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第2章 出会い

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え?

今、おしり側はクローゼットの姿見に向けている。つまり前は、必然的に室内の方に向いてて。


かぁぁぁ、顔が羞恥で真っ赤に染まる。


「ノック、ノックをして下さい!」
思わず、しゃがみ込んだ。

「いや。ノックはしたけど、反応がないからまだ寝てるかと思ったんだが。尻尾が生えてきたか?」

テーブルの上にお皿を置いた後、こちらに寄ってきた。

いや、こないでよ。

「立てるか?」
手を差し伸べられる。顔が熱くて、思わず首を振る。この場合、手を貸さなくて良いって意味のつもりだったのに。

立たされて、ガイア様にもたれる形でズボンを引き上げられた。
たぶん丸見えだ。固まって動けずにいると、簡単に抱っこされて、ベッドへ連れていかれる。

「まだ、無理をするな。顔が赤い。少し眠らせたからちょっとは良くなったかと思ったんだが……明日、町に行くのは難しいだろうか?」

「町に?」
思わず反応してしまう。外だ。
行ってみたい。


「ユラは、身一つで現れただろう?俺の服じゃ大き過ぎるから、服とか下着を買いに行こうと思ったんだ。近々領主にも、弟子として紹介しようと思う。それに身分証も作る」


「買い物?行きたいです。外に行きたい」


「だが、熱っぽいなら休むべきだろう?抱っこで町中を歩いてたら余計に目立つだろう?」

「裸を見られたから、照れただけです」

「男同士、ついてるものは同じだろう?まぁ、小さくて可愛いが」

「小さくて……可愛い?」

「体格差があるからな」

途端に真っ赤になる。
嫌だ。この人。デリカシーがない。

「ち、小さいとか、可愛いとか、言わないで下さい。一応男体マネスなんですから!」

「マネス?」

「そうです。女体フラオは女性の体を持つ者。男体マネスは、男性の体を持つ者の事です」

「聞いたことが無い言葉だな。やっぱり魔法陣か何かで違う世界から飛ばされて来たのかも知れないな。男と女で結ばれる世界なのか?」

少し考えて見ても、はっきりそうだとは言えない。全てがでそんな気がする、なのだ。モヤモヤして気持ち悪い。

「男同士も女同士も大丈夫だったと思います。ただ、子供は出来ませんが……例外があった気がします」

「本当に、ところどころを忘れているんだな。何かのきっかけで思い出すといいんだが……帰りたいか?」

帰りたいか?
そう、問われると胸が痛む。

「──それが、よく分からないのです」


「優しく名前を呼んでくれる人がいるんだろう?」
少し呆れたような顔で、ガイア様が質問してきた。


「そんな気がするだけです。だからといって、恋人とは違う。尊敬している感じで。一緒にいてはいけないような。変な感じなんです」

「身分差でもあったのかな?それでも相手はお前を探しているだろう?」

「そう……でしょうか?私は、この黒い姿に違和感があって。がっかりされそうなんです」

「元の世界に戻れば、元に戻るんじゃないか?なら、問題ないだろう?まぁ俺は、可愛いと思うが」

「黒くても?」

「この国は茶色や黒系の髪色がほとんどだが、艶のあるお前の髪の毛は綺麗だよ。瞳の琥珀は珍しいから、余計に目を惹くな」

「琥珀の瞳……」


『──綺麗だ。ユラ』

ポロリと涙が出る。

「なんで、忘れているだろう?思い出せない」

「ユラ。慌てなくていい。きっと思い出すはずだ。昨日より思い出しているだろう?俺は、お前に泣かれるのは嫌なんだ」

「ごめんなさい」

「少し食べよう。冷めたな……ちょっと温めるよ」

「魔術で?」

「ああ。ユラは、猫だから、猫舌か?」

「猫舌?」

「熱いものが不得意ってことだよ」

「そう、かも知れません。猫舌って言うんですね」
少し可笑しくて、笑ってしまう。

「ユラは、笑うといいな」

「な、なんでそんな恥ずかしいこと平気で言うんですか!そう言って口説きまわるタラシですか?そう言うのは恋人に言って下さい」


「──いない」


「は?遊び相手だけですか?」


「お前、飛躍しすぎだろう。面倒なんだ。嫉妬だとか、ベッタリされるとか……うっとうしいんだ」

「遊び人……」


「違う。その気になれるような奴に出会ってないだけだ」

意外とムキになって、可愛いと思ってしまった。

でも、ガイア様は恋人がいないんだ。

少しホッとする。

​───なんで、ホッとするんだろう?


「そうなんですね。なら良かった」


「何が良いんだ?」


「私とキスしてたら、嫉妬で恨まれるでしょう?キスで、耳が消えるかまだ分からないし」

ホッとする理由は、私が恨まれたくないから……だよ、ね?


「なら、試すか?」

「え?」

「耳……猫耳に戻ったよ」

思わず触ってみる。本当だ。

「4時間半くらいか?」

「キスの深さで変わるんでしょうか?」


「なら、もう一度、試してみよう」

ギュッと抱きしめられた。

ちょっと、待って──目の前にガイア様の顔が近付いてきた。














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