西遊記龍華伝

百はな

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第弐幕 出会い、そして旅へー

三蔵との出会い

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源蔵三蔵 十九歳


五行山は金山寺から遥かに遠い場所に存在していた。

観音菩薩から地図を貰っていなかったら、辿り着く事すら出来なかっただろう。

五行山は越南(えつなん)*越南…ベトナムの事である*

つまり、五行山に行くには中国を出る事になる。

さて、どこかで船を見つけねーとな…。

金山寺から出て道を歩いていると、荷馬車に乗っている爺さんに声を掛けられた。

「げ、源蔵三蔵殿ではありませんか!?」

爺さんは俺の顔を見て驚いて大きな声を上げた。

「人の顔見て驚くって…、失礼過ぎねぇか?」

「し、失礼しました!!ま、まさかこんな所に最年少で法事試験に合格し名前を貰った源蔵三蔵殿がいるとは思ず…。」

どうやら、俺の事が噂で出回っているらしいな…。

何か、こうやって実際に驚かれると俺って凄いんだ
なって実感するな。

「それで、源蔵三蔵殿はどちらに…?」

「あ?あー。」

五行山を目指してるとは言えねーからな…。

「越南に行こうと思っている。」

俺がそう言うと爺さんは目を丸くした。

「え、越南!?」

「あぁ。」

「歩きでは無理ですよ!!私が船乗り場までお送りしますよ!!」

爺さんはそう言って荷馬車を降りて俺が座れる場所を意気揚々と準備を始めた。

人の好意を無碍(ムゲ)にする事なかれ、か。

有り難く頂戴しますか。

「悪いな。じゃあ、お言葉に甘えて宜しく頼むよ。」

俺がそう言うと爺さんの表情が明るくなった。

「はい!!さ、お乗り下さいませ!!」

俺は爺さんが乗っている荷馬車に乗り込んだ。



孫悟空 ー

観音菩薩が俺の目の前に現れてから12年が経った。

真っ白な雪景色から桃色の桜が木々を染めていた。

俺に会いに来る奴は本当に現れるのか?

そんな事を思いながら過ごしていた。

2日が過ぎれば俺はこの岩の牢獄から出られる。

早く、早くここから出たい。

出てアイツを殺したい。

爺さんや才達を殺した牛魔王を殺したい。

沸々と湧き上がる憎しみの感情が俺の活力になっている。

牛魔王が今も生きていると思うと物凄く腹が立つ。

目を閉じると殺される爺さんと審判の映像が永遠と流れる。

あの野郎のニヤケ面は今でも覚えている。

牛魔王の隣いたあの毘沙門天とか言った野郎も地獄を見せてやる。

あの2人の所為で爺さん達は死んだんだ。

ヒラヒラと舞い落ちる桜の花びらが俺の足元に落ちて来た。

そう言えば、爺さんは桜が好きだったな。

桜が咲いている時はいつも夜桜見物に付き合わされてたな。

「爺さん…。」

俺はそう呟きながら瞳を閉じた。



「ほら悟空!!見てみろ満開じゃなー。」

夜の桜道を歩きながら爺さんは俺に笑い掛けた。

「何回も見てるだろ…。」

俺は溜め息を吐きながら爺さんの隣を歩いていた。

「桜は何回見ても綺麗じゃ…。」

「本当に桜が好きだな爺さんは。」

「お前の事も好きだぞ悟空。」

突然の言葉に俺は驚いた。

「は、はぁ!?す、好きって…なんだよ!!ったく…。」

自分の顔が赤くなって行くのが分かる。

「ハハハッ!!悟空は恥ずかしがり屋だな。いつも素直なら可愛いのにのー。」

「う、うるせーな!!可愛いって言うな!!」

「はいはい。」

ブワァァァァァァァ!!

俺と爺さんの間に桜吹雪が吹き荒れた。

風が止むと血塗れの爺さんが倒れていて、辺り一面が血の海だった。

「哀れだなぁ。」

俺の目の前に現れたのは牛魔王だった。

「テメェ…!!」

俺は牛魔王の胸ぐらに手を伸ばそうとした。

だが、牛魔王の体に触れる事が出来なかった。

「アハハハ!!アハハハ!!お前に俺は殺せねぇよ悟空。いつだってお前は俺の手のひらで踊る人形なんだかな。」

憎たらしい牛魔王は俺に顔を近付けて笑った。


残り1日ー

「っ!!」

目を開けると早朝だった。

どうやら俺は眠ってしまっていたようだった。

1日寝ていたのか…俺?

体に嫌な汗が流れていた。

「嫌な夢を見ちまった。」

ザッザッザッ。

人の気配がする。

誰かが、ここに来る。

ザッザザッ。

険しい山道から現れたのは網代笠を被った若い坊さんだった。

「はぁ…、はぁ…。道が険し過ぎるだろ…。こんな所に道を無理くり作るなよな。」

なんだあのガキ…。

網代笠を被った坊さんは俺の事を見つけると凄い勢
いで近寄って来た。

ガサカザカザカサッ!!!

岩の牢獄に貼られていた沢山の札が音を立てながら剥がれ落ちた。

な、何が一体、どうなってんだ!?

俺が剥がそうとしても剥がれなかった札がコイツが
目の前に来た途端に剥がれやがった!?

若い坊さんは被っていた網代笠を外した。

見覚えのある顔が現れた。

この顔…、見覚えがある。

コイツ…もしかして…?

「やっと、やっと会えたな悟空。」

若い坊さんは俺の事を見て微笑んだ。


源蔵三蔵が越南に着いたのは金山寺を出て4週間後だった。

船を乗り継いで時間はかなり掛ってしまった。

孫悟空が解放されるまで、残り1週間。

船を降りた三蔵は急いで五行山に向かい、寝る間も惜しんで山道を歩き続けた。

三蔵は眠さを感じる事はなかった。

何故なら、ずっと会いたかった孫悟空に会えると言う好奇心にかられていたからだ。

体力の限界を迎えている三蔵の足はプルプルと震えていた。

三蔵は足に力が入らなくなり、近くにあった長い木の棒を使って険しい山道を歩いた。

やっとの思いで山頂に着いた三蔵の目の前に岩の牢
獄が現れた。

「あ、あった!!あそこに孫悟空がいるんだ!!」

カランッ!!

三蔵は持っていた木の棒を放り投げ岩の牢獄に近寄った。

岩の牢獄の隙間から痩せ細った孫悟空の姿が見えた。

三蔵は孫悟空を見た瞬間、歓喜の喜びに心が浮き上がった。

ガサカザカザカザ!!

岩の牢獄に張り付いていた札が音を立てながら剥がれ落ちた。

三蔵が近付いた事によって、孫悟空を封じていた札が剥がれ落ちたのだった。

風が吹いた勢いで孫悟空の長い前髪から金色の瞳が見えた。

三蔵は震えた声で呟いた。

「やっと、やっと会えたな悟空。」

500年後の春、美猿王と金蝉は下界で再開を果たした。

そして、止まっていたもう2人の時間も動き出した事を孫悟空と源蔵三蔵は知るよしもなかった。
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