
孫悟空は、階段を転がり落ちていた。
ドコッ!!
ドコドコドコドコドコッ!!
悟空は如意棒を使って、転がり落ちないように両壁に届くのように如意棒を伸ばした。
ガシッ!!
動きが止まった事を確認した悟空は一旦、階段に座り込んだ。
「はぁ…。体が痛てー。」
悟空は体についた埃を払いながら立ち上がり周囲を見渡した。
人のいる気配はなく、嫌な静かさが流れているのを悟空は悟った。
それと同時に強い妖怪の気配も察知した。
悟空はこの気配には身に覚えがあった。
「六大魔王の鯰震。アイツが…。」
悟空は近くにある窓を開けて海を見つめた。
水面から大きな鯰の尻尾が見えた。
悟空は尻尾を見てニヤリと笑い如意棒を持ち直した。
「牛魔王が寄越しやがったか。鯰震に牛魔王がどこにいんのか聞き出してやる。」
悟空はそう呟いた瞬間、腕輪をしている腕が引っ張られた。
ビュンッ!!
「は?はぁぁぁぁぁ!?」
窓から放り出された悟空は海の中に水壊れた。
ドポーンッ!!
コポポポポッ…。
水の中でも尚、腕を引っ張られ続けた。
悟空はもう、されるがままに腕を引っ張られていると、三蔵がいた。
「三蔵っ!?」
驚いた悟空は三蔵の腕を引っ張った。
「息をしてねーな。だけど、そんなに時間は経ってないようだし…。仕方がないな…。」
悟空はそう言って、手を横縦横縦と9回振りながら
「臨兵闘者皆陣裂在前。」と呟いた。
ポワンッ。
三蔵と悟空を包むように大きな結界が張られた。
この技は須菩提祖師(スボダイソシ)から教わった術で、悟空が使える陰陽師の技である。
結界が張られた事を確認した悟空は、三蔵を寝かせてから頬に触れた。
「おい、起きろ!!」
バシンッ!!
そして、現在に至るー
「そう言う事ね…。頬を叩く事はねーだろ?」
「そうしねーと起きなかっただろお前。それよりも鯰震がいんだろ。」
「鯰震?」
「鯰がいただろ。アイツ、牛魔王の仲間で黄風と同じ六大魔王だぜ。」
悟空の言葉を聞いた三蔵は驚きのあまり声が出なかった。
「あ、そうだ!!玉が鯰震って奴と一緒なんだよ!!早く助けに行かないと!!」
「玉?」
「捲簾が飼ってい猫で…、観音菩薩が猫又にしたんだ!!」
「説明になってるようでなってねーぞ…。」
「早く行かないと!!」
「あー!!分かったから静かにしろ。」
悟空はそう言って目を瞑った。
三蔵はただその様子を黙って見ていた。
目を開けた悟空は三蔵の手を引き、抱き抱えた。
ヒョイッ。
「は、はぁ!?ちょ、何してんの!?」
「鯰震のとこに行くんだよ。捕まってろよ。」
悟空はそう言って如意棒に足を掛けた。
ビュンッ!!
「うわぁあぁぁぁ!?」
如意棒が真っ直ぐ伸び、それに追い付くように後ろが縮んだ。
悟空と三蔵は飛んで行く如意棒に捕まり鯰震の元に向かった。
「はぁ…、はぁ…。」
「んー。中々、攻撃が当たらないな。」
鯰震と玉は水中で戦い続けていた。
玉の能力は"幸運"。
それゆえに玉への攻撃は当たらないなが、相手に攻撃する事は出来ない。
ただ、玉の体力や精神力が擦り減られて行くだけだった。
「早く経文の居場所を吐いた方がお前の為だぞ。どうせ、戦えないのだろう?」
「っ!?う、うるさいわね…。アンタをここで殺さないといけないのよ。どうしてもね。」
「ワッハッハ!!お前が我を殺すと?面白い事を言うな。」
鯰震はそう言って、大きな水の龍を召喚した。
「首さえあれば喋れるだろう?なら、下の体はいらないよな?」
「キュュュイン!!」
「っ!?」
大きな水の龍が口を開けて玉に向かって行った瞬間だった。
ビュンッ!!
