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代表
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「我々ハ三重連星系ヨリノ使者デアル。地球人ニ告グ、直チニ降伏セヨ」
ある日突然、世界中の大都市上空に出現した輝く円盤群より地球人類に発せられたメッセージ。当然の如く東京の上にも現れたそれに、パニックを起こした国家の中枢は麻痺を起こした。
「ミサイルで撃ち落とせ!」
「馬鹿を言うな、技術レベルの差が想定以上なら日本は全滅するぞ」
「やはりここはアメリカに相談しては」
「アメリカは何でも屋ではない!」
言葉を重ねれば重ねるほど増して行く混乱。それを見越していたのであろう三重連星系人たちから、ある提案がなされる。
「諸君ラ地球人全員ノ意見ガ、マトマルトハ期待シテイナイ。コチラデ無作為ニ選ンダ地球人ノ代表ニ、降伏ノ是非ヲ問ウコトニシヨウ」
これを聞いた地球人の誰もが思った。遊んでいる、こちらの絶望を楽しんでいると。しかしこの提案を即座に拒絶できるようなシステムを持つ国家はどこにもない。三重連星系人たちはテレビとインターネットの回線に割り込み、全地球人類に向かって一つの映像を流した。
映し出されたのは一軒の、古い平屋の日本家屋。
「コノ家ニ住ム者ニ、三十分ノ時間ヲ与エル。降伏カ戦争カ、サア選ブガイイ!」
もっともその家の中はいま、テレビやインターネットに目をやれるような状況ではなかったのだが。
就活に使ったのだろうリクルートスーツに身を固め、今日生まれて初めてツーブロックにしましたと言わんばかりの髪型をした若い男が居間に正座している。
「お父さん!」
この一言が床の間を背にあぐらをかく白髪頭の老人、すなわちこの家の主人である岩屋頑二郎の逆鱗に触れた。
「黙れこわっぱ! 貴様などにお父さんと呼ばれる筋合いはないわ!」
これに若い男の隣に座る女が抗議の声を上げた。
「お願いよお父さん、良一さんの話を聞いてあげて!」
その手を取って握りしめる良一。
「ありがとう、理佳子さん」
「良一さん。父は頑固だけれど、話せばきっとわかってくれます」
「ええ、僕もそう思っています。理佳子さん、愛してる」
「私もよ、愛してるわ良一さん」
見つめ合う二人を白髪頭の頑二郎は苦々しくにらみつけている。
「もうお父さんったら、話くらい聞いてあげればいいのに」
頑二郎の隣で妻の理美は苦笑している。しかし頑二郎は頑として首を縦には振らない。
「聞いてやる話などあるものか、馬鹿馬鹿しい」
部屋の中には柱時計の振り子の音が響いていた。
十分が経過した。しかし家の中からは何の反応もない。
「フッフッフ。責任ノ重サニ苦悩シテイルノカ、愚カナ地球人ヨ」
三重連星系人は静かにあざ笑った。
一方、てんてこ舞いなのが日本の首相官邸である。
「あれはどう見ても日本の家だろう、どこの誰が住んでいるかわからないのか」
苛立ちをぶつける首相に、秘書官は困り顔だ。
「そうはおっしゃいますが、せめて表札でも映らない限り住人の特定は極めて困難かと」
「こんなときのためにマイナンバーを整備したんだろう!」
「首相、マイナンバーに家の情報は入っておりません」
冷静な秘書官のツッコミに、首相のボルテージはかえって上がった。
「世界の! 世界の命運がいま日本に託されているんだぞ! それなのに政府は指を咥えて見ているしかできないのか!」
と、そのとき秘書官のスマホが鳴った。電話に出た秘書官は驚愕を顔に浮かべて首相を見つめる。
「首相、警察庁長官からなのですが」
「何の用だ、こんなときに!」
「いえ、それが。この家を特定したという『住所特定マニア』からの通報があったらしく」
「……何だと?」
良一は改めて畳に両手をついた。
「理佳子さんを僕にください!」
「貴様などに娘をやる訳があるか! 馬鹿も休み休み言え!」
頑二郎は目を吊り上げて噛み付かんばかりに唸っている。だが良一は一歩も引かない。
「何故ですかお父さん、僕にいったいどんな問題があるのです。理佳子さんのためならどんなことでも直してみせます、何がいけないのかおっしゃってください!」
これに頑二郎は白髪頭を抱えた。やれやれという風に大きなため息をつく。
「良一くんと言ったね、君はいま何歳だ」
「二十三歳です。確かにまだ頼りないかも知れません。でも理佳子さんを愛する心は本物です!」
けれどそんな言葉など聞いていないかのように、老人は己が娘に顔を向けた。
「理佳子、おまえは何歳だったかな」
すると理佳子は不満げに口を尖らせる。
「……四十五歳」
「でも!」
良一は理佳子の手を握った。
「愛があれば!」
理佳子も良一の手を握り返す。
「歳の差なんて!」
そんな二人に頑二郎は追い打ちをかける。
「離婚歴は」
理佳子は視線をそらした。
「……バツ三」
「離婚理由は」
「パパ活、パパ活、パパ活」
「子供は何人いたっけな」
「十八歳、十五歳、十二歳」
白髪頭の父親は呆れ返った顔で娘を見つめ、その隣の良一も見つめた。
なのに良一はまた理佳子の手を握る。
「でも愛があれば!」
理佳子も握り返す。
「現実なんて!」
「現実から目をそらすなーっ!」
頑二郎は畳をバンバン叩いた。
「いいか理佳子、おまえはどう考えても結婚に向いておらんのだ! 現実を認めていい加減もう諦めろ!」
この言葉には良一も畳を叩いて抗議する。
「そんなことはありません! 四度目の正直ということだってあるでしょう!」
「アホか! 二度あることが三度あったんだぞ、四度目もあるに決まっとろうが!」
頑二郎がそう怒鳴ったとき、床の間に置かれていた黒電話が鳴った。
「ええい、うるさい!」
受話器を叩き付けられ、ガチャ切りされてしまう黒電話。
首相秘書官は「あっ」と声を出し、スマホを口元に当てたまま絶句した。
「どうした。出ないのか」
不安げな首相の声で我に返ったのか、秘書官は困惑した顔でつぶやく。
「切られてしまいました」
「何だと、リミットまであと十分もないんだぞ。何度でもかけろ!」
首相はため息をつきながら、部屋の中を熊のようにウロウロするばかりだった。
しかしこの動きに気付かないほど三重連星系人は間抜けではない。
「ホウ、意外ト地球人モシブトイナ。コノ期ニ及ンデ策ヲ弄スルトハ。ダガ」
東京上空の輝く円盤群の中から一機が不意に姿を消し、次の瞬間あの日本家屋の上に浮かんだ。円盤の下から円筒状の光が地面にまで達し、その中を三人の、銀色の全身タイツを身にまとった三重連星系人がエレベーターのように降りてくる。
三重連星系人たちはこの様子を世界に同時中継した。地球最後の瞬間へのカウントダウンが始まったのだ。
三重連星系人は家の引き戸をガラガラ! と勢いよく開けた。
「サア地球人ヨ、決断ヲ下スガイイ! 降伏カ、サモナクバ全滅カ!」
「やかましいわああああああああああああっ!!」
頑二郎の怒声は三重連星系人を三歩後ずらせた。
「さっきから何度も何度も電話かけてくるのはおまえらか! いい加減にしろ!」
「エ、イヤ、ソレハ我々デハナク」
「言い訳をするな馬鹿者どもが! いまおまえらの相手なんぞしているヒマはないのだ、とっとと帰れ!」
あまりの剣幕で言われっぱなしの三重連星系人たちだったが、彼らとてその能力の高さを買われて使者に選ばれたエリート、ハイそうですかと引き下がれはしない。
「優先順位ヲ考エロ。オマエラモ地球人トシテ、マズ何ヲスベキカワカルハズダ」
そう言った三重連星系人は光線銃のような物を手に構え、三和土から室内に土足で上がった。
「おい」
それに気付いた良一の声に怒気が含まれる。そして振り向きざまに。
「他人の家に土足で……上がるなぁーっ!」
その瞬間、良一の目から黄色いビームが。三重連星系人の一人は消滅してしまった。
良一はハッと我に返る。
