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Main Story
チャンスを掴め②
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リリシーの体が、ほとんど真下に向かって落ちていきました。
踏み込みが浅かったのです。
「しまっ……ッ‼」
リリシーはトラックの後ろのあおりをギリギリのところで掴みました。
とはいっても、リリシーの体はまだ荷台の外にあります。
這い上がろうと翼に力を入れましたが、物を引き上げるようにできてはいないので上手くいきません。
その上、荷台の囲いを留めている蝶番が今にも外れそうになっています。
「オーシー‼」
「ワンッ‼」
オーシーは重心が低かったので風の影響を受けずに荷台へ着地していました。
リリシーが助けを呼ぶ声に、自ら『サイレント』モードを切ると駆け出しました。
緊急事態を示す赤いランプがパッと点灯しました。
ほとんど役に立っていない留め具はリリシーの体重がかかったことで、走行の揺れにも耐えられそうにありません。
リリシーは早く荷台に上がろうともがきましたが、
バキンッ!
リリシーの掴んでいたあおりが倒れました。
リリシーは何とか手を離さずにいましたが、もう限界でした。オーシーが噛んで持ち上げようと荷台の縁に伏せ、頭を出しました。
――そこに再び強風が吹き荒れました。
今度はたまらずトラックもスピードを落としました。その動きがリリシーから最後の力を奪いました。
リリシーの体が冷たいコンクリートの上に落下しました。
速度が緩やかだったおかげで衝撃はほとんどありませんでしたが、それでも落ちてしまったのです。
「おいっ!ウソだろ⁉」
リリシーは全速力で車を追いかけましたが、小さなロボットの足をどんなに急いで動かしても再びスピードをあげたトラックには追いつけません。
荷台にはもう降りることもできなくなったオーシーが微動だにせず立っています。
「オーシーー‼オーーーシーーー‼」
…………
……
リリシーは駆動の限界がきて歩みを止めました。
オーシーは鳴き声も上げず、赤いランプを明滅させていました。
トラックは小さくなって消えていきました。
取り残されたリリシーは星明りの下、トボトボとスクラップヤードに帰りました。
巣にしているゴミ袋のベッドにたどり着くと、そのまま倒れて眠ったのでした。
踏み込みが浅かったのです。
「しまっ……ッ‼」
リリシーはトラックの後ろのあおりをギリギリのところで掴みました。
とはいっても、リリシーの体はまだ荷台の外にあります。
這い上がろうと翼に力を入れましたが、物を引き上げるようにできてはいないので上手くいきません。
その上、荷台の囲いを留めている蝶番が今にも外れそうになっています。
「オーシー‼」
「ワンッ‼」
オーシーは重心が低かったので風の影響を受けずに荷台へ着地していました。
リリシーが助けを呼ぶ声に、自ら『サイレント』モードを切ると駆け出しました。
緊急事態を示す赤いランプがパッと点灯しました。
ほとんど役に立っていない留め具はリリシーの体重がかかったことで、走行の揺れにも耐えられそうにありません。
リリシーは早く荷台に上がろうともがきましたが、
バキンッ!
リリシーの掴んでいたあおりが倒れました。
リリシーは何とか手を離さずにいましたが、もう限界でした。オーシーが噛んで持ち上げようと荷台の縁に伏せ、頭を出しました。
――そこに再び強風が吹き荒れました。
今度はたまらずトラックもスピードを落としました。その動きがリリシーから最後の力を奪いました。
リリシーの体が冷たいコンクリートの上に落下しました。
速度が緩やかだったおかげで衝撃はほとんどありませんでしたが、それでも落ちてしまったのです。
「おいっ!ウソだろ⁉」
リリシーは全速力で車を追いかけましたが、小さなロボットの足をどんなに急いで動かしても再びスピードをあげたトラックには追いつけません。
荷台にはもう降りることもできなくなったオーシーが微動だにせず立っています。
「オーシーー‼オーーーシーーー‼」
…………
……
リリシーは駆動の限界がきて歩みを止めました。
オーシーは鳴き声も上げず、赤いランプを明滅させていました。
トラックは小さくなって消えていきました。
取り残されたリリシーは星明りの下、トボトボとスクラップヤードに帰りました。
巣にしているゴミ袋のベッドにたどり着くと、そのまま倒れて眠ったのでした。
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