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第4章(終章)
3それでも、愛してる
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自分の心に嘘をついた。何度も何度もジェイから逃げた……だから、その罰を受けるんだ。
俺を助けようとしなくていいんだ。
水晶に溶け込んでいく身体。これで、終わる。
《空間移動》
ジェイを兄さんのところへ……
なのに、それを弾き俺に抱きついてきた。
一緒に沈んでしまう。
「だ、め」
2人して水晶の中へと溶け込んでいく。
音も何も聞こえなくなって、気を失った。
◇◇◇
暖かい。
なぜだろう?
この中は、冷たかった気がするのに。
誰かに、抱きしめられている。
頬に触れる手が、唇をなぞる。感触を確かめるみたいに。
そして、唇に少しかさついたものが触れてきた。
指とは違う感触が、唇だと理解するのにしばらくかかった。
そして、流れ込んでくる魔力が誰のものか理解していく。
目を開けると、ジェイが唇を離してさらに体を引いたので顔をはっきりと認識出来た。
「───ここは?」
母さんの事を思い出した。
「ここ、水晶の……なんで、なんで勝手についてくるとか。殺されるかも知れないのに。どうして……ほっといてくれたらいいんだ。帰って、早く逃げて」
「大丈夫だ。事情は、あの人から聞いた今この空間は、俺たちだけだ」
「どう言う……こと?」
「ライラの、魔族の血を変える為だよ」
「な、そんなこと」
「あの人……俺の魔力とライラの母親の能力で、大切な我が子を守ろうとしてる」
「だって、捨てられていたんだ。それにジェイを狙ってた」
髪の毛に優しく触れられる。まるで愛おしい人に向けるような微笑に、こんな状況なのに心臓が煩くなる。もしかして、フェロモンが出て影響を与えてるのだろうか?
ここに居るからなのか、元々の髪色に戻ってる。
人を狂わす、紫銀の髪色。このせいだったらどうしたら?
「オメガの扱いが悪い事も、エーベルハルトの血が人を狂わす可能性の事も。まして、父親の血によってほかの魔族に狙われ易いことも。全て分かっていたからこそ、憎まれる覚悟で動いてたんだよ。それが最愛の願いだから」
そんなはず、ない。
「そんなこと、あるわけ」
「あの人は王だよ。その能力を持ったライラは狙われ続けるんだ。最高の血統なんだよ。だから魔族の匂いを消す為に、俺を待ってた」
「どうやって?そんなこと出来るわけない」
ジェイの顔が近付いて来た。優しく啄まれる唇。鼓動が早くなっていく。
「剣は、サフィア様の力が織り込まれていて所謂解毒だ。そして、俺が塗り替える魔力を注いでいく」
ニコリともしない、表情筋の死んだような顔。淡々と語るだけで、会いたかったとか探してたとかそんな言葉なんて一切無かったのに。俺の為とか信じるなんて出来ないよ。
それでも……
「全部仕組まれていた?」
「そうだ。全部ライラの為に……俺は利用されたんだ」
「運命も、嘘だったんだ……錯覚?」
単にアルファに出会って誤解しただけ?
涙が止まらなくなって、逃げようとしたのに、がっちりと押さえられてて逃げられない。痛いわけじゃないけど、このままだと……気持ちが抑えられなくなる。
「それは、違う。俺は、ライラしかいらない。アルファとかオメガとか……王とか、そんなこと関係ない。ライラだけが欲しい。だから運命なのは間違いないんだよ」
───抱かれたい。心から繋がりたい。
「ジェイ……俺の事、気持ち悪くない?」
「愛してる。俺はお前しか選ばない」
「馬鹿だよ。絶対捨てたくなるよ?」
「俺の方が、捨てられたんだが……二度と逃がさない」
抱きしめられて、覚悟を決めた。
「──俺の唯一の人。番になって欲しい」
「───はい」
そして、また唇が重なる。
例え間違った選択だったとしても、愛しさを止めるなんてもう、無理だったんだ。
俺を助けようとしなくていいんだ。
水晶に溶け込んでいく身体。これで、終わる。
《空間移動》
ジェイを兄さんのところへ……
なのに、それを弾き俺に抱きついてきた。
一緒に沈んでしまう。
「だ、め」
2人して水晶の中へと溶け込んでいく。
音も何も聞こえなくなって、気を失った。
◇◇◇
暖かい。
なぜだろう?