ドゴォォォーン!!
伸びた如意棒が玉を擦りに抜け水の龍の喉仏を貫いた。
「キュュン!!」
如意棒に捕まっている人物を見た鯰震は驚いていた。
「お、お主は…。まさか?」
「坊や!?」
三蔵の姿を見た玉は安堵の声を吐いた。
そして、鯰震を上から見上げた悟空は口を開けた。
「よぉ、鯰震。500年振りだな。」
そう言って中指を立てた。
源蔵三蔵と玉は、鯰震(ネンシン)を倒すべく結界の
中で策略を立ている中で、三蔵の作った結果を鯰震は容赦なく攻撃をし続けていた。
ドゴーンッ!!
ドゴーンッ!!
「うわっわ!?」
結界の中で三蔵は玉を庇うように抱き上げ、揺れに耐えていた。
源蔵三蔵 十九歳ー
どうしたものかな…。
結界を張ったまま、強い術は使えない。
水中から出ない限りコイツを滅する事は出来ない。
「玉、結界を張ったまま強い術は使えないんだ。だからどうにかして水中から出たい。」
「コイツの動きを止めつつ私達は水中から出るって事?」
「それが理想だけどっ!!と!!」
俺はそう言って、結界の中から札を飛ばした。
そして、指を素早く動かし左手で人差し指と中指以
外の指を押さえて刀印を作った。
「オンアラビラウンキャン、シャラクタン!!」
今、俺が使ったのは退魔系の技だ。
あまり強力ではないが、ある程度の攻撃は弾ける筈だ。
飛ばされた札から光の槍が現れ、鯰が出した稲妻を裂くように槍が鯰に向かって飛んで行った。
稲妻は裂けるようだな。
キンッ!!
俺の飛ばした槍が鯰の前で止まった。
止まったと言うよりかは、止められたと言った方が良いだろう。
キンキンキンキンッ!!
「最年少の陰陽師の実力はこんな物か。」
バキッ!
バキバキ!!
鯰はそう言って、槍を噛み砕いた。
「ハッ、こっちは結界も張ってるんでね…。アンタはやりやすいよなー。」
俺が軽口を叩くと、玉が口を開けた。
「アイツの前に結界があるわ。」
「結界…?って、見えるのか玉!?」
「えぇ、あの結果はかなり強力な物ね。ねぇ、首に巻いてあるリボンを解いて頂戴。」
「え?リボン?」
俺は玉の首元に視線を向けた。
大きな鈴付きの真っ赤なリボンが首元に巻かれていた。
「そんなに我と戦いたいなら…、お望み通りにしてやろうか。」
鯰がそう言うと、水で作られた龍が何体も現れた。
「おいおい…。アイツ、何かおっ始(パジ)める気だぞ!?」
「大丈夫。」
「へっ?」
「早く解いて。」
俺は玉に言われた通りにリボンを解くと、鯰が作った水の龍が大きく口を開けてこっちに向かって来た。
チリンッ…。
ボフッ!!
結界の中が白い煙で充満した。
決して息苦しい煙ではなかった為、呼吸をするのには困らなかった。
何がどうなってる!?
水の龍が結果を噛み砕こうとした瞬間、大きく結果が揺れた。
ドゴーンッ!!
ドゴドゴトゴーンッ!!
「キュルルルー!!!」
何かの鳴き声?
それよりも…。
水中がすっごく揺れてるんだが!?
何だこれ!?
グラグラと視界が揺れ、結界の中で倒れ込んでしまった。
ドサッ!!
「いってぇ…って、うおっ!?」
「キュルルル!!!」
ドゴーンッ!!
フサッ。
大きな揺れの後に柔らかい物に当たった感触がした。
「大丈夫?…そうじゃないわね。坊や?」
玉の声が聞こえた。
煙がなくなった結果の中には玉はいなかった。
まさか…。
海の中に出ちゃったのか!?
