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5章 天界と下界
10 別れの前に
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テリーと急ぎ会う約束を取りつける。
「昨日、出来たばかりだよ。察しが良過ぎるよ」
まぁ、分かるから……とは言えない。
「急いでいるんだ。魔術式も組み込みたいから今日行っても?」
「本当に、ベタ惚れなんだな」
「そうだな。すぐに向かう」
「は?ちょい……」
音声が途切れる。
魔術を使い連絡も済んだ。アキの周りの防御も大丈夫だろう。ユラを処分したと思っているだろうし。アキの変幻 は、かなり優秀だった。自身で外した花印に未練を残すとも思えない。
あるとするなら……従者の男だな。かなり優秀だろうから、用心に越したことはない。
今出来ること、終わらせるべきことを進めていく。
神力は、使わない。魔力で対応して行かなければ……今これ以上の厄介事を引き起こさないようにしたい。
準備が済んだユラが、大人しくソファに座っている。落ち着かないのだろう。なんせ、耳をピクピクと動かしている。
小声で名を呼んでみる。
「ユラ」
こちらを直ぐに見てくる。可愛い。
「あ、の?呼びましたか?」
小首を傾げるその仕草も、いちいち可愛らしい。
「ああ。耳を隠そうか?」
一瞬で、真っ赤になった。
「──は、い」
近づいて、耳をくすぐるとフルフルと震える。
「も、や。出かけるのでしょう?」
ソファにゆっくりと押し倒して行く。
「そうだけど、転移陣ですぐだから」
唇に何度となく、軽く触れて。
「じゃあ、長く消える様に、ね」
舌を差し込んでいけば、応じてくれる。
置き場のない手をもぞもぞと動かして、俺の胸を押してきた。
ぐっと押すので、唇を離すと銀糸が繋がる。真っ赤な顔をして、溶けていきそうだ。
「もう、耳……消えました、よ」
「そうだな。これ以上は、抑えきれなくなるな。夜に続きを」
そう言って軽く、触れるだけのキスをした。
色白の肌が赤く染る様を面白がっていると、抱きつかれて、軽く首の所を噛まれた。
「──ごめん。ユラ。からかい過ぎた」
抱きかかえて、クローゼットの所へ行く。一度立たせてローブを羽織らせた。もう一度抱き上げるとしがみついてきた。《魔術拘束 》をかけて、テリーの店へ向かう。
◇◇◇
「ガイア……一体どうしたんだ?そんなに急ぐ事か?先に渡した分だってかなりなものだぞ?」
「悪いな。ユラの故郷に挨拶に行くんだ。あまり、治安が良くないから防御は多い方がいいんだ」
「──そうなのか?リオ様達に報告はしてるのか?暫く帰らない気か?」
「出来ることはやって行くよ。クリスに引き継げるものは、引き継いでいく」
「え?帰って来ない気か?」
「まさか。転移陣を向こう作れば……顔を出せるよ。まぁ、クリスに任せたいけどね」
「ふ~ん。まあ、お前のことだ事情があるんだろ。それより、最高の出来だよ。魔術技工士として恥ずかしくないだろ?なんせ、可愛いユラちゃんが身に付けるんだからなぁ」
ユラをチラリと見て、テリーが笑った。
ちょっと困ったユラが、後ろに隠れる。
「ユラちゃん……本当に猫みたいだな。ガイアにだけ懐いた感じは、可愛いが……俺怖くないから、ね?」
更にしがみついてきた。
「俺、結構モテるんだけど……地味に傷つく」
「いいんだよ。警戒心が強くないと、これだけの美人……勘違いされて誘拐されたら困る」
「あーもう。さっさと魔法陣構築なりなんなりして持ってけ。あ、でも見せてくれ」
テーブル上のトレーからピアスをを受け取った。これはすごいな。魔力が馴染みやすい。そこに繊細な魔法陣を構築していく。
前回同様に追跡機能。通信機能。印象操作を付加していく。精度を更に上げていく。我ながら、執念深いな。
バングルの方は、防御だ。魔術反射。飛翔と逃走……そうだ、あれを足して置けば安心だな。
これだけの魔術技工士の業物だ。耐えれるはずだ。
「───ガイア?」
「なんだ?」
「最後のは?何だ?」
「ん?お試しだから、内緒だよ。流石だな、最高だよ。テリーありがとう」
「は?」
「ユラ……付けて」
「はい」
ユラが微笑んでいる。耳に触れてピアスをつけて……外れないようにする。バングルも俺の解除無しでは、外すことは出来ない。
「テリー。受け取ってくれ。お前は最高だよ」
「どうした?改まって……本当に変な感じだな。て、こんなにいくら何でも多い。これって。あれ───?俺……一体誰と話してたんだ?」
「大手のクライアントだから、シークレットで受けたって言ってたじゃないですか?」
カッチリとしたスーツ姿の男が呆れて声をかけてきた。
「そっか。そうだったな。ローブで顔隠してたよな。ははっ、寝ぼけたのかな?」
頭をひねりながら、テリーは工房に戻って行った。
『テリーありがとう』
ユラを抱え、次は──リオの元へと急いだ。
「昨日、出来たばかりだよ。察しが良過ぎるよ」
まぁ、分かるから……とは言えない。
「急いでいるんだ。魔術式も組み込みたいから今日行っても?」
「本当に、ベタ惚れなんだな」
「そうだな。すぐに向かう」
「は?ちょい……」
音声が途切れる。
魔術を使い連絡も済んだ。アキの周りの防御も大丈夫だろう。ユラを処分したと思っているだろうし。アキの変幻 は、かなり優秀だった。自身で外した花印に未練を残すとも思えない。
あるとするなら……従者の男だな。かなり優秀だろうから、用心に越したことはない。
今出来ること、終わらせるべきことを進めていく。
神力は、使わない。魔力で対応して行かなければ……今これ以上の厄介事を引き起こさないようにしたい。
準備が済んだユラが、大人しくソファに座っている。落ち着かないのだろう。なんせ、耳をピクピクと動かしている。
小声で名を呼んでみる。
「ユラ」
こちらを直ぐに見てくる。可愛い。
「あ、の?呼びましたか?」
小首を傾げるその仕草も、いちいち可愛らしい。
「ああ。耳を隠そうか?」
一瞬で、真っ赤になった。
「──は、い」
近づいて、耳をくすぐるとフルフルと震える。
「も、や。出かけるのでしょう?」
ソファにゆっくりと押し倒して行く。
「そうだけど、転移陣ですぐだから」
唇に何度となく、軽く触れて。
「じゃあ、長く消える様に、ね」
舌を差し込んでいけば、応じてくれる。
置き場のない手をもぞもぞと動かして、俺の胸を押してきた。
ぐっと押すので、唇を離すと銀糸が繋がる。真っ赤な顔をして、溶けていきそうだ。
「もう、耳……消えました、よ」
「そうだな。これ以上は、抑えきれなくなるな。夜に続きを」
そう言って軽く、触れるだけのキスをした。
色白の肌が赤く染る様を面白がっていると、抱きつかれて、軽く首の所を噛まれた。
「──ごめん。ユラ。からかい過ぎた」
抱きかかえて、クローゼットの所へ行く。一度立たせてローブを羽織らせた。もう一度抱き上げるとしがみついてきた。《魔術拘束 》をかけて、テリーの店へ向かう。
◇◇◇
「ガイア……一体どうしたんだ?そんなに急ぐ事か?先に渡した分だってかなりなものだぞ?」
「悪いな。ユラの故郷に挨拶に行くんだ。あまり、治安が良くないから防御は多い方がいいんだ」
「──そうなのか?リオ様達に報告はしてるのか?暫く帰らない気か?」
「出来ることはやって行くよ。クリスに引き継げるものは、引き継いでいく」
「え?帰って来ない気か?」
「まさか。転移陣を向こう作れば……顔を出せるよ。まぁ、クリスに任せたいけどね」
「ふ~ん。まあ、お前のことだ事情があるんだろ。それより、最高の出来だよ。魔術技工士として恥ずかしくないだろ?なんせ、可愛いユラちゃんが身に付けるんだからなぁ」
ユラをチラリと見て、テリーが笑った。
ちょっと困ったユラが、後ろに隠れる。
「ユラちゃん……本当に猫みたいだな。ガイアにだけ懐いた感じは、可愛いが……俺怖くないから、ね?」
更にしがみついてきた。
「俺、結構モテるんだけど……地味に傷つく」
「いいんだよ。警戒心が強くないと、これだけの美人……勘違いされて誘拐されたら困る」
「あーもう。さっさと魔法陣構築なりなんなりして持ってけ。あ、でも見せてくれ」
テーブル上のトレーからピアスをを受け取った。これはすごいな。魔力が馴染みやすい。そこに繊細な魔法陣を構築していく。
前回同様に追跡機能。通信機能。印象操作を付加していく。精度を更に上げていく。我ながら、執念深いな。
バングルの方は、防御だ。魔術反射。飛翔と逃走……そうだ、あれを足して置けば安心だな。
これだけの魔術技工士の業物だ。耐えれるはずだ。
「───ガイア?」
「なんだ?」
「最後のは?何だ?」
「ん?お試しだから、内緒だよ。流石だな、最高だよ。テリーありがとう」
「は?」
「ユラ……付けて」
「はい」
ユラが微笑んでいる。耳に触れてピアスをつけて……外れないようにする。バングルも俺の解除無しでは、外すことは出来ない。
「テリー。受け取ってくれ。お前は最高だよ」
「どうした?改まって……本当に変な感じだな。て、こんなにいくら何でも多い。これって。あれ───?俺……一体誰と話してたんだ?」
「大手のクライアントだから、シークレットで受けたって言ってたじゃないですか?」
カッチリとしたスーツ姿の男が呆れて声をかけてきた。
「そっか。そうだったな。ローブで顔隠してたよな。ははっ、寝ぼけたのかな?」
頭をひねりながら、テリーは工房に戻って行った。
『テリーありがとう』
ユラを抱え、次は──リオの元へと急いだ。
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