14 / 60
第2章 出会い
6
しおりを挟む
え?
今、おしり側はクローゼットの姿見に向けている。つまり前は、必然的に室内の方に向いてて。
かぁぁぁ、顔が羞恥で真っ赤に染まる。
「ノック、ノックをして下さい!」
思わず、しゃがみ込んだ。
「いや。ノックはしたけど、反応がないからまだ寝てるかと思ったんだが。尻尾が生えてきたか?」
テーブルの上にお皿を置いた後、こちらに寄ってきた。
いや、こないでよ。
「立てるか?」
手を差し伸べられる。顔が熱くて、思わず首を振る。この場合、手を貸さなくて良いって意味のつもりだったのに。
立たされて、ガイア様にもたれる形でズボンを引き上げられた。
たぶん丸見えだ。固まって動けずにいると、簡単に抱っこされて、ベッドへ連れていかれる。
「まだ、無理をするな。顔が赤い。少し眠らせたからちょっとは良くなったかと思ったんだが……明日、町に行くのは難しいだろうか?」
「町に?」
思わず反応してしまう。外だ。
行ってみたい。
「ユラは、身一つで現れただろう?俺の服じゃ大き過ぎるから、服とか下着を買いに行こうと思ったんだ。近々領主にも、弟子として紹介しようと思う。それに身分証も作る」
「買い物?行きたいです。外に行きたい」
「だが、熱っぽいなら休むべきだろう?抱っこで町中を歩いてたら余計に目立つだろう?」
「裸を見られたから、照れただけです」
「男同士、ついてるものは同じだろう?まぁ、小さくて可愛いが」
「小さくて……可愛い?」
「体格差があるからな」
途端に真っ赤になる。
嫌だ。この人。デリカシーがない。
「ち、小さいとか、可愛いとか、言わないで下さい。一応男体なんですから!」
「マネス?」
「そうです。女体は女性の体を持つ者。男体は、男性の体を持つ者の事です」
「聞いたことが無い言葉だな。やっぱり魔法陣か何かで違う世界から飛ばされて来たのかも知れないな。男と女で結ばれる世界なのか?」
少し考えて見ても、はっきりそうだとは言えない。全てが多分でそんな気がする、なのだ。モヤモヤして気持ち悪い。
「男同士も女同士も大丈夫だったと思います。ただ、子供は出来ませんが……例外があった気がします」
「本当に、ところどころを忘れているんだな。何かのきっかけで思い出すといいんだが……帰りたいか?」
帰りたいか?
そう、問われると胸が痛む。
「──それが、よく分からないのです」
「優しく名前を呼んでくれる人がいるんだろう?」
少し呆れたような顔で、ガイア様が質問してきた。
「そんな気がするだけです。だからといって、恋人とは違う。尊敬している感じで。一緒にいてはいけないような。変な感じなんです」
「身分差でもあったのかな?それでも相手はお前を探しているだろう?」
「そう……でしょうか?私は、この黒い姿に違和感があって。がっかりされそうなんです」
「元の世界に戻れば、元に戻るんじゃないか?なら、問題ないだろう?まぁ俺は、可愛いと思うが」
「黒くても?」
「この国は茶色や黒系の髪色がほとんどだが、艶のあるお前の髪の毛は綺麗だよ。瞳の琥珀は珍しいから、余計に目を惹くな」
「琥珀の瞳……」
『──綺麗だ。ユラ』
ポロリと涙が出る。
「なんで、忘れているだろう?思い出せない」
「ユラ。慌てなくていい。きっと思い出すはずだ。昨日より思い出しているだろう?俺は、お前に泣かれるのは嫌なんだ」
「ごめんなさい」
「少し食べよう。冷めたな……ちょっと温めるよ」
「魔術で?」
「ああ。ユラは、猫だから、猫舌か?」
「猫舌?」
「熱いものが不得意ってことだよ」
「そう、かも知れません。猫舌って言うんですね」
少し可笑しくて、笑ってしまう。
「ユラは、笑うといいな」
「な、なんでそんな恥ずかしいこと平気で言うんですか!そう言って口説きまわるタラシですか?そう言うのは恋人に言って下さい」
「──いない」
「は?遊び相手だけですか?」
「お前、飛躍しすぎだろう。面倒なんだ。嫉妬だとか、ベッタリされるとか……うっとうしいんだ」
「遊び人……」
「違う。その気になれるような奴に出会ってないだけだ」
意外とムキになって、可愛いと思ってしまった。
でも、ガイア様は恋人がいないんだ。
少しホッとする。
───なんで、ホッとするんだろう?
「そうなんですね。なら良かった」
「何が良いんだ?」
「私とキスしてたら、嫉妬で恨まれるでしょう?キスで、耳が消えるかまだ分からないし」
ホッとする理由は、私が恨まれたくないから……だよ、ね?