「あ、ああっ、すみません、みっともないところをお見せして。あまりに腹が立ったのでつい」
ところがこれを見た頑二郎は、やけに上機嫌だ。
「良一くん、君なかなかいいビーム出すじゃないか」
「はあ、正直あまり自信はないのですが」
「何の何の。あれだけ出せれば立派なものだよ。やはり男たるものビームの一つくらい出せないとね。なあ、理美」
話を振られた妻の理美は苦笑する。
「もう、お父さんったら相変わらずビームを撃てる人が好きだこと」
これを聞いて理佳子は目を丸くする。
「え、お父さんビームを撃てる人が好きなの。それなら最初から言ってよ」
「いや、まあそれはそれ、これはこれだ」
そうは言いながらも照れくさそうな笑顔を見せる頑二郎。何やら団らんムードになってしまった四人だったが、残された二人の三重連星系人の怒髪は天を衝いた。
「オ、オノレ地球人! 我ラト戦争ヲスル意思表示ト捉エルガ、ソレデ構ワンノダナ!」
「うるさいんじゃあああーっ!」
怒声と共に紫色に輝くビームを口から吐いたのは頑二郎。これにより残った二人の三重連星系人も消滅した。
良一は目を丸くして感嘆する。
「お父さんのビーム、素晴らしいじゃないですか」
「な、なあに、昔取った杵柄だ」
「お父さん、ビームのよしみではありませんが、改めて理佳子さんとの結婚を認めていただけませんか」
すると頑二郎は大きなため息をついて微笑んだ。
「まったく、君には根負けしたよ」
理佳子は目に涙を浮かべている。
「それじゃ、お父さん」
「今度こそ幸せにおなり」
理佳子は父の胸に泣き崩れ、良一は幸せそうにそれを見つめた。新たな家族の誕生した瞬間だった。
しかし世界はもうそれどころではない。三重連星系人はビームで簡単に倒せると知った地球人は総反撃を開始、目から口から額から腕から背びれから尻尾から、その他諸々のいろんなところから出るビームが三重連星系人の円盤に襲いかかる。
結果、世界各国に出現した円盤群は大きな損害を受け、這々の体ではるか宇宙に逃げ去った。こうして地球の平和は守られたのだ。めでたしめでたし。
教訓:やはりビームは撃てるに越したことはない
(了)
ある日突然、世界中の大都市上空に出現した輝く円盤群より地球人類に発せられたメッセージ。当然の如く東京の上にも現れたそれに、パニックを起こした国家の中枢は麻痺を起こした。
「ミサイルで撃ち落とせ!」
「馬鹿を言うな、技術レベルの差が想定以上なら日本は全滅するぞ」
「やはりここはアメリカに相談しては」
「アメリカは何でも屋ではない!」
言葉を重ねれば重ねるほど増して行く混乱。それを見越していたのであろう三重連星系人たちから、ある提案がなされる。
「諸君ラ地球人全員ノ意見ガ、マトマルトハ期待シテイナイ。コチラデ無作為ニ選ンダ地球人ノ代表ニ、降伏ノ是非ヲ問ウコトニシヨウ」
これを聞いた地球人の誰もが思った。遊んでいる、こちらの絶望を楽しんでいると。しかしこの提案を即座に拒絶できるようなシステムを持つ国家はどこにもない。三重連星系人たちはテレビとインターネットの回線に割り込み、全地球人類に向かって一つの映像を流した。
映し出されたのは一軒の、古い平屋の日本家屋。
「コノ家ニ住ム者ニ、三十分ノ時間ヲ与エル。降伏カ戦争カ、サア選ブガイイ!」
もっともその家の中はいま、テレビやインターネットに目をやれるような状況ではなかったのだが。
就活に使ったのだろうリクルートスーツに身を固め、今日生まれて初めてツーブロックにしましたと言わんばかりの髪型をした若い男が居間に正座している。
「お父さん!」
この一言が床の間を背にあぐらをかく白髪頭の老人、すなわちこの家の主人である岩屋頑二郎の逆鱗に触れた。
「黙れこわっぱ! 貴様などにお父さんと呼ばれる筋合いはないわ!」
これに若い男の隣に座る女が抗議の声を上げた。
「お願いよお父さん、良一さんの話を聞いてあげて!」
その手を取って握りしめる良一。
「ありがとう、理佳子さん」
