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Main Story
廃棄ロボット処理業者①
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翌週、二人組の業者が屋敷を訪れました。
髪も髭も整えていないその風貌に夫人は不快感を隠しもしませんでしたが、それよりも早く人形の始末をつけたくて、二人を中に通しました。
アンドロイドとの別れを知らされてから五日間、幼い少女はほとんど練習室から出ようとしなかったからでした。
二人は廊下で、最後の挨拶をすませた少女とすれ違いました。
少女の肩は力なく落ち、目はウサギのように赤くなっていました。
翌日、美しいジュークボックスの形をした新しいロボットが届きますが、少女がその後ピアノの前に座ることはありませんでした。
事情を知らない業者の男達は、練習室につくとすぐに作業に取り掛かりました。
急ぐ理由は、実のところ本物の業者が到着する前に作業を終わらせてお金を横取りしなければならなかったからです。胸につけている写真入りの資格証明書はニセものでした。
本来、アンドロイドの廃棄は国の試験に合格した者にしかできません。
しかし二人のうち年老いた方はその試験ができる前から廃棄ロボット処理業者を営んでおり、資格ができたことで表向きには廃業せざるを得なかったのです。
それからというもの、男は正規の依頼があった業者に嘘の時間変更の連絡を入れて、仕事を奪うという悪さを働くようになりました。
それはもう生計というより意地のようなものでした。
若い方の作業員はまだほとんど経験のない新人でした。
うすうす悪いことをしていることはわかっていましたが、借りたお金を返すことができなくなり、紹介された親父さんのもとで働くしかありませんでした。
二人はアンドロイドを髪がばらけないよう布で覆い、椅子から降ろしました。
先に夫人がセキュリティを解除しているので、アンドロイドはされるままです。
持ち込んだ丈夫な紙の束と毛布を重ねた上に横たわらせる際、若い男はスカートが皴にならないよう脚を持ち上げて直してやりました。
その振る舞いをめめしいと思った親父さんは呆れた顔で言いました。
「おい。もう電源の切り方は覚えてるな。
俺は奥さんにサインと金貰ってくるから。
その間に台車乗せとけ」
「へぇ」
若い男の気の抜ける返事を聞くと、親父さんは扉を開けて出ていきました。
髪も髭も整えていないその風貌に夫人は不快感を隠しもしませんでしたが、それよりも早く人形の始末をつけたくて、二人を中に通しました。
アンドロイドとの別れを知らされてから五日間、幼い少女はほとんど練習室から出ようとしなかったからでした。
二人は廊下で、最後の挨拶をすませた少女とすれ違いました。
少女の肩は力なく落ち、目はウサギのように赤くなっていました。
翌日、美しいジュークボックスの形をした新しいロボットが届きますが、少女がその後ピアノの前に座ることはありませんでした。
事情を知らない業者の男達は、練習室につくとすぐに作業に取り掛かりました。
急ぐ理由は、実のところ本物の業者が到着する前に作業を終わらせてお金を横取りしなければならなかったからです。胸につけている写真入りの資格証明書はニセものでした。
本来、アンドロイドの廃棄は国の試験に合格した者にしかできません。
しかし二人のうち年老いた方はその試験ができる前から廃棄ロボット処理業者を営んでおり、資格ができたことで表向きには廃業せざるを得なかったのです。
それからというもの、男は正規の依頼があった業者に嘘の時間変更の連絡を入れて、仕事を奪うという悪さを働くようになりました。
それはもう生計というより意地のようなものでした。
若い方の作業員はまだほとんど経験のない新人でした。
うすうす悪いことをしていることはわかっていましたが、借りたお金を返すことができなくなり、紹介された親父さんのもとで働くしかありませんでした。
二人はアンドロイドを髪がばらけないよう布で覆い、椅子から降ろしました。
先に夫人がセキュリティを解除しているので、アンドロイドはされるままです。
持ち込んだ丈夫な紙の束と毛布を重ねた上に横たわらせる際、若い男はスカートが皴にならないよう脚を持ち上げて直してやりました。
その振る舞いをめめしいと思った親父さんは呆れた顔で言いました。
「おい。もう電源の切り方は覚えてるな。
俺は奥さんにサインと金貰ってくるから。
その間に台車乗せとけ」
「へぇ」
若い男の気の抜ける返事を聞くと、親父さんは扉を開けて出ていきました。
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