「玉!?どこにいるんだ!?」
俺は慌てて立ち上がり、周りを見渡した。
視界に黒い何かが映った。
「ここにいるわよ。」
「ここって…。」
俺の入っている結果を包むように黒いふさふさの尻尾が2本見えた。
「尻尾…?」
「後ろよ。」
そう言われて後ろを振り返って見ると、綺麗な顔立ちの大きな黒狐がいた。
「誰か分かってないみたいね。玉よ。」
「た、た、玉!?」
「式神か。」
俺の声と鯰の声が重なった。
「た、玉が大きくなった!?」
「本来はこの姿なのよ。あのリボンは観音菩薩が巻いた物。」
「これが…、玉の本当の姿…。」
猫又の本来の姿…。
鯰の周りにいた水の龍がいつの間にかいなくなって
いた。
「玉が水の龍を消したのか?」
「私の能力は、私が守る物には傷を付けれない。触れる事さえ出来ない。」
玉の能力…って、かなり凄い物じゃないのか!?
「厄介な獣を飼い慣らしおったか…。水の中でも平気で息をしておる。」
「私は普通の妖とは違うからね。」
「ほう…。観音菩薩の駒と言う事か。」
「っ!?」
アイツ…。
今、観音菩薩って言ったよな…?
「アンタ、観音菩薩の事を知ってるのか?妖怪が神の事を知ってるのはおかしくないか?」
俺がそう言うと、鯰は笑い出した。
「ワッハッハー!!おかしな事を言うな。お前の方こそ観音菩薩の友人であっただろう?」
「…は?」
鯰の言った言葉に理解が出来なかった。
俺と観音菩薩は他人だ。
お師匠と知り合いと言う認識しかない。
「あ、そうか。お前は前世の記憶がなかったんだったな。」
「なっ?!」
鯰は…、俺の前世って言ったけど、どう言う事なんだ?
俺は…、俺の前世に観音菩薩は関係…してる?
悟空も俺と初め会った時、"金蝉(コンゼン)"って言ってた。
ドクンッ。
心臓が跳ねた。
「アンタ…。」
ビリッ!!
肌にヒリヒリとする感触がした。
玉を見上げて見ると、玉の周りに白い電気が走っていた。
「勝手な事ばっかり言ってんじゃないわよ、鯰野郎。」
「おうおう、威勢の良い獣だな。だが、我にも役目があるのでな。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
鯰もそう言って稲妻を水中に落とした。
パァァアン!!
だが、鯰が発した稲妻が俺達に当たる事はなく、白い光と共に稲妻が消えた。
「これが玉の力…なのか。」
「私が坊やを守る。だから坊やはその銃を使ってあの鯰をやって。」
玉は結界の外から俺の顔を見つめて来た。
俺は霊魂銃を握り直し札を数枚取り出した。
指を素早く動かした。
「オンキリク、シュチリビリタカナダ、ナサヤサタンバヤ、ソワカ。」
そう言って指を鳴らした。
パチンッ!!
シュュンッ…。
ハンドガンの形をしていた霊魂銃がエアガンの形に変わった。
*三蔵が使ったのは霊力補助の術である。霊魂銃に霊力を注ぎ込み形を変形させた。*
「銃の形が変わった…だと?」
「俺も本気なんでね。それに、水中から出たらアンタに聞きたい事がある。」
霊魂銃に霊力を注ぎ込んだから結界が割れる可能性が高い。
ここは一か八かの賭けだ。
俺の息が持つか、鯰が先にやれるかの…賭け。
俺は霊魂銃を構え弾き金を引いた。
ドドドドドドドッ!!!
パリーンッ!!
銃弾が結界を破り鯰に向かって飛ばされた。
鯰は水で作った渦で玉の動きを止めようとしたが、
玉が白い電気を渦に放ち鯰の体に電気が走った。
ビリビリビリッ!!
「ウガッ!!」
鯰の体が大きく揺れた。
今だ!!
俺は霊魂銃を左手に持ち変え銃弾を放った。
ドドドドドドドッ!!
プシュップシュッ!!
霊魂銃の弾が鯰の体に何発か当たった。
「貴様ぁぁあぁぁあ!!」
鯰は叫びながら俺の体に尻尾を叩き落とした。
ドゴォォォーン!!
「坊や!!」
「おっとっ。」
シュルルルッ!!
鯰震が尻尾を使って玉の体を縛り上げた。
「うっぐぐっ!!」
「おっと。暴れるともっと体が締め付けられるぞ。」
「離せ!!離せ!!」
「我の大将からの命令でな。アンタには1つ聞きたい事がある。」
鯰震はそう言って、玉の顔に自分の顔を近寄せた。
「経文はどこにある。どこに隠しておる。」
鯰震の言葉を聞いた玉は、鯰震の尻尾に噛み付いた。
ガブッ!!
「アンタなんかに経文の居場所は教えない。」
「フッ。やはり経文の居場所を知っておるな。」
ドゴォォォーン!!
海の中でもがく三蔵の体は水中では言う事を効かなかった。
源蔵三蔵 十九歳ー
「ゴッポッ!!」
くっそ…!!
息がっ!!
口を押さえながらどうにかして上に上がろうとしていた。
だが、一向に上に着かなかった。
「ガハッ…!!」
やばい…。
本当に息がっ…。
体が下に沈んで行くのが分かる。
「ご…くう…。」
無意識に悟空の名前を呼んだ瞬間だった。
ガシッ!!
誰かが三蔵の腕を掴んだ。
「臨兵闘者皆陣裂在前(リン、ピョウ、トウ、シャ、カイ、ジン、ザイ、ゼン)。」
ポワンッ!!
三蔵を包むように大きな結界が現れた。
意識のない三蔵の頬を強く叩いた人物は、ただ1人。
「おい、起きろ!!」
バシンッ!!
三蔵の頬に激痛が走った。
三蔵はあまりの痛みに目を覚ました瞬間、声を上げた。
「いってえぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「おう、起きたか。」
「え、え?ご、悟空!?」
三蔵の頬に張り手をした人物は悟空であった。
「な、何で?!悟空がここに!?て、この結界は!?」
「あ?んなもん俺が張ったに決まってんだろ。」
「は、はぁ!?何で!?悟空が術を使えるんだ!?」
三蔵が驚くのも無理はないだろう。
何故、妖が陰陽師の術を使えるのか不思議でならないだろう。
「あー。まぁ、爺さんから教わったんだよ。」
「あ、そうなんだ…?でも、ここ海の中だぜ?どうやって俺の居場所が分かったの?」
三蔵の問いに答えるように悟空が説明を始めた。
数十分前ー
孫悟空は、階段を転がり落ちていた。
ドコッ!!
ドコドコドコドコドコッ!!
悟空は如意棒を使って、転がり落ちないように両壁に届くのように如意棒を伸ばした。
ガシッ!!
動きが止まった事を確認した悟空は一旦、階段に座り込んだ。
「はぁ…。体が痛てー。」
悟空は体についた埃を払いながら立ち上がり周囲を見渡した。
人のいる気配はなく、嫌な静かさが流れているのを悟空は悟った。
それと同時に強い妖怪の気配も察知した。
悟空はこの気配には身に覚えがあった。
「六大魔王の鯰震。アイツが…。」
悟空は近くにある窓を開けて海を見つめた。
水面から大きな鯰の尻尾が見えた。
悟空は尻尾を見てニヤリと笑い如意棒を持ち直した。
「牛魔王が寄越しやがったか。鯰震に牛魔王がどこにいんのか聞き出してやる。」
悟空はそう呟いた瞬間、腕輪をしている腕が引っ張られた。
ビュンッ!!
「は?はぁぁぁぁぁ!?」
窓から放り出された悟空は海の中に水壊れた。
ドポーンッ!!
