26 / 58
第2章
7 ライラと王子 ②
しおりを挟む
分かりやすいな。
俺から、逃げることを考えている?
「ライラ……俺から逃げたい?」
そっと、頬を撫でてみる。
「え?」
「顔に書いてある。平民と王子なんてって」
「───だって、実際にそうだ」
ギュッと握りしめているブランケットの意味は、分かっているか?今、自分がどんな表情をしているか気が付いてないだろう?
「運命は、信じられない?」
「────誰も信じないよ」
視線を合わせてくれないな。
「陛下達と俺は、信じるよ?」
その言葉を聞いたライラが背もたれにしていたクッションを俺めがけて、ぶつけてきた。
「平民の……女装した男のオメガを?馬鹿じゃないの?面白がって、見世物にされるだけだ!」
受け取ったクッションをベッドに戻した。ライラの腕を掴んで、引き寄せ抱きしめる。ジタバタと暴れているが、このまま話をしていく。
「いいか?君の家族が、君を守る為についた優しい嘘だろう?何よりライラ……君が、家族に迷惑がかからないようにそれに従ったんだ。たくさん、悔しい思いをしたはずだ」
動きが止まる。
頼むそのまま、聞いてくれ。
「どれだけ、家族に大切にされてきたか分かる。王妃……俺の母親もずっと家族に隠されていたそうだよ。それでも、2人は出会ったんだ」
大人しく胸の中に収まったままだ。何も言わない……?
「────貴族のくせに」
「ライラ?」
「王妃は、貴族だ。大切に邸に隠されて……性別だって偽る必要もない。ただ病弱に仕立てるだけ。俺と同じ?どこが?アルファの男に何が分かるの?」
「ライラ……」
「こんなの。呪いと同じ……いや、違う。ヒートでおかしくなっただけ……アルファなら誰でも受け入れて子供を生む。ただの家畜のオメガだよ!」
「なら、自分の家族にも……そう言うのか?自分は家畜と同じだと?それが本心だと言うのか?大切な家族じゃないのか?」
「───大切だよ。何よりも、大切で、だから俺のせいで困らせたくないんだ!俺が誘拐でもされたら、自分達の身を犠牲にしてしまう。強く、強くならないと……駄目なのに。こんな、アルファに守られてとか……嫌だ。王子と番とか……」
抱きしめていたライラをベッドに押し倒す。ギシッと軋む音が部屋に響いた。睨みつけてくるが、本心ではないのだろう。
「俺と運命を共にするのは、嫌なのか?」
「だから、もっと相応しい人がいる。アルファの貴族令嬢と婚姻したらいいんだ……んぅ」
唇を唇で塞ぐ。
─────逃がさない。
覆い被さっているので、動けないだろう。
長く、深く……奥まで舌を差し入れていく。息が苦しいのか……顔をずらそうとしているのが分かる。そのうちに、抵抗をしなくなって次第に力をが抜けて行くのが分かった。
零れ落ちる涙に、やり過ぎただろか?
──それでも、離してやれない。
ゆっくりと唇を離してみたが、何も言わない。
「────ライラ?」
「きっと、後悔するよ」
「手離す方が、もっと後悔する」
「みんなに反対されて……」
「ライラの気持ちは?皆がどう思うかじゃない……君の気持ちは?」
「わ、分からない。全然分からない。ずっと、隠してきたんだ。いつかS級の冒険者になれたら、男に戻るって決めてた! それから兄さんと二人で生きて行けたらいいのにって。兄さんに大切な人が現れるまでは、一緒にって思ってたのに」
「そんなに、彼が大切なのか?」
俺にも弟がいるが……アルファ同士だからか、守ると言う関係ではない。オメガは体型的に小柄が多い。彼にとって守るべきものだったんだろう。
「当たり前だ! どれだけ兄さんが守ってくれてたか……いつか全部返すんだ。守られて終わりたくない」
「────分かった。なら、強くなるぞ」
「は?」
「強くなりたいのだろう? これでも騎士団とは面識がある。騎士団長も魔術師団長も呼び出せる。まぁライラの父親は騎士団にいたようだし、母親のレベルは相当だが、身内には甘くなりがちだろ? 指導に長けている者を使うだけだ。そう言えば……ギルドマスターが、相当なレベルと聞いた。まずは、そこから協力してもらおう」
「え?」
「強くなれば、自信に繋がるなら、2人で強くなるだけだ。ヒートも相性が良かったから、早めに落ち着きそうだな。だが、4日目の今日までは、まだ様子見で一緒にいよう。ヒートが安定するならその方がいいから。明日一旦王都に戻る。結果を話して来るから、待っていて欲しい。ギルマスにも話をつけよう。彼も君の味方なんだろ?俺も強く在りたいからね。陛下を倒せなければ、跡取りと認めて貰えないんだ。ああ見えて脳筋なんだよね……あの人」
ライラが、変な顔をしているが……陛下が賢王とか策略家等と言われているからだろうか?
