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Main Story
リリシーの役目
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リリシーはスクラップヤードの浜にいました。
ここもまた、お日さまの光がよく当たる場所でした。
浜は漂流物と泥でできていましたので、貝や海藻、小さなカニといった生き物たちも住処にしていました。
縞模様のビーチチェアで、リリシーは日光浴をしていました。
空に時折、うみねこが旋回します。対岸の堤防には、等間隔でずらりと並んでいました。
そろそろ日が暮れる時間です。
「…リシー……リリシー……?」
ゴミ山の向こうからマリィの呼ぶ声が聞こえました。
ガラクタをかき分けて歩く音もします。
リリシーはビーチチェアからピョンと飛び降り、迎えにいきました。
「こっちだ、新人。その土がついてる灰色石を渡ってこい」
リリシーが言ったのはコンクリートブロックの破片でした。
マリィは足をかけ、一気に登りました。
ミャオミャオという鳴き声が波音とともに聞こえました。
見下ろすと、リリシーが翼を頭の上で振っていました。
「降りてこれるか?」
「うん!大丈夫!」
マリィは上手にガラクタを足場にして降りていきました。
「レッスンは終わったのか?」
「うん。曲が弾けるようになったら、リリシーも聞いてね」
リリシーは翼の先をくちばしにあてて、
「そりゃまぁ?いいけどよ」
と、言いました。
「ここにある物はまた向こう側と違うのね」
「こっちは海から来たやつだからな。
木の枝とかクラゲとか、たまにでけぇ魚が上がってる時もあるぜ。
俺は食わねぇが、あいつらは食いにくるな」
リリシーはうみねこの方に視線をやりました。
「生き物が動くには必要なんだろ?」
「うん」
今は雛が卵から孵った頃です。
親鳥たちは雛のために、浜でオキアミやカニを探しています。
リリシーとマリィは大きな流木に腰掛けました。
空は濃い紫色に染まり、いくつもの縦長い雲が水平線へ向かって伸びていました。
「ねぇ、リリシー。リリシーはそのうち、ここを出て行ってしまうの?」
「あぁ。俺は都会に出て、ビィッグになるからな」
マリィは不満げな表情に変わりました。
「ビッグってなあに?体を大きのに変えてもらうの?」
「ちげぇよ、ポンコツ!ビィッグってのは、有名になることさ」
「有名って何?なれたらどうなるの?」
「世界中が俺を知るってことだな。
どうなるかは計算しきれねぇ。
このリリシーの頭でもな」
「なんだか、あやふやだわ」
マリィは頬杖をついて言いました。
リリシーも理解していました。
このプログラムコードは未完成なのです。
「おれはな、もうたぶん、同じ型は一台もねぇんだ。
俺を作った会社も、人間も」
マリィは黙って、うみねこの親子を見ました。
雛が親のくちばしからオキアミを貰っています。
「同じモンがねぇってことは、俺が果たさなきゃならねぇってことだ。それが俺の役目だからな」
「リリシーの役目…」
マリィは役目というものが具体的に何かはわかりませんでしたが、一つの答えであると記憶に刻みました。
「それにオーシーも探してやらねぇとな」
「そうだね。見つかるよ、絶対」
マリィの表情がパッと笑顔に変わりました。
ここもまた、お日さまの光がよく当たる場所でした。
浜は漂流物と泥でできていましたので、貝や海藻、小さなカニといった生き物たちも住処にしていました。
縞模様のビーチチェアで、リリシーは日光浴をしていました。
空に時折、うみねこが旋回します。対岸の堤防には、等間隔でずらりと並んでいました。
そろそろ日が暮れる時間です。
「…リシー……リリシー……?」
ゴミ山の向こうからマリィの呼ぶ声が聞こえました。
ガラクタをかき分けて歩く音もします。
リリシーはビーチチェアからピョンと飛び降り、迎えにいきました。
「こっちだ、新人。その土がついてる灰色石を渡ってこい」
リリシーが言ったのはコンクリートブロックの破片でした。
マリィは足をかけ、一気に登りました。
ミャオミャオという鳴き声が波音とともに聞こえました。
見下ろすと、リリシーが翼を頭の上で振っていました。
「降りてこれるか?」
「うん!大丈夫!」
マリィは上手にガラクタを足場にして降りていきました。
「レッスンは終わったのか?」
「うん。曲が弾けるようになったら、リリシーも聞いてね」
リリシーは翼の先をくちばしにあてて、
「そりゃまぁ?いいけどよ」
と、言いました。
「ここにある物はまた向こう側と違うのね」
「こっちは海から来たやつだからな。
木の枝とかクラゲとか、たまにでけぇ魚が上がってる時もあるぜ。
俺は食わねぇが、あいつらは食いにくるな」
リリシーはうみねこの方に視線をやりました。
「生き物が動くには必要なんだろ?」
「うん」
今は雛が卵から孵った頃です。
親鳥たちは雛のために、浜でオキアミやカニを探しています。
リリシーとマリィは大きな流木に腰掛けました。
空は濃い紫色に染まり、いくつもの縦長い雲が水平線へ向かって伸びていました。
「ねぇ、リリシー。リリシーはそのうち、ここを出て行ってしまうの?」
「あぁ。俺は都会に出て、ビィッグになるからな」
マリィは不満げな表情に変わりました。
「ビッグってなあに?体を大きのに変えてもらうの?」
「ちげぇよ、ポンコツ!ビィッグってのは、有名になることさ」
「有名って何?なれたらどうなるの?」
「世界中が俺を知るってことだな。
どうなるかは計算しきれねぇ。
このリリシーの頭でもな」
「なんだか、あやふやだわ」
マリィは頬杖をついて言いました。
リリシーも理解していました。
このプログラムコードは未完成なのです。
「おれはな、もうたぶん、同じ型は一台もねぇんだ。
俺を作った会社も、人間も」
マリィは黙って、うみねこの親子を見ました。
雛が親のくちばしからオキアミを貰っています。
「同じモンがねぇってことは、俺が果たさなきゃならねぇってことだ。それが俺の役目だからな」
「リリシーの役目…」
マリィは役目というものが具体的に何かはわかりませんでしたが、一つの答えであると記憶に刻みました。
「それにオーシーも探してやらねぇとな」
「そうだね。見つかるよ、絶対」
マリィの表情がパッと笑顔に変わりました。
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