「良一さん。父は頑固だけれど、話せばきっとわかってくれます」
「ええ、僕もそう思っています。理佳子さん、愛してる」
「私もよ、愛してるわ良一さん」
見つめ合う二人を白髪頭の頑二郎は苦々しくにらみつけている。
「もうお父さんったら、話くらい聞いてあげればいいのに」
頑二郎の隣で妻の理美は苦笑している。しかし頑二郎は頑として首を縦には振らない。
「聞いてやる話などあるものか、馬鹿馬鹿しい」
部屋の中には柱時計の振り子の音が響いていた。
十分が経過した。しかし家の中からは何の反応もない。
「フッフッフ。責任ノ重サニ苦悩シテイルノカ、愚カナ地球人ヨ」
三重連星系人は静かにあざ笑った。
一方、てんてこ舞いなのが日本の首相官邸である。
「あれはどう見ても日本の家だろう、どこの誰が住んでいるかわからないのか」
苛立ちをぶつける首相に、秘書官は困り顔だ。
「そうはおっしゃいますが、せめて表札でも映らない限り住人の特定は極めて困難かと」
「こんなときのためにマイナンバーを整備したんだろう!」
「首相、マイナンバーに家の情報は入っておりません」
冷静な秘書官のツッコミに、首相のボルテージはかえって上がった。
「世界の! 世界の命運がいま日本に託されているんだぞ! それなのに政府は指を咥えて見ているしかできないのか!」
と、そのとき秘書官のスマホが鳴った。電話に出た秘書官は驚愕を顔に浮かべて首相を見つめる。
「首相、警察庁長官からなのですが」
「何の用だ、こんなときに!」
「いえ、それが。この家を特定したという『住所特定マニア』からの通報があったらしく」
「……何だと?」
良一は改めて畳に両手をついた。
「理佳子さんを僕にください!」
「貴様などに娘をやる訳があるか! 馬鹿も休み休み言え!」
頑二郎は目を吊り上げて噛み付かんばかりに唸っている。だが良一は一歩も引かない。
「何故ですかお父さん、僕にいったいどんな問題があるのです。理佳子さんのためならどんなことでも直してみせます、何がいけないのかおっしゃってください!」
これに頑二郎は白髪頭を抱えた。やれやれという風に大きなため息をつく。
「良一くんと言ったね、君はいま何歳だ」
「二十三歳です。確かにまだ頼りないかも知れません。でも理佳子さんを愛する心は本物です!」
けれどそんな言葉など聞いていないかのように、老人は己が娘に顔を向けた。
「理佳子、おまえは何歳だったかな」
すると理佳子は不満げに口を尖らせる。
「……四十五歳」
「でも!」
良一は理佳子の手を握った。
「愛があれば!」
理佳子も良一の手を握り返す。
「歳の差なんて!」
そんな二人に頑二郎は追い打ちをかける。
「離婚歴は」
理佳子は視線をそらした。
「……バツ三」
「離婚理由は」
「パパ活、パパ活、パパ活」
「子供は何人いたっけな」
「十八歳、十五歳、十二歳」
白髪頭の父親は呆れ返った顔で娘を見つめ、その隣の良一も見つめた。
なのに良一はまた理佳子の手を握る。
「でも愛があれば!」
理佳子も握り返す。
「現実なんて!」
「現実から目をそらすなーっ!」
頑二郎は畳をバンバン叩いた。
「いいか理佳子、おまえはどう考えても結婚に向いておらんのだ! 現実を認めていい加減もう諦めろ!」
この言葉には良一も畳を叩いて抗議する。
「そんなことはありません! 四度目の正直ということだってあるでしょう!」
「アホか! 二度あることが三度あったんだぞ、四度目もあるに決まっとろうが!」
頑二郎がそう怒鳴ったとき、床の間に置かれていた黒電話が鳴った。
「ええい、うるさい!」
受話器を叩き付けられ、ガチャ切りされてしまう黒電話。
首相秘書官は「あっ」と声を出し、スマホを口元に当てたまま絶句した。
「どうした。出ないのか」
不安げな首相の声で我に返ったのか、秘書官は困惑した顔でつぶやく。
「切られてしまいました」
「何だと、リミットまであと十分もないんだぞ。何度でもかけろ!」
