約束というほどではなくても

柚緒駆

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第46話 帰路

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「なんか……凄いインタビューでしたね」

 学園に戻るバスの中、隣の席に座る十文字茜のつぶやきに、剛泉部長は笑顔を向けた。

「ああ、実りの多い仕事だった。部に戻ったら忙しくなるぞ、寺桜院タイムズに概要を載せ、同時進行でこの手記とインタビューを合わせたムックの制作に取りかからなきゃいけないからな」

「学園側からの反発も大きいですよね」

「何だ、今頃になって怖くなってきたのか、十文字らしくもない」

「こ、怖くはないです! ただ、他のみんなにも迷惑かけちゃわないかな、とそこが気になって」

 ショボンと沈み込む十文字茜の頭を、剛泉部長は大きな手のひらでポンと軽く叩いた。

「部長というのはこういうときに働く立場なんだ。心配するな、僕がなんとかする」

「……はい」

 降車チャイムが鳴り、バスはブレーキをかけた。次のバス停で誰か降りるのだろう。

 十文字茜は小さな声でつぶやく。

「本当はあと一つ聞きたかったんですけど」

「ん? 何か聞き残したことがあったのか」

 剛泉部長の言葉に、十文字茜は小さな照れ笑いを浮かべた。

「五味さんが叔母のこと、どう思ってたのか聞きそびれちゃいました」

 停止したバスは二名の客を降ろし、社内に残るのは剛泉部長と十文字茜だけ。おそらくこの先、寺桜院学園前までに乗ってくる客は一人も居ないだろう。バスは田園地帯を抜け、深い森を縦断する道に入る交差点へと差し掛かっていた。
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