49 / 58
第3章
15王子の覚悟
しおりを挟む
ようやく会えたライラは、真っ青だった。
シャツは朱色に染まって、胸には短剣が見えていた。
一体ここで何が起きたのか?
恐ろしいほどの魔力の持ち主は、美麗すぎて人外としか思えなかった。その腕の中に収まっているライラが、魔族だと言った。
何が、あったんだ。俺の番を何処に連れていくのか?理解が及ばない。
消えてしまった2人のいた場所をただ見つめることしか出来ない。
「ロイド……一体何があったんだ?俺から逃げる理由なのか?ライラが魔族だって?」
下を向いて何も言わないままだったロイドが床を拳で叩き始める。ドン、ドンと音だけが響く。
「──おい。やめろ!手が駄目になってしまう。いい加減にしろ!」
一緒にきたレンドルが、バシンと平手でロイドの頬を叩く。
体制をくずし、床へとロイドは転がった。そのまま起き上がる事無く横たわったままだ。
「レン……ドル。お前、やり過ぎだろ。大丈夫か?」
「手の骨が砕けるよりは、いいかと思いますよ?ここは、異常な空間の中です。治療が上手く出来るか分かりませんから」
そういいながら、ロイドの側に膝まづいて彼の手を握り何かを唱えている。淡い光に包まれているのを見て、俺は話しかけた。
「──ライラに、一体何が起きてるんだ?」
ロイドは体を起こし床に座り込んだ。その顔は俯いたままで表情は、分からない。そのまま、ぼそぼそと話し始める。
「ライラは……お前の事ばかりだ」
「それと、魔族とどう繋がるのか、早く教えてくれ」
「俺が、どれだけ大切に思ってきたか分からないだろ?俺が、アルファだったらってずっと思っていたよ。そんな、ライラの運命がお前で、お前を守る為に死のうとしたんだ!!」
ロイドの声が徐々に大きくなり、俺の方を向いたかと思った途端その目に憎しみが浮かぶ。
「なんだと?」
「魔族が欲しいのは、お前の魔力だよ。それをさせない為に、自分に剣を突き立てた。あの、魔族は……ライラの本当の父親だ。ライラの母親が仮死状態だから、お前の魔力はそいつを復活させる為に最適らしい」
「仮死状態の母親?復活に俺が必要?」
「俺は、お前を差し出したいよ!お前が邪魔で仕方がない。でも、ライラはお前だけを思っている。お前を逃がせと言うんだ。なんで、お前はなんでも持っているんだ?地位も金も……そうだよ王族だもんな。ははっ、底辺の俺たちとは違う。アルファで、選びたい放題だろ?だったら、ライラから手を引いてくれ!俺は、守るって誓ったんだ。俺のライラなんだ」
知っていた。彼がどれだけライラを思っているか……。いや、それ以上の想いだった。
「魔族が、復活させたいのも魔族なのか?」
「ライラは、エーベルハルト王家の血縁だ。亡国の王族の子供だよ」
「紫銀の髪の毛……は、そうか。やっぱりエーベルハルトに関係するんだな。つまり、人なんだな?」
「お前の魔力が欲しいそうだ。そうすれば、人間に魔族は、今後一切関わらないと言ってたよ。たった一人の命で人間が魔族から救われるなら安いだろう?って提案して来たよ」
「エーベルハルトが滅んだのは、魔族のせいなのか?」
「そんなの、知らない」
「一つ聞くが、お前はこの先もずっとライラを守ってくれるのか?」
「は、魔族と聞いて……運命を簡単に捨てるんだな。だからお前になんて渡したくないんだ」
「ああ、守ってくれ。俺が魔族の元に行く。お前は一緒に行き、ライラを奪い戻って来ればいい」
「な」
「王国を守る為にこの命一つで済むなら安い。俺の替えはいる。レンドル、王家への連絡は……ライラを奪い返してからだ」
「う、そだろ?」
「俺にとって、ライラは特別なんだ。あいつを死なせたりしない」
「そんなこと信じられるか!」
「王国よりもたった一人の国民を守れるなら、命位差し出せる」
「魔族が約束を守るかなんて分からないのにか?」
「契約をする。約束を反故にするなら、呪いを発動させたらいい」
「そんな、馬鹿な」
「ライラを守れよ。よし、追うぞ」
「ジェイ……本気か?」
「運命が死んだら、俺も生きてはいけない。必ず取り返すぞ」
そして、後を追う。ライラの髪に目印を付けていて正解だった。まだ追える。俺達は転移陣を展開した。
シャツは朱色に染まって、胸には短剣が見えていた。
一体ここで何が起きたのか?