コポポポポッ…。
水の中でも尚、腕を引っ張られ続けた。
悟空はもう、されるがままに腕を引っ張られていると、三蔵がいた。
「三蔵っ!?」
驚いた悟空は三蔵の腕を引っ張った。
「息をしてねーな。だけど、そんなに時間は経ってないようだし…。仕方がないな…。」
悟空はそう言って、手を横縦横縦と9回振りながら
「臨兵闘者皆陣裂在前。」と呟いた。
ポワンッ。
三蔵と悟空を包むように大きな結界が張られた。
この技は須菩提祖師(スボダイソシ)から教わった術で、悟空が使える陰陽師の技である。
結界が張られた事を確認した悟空は、三蔵を寝かせてから頬に触れた。
「おい、起きろ!!」
バシンッ!!
そして、現在に至るー
「そう言う事ね…。頬を叩く事はねーだろ?」
「そうしねーと起きなかっただろお前。それよりも鯰震がいんだろ。」
「鯰震?」
「鯰がいただろ。アイツ、牛魔王の仲間で黄風と同じ六大魔王だぜ。」
悟空の言葉を聞いた三蔵は驚きのあまり声が出なかった。
「あ、そうだ!!玉が鯰震って奴と一緒なんだよ!!早く助けに行かないと!!」
「玉?」
「捲簾が飼ってい猫で…、観音菩薩が猫又にしたんだ!!」
「説明になってるようでなってねーぞ…。」
「早く行かないと!!」
「あー!!分かったから静かにしろ。」
悟空はそう言って目を瞑った。
三蔵はただその様子を黙って見ていた。
目を開けた悟空は三蔵の手を引き、抱き抱えた。
ヒョイッ。
「は、はぁ!?ちょ、何してんの!?」
「鯰震のとこに行くんだよ。捕まってろよ。」
悟空はそう言って如意棒に足を掛けた。
ビュンッ!!
「うわぁあぁぁぁ!?」
如意棒が真っ直ぐ伸び、それに追い付くように後ろが縮んだ。
悟空と三蔵は飛んで行く如意棒に捕まり鯰震の元に向かった。
「はぁ…、はぁ…。」
「んー。中々、攻撃が当たらないな。」
鯰震と玉は水中で戦い続けていた。
玉の能力は"幸運"。
それゆえに玉への攻撃は当たらないなが、相手に攻撃する事は出来ない。
ただ、玉の体力や精神力が擦り減られて行くだけだった。
「早く経文の居場所を吐いた方がお前の為だぞ。どうせ、戦えないのだろう?」
「っ!?う、うるさいわね…。アンタをここで殺さないといけないのよ。どうしてもね。」
「ワッハッハ!!お前が我を殺すと?面白い事を言うな。」
鯰震はそう言って、大きな水の龍を召喚した。
「首さえあれば喋れるだろう?なら、下の体はいらないよな?」
「キュュュイン!!」
「っ!?」
大きな水の龍が口を開けて玉に向かって行った瞬間だった。
ビュンッ!!
ドゴォォォーン!!
伸びた如意棒が玉を擦りに抜け水の龍の喉仏を貫いた。
「キュュン!!」
如意棒に捕まっている人物を見た鯰震は驚いていた。
「お、お主は…。まさか?」
「坊や!?」
三蔵の姿を見た玉は安堵の声を吐いた。
そして、鯰震を上から見上げた悟空は口を開けた。
「よぉ、鯰震。500年振りだな。」
そう言って中指を立てた。
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1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
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戦争はただ冷酷に
航空戦艦信濃
歴史・時代
1900年代、日露戦争の英雄達によって帝国陸海軍の教育は大きな変革を遂げた。戦術だけでなく戦略的な視点で、すべては偉大なる皇国の為に、徹底的に敵を叩き潰すための教育が行われた。その為なら、武士道を捨てることだって厭わない…
1931年、満州の荒野からこの教育の成果が世界に示される。
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大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。
第一機動部隊
桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。
祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。
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マルチバース豊臣家の人々
かまぼこのもと
歴史・時代
1600年9月
後に天下人となる予定だった徳川家康は焦っていた。
ーーこんなはずちゃうやろ?
それもそのはず、ある人物が生きていたことで時代は大きく変わるのであった。
果たして、この世界でも家康の天下となるのか!?
そして、豊臣家は生き残ることができるのか!?
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