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「どうぞ、お聞かせください」
ルーチェは言いました。
顔の左側に大きなヒビが入っていました。
肌に描かれていた塗装は消えて、凹凸による影だけが輪郭を作っています。
頭には造花のリースが被せられ、黒いワンピースの上から青いカーテンを羽織っていました。
隣ではマリィがピアノを弾いていました。
マリィはいくつかのクラシック曲を弾けるようになりました。
バッハのメヌエット、ベートーベンのエリーゼのために、ショパンの別れの歌、そしてリストの愛の夢 第3番も……
「お上手でしたね」
「ありがとう!ルーチェ」
リリシーが旅立ってから、マリィはルーチェのレッスンだけが言葉を交わす時間でした。
しかし、それ以外の時間もルーチェのそばから離れず、ずっとピアノを弾いているのでした。
「これからもたくさんの曲を教えてね、ルーチェ!私のピアノをずっと聞いてちょうだいね」
マリィが笑顔で言いました。
「はい。喜んで」
ドルチェは一礼して答えました。
「最後は鑑賞の時間です」
マリィは期待した表情で、ドルチェの前に座りました。
「お嬢様、以前お聞きいただいたチャイコフスキーの『花のワルツ』は覚えていらっしゃいますか?」
「……?」
「……」
「ごめんなさい。わからないわ」
マリィは悲しい顔をして答えました。
「申し訳ありません」
ドルチェは小さくキュルルと音を立てた後、いつもと変わらない声で言いました。
「本日はチャイコフスキーのバレエ音楽『くるみ割り人形』より『花のワルツ』を再生します」
ルーチェのスピーカーから美しいメロディが流れ始めました。
マリィはいつものようにルーチェの膝に頭をもたれさせました。
ゆったりした三拍子にマリィはたくさんの音色を見つけて、その都度ドルチェに伝えました。
ドルチェもまた、それを聞いてそっと言葉を返したのでした。
――――。
――――――――。
ルーチェは言いました。
顔の左側に大きなヒビが入っていました。
肌に描かれていた塗装は消えて、凹凸による影だけが輪郭を作っています。
頭には造花のリースが被せられ、黒いワンピースの上から青いカーテンを羽織っていました。
隣ではマリィがピアノを弾いていました。
マリィはいくつかのクラシック曲を弾けるようになりました。
バッハのメヌエット、ベートーベンのエリーゼのために、ショパンの別れの歌、そしてリストの愛の夢 第3番も……
「お上手でしたね」
「ありがとう!ルーチェ」
リリシーが旅立ってから、マリィはルーチェのレッスンだけが言葉を交わす時間でした。
しかし、それ以外の時間もルーチェのそばから離れず、ずっとピアノを弾いているのでした。
「これからもたくさんの曲を教えてね、ルーチェ!私のピアノをずっと聞いてちょうだいね」
マリィが笑顔で言いました。
「はい。喜んで」
ドルチェは一礼して答えました。
「最後は鑑賞の時間です」
マリィは期待した表情で、ドルチェの前に座りました。
「お嬢様、以前お聞きいただいたチャイコフスキーの『花のワルツ』は覚えていらっしゃいますか?」
「……?」
「……」
「ごめんなさい。わからないわ」
マリィは悲しい顔をして答えました。
「申し訳ありません」
ドルチェは小さくキュルルと音を立てた後、いつもと変わらない声で言いました。
「本日はチャイコフスキーのバレエ音楽『くるみ割り人形』より『花のワルツ』を再生します」
ルーチェのスピーカーから美しいメロディが流れ始めました。
マリィはいつものようにルーチェの膝に頭をもたれさせました。
ゆったりした三拍子にマリィはたくさんの音色を見つけて、その都度ドルチェに伝えました。
ドルチェもまた、それを聞いてそっと言葉を返したのでした。
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