恐ろしいほどの魔力の持ち主は、美麗すぎて人外としか思えなかった。その腕の中に収まっているライラが、魔族だと言った。
何が、あったんだ。俺の番を何処に連れていくのか?理解が及ばない。
消えてしまった2人のいた場所をただ見つめることしか出来ない。
「ロイド……一体何があったんだ?俺から逃げる理由なのか?ライラが魔族だって?」
下を向いて何も言わないままだったロイドが床を拳で叩き始める。ドン、ドンと音だけが響く。
「──おい。やめろ!手が駄目になってしまう。いい加減にしろ!」
一緒にきたレンドルが、バシンと平手でロイドの頬を叩く。
体制をくずし、床へとロイドは転がった。そのまま起き上がる事無く横たわったままだ。
「レン……ドル。お前、やり過ぎだろ。大丈夫か?」
「手の骨が砕けるよりは、いいかと思いますよ?ここは、異常な空間の中です。治療が上手く出来るか分かりませんから」
そういいながら、ロイドの側に膝まづいて彼の手を握り何かを唱えている。淡い光に包まれているのを見て、俺は話しかけた。
「──ライラに、一体何が起きてるんだ?」
ロイドは体を起こし床に座り込んだ。その顔は俯いたままで表情は、分からない。そのまま、ぼそぼそと話し始める。
「ライラは……お前の事ばかりだ」
「それと、魔族とどう繋がるのか、早く教えてくれ」
「俺が、どれだけ大切に思ってきたか分からないだろ?俺が、アルファだったらってずっと思っていたよ。そんな、ライラの運命がお前で、お前を守る為に死のうとしたんだ!!」
ロイドの声が徐々に大きくなり、俺の方を向いたかと思った途端その目に憎しみが浮かぶ。
「なんだと?」
「魔族が欲しいのは、お前の魔力だよ。それをさせない為に、自分に剣を突き立てた。あの、魔族は……ライラの本当の父親だ。ライラの母親が仮死状態だから、お前の魔力はそいつを復活させる為に最適らしい」
「仮死状態の母親?復活に俺が必要?」
「俺は、お前を差し出したいよ!お前が邪魔で仕方がない。でも、ライラはお前だけを思っている。お前を逃がせと言うんだ。なんで、お前はなんでも持っているんだ?地位も金も……そうだよ王族だもんな。ははっ、底辺の俺たちとは違う。アルファで、選びたい放題だろ?だったら、ライラから手を引いてくれ!俺は、守るって誓ったんだ。俺のライラなんだ」
知っていた。彼がどれだけライラを思っているか……。いや、それ以上の想いだった。
「魔族が、復活させたいのも魔族なのか?」
「ライラは、エーベルハルト王家の血縁だ。亡国の王族の子供だよ」
「紫銀の髪の毛……は、そうか。やっぱりエーベルハルトに関係するんだな。つまり、人なんだな?」
「お前の魔力が欲しいそうだ。そうすれば、人間に魔族は、今後一切関わらないと言ってたよ。たった一人の命で人間が魔族から救われるなら安いだろう?って提案して来たよ」
「エーベルハルトが滅んだのは、魔族のせいなのか?」
「そんなの、知らない」
「一つ聞くが、お前はこの先もずっとライラを守ってくれるのか?」
「は、魔族と聞いて……運命を簡単に捨てるんだな。だからお前になんて渡したくないんだ」
「ああ、守ってくれ。俺が魔族の元に行く。お前は一緒に行き、ライラを奪い戻って来ればいい」
「な」
「王国を守る為にこの命一つで済むなら安い。俺の替えはいる。レンドル、王家への連絡は……ライラを奪い返してからだ」
「う、そだろ?」
「俺にとって、ライラは特別なんだ。あいつを死なせたりしない」
「そんなこと信じられるか!」
「王国よりもたった一人の国民を守れるなら、命位差し出せる」
「魔族が約束を守るかなんて分からないのにか?」
「契約をする。約束を反故にするなら、呪いを発動させたらいい」
「そんな、馬鹿な」
「ライラを守れよ。よし、追うぞ」
「ジェイ……本気か?」
「運命が死んだら、俺も生きてはいけない。必ず取り返すぞ」
そして、後を追う。ライラの髪に目印を付けていて正解だった。まだ追える。俺達は転移陣を展開した。
35
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。


ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!


狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる