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第3章 フラン辺境伯領
1仮面の魔道具洋裁店①
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ガイア様と手を繋いで、町中を歩いている。
おかしく見えないか心配だったけれど、割と手を繋いだり腕を組んだりしている人達を見かけて安心した。
男女の組み合わせに混ざって、男同士、女同士で手を絡めているので、私とガイア様の組み合わせもおかしくは見えないのかもしれない。
それが伝わったみたいで、ガイア様がボソリと呟く。
「嘘は、言ってないぞ」
「だって、すぐに揶揄うから」
黙っていたら、本当に格好いいのに……ちょっと残念な人。
フードを目深に被った私への視線は、嫉妬ぽいな。
ガイア様が長身の美形だから、目立つのは仕方がないと思う。
今回の目的は、私に必要な物を揃える事、そして町の雰囲気を知る事だ。
この世界のルールを少しづつ学ばなければならない。
思い出せない所に、簡単に帰れるとは思えないからだ。
順番として、魔術師御用達のお店に行く。そこにある服とかは魔術を施しやすいみたい。必要な衣装を揃える。ちょっと楽しみだ。
それから町並みを見ながら雑貨やアクセサリーを見て、この国の歴史の本も買って帰るって言ってた。
この国の恋人同士は、アクセサリーをお揃いで身に付けるのが風習らしいので、それも準備する。一緒に住むのにそれがないと面倒らしい。
何が面倒かよく分からない。
それにしても物を交換するのにたくさんのお金が必要みたいだ。
ガイア様が心配しなくていいって言ってくれるから、今の私は甘えることしか出来ない。
私の不思議な力を研究させてくれるなら、魔術開発の役に立つから全然安いとか言ってた。よく分からないけど……役に立つのならいいのかな?
後は片付けとか掃除、それならいくらでも手伝うのにね。
見つかれば奴隷にされるような厄介者なのに。それなのに一緒にいてくれるガイア様は、お人好しなのかもしれない。
小さな扉をガイア様がノックする。中からお揃いの漆黒で銀色の刺繍が美しいハーフの仮面が2つ出てきた。
それを2人とも身につける必要がある。
ガイア様が、仮面をつけると妖しげな色気が出ていて、ぼーっと見とれてしまう。
「どうした?ほら、後ろ向いて」
仮面をそっと付けられて、また手を繋いだ。
「名前は中では呼ばないように。師匠と呼んでくれたらいい。ユラの事は、黒猫って呼ぶよ。いいね?」
「はい。師匠」
口角が上がったので、笑っていることがわかる。
「ああ。黒猫。いくよ」
黒……じゃないって、言いたいのに。嬉しそうに笑いかけられて少し泣きそうになる。
だって、私はこの色じゃないと思うから。
仮面をつけた後にまた手を繋ぐと、先程の小さな扉が大きくなって簡単に大人を2人程通せるようになる。
扉を開くと、そこにはローブや服。ブーツが並んでいた。
「すごい」
外からは想像できないくらい広い。
沢山ありすぎて、よく分からない。
「し、師匠?ど、どうしたらいいのか分かりません」
「サイズだけ、計ってもらおうか。あとは俺が適当に選ぶ。それでもいいか?もちろん、気になったデザインとかあったら言っていいから」
「はい」思わず何度も頷くと、師匠がまた笑う。
ぽんぽんと頭に手を当てられて。
「黒猫は、可愛すぎる」と耳元で話しかけてきた。
その声反則だから。猫扱いやめて欲しい。
本当に猫が好きなんだな。なら、家では猫耳のままいた方が喜んでくれるのかな?
なんて、ね……バカだよね。
そして特別な小部屋に案内されると何やら紐が数本延びてきた。服を剥ぎ取られる。思わず声が出そうになり口を塞がれる。
「採寸だ。我慢しろ」
これが採寸……腕、肩。胸に腹。紐のようなものが、巻きついては離れる。そして最後に紙が師匠に渡された。
「この魔術での採寸だと裸は見られないのを思い出したんだ。貴族御用達みたいなものだ。それにプロだから完璧なんだ」
へ?
