5 / 23
Main Story
廃棄ロボット処理業者②
しおりを挟む
部屋に一人になり、若い男は少しだけアンドロイドの顔を見てみようと思いました。
うつ伏せ寝をさせてはいましたが、顔だけは横を向いていました。
最新のモデルだけあり、これまで回収したどの支援ロボットより人間に近い作りをしています。
どことなく椅子に座っていた時より悲しげに見えました。
使えなくなったら捨てられるのか…男は自分を重ねて同情しました。
しかし、急いですませてしまわなければなりません。
若い男は頭の中で手順を確認しました。
アンドロイドの電源を切るのに複雑な操作は必要ありませんが、廃棄処分の場合は特別なコードを入力する必要があります。
そのためのインターフェイスはアンドロイド自身が操作できないよう、肩甲骨の中央に配置されています。
ブラウスの後ろファスナーを下ろし、使用停止プログラムがインストールされた端末を接続して、アンドロイドに記録された内容にプロテクトをかけていきます。
『ピーピッ』
開始後、すぐにエラー音が鳴り響きました。
驚いて端末を確認しますが、若い男には原因などさっぱりわかりません。
エラーは外国の言葉で書かれていましたが、そもそもこの男は字がほとんど読めなかったのです。
その時廊下から親父さんの声が近づいてきました。
このまま親父さんが来て、作業が終わってないことを知ったら怒られてしまうでしょう。
怒鳴られるくらいですめば良い方ですが、もう来ないでいいとクビを切られれてしまえば、お金を借りている人に今度こそどんな目に合わされるかわかりません。
焦った男は急いで端末を外して、服を正し、頭からつま先までグルグルに梱包して台車に積み込みました。
なんとか間に合ったと思った瞬間、扉から親父さんと屋敷の夫人が入ってきました。
親父さんは人形が台車に載っているのを見て、満足げな顔を浮かべました。
「まぁ、こんな感じで。あとはお任せください」
「そうですか。お願いします」
夫人は毛布のふくらみを一瞥すると、部屋を去りました。
本来であれば、間違いなくデータが消去されたことを家主と確認するのが手順でしたが、夫人はもう、一度だってアンドロイドの顔を見るのは嫌でしたし、親父さんも後ろ暗いところがあるので、とっとと立ち去りたかったのでした。
「ほら、運び出すぞ」
親父さんが言いました。
声をかけられた若い方が妙に落ち着きがないと夫人は眉をひそめましたが、二人を扉から見送る頃にはどうやって娘のご機嫌取りをするかの方にあれこれ考えを巡らせているのでした。
うつ伏せ寝をさせてはいましたが、顔だけは横を向いていました。
最新のモデルだけあり、これまで回収したどの支援ロボットより人間に近い作りをしています。
どことなく椅子に座っていた時より悲しげに見えました。
使えなくなったら捨てられるのか…男は自分を重ねて同情しました。
しかし、急いですませてしまわなければなりません。
若い男は頭の中で手順を確認しました。
アンドロイドの電源を切るのに複雑な操作は必要ありませんが、廃棄処分の場合は特別なコードを入力する必要があります。
そのためのインターフェイスはアンドロイド自身が操作できないよう、肩甲骨の中央に配置されています。
ブラウスの後ろファスナーを下ろし、使用停止プログラムがインストールされた端末を接続して、アンドロイドに記録された内容にプロテクトをかけていきます。
『ピーピッ』
開始後、すぐにエラー音が鳴り響きました。
驚いて端末を確認しますが、若い男には原因などさっぱりわかりません。
エラーは外国の言葉で書かれていましたが、そもそもこの男は字がほとんど読めなかったのです。
その時廊下から親父さんの声が近づいてきました。
このまま親父さんが来て、作業が終わってないことを知ったら怒られてしまうでしょう。
怒鳴られるくらいですめば良い方ですが、もう来ないでいいとクビを切られれてしまえば、お金を借りている人に今度こそどんな目に合わされるかわかりません。
焦った男は急いで端末を外して、服を正し、頭からつま先までグルグルに梱包して台車に積み込みました。
なんとか間に合ったと思った瞬間、扉から親父さんと屋敷の夫人が入ってきました。
親父さんは人形が台車に載っているのを見て、満足げな顔を浮かべました。
「まぁ、こんな感じで。あとはお任せください」
「そうですか。お願いします」
夫人は毛布のふくらみを一瞥すると、部屋を去りました。
本来であれば、間違いなくデータが消去されたことを家主と確認するのが手順でしたが、夫人はもう、一度だってアンドロイドの顔を見るのは嫌でしたし、親父さんも後ろ暗いところがあるので、とっとと立ち去りたかったのでした。
「ほら、運び出すぞ」
親父さんが言いました。
声をかけられた若い方が妙に落ち着きがないと夫人は眉をひそめましたが、二人を扉から見送る頃にはどうやって娘のご機嫌取りをするかの方にあれこれ考えを巡らせているのでした。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
蒼海のシグルーン
田柄満
SF
深海に眠っていた謎のカプセル。その中から現れたのは、機械の体を持つ銀髪の少女。彼女は、一万年前に滅びた文明の遺産『ルミノイド』だった――。古代海洋遺跡調査団とルミノイドのカーラが巡る、海と過去を繋ぐ壮大な冒険が、今始まる。
毎週金曜日に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる