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第4章(終章)
6最強家族の加護②
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王城へと転移する。
母さんの薬はすごい。そして、あの人の魔術は意味が分からない。まあ、人ではないのだから、規格外なんだろう。
そして、兄さんの作ったローブに施された魔術式によって察知されることなく王城内を進んでいく。
母さんには、迷いがない。奥へと進む歩みは止まることがない。見張りの騎士達を横目に視認されることなく、塔の上へ進んで行く。
「ここに?」
「本当に、嫌な魔術式があちこちに仕掛けてあるわね」
母さんは、眉間に皺を寄せ扉の前に手を差し出した。
ガチャリ……鍵の解除が出来たようだ。重厚な扉を静かに開けると、何か話しをしているみたいだ。魔術を展開して、その内容を捉えた。
「───殺せ」
血の気が引く、そんな酷く冷たい声が聞こえた。
母さんが固まってしまった。
思わず、兄さんと共に走り出す。奥の部屋だ。
ドアを突き破り、その剣を止めようとしたが間に合わない。
「止めろー!!」
その瞬間少し父さんの身体が動いた。多分心臓を狙ったはずだが、少しズレた。
「ぐはっ」
鮮血が飛び散った。
視界が血色に染まった。
「嘘だろ」
兄さんが、剣を突き立てた男を締め上げている。
近くにいた貴族らしき男を蹴りで吹き飛ばすと、壁にぶつかり喘いでいる。
「な、んだ?お前達……どこから」
「黙れ」
レイピアの鞘で項側を叩くと、貴族は意識を失った。
「父さん……父さん!!」
貴族用の牢獄みたいで魔術使用が制限されてる。さっき声をかけたことで僅かに拘束が緩んで急所を避ける事ができたみたいだけど。それでも、剣に貫かれたのだ。
出血を止めないと。なんでこんなことになるんだ。俺のせい?俺の?傷口に手を当てる。父さんが、笑う。口元が動いた。
『だいじょうぶ』
そんなわけない。
多分、俺たちのこと反対してる貴族が、父さんを見せしめにしようとしたんだ。
許せない。
許せない、許せない、許せない。
必ず助けるから。
命に変えても。
魔力を全部使ってでも。
必ず助けるんだ。
集中……しろ。
人の命を何だと思ってるんだ。今助けるから、力を貸して。サフィアさん、父さん。
『防御壁』
そして止血をしながら、魔術式を構築する。自分でもこれだけ複雑な陣が浮かんで来るなどありえないと思った。でも何でもいいから、使えるものは使う。俺の中にあるエーベルハルトの血。そしてジェイから貰った魔力。ずっと嫌ってきたオメガの自分にも、価値がきっとある。
『完全回復』
陣が白銀に輝き、魔力が手先から父さんに流れていく。傷が深いから、意識を持っていかれそうになる。
自分もまだ魔力が完全に回復していた訳じゃない。それでも、何とかしたいんだ。誰か……力を貸して。
誰かが防御壁に入って来た。そんな……敵が入って来れるわけない。金色の髪が見えた。背中から抱きしめられた。
触れている背中に温かい魔力が流れてきた。そして、兄さんが手を重ねてくれる。母さんが父さんの手を握る。
そして、恐ろしく美形の魔族が俺を見て笑った。
床に横たわっている父さんの顔色が良くなってきた。
「ライラ……ありがとう。私の最高の息子よ」
お母さんが泣いてる。
「もう大丈夫だ。別室に案内する。二度とこんな事させない」
背中側にいるジェイの声が優しく労わるように聞こえてきた。
「──本当だろうな?俺と母さんが父さんについてるから、ライラはこいつと話し合って解決しておいで」
重ねた手を外した兄さんが、魔族を見た。
「──俺はライラを護ってくれるなら、貴方が魔族でも構わないと思っています。貴方が一番強い。王家を滅ぼしてもかまわないんでライラを護って下さい」
「お前に言われなくてもそのつもりだ」
母さんと兄さんが、フッと笑ったように見えた。
背中の方から、ジェイが反応した。
「王家を滅ぼすのは、待ってください。きちん解決させます」
慌てている訳でも無く、決意を言葉にした。
「ジェイ?」
「行こう。陛下が待ってる」
そして、これからの為に立ち向かう。
母さんの薬はすごい。そして、あの人の魔術は意味が分からない。まあ、人ではないのだから、規格外なんだろう。
そして、兄さんの作ったローブに施された魔術式によって察知されることなく王城内を進んでいく。
母さんには、迷いがない。奥へと進む歩みは止まることがない。見張りの騎士達を横目に視認されることなく、塔の上へ進んで行く。
「ここに?」
「本当に、嫌な魔術式があちこちに仕掛けてあるわね」
母さんは、眉間に皺を寄せ扉の前に手を差し出した。
ガチャリ……鍵の解除が出来たようだ。重厚な扉を静かに開けると、何か話しをしているみたいだ。魔術を展開して、その内容を捉えた。
「───殺せ」
血の気が引く、そんな酷く冷たい声が聞こえた。
母さんが固まってしまった。
思わず、兄さんと共に走り出す。奥の部屋だ。
ドアを突き破り、その剣を止めようとしたが間に合わない。
「止めろー!!」
その瞬間少し父さんの身体が動いた。多分心臓を狙ったはずだが、少しズレた。
「ぐはっ」
鮮血が飛び散った。
視界が血色に染まった。
「嘘だろ」
兄さんが、剣を突き立てた男を締め上げている。
近くにいた貴族らしき男を蹴りで吹き飛ばすと、壁にぶつかり喘いでいる。
「な、んだ?お前達……どこから」
「黙れ」
レイピアの鞘で項側を叩くと、貴族は意識を失った。
「父さん……父さん!!」
貴族用の牢獄みたいで魔術使用が制限されてる。さっき声をかけたことで僅かに拘束が緩んで急所を避ける事ができたみたいだけど。それでも、剣に貫かれたのだ。
出血を止めないと。なんでこんなことになるんだ。俺のせい?俺の?傷口に手を当てる。父さんが、笑う。口元が動いた。
『だいじょうぶ』
そんなわけない。
多分、俺たちのこと反対してる貴族が、父さんを見せしめにしようとしたんだ。
許せない。
許せない、許せない、許せない。
必ず助けるから。
命に変えても。
魔力を全部使ってでも。
必ず助けるんだ。
集中……しろ。
人の命を何だと思ってるんだ。今助けるから、力を貸して。サフィアさん、父さん。
『防御壁』
そして止血をしながら、魔術式を構築する。自分でもこれだけ複雑な陣が浮かんで来るなどありえないと思った。でも何でもいいから、使えるものは使う。俺の中にあるエーベルハルトの血。そしてジェイから貰った魔力。ずっと嫌ってきたオメガの自分にも、価値がきっとある。
『完全回復』
陣が白銀に輝き、魔力が手先から父さんに流れていく。傷が深いから、意識を持っていかれそうになる。
自分もまだ魔力が完全に回復していた訳じゃない。それでも、何とかしたいんだ。誰か……力を貸して。
誰かが防御壁に入って来た。そんな……敵が入って来れるわけない。金色の髪が見えた。背中から抱きしめられた。
触れている背中に温かい魔力が流れてきた。そして、兄さんが手を重ねてくれる。母さんが父さんの手を握る。
そして、恐ろしく美形の魔族が俺を見て笑った。
床に横たわっている父さんの顔色が良くなってきた。
「ライラ……ありがとう。私の最高の息子よ」
お母さんが泣いてる。
「もう大丈夫だ。別室に案内する。二度とこんな事させない」
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「──本当だろうな?俺と母さんが父さんについてるから、ライラはこいつと話し合って解決しておいで」
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「──俺はライラを護ってくれるなら、貴方が魔族でも構わないと思っています。貴方が一番強い。王家を滅ぼしてもかまわないんでライラを護って下さい」
「お前に言われなくてもそのつもりだ」
母さんと兄さんが、フッと笑ったように見えた。
背中の方から、ジェイが反応した。
「王家を滅ぼすのは、待ってください。きちん解決させます」
慌てている訳でも無く、決意を言葉にした。
「ジェイ?」
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そして、これからの為に立ち向かう。
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