【完結】うさぎ亭の看板娘♂は、第1王子の運命の人。

Shizukuru

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第2章

7 ライラと王子 ②

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分かりやすいな。
俺から、逃げることを考えている?

「ライラ……俺から逃げたい?」
そっと、頬を撫でてみる。

「え?」

「顔に書いてある。平民と王子なんてって」

「​───だって、実際にそうだ」
ギュッと握りしめているブランケットの意味は、分かっているか?今、自分がどんな表情かおをしているか気が付いてないだろう?

「運命は、信じられない?」

「​────誰も信じないよ」
視線を合わせてくれないな。

「陛下達と俺は、信じるよ?」

その言葉を聞いたライラが背もたれにしていたクッションを俺めがけて、ぶつけてきた。

「平民の……女装した男のオメガを?馬鹿じゃないの?面白がって、見世物にされるだけだ!」

クッションをベッドに戻した。ライラの腕を掴んで、引き寄せ抱きしめる。ジタバタと暴れているが、このまま話をしていく。

「いいか?君の家族が、君を守る為についた優しい嘘だろう?何よりライラ……君が、家族に迷惑がかからないようにそれに従ったんだ。たくさん、悔しい思いをしたはずだ」

動きが止まる。
頼むそのまま、聞いてくれ。

「どれだけ、家族に大切にされてきたか分かる。王妃……俺の母親もずっと家族に隠されていたそうだよ。それでも、2人は出会ったんだ」

大人しく胸の中に収まったままだ。何も言わない……?

「​────貴族のくせに」

「ライラ?」

「王妃は、貴族だ。大切に邸に隠されて……性別だって偽る必要もない。ただ病弱に仕立てるだけ。俺と同じ?どこが?アルファの男に何が分かるの?」

「ライラ……」

「こんなの。呪いと同じ……いや、違う。ヒートでおかしくなっただけ……アルファなら誰でも受け入れて子供を生む。ただの家畜のオメガだよ!」

「なら、自分の家族にも……そう言うのか?自分は家畜と同じだと?それが本心だと言うのか?大切な家族じゃないのか?」

「​───大切だよ。何よりも、大切で、だから俺のせいで困らせたくないんだ!俺が誘拐でもされたら、自分達の身を犠牲にしてしまう。強く、強くならないと……駄目なのに。こんな、アルファに守られてとか……嫌だ。王子と番とか……」

抱きしめていたライラをベッドに押し倒す。ギシッと軋む音が部屋に響いた。睨みつけてくるが、本心ではないのだろう。

「俺と運命を共にするのは、嫌なのか?」

「だから、もっと相応しい人がいる。アルファの貴族令嬢と婚姻したらいいんだ……んぅ」

唇を唇で塞ぐ。
​─────逃がさない。
覆い被さっているので、動けないだろう。

長く、深く……奥まで舌を差し入れていく。息が苦しいのか……顔をずらそうとしているのが分かる。そのうちに、抵抗をしなくなって次第に力をが抜けて行くのが分かった。
零れ落ちる涙に、やり過ぎただろか?

​──それでも、離してやれない。

ゆっくりと唇を離してみたが、何も言わない。
「​────ライラ?」


「きっと、後悔するよ」

「手離す方が、もっと後悔する」

「みんなに反対されて……」

「ライラの気持ちは?皆がどう思うかじゃない……君の気持ちは?」

「わ、分からない。全然分からない。ずっと、隠してきたんだ。いつかS級の冒険者になれたら、男に戻るって決めてた! それから兄さんと二人で生きて行けたらいいのにって。兄さんに大切な人が現れるまでは、一緒にって思ってたのに」

「そんなに、彼が大切なのか?」
俺にも弟がいるが……アルファ同士だからか、と言う関係ではない。オメガは体型的に小柄が多い。彼にとって守るべきものだったんだろう。

「当たり前だ! どれだけ兄さんが守ってくれてたか……いつか全部返すんだ。守られて終わりたくない」

「​────分かった。なら、強くなるぞ」

「は?」

「強くなりたいのだろう? これでも騎士団とは面識がある。騎士団長も魔術師団長も。まぁライラの父親は騎士団にいたようだし、母親のレベルは相当だが、身内には甘くなりがちだろ? 指導に長けている者を使うだけだ。そう言えば……ギルドマスターが、相当なレベルと聞いた。まずは、そこから協力してもらおう」

「え?」

「強くなれば、自信に繋がるなら、2で強くなるだけだ。ヒートも相性が良かったから、に落ち着きそうだな。だが、4日目の今日までは、まだ様子見で一緒にいよう。ヒートが安定するならその方がいいから。明日一旦王都に戻る。結果を話して来るから、待っていて欲しい。ギルマスにも話をつけよう。彼も君の味方なんだろ?俺も強く在りたいからね。陛下を倒せなければ、跡取りと認めて貰えないんだ。ああ見えて脳筋なんだよね……あの人」

ライラが、変な顔をしているが……陛下が賢王とか策略家等と言われているからだろうか?

「​───脳筋……」

「そうなんだ。だから、身分とかあまり気にしない人なんだ。心配ないよ」

安心してくれただろうか?















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