なら、パンツ…穴があっても…えと、ダメだったの?
ああもう、よく分からない。
細かな数字が書かれていて、それによって師匠が服を置いていく。
ローブ。コート。シャツは枚数が多い。ベストとズボン、ジャケットも色違いで用意されていく。
「多くないですか!お金が心配なんですが……」
「大丈夫だ。独り身だから金は余っている」
下着もかなり買ってもらった。
護身用ナイフとか杖も割といいものを用意してくれた気がする。
着せ替えを何度となく繰り返したので、何処かで休みたい。もう疲れて辛い。
まだ、全快じゃないのかな?
疲れてきた。
荷物はとりあえず先に届けてくれるみたいだ。
思ったより時間がかかっていて、ガイア様が近づいて来る。
耳元で『キスの時間だから』って囁かれてすぐに一瞬唇がふれあった。
「キスの後に軽く食事をして休憩しょう」
休憩……本当に?
嬉しくて、思わず笑ったら…
ガイア様が急に店内の端の方に隠すように私を押し込む。
この人。本当に美形だから、心臓に悪い。思わず、見つめていると視線がぶつかった。
そう思った瞬間にあの時みたいに激しく口内を探られて、腰から力が抜けそうになっていく。
「や、んん」
カクンと力が抜けそうになり、引き寄せられて抱き締められた。
もう、いっぱいいっぱいで、息が上がってしまう。
どうかしている。人型でいる為のキスなのに……強く求められている気がしてしまう。
私は何者かさえ分からないのに。
見つかれば、迷惑をかけてしまうのに。
誰かが……呼んでいるのに。
『穢れてはいけない』
その言葉に胸が締め付けられていく。
これ以上のキスは、嫌だ。そう思った時に誰かの声がした。
ここでは、呼んではいけないはずの名前。
「ガイア様!」
紫色のハーフの仮面をつけた人が、側に寄ってきた。
おかしく見えないか心配だったけれど、割と手を繋いだり腕を組んだりしている人達を見かけて安心した。
男女の組み合わせに混ざって、男同士、女同士で手を絡めているので、私とガイア様の組み合わせもおかしくは見えないのかもしれない。
それが伝わったみたいで、ガイア様がボソリと呟く。
「嘘は、言ってないぞ」
「だって、すぐに揶揄うから」
黙っていたら、本当に格好いいのに……ちょっと残念な人。
フードを目深に被った私への視線は、嫉妬ぽいな。
ガイア様が長身の美形だから、目立つのは仕方がないと思う。
今回の目的は、私に必要な物を揃える事、そして町の雰囲気を知る事だ。
この世界のルールを少しづつ学ばなければならない。
思い出せない所に、簡単に帰れるとは思えないからだ。
順番として、魔術師御用達のお店に行く。そこにある服とかは魔術を施しやすいみたい。必要な衣装を揃える。ちょっと楽しみだ。
それから町並みを見ながら雑貨やアクセサリーを見て、この国の歴史の本も買って帰るって言ってた。
この国の恋人同士は、アクセサリーをお揃いで身に付けるのが風習らしいので、それも準備する。一緒に住むのにそれがないと面倒らしい。
何が面倒かよく分からない。
それにしても物を交換するのにたくさんのお金が必要みたいだ。
ガイア様が心配しなくていいって言ってくれるから、今の私は甘えることしか出来ない。
私の不思議な力を研究させてくれるなら、魔術開発の役に立つから全然安いとか言ってた。よく分からないけど……役に立つのならいいのかな?
後は片付けとか掃除、それならいくらでも手伝うのにね。
見つかれば奴隷にされるような厄介者なのに。それなのに一緒にいてくれるガイア様は、お人好しなのかもしれない。
小さな扉をガイア様がノックする。中からお揃いの漆黒で銀色の刺繍が美しいハーフの仮面が2つ出てきた。
それを2人とも身につける必要がある。
ガイア様が、仮面をつけると妖しげな色気が出ていて、ぼーっと見とれてしまう。
「どうした?ほら、後ろ向いて」
仮面をそっと付けられて、また手を繋いだ。
「名前は中では呼ばないように。師匠と呼んでくれたらいい。ユラの事は、黒猫って呼ぶよ。いいね?」
「はい。師匠」
口角が上がったので、笑っていることがわかる。
「ああ。黒猫。いくよ」
黒……じゃないって、言いたいのに。嬉しそうに笑いかけられて少し泣きそうになる。
だって、私はこの色じゃないと思うから。
仮面をつけた後にまた手を繋ぐと、先程の小さな扉が大きくなって簡単に大人を2人程通せるようになる。
扉を開くと、そこにはローブや服。ブーツが並んでいた。
「すごい」
外からは想像できないくらい広い。
沢山ありすぎて、よく分からない。
「し、師匠?ど、どうしたらいいのか分かりません」
「サイズだけ、計ってもらおうか。あとは俺が適当に選ぶ。それでもいいか?もちろん、気になったデザインとかあったら言っていいから」
「はい」思わず何度も頷くと、師匠がまた笑う。
ぽんぽんと頭に手を当てられて。
「黒猫は、可愛すぎる」と耳元で話しかけてきた。
その声反則だから。猫扱いやめて欲しい。
本当に猫が好きなんだな。なら、家では猫耳のままいた方が喜んでくれるのかな?
なんて、ね……バカだよね。
そして特別な小部屋に案内されると何やら紐が数本延びてきた。服を剥ぎ取られる。思わず声が出そうになり口を塞がれる。
「採寸だ。我慢しろ」
これが採寸……腕、肩。胸に腹。紐のようなものが、巻きついては離れる。そして最後に紙が師匠に渡された。
「この魔術での採寸だと裸は見られないのを思い出したんだ。貴族御用達みたいなものだ。それにプロだから完璧なんだ」
へ?
なら、パンツ…穴があっても…えと、ダメだったの?
ああもう、よく分からない。
細かな数字が書かれていて、それによって師匠が服を置いていく。
ローブ。コート。シャツは枚数が多い。ベストとズボン、ジャケットも色違いで用意されていく。
「多くないですか!お金が心配なんですが……」
「大丈夫だ。独り身だから金は余っている」
下着もかなり買ってもらった。
護身用ナイフとか杖も割といいものを用意してくれた気がする。
着せ替えを何度となく繰り返したので、何処かで休みたい。もう疲れて辛い。
まだ、全快じゃないのかな?
疲れてきた。
荷物はとりあえず先に届けてくれるみたいだ。
思ったより時間がかかっていて、ガイア様が近づいて来る。
耳元で『キスの時間だから』って囁かれてすぐに一瞬唇がふれあった。
「キスの後に軽く食事をして休憩しょう」
休憩……本当に?
嬉しくて、思わず笑ったら…
ガイア様が急に店内の端の方に隠すように私を押し込む。
この人。本当に美形だから、心臓に悪い。思わず、見つめていると視線がぶつかった。
そう思った瞬間にあの時みたいに激しく口内を探られて、腰から力が抜けそうになっていく。
「や、んん」
カクンと力が抜けそうになり、引き寄せられて抱き締められた。
もう、いっぱいいっぱいで、息が上がってしまう。
どうかしている。人型でいる為のキスなのに……強く求められている気がしてしまう。
私は何者かさえ分からないのに。
見つかれば、迷惑をかけてしまうのに。
誰かが……呼んでいるのに。
『穢れてはいけない』
その言葉に胸が締め付けられていく。
これ以上のキスは、嫌だ。そう思った時に誰かの声がした。
ここでは、呼んではいけないはずの名前。
「ガイア様!」
紫色のハーフの仮面をつけた人が、側に寄ってきた。
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