首相はため息をつきながら、部屋の中を熊のようにウロウロするばかりだった。
しかしこの動きに気付かないほど三重連星系人は間抜けではない。
「ホウ、意外ト地球人モシブトイナ。コノ期ニ及ンデ策ヲ弄スルトハ。ダガ」
東京上空の輝く円盤群の中から一機が不意に姿を消し、次の瞬間あの日本家屋の上に浮かんだ。円盤の下から円筒状の光が地面にまで達し、その中を三人の、銀色の全身タイツを身にまとった三重連星系人がエレベーターのように降りてくる。
三重連星系人たちはこの様子を世界に同時中継した。地球最後の瞬間へのカウントダウンが始まったのだ。
三重連星系人は家の引き戸をガラガラ! と勢いよく開けた。
「サア地球人ヨ、決断ヲ下スガイイ! 降伏カ、サモナクバ全滅カ!」
「やかましいわああああああああああああっ!!」
頑二郎の怒声は三重連星系人を三歩後ずらせた。
「さっきから何度も何度も電話かけてくるのはおまえらか! いい加減にしろ!」
「エ、イヤ、ソレハ我々デハナク」
「言い訳をするな馬鹿者どもが! いまおまえらの相手なんぞしているヒマはないのだ、とっとと帰れ!」
あまりの剣幕で言われっぱなしの三重連星系人たちだったが、彼らとてその能力の高さを買われて使者に選ばれたエリート、ハイそうですかと引き下がれはしない。
「優先順位ヲ考エロ。オマエラモ地球人トシテ、マズ何ヲスベキカワカルハズダ」
そう言った三重連星系人は光線銃のような物を手に構え、三和土から室内に土足で上がった。
「おい」
それに気付いた良一の声に怒気が含まれる。そして振り向きざまに。
「他人の家に土足で……上がるなぁーっ!」
その瞬間、良一の目から黄色いビームが。三重連星系人の一人は消滅してしまった。
良一はハッと我に返る。
「あ、ああっ、すみません、みっともないところをお見せして。あまりに腹が立ったのでつい」
ところがこれを見た頑二郎は、やけに上機嫌だ。
「良一くん、君なかなかいいビーム出すじゃないか」
「はあ、正直あまり自信はないのですが」
「何の何の。あれだけ出せれば立派なものだよ。やはり男たるものビームの一つくらい出せないとね。なあ、理美」
話を振られた妻の理美は苦笑する。
「もう、お父さんったら相変わらずビームを撃てる人が好きだこと」
これを聞いて理佳子は目を丸くする。
「え、お父さんビームを撃てる人が好きなの。それなら最初から言ってよ」
「いや、まあそれはそれ、これはこれだ」
そうは言いながらも照れくさそうな笑顔を見せる頑二郎。何やら団らんムードになってしまった四人だったが、残された二人の三重連星系人の怒髪は天を衝いた。
「オ、オノレ地球人! 我ラト戦争ヲスル意思表示ト捉エルガ、ソレデ構ワンノダナ!」
「うるさいんじゃあああーっ!」
怒声と共に紫色に輝くビームを口から吐いたのは頑二郎。これにより残った二人の三重連星系人も消滅した。
良一は目を丸くして感嘆する。
「お父さんのビーム、素晴らしいじゃないですか」
「な、なあに、昔取った杵柄だ」
「お父さん、ビームのよしみではありませんが、改めて理佳子さんとの結婚を認めていただけませんか」
すると頑二郎は大きなため息をついて微笑んだ。
「まったく、君には根負けしたよ」
理佳子は目に涙を浮かべている。
「それじゃ、お父さん」
「今度こそ幸せにおなり」
理佳子は父の胸に泣き崩れ、良一は幸せそうにそれを見つめた。新たな家族の誕生した瞬間だった。
しかし世界はもうそれどころではない。三重連星系人はビームで簡単に倒せると知った地球人は総反撃を開始、目から口から額から腕から背びれから尻尾から、その他諸々のいろんなところから出るビームが三重連星系人の円盤に襲いかかる。
結果、世界各国に出現した円盤群は大きな損害を受け、這々の体ではるか宇宙に逃げ去った。こうして地球の平和は守られたのだ。めでたしめでたし。
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