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第3章
8遭遇
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蛇蜥蜴鳥獣が、近くまで来てる。
トカゲと蛇が混ざり羽まで持っているそんな奴だ。普段ならもっと下の階層に居るはずだ。
バカだ。居るはずがないなんて、それが本当に常識だと勝手に思っていただけかもしれない。どこかの竪穴からここへと繋がっていることだってありえる。ただ知らないだけで。
マップが正解では、無いのだから。現に俺がいた場所も塞がれて入口は、分からないようにしてくれてる。
これから、イレギュラーなんて益々起きるのかも知れない。変異種が、増えてきているのも事実だから。
駄目だ。目の前に迫る敵に集中するんだ。
結界の重ねがけ、防御壁もかける。
「兄さん」
立ち上がると、荷物を収納した兄さんが黒剣の柄を握っていた。
俺もすぐにレイピアに手をかける。
「──ライラは、後衛でいい。前に出てくるなよ」
「兄さん!!俺だって、倒せる」
「───セーフティポイントに行って待てば、多分ギルマスと合流出来るから、万が一の時は俺を置いて行けよ」
「へんな、フラグ立てないでよ!だったら、俺が致命傷負った時は……兄さんの手で殺して」
生きたまま、残されたくない。トドメを刺してくれる方がいい。寂しいのは嫌なんだ。
黒剣を構えた兄さんが、前を見たままこう言った。
「簡単に死ぬ気もないが……ライラにトドメを刺す時は、俺も一緒について行くから心配するな。ライラは、昔から寂しがりの泣き虫だったな」
自分は置いて逃げろって言う癖に。お互いきっと、自分を犠牲にして相手を助けたいはずだ。その位、大切な兄さんなんだ。本当の兄弟……って思いたい。魔族の血が混ざってるかも知れないのに。魔族なら、俺が前衛になるべきじゃないか?
「俺だって、兄さんを置いて行く気はない。俺、きっと前にいる方がいい!」
その言葉が聞こえたはずの兄さんが、剣を構え敵へと向かっていく。《飛翔》先へと行ってしまう。
次いで、唱えるつもりだった。
そのはずだったんだ。
黒い霧のような物が立ち込めてきた。何かの結界に包まれて、動けない。兄さん?何処にいるの?
──違う。なんだこれ。おかしい。
『兄さん』声にならない?術にかけられた?
足元から、何かが生えてきた。レイピアで切ろうとしても切れない。ズルズルと巻き付き伸びて拘束されていく。
『気持ち……わる』ヌメヌメと粘液が垂れていて、服が湿っていく。冷たい。太ももから、胸、腕と巻きついて離れない。
『早く、兄さんのところへ加勢しに行かないと』
冷たかったのに……へんな感じ。レイピアを持ってられない。カランと地面に落ちた剣の音が響く。
待って、兄さんは蛇蜥蜴鳥獣と戦っているはずそれなのに、どうして音がしない?何が起きてる?
力がでない。息があがる。兄さん無事?触手魔獣の変異種?核が分からないし、色だってこんな擬態出来るやつじゃない。
『こんな、の。知らない……はぁ、はぁ』
なんか、あつい。
『ひぃあ……ん。や』
服の中に入り込んできた。待って、やだ。やだ。
『───ジェイ助けて』
嫌だ。ジェイ以外に触れられたくない。
バン!
結界の様なものに何かが、当たる。黒剣?兄さん?
違う。黒い……?靴跡?霧が晴れてきた。
黒いローブ姿の誰かがいる。
次の瞬間ものすごい跳躍で、蹴りが入った。
バラバラと砕け落ちた結界片。そして、長剣を一振すると巻き付かれていたモノが消え失せる。誰?
「兄さんは、ぶ……じ?」
「───ライリオラ・エーベルハルト?
ライラか?」
この声……まさか?
「お前の連れは、仲間と蛇蜥蜴鳥獣を殺ってる。少し話がしたいから都合がいい……だが治療が先か」
そう言って抱きかかえられた。
「──あ、の」
何かの呪文?意識が遠のいて行く。
「大丈夫。伝言はしておく」
そして、意識を失ったんだ。
トカゲと蛇が混ざり羽まで持っているそんな奴だ。普段ならもっと下の階層に居るはずだ。
バカだ。居るはずがないなんて、それが本当に常識だと勝手に思っていただけかもしれない。どこかの竪穴からここへと繋がっていることだってありえる。ただ知らないだけで。
マップが正解では、無いのだから。現に俺がいた場所も塞がれて入口は、分からないようにしてくれてる。
これから、イレギュラーなんて益々起きるのかも知れない。変異種が、増えてきているのも事実だから。
駄目だ。目の前に迫る敵に集中するんだ。
結界の重ねがけ、防御壁もかける。
「兄さん」
立ち上がると、荷物を収納した兄さんが黒剣の柄を握っていた。
俺もすぐにレイピアに手をかける。
「──ライラは、後衛でいい。前に出てくるなよ」
「兄さん!!俺だって、倒せる」
「───セーフティポイントに行って待てば、多分ギルマスと合流出来るから、万が一の時は俺を置いて行けよ」
「へんな、フラグ立てないでよ!だったら、俺が致命傷負った時は……兄さんの手で殺して」
生きたまま、残されたくない。トドメを刺してくれる方がいい。寂しいのは嫌なんだ。
黒剣を構えた兄さんが、前を見たままこう言った。
「簡単に死ぬ気もないが……ライラにトドメを刺す時は、俺も一緒について行くから心配するな。ライラは、昔から寂しがりの泣き虫だったな」
自分は置いて逃げろって言う癖に。お互いきっと、自分を犠牲にして相手を助けたいはずだ。その位、大切な兄さんなんだ。本当の兄弟……って思いたい。魔族の血が混ざってるかも知れないのに。魔族なら、俺が前衛になるべきじゃないか?
「俺だって、兄さんを置いて行く気はない。俺、きっと前にいる方がいい!」
その言葉が聞こえたはずの兄さんが、剣を構え敵へと向かっていく。《飛翔》先へと行ってしまう。
次いで、唱えるつもりだった。
そのはずだったんだ。
黒い霧のような物が立ち込めてきた。何かの結界に包まれて、動けない。兄さん?何処にいるの?
──違う。なんだこれ。おかしい。
『兄さん』声にならない?術にかけられた?
足元から、何かが生えてきた。レイピアで切ろうとしても切れない。ズルズルと巻き付き伸びて拘束されていく。
『気持ち……わる』ヌメヌメと粘液が垂れていて、服が湿っていく。冷たい。太ももから、胸、腕と巻きついて離れない。
『早く、兄さんのところへ加勢しに行かないと』
冷たかったのに……へんな感じ。レイピアを持ってられない。カランと地面に落ちた剣の音が響く。
待って、兄さんは蛇蜥蜴鳥獣と戦っているはずそれなのに、どうして音がしない?何が起きてる?
力がでない。息があがる。兄さん無事?触手魔獣の変異種?核が分からないし、色だってこんな擬態出来るやつじゃない。
『こんな、の。知らない……はぁ、はぁ』
なんか、あつい。
『ひぃあ……ん。や』
服の中に入り込んできた。待って、やだ。やだ。
『───ジェイ助けて』
嫌だ。ジェイ以外に触れられたくない。
バン!
結界の様なものに何かが、当たる。黒剣?兄さん?
違う。黒い……?靴跡?霧が晴れてきた。
黒いローブ姿の誰かがいる。
次の瞬間ものすごい跳躍で、蹴りが入った。
バラバラと砕け落ちた結界片。そして、長剣を一振すると巻き付かれていたモノが消え失せる。誰?
「兄さんは、ぶ……じ?」
「───ライリオラ・エーベルハルト?
ライラか?」
この声……まさか?
「お前の連れは、仲間と蛇蜥蜴鳥獣を殺ってる。少し話がしたいから都合がいい……だが治療が先か」
そう言って抱きかかえられた。
「──あ、の」
何かの呪文?意識が遠のいて行く。
「大丈夫。伝言はしておく」
そして、意識を失ったんだ。
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