「なら、試すか?」
「え?」
「耳……猫耳に戻ったよ」
思わず触ってみる。本当だ。
「4時間半くらいか?」
「キスの深さで変わるんでしょうか?」
「なら、もう一度、試してみよう」
ギュッと抱きしめられた。
ちょっと、待って──目の前にガイア様の顔が近付いてきた。
今、おしり側はクローゼットの姿見に向けている。つまり前は、必然的に室内の方に向いてて。
かぁぁぁ、顔が羞恥で真っ赤に染まる。
「ノック、ノックをして下さい!」
思わず、しゃがみ込んだ。
「いや。ノックはしたけど、反応がないからまだ寝てるかと思ったんだが。尻尾が生えてきたか?」
テーブルの上にお皿を置いた後、こちらに寄ってきた。
いや、こないでよ。
「立てるか?」
手を差し伸べられる。顔が熱くて、思わず首を振る。この場合、手を貸さなくて良いって意味のつもりだったのに。
立たされて、ガイア様にもたれる形でズボンを引き上げられた。
たぶん丸見えだ。固まって動けずにいると、簡単に抱っこされて、ベッドへ連れていかれる。
「まだ、無理をするな。顔が赤い。少し眠らせたからちょっとは良くなったかと思ったんだが……明日、町に行くのは難しいだろうか?」
「町に?」
思わず反応してしまう。外だ。
行ってみたい。
「ユラは、身一つで現れただろう?俺の服じゃ大き過ぎるから、服とか下着を買いに行こうと思ったんだ。近々領主にも、弟子として紹介しようと思う。それに身分証も作る」
「買い物?行きたいです。外に行きたい」
「だが、熱っぽいなら休むべきだろう?抱っこで町中を歩いてたら余計に目立つだろう?」
「裸を見られたから、照れただけです」
「男同士、ついてるものは同じだろう?まぁ、小さくて可愛いが」
「小さくて……可愛い?」
「体格差があるからな」
途端に真っ赤になる。
嫌だ。この人。デリカシーがない。
「ち、小さいとか、可愛いとか、言わないで下さい。一応男体なんですから!」
「マネス?」
「そうです。女体は女性の体を持つ者。男体は、男性の体を持つ者の事です」
「聞いたことが無い言葉だな。やっぱり魔法陣か何かで違う世界から飛ばされて来たのかも知れないな。男と女で結ばれる世界なのか?」
少し考えて見ても、はっきりそうだとは言えない。全てが多分でそんな気がする、なのだ。モヤモヤして気持ち悪い。
「男同士も女同士も大丈夫だったと思います。ただ、子供は出来ませんが……例外があった気がします」
「本当に、ところどころを忘れているんだな。何かのきっかけで思い出すといいんだが……帰りたいか?」
帰りたいか?
そう、問われると胸が痛む。
「──それが、よく分からないのです」
「優しく名前を呼んでくれる人がいるんだろう?」
少し呆れたような顔で、ガイア様が質問してきた。
「そんな気がするだけです。だからといって、恋人とは違う。尊敬している感じで。一緒にいてはいけないような。変な感じなんです」
「身分差でもあったのかな?それでも相手はお前を探しているだろう?」
「そう……でしょうか?私は、この黒い姿に違和感があって。がっかりされそうなんです」
「元の世界に戻れば、元に戻るんじゃないか?なら、問題ないだろう?まぁ俺は、可愛いと思うが」
「黒くても?」
「この国は茶色や黒系の髪色がほとんどだが、艶のあるお前の髪の毛は綺麗だよ。瞳の琥珀は珍しいから、余計に目を惹くな」
「琥珀の瞳……」
『──綺麗だ。ユラ』
ポロリと涙が出る。
「なんで、忘れているだろう?思い出せない」
「ユラ。慌てなくていい。きっと思い出すはずだ。昨日より思い出しているだろう?俺は、お前に泣かれるのは嫌なんだ」
「ごめんなさい」
「少し食べよう。冷めたな……ちょっと温めるよ」
「魔術で?」
「ああ。ユラは、猫だから、猫舌か?」
「猫舌?」
「熱いものが不得意ってことだよ」
「そう、かも知れません。猫舌って言うんですね」
少し可笑しくて、笑ってしまう。
「ユラは、笑うといいな」
「な、なんでそんな恥ずかしいこと平気で言うんですか!そう言って口説きまわるタラシですか?そう言うのは恋人に言って下さい」
「──いない」
「は?遊び相手だけですか?」
「お前、飛躍しすぎだろう。面倒なんだ。嫉妬だとか、ベッタリされるとか……うっとうしいんだ」
「遊び人……」
「違う。その気になれるような奴に出会ってないだけだ」
意外とムキになって、可愛いと思ってしまった。
でも、ガイア様は恋人がいないんだ。
少しホッとする。
───なんで、ホッとするんだろう?
「そうなんですね。なら良かった」
「何が良いんだ?」
「私とキスしてたら、嫉妬で恨まれるでしょう?キスで、耳が消えるかまだ分からないし」
ホッとする理由は、私が恨まれたくないから……だよ、ね?
「なら、試すか?」
「え?」
「耳……猫耳に戻ったよ」
思わず触ってみる。本当だ。
「4時間半くらいか?」
「キスの深さで変わるんでしょうか?」
「なら、もう一度、試してみよう」
ギュッと抱きしめられた。
ちょっと、待って──目の前にガイア様の顔が近付いてきた。
1
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる