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Main Story
リリシーとオーシー①
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「旅立ちはうみねこの鳴く~」
青空の下、調子はずれな歌声が響き、堆く積まれたスクラップの間から、一体のペンギンが姿を現しました。
からだも翼も金属でできている、ロボットのペンギンです。
デコボコのゴミ山の上も危なげなくヒョイヒョイと渡って行きます。
ペンギンは周囲に向かって威勢よく呼びかけました。
「相棒!どこだ⁉相棒!」
すると赤錆色の金属と朽ちた木材の間から、
「ワンッ!」
と一声、小さな影が飛び出してきました。
目の部分が液晶になったロボット犬です。
犬は自分を呼んだ主の前まで来ると、ウィーンと関節部を鳴らして、ちょこんと座りました。
ペンギンはロボ犬を頭から爪先までチェックして言いました。
「ヨーシ、ヨシヨシ。充電ヨシ。接続部ヨシ。表示問題ナーシ!」
ロボ犬のディスプレイの縁がブルーに光るのを確認すると、ペンギンは腰を落として目線を合わせました。
「なぁ、相棒。今日こそはこのスクラップヤードとおさらばして、都会でビィッグドリーィムをつかもうぜ!」
「ワンッ!」
「このリリシーとオーシー、オレらなら必ずもう一花咲かせられるぜ、なぁ?」
『凛々しい』と名乗るペンギンは、『雄々しい』と呼ぶロボ犬の頭を小さな翼で撫でてやりました。
オーシーは嬉しそうな表情を画面に表示させました。
リリシーはオーシーを連れて、雨跡の残るプレハブ小屋の上を歩きだしました。
周囲にはカバーのとれた扇風機、逆さまの冷蔵庫、サビた電動工具に折れた道路標識など脈絡なくモノが散らかっています。
共通しているのはどれも壊れて動かないという事だけです。
このスクラップヤードではむしろ、リリシーとオーシーのように動くモノの方がずっと少ないのです。
リリシーはもう自分でも覚えていないほど古くからここにいました。
まだこのゴミ山がひとつの稜線だった時代です。
その頃は頂上から海も見えていましたが、近くの工場から立ち昇る煙が厚い雲のように空を覆っていました。
それが問題となって工場は閉鎖されました。
辺りは急に静かになってあっという間に何年もの月日が経ちました。
人の出入がなくなるとゴミ山はあっという間に大きくなっていきました。
でも幸いだったのは偶然にもリリシーはゴミ山の上の方で横たわっていて、何も積み重ならなかったことです。
青空の下、調子はずれな歌声が響き、堆く積まれたスクラップの間から、一体のペンギンが姿を現しました。
からだも翼も金属でできている、ロボットのペンギンです。
デコボコのゴミ山の上も危なげなくヒョイヒョイと渡って行きます。
ペンギンは周囲に向かって威勢よく呼びかけました。
「相棒!どこだ⁉相棒!」
すると赤錆色の金属と朽ちた木材の間から、
「ワンッ!」
と一声、小さな影が飛び出してきました。
目の部分が液晶になったロボット犬です。
犬は自分を呼んだ主の前まで来ると、ウィーンと関節部を鳴らして、ちょこんと座りました。
ペンギンはロボ犬を頭から爪先までチェックして言いました。
「ヨーシ、ヨシヨシ。充電ヨシ。接続部ヨシ。表示問題ナーシ!」
ロボ犬のディスプレイの縁がブルーに光るのを確認すると、ペンギンは腰を落として目線を合わせました。
「なぁ、相棒。今日こそはこのスクラップヤードとおさらばして、都会でビィッグドリーィムをつかもうぜ!」
「ワンッ!」
「このリリシーとオーシー、オレらなら必ずもう一花咲かせられるぜ、なぁ?」
『凛々しい』と名乗るペンギンは、『雄々しい』と呼ぶロボ犬の頭を小さな翼で撫でてやりました。
オーシーは嬉しそうな表情を画面に表示させました。
リリシーはオーシーを連れて、雨跡の残るプレハブ小屋の上を歩きだしました。
周囲にはカバーのとれた扇風機、逆さまの冷蔵庫、サビた電動工具に折れた道路標識など脈絡なくモノが散らかっています。
共通しているのはどれも壊れて動かないという事だけです。
このスクラップヤードではむしろ、リリシーとオーシーのように動くモノの方がずっと少ないのです。
リリシーはもう自分でも覚えていないほど古くからここにいました。
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それが問題となって工場は閉鎖されました。
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