この中は、冷たかった気がするのに。
誰かに、抱きしめられている。
頬に触れる手が、唇をなぞる。感触を確かめるみたいに。
そして、唇に少しかさついたものが触れてきた。
指とは違う感触が、唇だと理解するのにしばらくかかった。
そして、流れ込んでくる魔力が誰のものか理解していく。
目を開けると、ジェイが唇を離してさらに体を引いたので顔をはっきりと認識出来た。
「───ここは?」
母さんの事を思い出した。
「ここ、水晶の……なんで、なんで勝手についてくるとか。殺されるかも知れないのに。どうして……ほっといてくれたらいいんだ。帰って、早く逃げて」
「大丈夫だ。事情は、あの人から聞いた今この空間は、俺たちだけだ」
「どう言う……こと?」
「ライラの、魔族の血を変える為だよ」
「な、そんなこと」
「あの人……俺の魔力とライラの母親の能力で、大切な我が子を守ろうとしてる」
「だって、捨てられていたんだ。それにジェイを狙ってた」
髪の毛に優しく触れられる。まるで愛おしい人に向けるような微笑に、こんな状況なのに心臓が煩くなる。もしかして、フェロモンが出て影響を与えてるのだろうか?
ここに居るからなのか、元々の髪色に戻ってる。
人を狂わす、紫銀の髪色。このせいだったらどうしたら?
「オメガの扱いが悪い事も、エーベルハルトの血が人を狂わす可能性の事も。まして、父親の血によってほかの魔族に狙われ易いことも。全て分かっていたからこそ、憎まれる覚悟で動いてたんだよ。それが最愛の願いだから」
そんなはず、ない。
「そんなこと、あるわけ」
「あの人は王だよ。その能力を持ったライラは狙われ続けるんだ。最高の血統なんだよ。だから魔族の匂いを消す為に、俺を待ってた」
「どうやって?そんなこと出来るわけない」
ジェイの顔が近付いて来た。優しく啄まれる唇。鼓動が早くなっていく。
「剣は、サフィア様の力が織り込まれていて所謂解毒だ。そして、俺が塗り替える魔力を注いでいく」
ニコリともしない、表情筋の死んだような顔。淡々と語るだけで、会いたかったとか探してたとかそんな言葉なんて一切無かったのに。俺の為とか信じるなんて出来ないよ。
それでも……
「全部仕組まれていた?」
「そうだ。全部ライラの為に……俺は利用されたんだ」
「運命も、嘘だったんだ……錯覚?」
単にアルファに出会って誤解しただけ?
涙が止まらなくなって、逃げようとしたのに、がっちりと押さえられてて逃げられない。痛いわけじゃないけど、このままだと……気持ちが抑えられなくなる。
「それは、違う。俺は、ライラしかいらない。アルファとかオメガとか……王とか、そんなこと関係ない。ライラだけが欲しい。だから運命なのは間違いないんだよ」
───抱かれたい。心から繋がりたい。
「ジェイ……俺の事、気持ち悪くない?」
「愛してる。俺はお前しか選ばない」
「馬鹿だよ。絶対捨てたくなるよ?」
「俺の方が、捨てられたんだが……二度と逃がさない」
抱きしめられて、覚悟を決めた。
「──俺の唯一の人。番になって欲しい」
「───はい」
そして、また唇が重なる。
例え間違った選択だったとしても、愛しさを止めるなんてもう、無理だったんだ。
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