40 / 58
第3章
6 ダンジョン②
しおりを挟む
誰かに名前を呼ばれている気がする。
薄らと目を開くとどこかの室内にいるみたいだ。
夢?
だって、ダンジョンの中にいたんだ。何かの罠?
「ライリオラ」
ライリオラ?それは、僕のこと?
だって、僕は……ライ…?
手が、小さい?声が出ない?
「ライラ……」
ギュッと抱きしめられた。やっぱり声が出ない。でも、この匂い。懐かしい……だってほら、髪の色……紫銀の。
「別れを済ますつもりか?」
もう一人いる。この人も知ってる気がする。黒髪……?
「──この子を救う為なら、なんでもします」
「後悔はしないのか?」
「──してどうするのですか?嘆くよりは、少しでもマシな選択をするだけです」
「ならライリオラと二人で生きることが出来るだろう?俺を殺せばいいことだ」
「───殺せと?」
「お前が生きてくれるなら本望だよ」
「そんなことをしたら貴方の種族が、王国を滅ぼしに来るでしょう。ましてこの子を見逃してくれるわけが無い。これがきっかけで人対魔族となってしまえば……世界の全てが壊れてしまう。王国だけでは収まらない。貴方が生きてこそ平和に繋がるのだから。私が毒を飲めば終わる。ライラの身代わりになる遺体も作って下さった」
「お前が、死んだら俺がこの国を」
「駄目です。それは絶対にしないで。仕方の無いことなのです。魔族のアルファと番った私はこの国で……今の世界で許されない。だから、王家は私と子供を病気で死んだことにしたいのです。人と魔族の間に生まれた子は、育たなかった事にしたいのですよ」
「俺から番を奪う───そいつを愛せる訳が無い」
冷たい視線が、僕の方へ向かってくる。
「お互いを憎んだ振りをして敵対している様に見せてくれたのは、この子を守るためでしょう?魔族と通じていると疑われないように。弱くて生きられない生き物だから、放っておく様にと指示があったのだと……本当に素直じゃない」
「───それでも、お前を失うなど!」
「何度も説明しました。もうこの身体はもたないのです。貴方が分けて下さった魔力がほんの少し生かしてくれただけ。それでも大切な我が子を授かったのです。幸せでした。どうか、ライラが目覚めるまでは、見守って下さい」
「その、変な力で未来が分かるのか?俺が、見守ると信じるのか?」
「ライラと貴方が生きる為ならそれに縋るだけです。どの先読みでも遅かれ早かれ王国は、滅びます。それは自業自得なのですから。ならばこの子が生きる可能性が高い方が良いのです。王国が滅んでも、人の世界さえあればいいのです。それに父親に故郷を奪われたなど、そんな思いだけはさせたくない」
「だが、お前は王なのだろう?」
「──お飾りの王でしかありません。アルファとして生まれる事が叶わなかった。必死にその振りをして生きて、生きて来た。オメガでも王になる為に尽くした結果が、魔性のオメガだと陵辱されかけた。あの時、貴方に助けられ無ければ……王国に、未練などない」
美しい青の瞳から、つたい落ちる涙。オメガ……だから?苦しかった?
「あの場で、お前はあれだけ傷つけられた。自ら生命を絶たなかった事だけは救いだった」
涙そっと触れる、その手が。お互いを想う感情が、溢れて伝わってくる。
「その責めを残忍な魔族だと……罪として擦り付けられたのに?」
「そうするしか、無かっただろう?お前を守りたかった。お前の体に触れた奴らは全員、処分したしな」
「魔族のくせに、優しすぎるのです」
種族を超えた二人は、運命の番だった?
「──俺を捨てる。お前を許せるものか」
「我儘なのです。王として最期は終わりたい。どうか、聞いてこの子には───」
「────」
お父さんたちの記憶を見せられてる?
僕は、2人に捨てられたんじゃない。
愛されてた?
でも国が滅んだのは、300年も前のはずなのに。
どうして───俺は生きているんだろう?
薄らと目を開くとどこかの室内にいるみたいだ。
夢?
だって、ダンジョンの中にいたんだ。何かの罠?
「ライリオラ」
ライリオラ?それは、僕のこと?
だって、僕は……ライ…?
手が、小さい?声が出ない?
「ライラ……」
ギュッと抱きしめられた。やっぱり声が出ない。でも、この匂い。懐かしい……だってほら、髪の色……紫銀の。
「別れを済ますつもりか?」
もう一人いる。この人も知ってる気がする。黒髪……?
「──この子を救う為なら、なんでもします」
「後悔はしないのか?」
「──してどうするのですか?嘆くよりは、少しでもマシな選択をするだけです」
「ならライリオラと二人で生きることが出来るだろう?俺を殺せばいいことだ」
「───殺せと?」
「お前が生きてくれるなら本望だよ」
「そんなことをしたら貴方の種族が、王国を滅ぼしに来るでしょう。ましてこの子を見逃してくれるわけが無い。これがきっかけで人対魔族となってしまえば……世界の全てが壊れてしまう。王国だけでは収まらない。貴方が生きてこそ平和に繋がるのだから。私が毒を飲めば終わる。ライラの身代わりになる遺体も作って下さった」
「お前が、死んだら俺がこの国を」
「駄目です。それは絶対にしないで。仕方の無いことなのです。魔族のアルファと番った私はこの国で……今の世界で許されない。だから、王家は私と子供を病気で死んだことにしたいのです。人と魔族の間に生まれた子は、育たなかった事にしたいのですよ」
「俺から番を奪う───そいつを愛せる訳が無い」
冷たい視線が、僕の方へ向かってくる。
「お互いを憎んだ振りをして敵対している様に見せてくれたのは、この子を守るためでしょう?魔族と通じていると疑われないように。弱くて生きられない生き物だから、放っておく様にと指示があったのだと……本当に素直じゃない」
「───それでも、お前を失うなど!」
「何度も説明しました。もうこの身体はもたないのです。貴方が分けて下さった魔力がほんの少し生かしてくれただけ。それでも大切な我が子を授かったのです。幸せでした。どうか、ライラが目覚めるまでは、見守って下さい」
「その、変な力で未来が分かるのか?俺が、見守ると信じるのか?」
「ライラと貴方が生きる為ならそれに縋るだけです。どの先読みでも遅かれ早かれ王国は、滅びます。それは自業自得なのですから。ならばこの子が生きる可能性が高い方が良いのです。王国が滅んでも、人の世界さえあればいいのです。それに父親に故郷を奪われたなど、そんな思いだけはさせたくない」
「だが、お前は王なのだろう?」
「──お飾りの王でしかありません。アルファとして生まれる事が叶わなかった。必死にその振りをして生きて、生きて来た。オメガでも王になる為に尽くした結果が、魔性のオメガだと陵辱されかけた。あの時、貴方に助けられ無ければ……王国に、未練などない」
美しい青の瞳から、つたい落ちる涙。オメガ……だから?苦しかった?
「あの場で、お前はあれだけ傷つけられた。自ら生命を絶たなかった事だけは救いだった」
涙そっと触れる、その手が。お互いを想う感情が、溢れて伝わってくる。
「その責めを残忍な魔族だと……罪として擦り付けられたのに?」
「そうするしか、無かっただろう?お前を守りたかった。お前の体に触れた奴らは全員、処分したしな」
「魔族のくせに、優しすぎるのです」
種族を超えた二人は、運命の番だった?
「──俺を捨てる。お前を許せるものか」
「我儘なのです。王として最期は終わりたい。どうか、聞いてこの子には───」
「────」
お父さんたちの記憶を見せられてる?
僕は、2人に捨てられたんじゃない。
愛されてた?
でも国が滅んだのは、300年も前のはずなのに。
どうして───俺は生きているんだろう?
35
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。


新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる