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第3章
15王子の覚悟
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ようやく会えたライラは、真っ青だった。
シャツは朱色に染まって、胸には短剣が見えていた。
一体ここで何が起きたのか?
恐ろしいほどの魔力の持ち主は、美麗すぎて人外としか思えなかった。その腕の中に収まっているライラが、魔族だと言った。
何が、あったんだ。俺の番を何処に連れていくのか?理解が及ばない。
消えてしまった2人のいた場所をただ見つめることしか出来ない。
「ロイド……一体何があったんだ?俺から逃げる理由なのか?ライラが魔族だって?」
下を向いて何も言わないままだったロイドが床を拳で叩き始める。ドン、ドンと音だけが響く。
「──おい。やめろ!手が駄目になってしまう。いい加減にしろ!」
一緒にきたレンドルが、バシンと平手でロイドの頬を叩く。
体制をくずし、床へとロイドは転がった。そのまま起き上がる事無く横たわったままだ。
「レン……ドル。お前、やり過ぎだろ。大丈夫か?」
「手の骨が砕けるよりは、いいかと思いますよ?ここは、異常な空間の中です。治療が上手く出来るか分かりませんから」
そういいながら、ロイドの側に膝まづいて彼の手を握り何かを唱えている。淡い光に包まれているのを見て、俺は話しかけた。
「──ライラに、一体何が起きてるんだ?」
ロイドは体を起こし床に座り込んだ。その顔は俯いたままで表情は、分からない。そのまま、ぼそぼそと話し始める。
「ライラは……お前の事ばかりだ」
「それと、魔族とどう繋がるのか、早く教えてくれ」
「俺が、どれだけ大切に思ってきたか分からないだろ?俺が、アルファだったらってずっと思っていたよ。そんな、ライラの運命がお前で、お前を守る為に死のうとしたんだ!!」
ロイドの声が徐々に大きくなり、俺の方を向いたかと思った途端その目に憎しみが浮かぶ。
「なんだと?」
「魔族が欲しいのは、お前の魔力だよ。それをさせない為に、自分に剣を突き立てた。あの、魔族は……ライラの本当の父親だ。ライラの母親が仮死状態だから、お前の魔力はそいつを復活させる為に最適らしい」
「仮死状態の母親?復活に俺が必要?」
「俺は、お前を差し出したいよ!お前が邪魔で仕方がない。でも、ライラはお前だけを思っている。お前を逃がせと言うんだ。なんで、お前はなんでも持っているんだ?地位も金も……そうだよ王族だもんな。ははっ、底辺の俺たちとは違う。アルファで、選びたい放題だろ?だったら、ライラから手を引いてくれ!俺は、守るって誓ったんだ。俺のライラなんだ」
知っていた。彼がどれだけライラを思っているか……。いや、それ以上の想いだった。
「魔族が、復活させたいのも魔族なのか?」
「ライラは、エーベルハルト王家の血縁だ。亡国の王族の子供だよ」
「紫銀の髪の毛……は、そうか。やっぱりエーベルハルトに関係するんだな。つまり、人なんだな?」
「お前の魔力が欲しいそうだ。そうすれば、人間に魔族は、今後一切関わらないと言ってたよ。たった一人の命で人間が魔族から救われるなら安いだろう?って提案して来たよ」
「エーベルハルトが滅んだのは、魔族のせいなのか?」
「そんなの、知らない」
「一つ聞くが、お前はこの先もずっとライラを守ってくれるのか?」
「は、魔族と聞いて……運命を簡単に捨てるんだな。だからお前になんて渡したくないんだ」
「ああ、守ってくれ。俺が魔族の元に行く。お前は一緒に行き、ライラを奪い戻って来ればいい」
「な」
「王国を守る為にこの命一つで済むなら安い。俺の替えはいる。レンドル、王家への連絡は……ライラを奪い返してからだ」
「う、そだろ?」
「俺にとって、ライラは特別なんだ。あいつを死なせたりしない」
「そんなこと信じられるか!」
「王国よりもたった一人の国民を守れるなら、命位差し出せる」
「魔族が約束を守るかなんて分からないのにか?」
「契約をする。約束を反故にするなら、呪いを発動させたらいい」
「そんな、馬鹿な」
「ライラを守れよ。よし、追うぞ」
「ジェイ……本気か?」
「運命が死んだら、俺も生きてはいけない。必ず取り返すぞ」
そして、後を追う。ライラの髪に目印を付けていて正解だった。まだ追える。俺達は転移陣を展開した。
シャツは朱色に染まって、胸には短剣が見えていた。
一体ここで何が起きたのか?
恐ろしいほどの魔力の持ち主は、美麗すぎて人外としか思えなかった。その腕の中に収まっているライラが、魔族だと言った。
何が、あったんだ。俺の番を何処に連れていくのか?理解が及ばない。
消えてしまった2人のいた場所をただ見つめることしか出来ない。
「ロイド……一体何があったんだ?俺から逃げる理由なのか?ライラが魔族だって?」
下を向いて何も言わないままだったロイドが床を拳で叩き始める。ドン、ドンと音だけが響く。
「──おい。やめろ!手が駄目になってしまう。いい加減にしろ!」
一緒にきたレンドルが、バシンと平手でロイドの頬を叩く。
体制をくずし、床へとロイドは転がった。そのまま起き上がる事無く横たわったままだ。
「レン……ドル。お前、やり過ぎだろ。大丈夫か?」
「手の骨が砕けるよりは、いいかと思いますよ?ここは、異常な空間の中です。治療が上手く出来るか分かりませんから」
そういいながら、ロイドの側に膝まづいて彼の手を握り何かを唱えている。淡い光に包まれているのを見て、俺は話しかけた。
「──ライラに、一体何が起きてるんだ?」
ロイドは体を起こし床に座り込んだ。その顔は俯いたままで表情は、分からない。そのまま、ぼそぼそと話し始める。
「ライラは……お前の事ばかりだ」
「それと、魔族とどう繋がるのか、早く教えてくれ」
「俺が、どれだけ大切に思ってきたか分からないだろ?俺が、アルファだったらってずっと思っていたよ。そんな、ライラの運命がお前で、お前を守る為に死のうとしたんだ!!」
ロイドの声が徐々に大きくなり、俺の方を向いたかと思った途端その目に憎しみが浮かぶ。
「なんだと?」
「魔族が欲しいのは、お前の魔力だよ。それをさせない為に、自分に剣を突き立てた。あの、魔族は……ライラの本当の父親だ。ライラの母親が仮死状態だから、お前の魔力はそいつを復活させる為に最適らしい」
「仮死状態の母親?復活に俺が必要?」
「俺は、お前を差し出したいよ!お前が邪魔で仕方がない。でも、ライラはお前だけを思っている。お前を逃がせと言うんだ。なんで、お前はなんでも持っているんだ?地位も金も……そうだよ王族だもんな。ははっ、底辺の俺たちとは違う。アルファで、選びたい放題だろ?だったら、ライラから手を引いてくれ!俺は、守るって誓ったんだ。俺のライラなんだ」
知っていた。彼がどれだけライラを思っているか……。いや、それ以上の想いだった。
「魔族が、復活させたいのも魔族なのか?」
「ライラは、エーベルハルト王家の血縁だ。亡国の王族の子供だよ」
「紫銀の髪の毛……は、そうか。やっぱりエーベルハルトに関係するんだな。つまり、人なんだな?」
「お前の魔力が欲しいそうだ。そうすれば、人間に魔族は、今後一切関わらないと言ってたよ。たった一人の命で人間が魔族から救われるなら安いだろう?って提案して来たよ」
「エーベルハルトが滅んだのは、魔族のせいなのか?」
「そんなの、知らない」
「一つ聞くが、お前はこの先もずっとライラを守ってくれるのか?」
「は、魔族と聞いて……運命を簡単に捨てるんだな。だからお前になんて渡したくないんだ」
「ああ、守ってくれ。俺が魔族の元に行く。お前は一緒に行き、ライラを奪い戻って来ればいい」
「な」
「王国を守る為にこの命一つで済むなら安い。俺の替えはいる。レンドル、王家への連絡は……ライラを奪い返してからだ」
「う、そだろ?」
「俺にとって、ライラは特別なんだ。あいつを死なせたりしない」
「そんなこと信じられるか!」
「王国よりもたった一人の国民を守れるなら、命位差し出せる」
「魔族が約束を守るかなんて分からないのにか?」
「契約をする。約束を反故にするなら、呪いを発動させたらいい」
「そんな、馬鹿な」
「ライラを守れよ。よし、追うぞ」
「ジェイ……本気か?」
「運命が死んだら、俺も生きてはいけない。必ず取り返すぞ」
そして、後を追う。ライラの髪に目印を付けていて正解だった。まだ追える。俺達は転移陣を展開した。
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