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第3章
7ダンジョン③
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ライ……ラ。
ライラ……
軽く揺さぶられて、その声の主を探す。
「ライラ!」
兄さんの顔が……泣きそうに見えた。
「にい、さ、ん」
「良かった。ライラは、突然気を失ったんだ」
抱き寄せられて、兄さんの腕の中にいることに気がついた。一体何が起きたんだろう?
目が慣れてきて、岩肌がしっかりと視界に入ってきた。
「あの。ここって、ダンジョンの中?」
どのくらい時間が経ったのか分からない。
「そうだ」
こんな所で、意識を失っていたなんて……焦り、探索をかけようとすると声がかかった。
「ライラ。心配ないから。二時間くらいだ。この空間に移動した後に、急に力が抜けるように倒れたんだ。なんの反応もなくて、心配した。本当にここに何かがあるって、呼ばれている気がしたんだ。無理に移動して悪かった。気のせいかも知れないって一度ライラに確認したら良かったのに……」
話しながら少し緊張が解けたみたいで、兄さんが優しい顔になる。
結界を張ってるみたいだ。当たり前だ。嗅ぎつけられたら、意識のなかった俺は足でまといになってたはずだから。一人気を張っていた兄さんが心配になる。
「魔力が減りすぎてたりしない?ポーションは飲んだ?あ、手が塞がって飲めてないなら……」
また、抱きしめられる腕に力が入ってきて兄さんの胸に収まってしまう。
兄さんは、母さんの血が濃く出ていると父さんが言ってた。第六感的な、何か不思議な力があると思う。きっと、何かを感じてここに連れてきてくれたはず。それでも、無理はして欲しくない。
「───俺が、ライラを守りたいんだ。アイツがいない時位……騎士の代わりをしてもいいだろ?それに、魔力は多い方だよ。ポーションは、もう少し後で大丈夫だから、ライラが落ち着くまでは……このままでいて欲しい」
自分で気が付いてなかったけど、指や体が少し震えているみたいだ。
───本当の両親が、ここで話した記憶だったのかな?地下迷宮に俺を隠す為に何かをしに来たのかもしれない。父さんは、魔族なら生きているんだろうか?寿命とかよく分からない。
もしも……鍵の繋がる先が違っていたら?エーベルハルトへ繋がる物ではなく、魔族の方だったとしたら?本当に父親側の者に体良く呼び出されるのかも知れない。俺だけで対応した方がいいんじゃないだろうか?
「ライラ?まだ具合が悪いか?予定より時間がかかったから、セーフティポイントまで行って泊まりの用意をしよう。目的の場所は念入りに確認する必要があるからね。転移陣も用意して、明日の朝から動こう。悪いな……俺の勘外れて迷惑かけた。移動して、ちゃんとした休息を取ろうな」
兄さんの勘は、すごいよ。外れてない。俺、会えたよ。本当の両親に。でも、俺魔族の血が流れているみたいだよ。こんなの、ますます傍にいて良い分けがない。ジェイだけじゃなく、兄さん達とも一緒にいていいはずがない。
「──兄さん」
兄さんは、壁に背を当てて座り込んでいる。ようやく自分がどれだけ守られているか気がつく。俺は、地面に予備のローブを敷いた兄さんの足の間に横抱きにされてる。本当に過保護だ。
「本当に怪我はないか?息苦しいとか?頭は、打ってないよな?吐き気は?」
まだ少し青い顔をして、早口で俺の事ばかり心配してる。本当に、いつもかばわれてばかりだ。
俺……このままでいいはずがない。少し兄さんに寄りかかると、いつも冷静な兄さんの心臓まで、早い鼓動で……どれだけ心配かけたのか実感した。
兄さんを転移で戻そう。ただでさえ魔獣が増える。俺、呼び水みたいになってしまいそうだから。
もし魔獣だけではなく、魔族を呼ぶものだったら?そんなの……駄目。
「兄さん──」
「ライラ、黙って──」
物凄い魔力の塊が、すぐ側に来ている。
どうして……?
探索に何もかからなかったのに。
ライラ……
軽く揺さぶられて、その声の主を探す。
「ライラ!」
兄さんの顔が……泣きそうに見えた。
「にい、さ、ん」
「良かった。ライラは、突然気を失ったんだ」
抱き寄せられて、兄さんの腕の中にいることに気がついた。一体何が起きたんだろう?
目が慣れてきて、岩肌がしっかりと視界に入ってきた。
「あの。ここって、ダンジョンの中?」
どのくらい時間が経ったのか分からない。
「そうだ」
こんな所で、意識を失っていたなんて……焦り、探索をかけようとすると声がかかった。
「ライラ。心配ないから。二時間くらいだ。この空間に移動した後に、急に力が抜けるように倒れたんだ。なんの反応もなくて、心配した。本当にここに何かがあるって、呼ばれている気がしたんだ。無理に移動して悪かった。気のせいかも知れないって一度ライラに確認したら良かったのに……」
話しながら少し緊張が解けたみたいで、兄さんが優しい顔になる。
結界を張ってるみたいだ。当たり前だ。嗅ぎつけられたら、意識のなかった俺は足でまといになってたはずだから。一人気を張っていた兄さんが心配になる。
「魔力が減りすぎてたりしない?ポーションは飲んだ?あ、手が塞がって飲めてないなら……」
また、抱きしめられる腕に力が入ってきて兄さんの胸に収まってしまう。
兄さんは、母さんの血が濃く出ていると父さんが言ってた。第六感的な、何か不思議な力があると思う。きっと、何かを感じてここに連れてきてくれたはず。それでも、無理はして欲しくない。
「───俺が、ライラを守りたいんだ。アイツがいない時位……騎士の代わりをしてもいいだろ?それに、魔力は多い方だよ。ポーションは、もう少し後で大丈夫だから、ライラが落ち着くまでは……このままでいて欲しい」
自分で気が付いてなかったけど、指や体が少し震えているみたいだ。
───本当の両親が、ここで話した記憶だったのかな?地下迷宮に俺を隠す為に何かをしに来たのかもしれない。父さんは、魔族なら生きているんだろうか?寿命とかよく分からない。
もしも……鍵の繋がる先が違っていたら?エーベルハルトへ繋がる物ではなく、魔族の方だったとしたら?本当に父親側の者に体良く呼び出されるのかも知れない。俺だけで対応した方がいいんじゃないだろうか?
「ライラ?まだ具合が悪いか?予定より時間がかかったから、セーフティポイントまで行って泊まりの用意をしよう。目的の場所は念入りに確認する必要があるからね。転移陣も用意して、明日の朝から動こう。悪いな……俺の勘外れて迷惑かけた。移動して、ちゃんとした休息を取ろうな」
兄さんの勘は、すごいよ。外れてない。俺、会えたよ。本当の両親に。でも、俺魔族の血が流れているみたいだよ。こんなの、ますます傍にいて良い分けがない。ジェイだけじゃなく、兄さん達とも一緒にいていいはずがない。
「──兄さん」
兄さんは、壁に背を当てて座り込んでいる。ようやく自分がどれだけ守られているか気がつく。俺は、地面に予備のローブを敷いた兄さんの足の間に横抱きにされてる。本当に過保護だ。
「本当に怪我はないか?息苦しいとか?頭は、打ってないよな?吐き気は?」
まだ少し青い顔をして、早口で俺の事ばかり心配してる。本当に、いつもかばわれてばかりだ。
俺……このままでいいはずがない。少し兄さんに寄りかかると、いつも冷静な兄さんの心臓まで、早い鼓動で……どれだけ心配かけたのか実感した。
兄さんを転移で戻そう。ただでさえ魔獣が増える。俺、呼び水みたいになってしまいそうだから。
もし魔獣だけではなく、魔族を呼ぶものだったら?そんなの……駄目。
「兄さん──」
「ライラ、黙って──」
物凄い魔力の塊が、すぐ側に来ている。
どうして……?
探索に何もかからなかったのに。
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