「───脳筋……」
「そうなんだ。だから、身分とかあまり気にしない人なんだ。心配ないよ」
安心してくれただろうか?
俺から、逃げることを考えている?
「ライラ……俺から逃げたい?」
そっと、頬を撫でてみる。
「え?」
「顔に書いてある。平民と王子なんてって」
「───だって、実際にそうだ」
ギュッと握りしめているブランケットの意味は、分かっているか?今、自分がどんな表情をしているか気が付いてないだろう?
「運命は、信じられない?」
「────誰も信じないよ」
視線を合わせてくれないな。
「陛下達と俺は、信じるよ?」
その言葉を聞いたライラが背もたれにしていたクッションを俺めがけて、ぶつけてきた。
「平民の……女装した男のオメガを?馬鹿じゃないの?面白がって、見世物にされるだけだ!」
受け取ったクッションをベッドに戻した。ライラの腕を掴んで、引き寄せ抱きしめる。ジタバタと暴れているが、このまま話をしていく。
「いいか?君の家族が、君を守る為についた優しい嘘だろう?何よりライラ……君が、家族に迷惑がかからないようにそれに従ったんだ。たくさん、悔しい思いをしたはずだ」
動きが止まる。
頼むそのまま、聞いてくれ。
「どれだけ、家族に大切にされてきたか分かる。王妃……俺の母親もずっと家族に隠されていたそうだよ。それでも、2人は出会ったんだ」
大人しく胸の中に収まったままだ。何も言わない……?
「────貴族のくせに」
「ライラ?」
「王妃は、貴族だ。大切に邸に隠されて……性別だって偽る必要もない。ただ病弱に仕立てるだけ。俺と同じ?どこが?アルファの男に何が分かるの?」
「ライラ……」
「こんなの。呪いと同じ……いや、違う。ヒートでおかしくなっただけ……アルファなら誰でも受け入れて子供を生む。ただの家畜のオメガだよ!」
「なら、自分の家族にも……そう言うのか?自分は家畜と同じだと?それが本心だと言うのか?大切な家族じゃないのか?」
「───大切だよ。何よりも、大切で、だから俺のせいで困らせたくないんだ!俺が誘拐でもされたら、自分達の身を犠牲にしてしまう。強く、強くならないと……駄目なのに。こんな、アルファに守られてとか……嫌だ。王子と番とか……」
抱きしめていたライラをベッドに押し倒す。ギシッと軋む音が部屋に響いた。睨みつけてくるが、本心ではないのだろう。
「俺と運命を共にするのは、嫌なのか?」
「だから、もっと相応しい人がいる。アルファの貴族令嬢と婚姻したらいいんだ……んぅ」
唇を唇で塞ぐ。
─────逃がさない。
覆い被さっているので、動けないだろう。
長く、深く……奥まで舌を差し入れていく。息が苦しいのか……顔をずらそうとしているのが分かる。そのうちに、抵抗をしなくなって次第に力をが抜けて行くのが分かった。
零れ落ちる涙に、やり過ぎただろか?
──それでも、離してやれない。
ゆっくりと唇を離してみたが、何も言わない。
「────ライラ?」
「きっと、後悔するよ」
「手離す方が、もっと後悔する」
「みんなに反対されて……」
「ライラの気持ちは?皆がどう思うかじゃない……君の気持ちは?」
「わ、分からない。全然分からない。ずっと、隠してきたんだ。いつかS級の冒険者になれたら、男に戻るって決めてた! それから兄さんと二人で生きて行けたらいいのにって。兄さんに大切な人が現れるまでは、一緒にって思ってたのに」
「そんなに、彼が大切なのか?」
俺にも弟がいるが……アルファ同士だからか、守ると言う関係ではない。オメガは体型的に小柄が多い。彼にとって守るべきものだったんだろう。
「当たり前だ! どれだけ兄さんが守ってくれてたか……いつか全部返すんだ。守られて終わりたくない」
「────分かった。なら、強くなるぞ」
「は?」
「強くなりたいのだろう? これでも騎士団とは面識がある。騎士団長も魔術師団長も呼び出せる。まぁライラの父親は騎士団にいたようだし、母親のレベルは相当だが、身内には甘くなりがちだろ? 指導に長けている者を使うだけだ。そう言えば……ギルドマスターが、相当なレベルと聞いた。まずは、そこから協力してもらおう」
「え?」
「強くなれば、自信に繋がるなら、2人で強くなるだけだ。ヒートも相性が良かったから、早めに落ち着きそうだな。だが、4日目の今日までは、まだ様子見で一緒にいよう。ヒートが安定するならその方がいいから。明日一旦王都に戻る。結果を話して来るから、待っていて欲しい。ギルマスにも話をつけよう。彼も君の味方なんだろ?俺も強く在りたいからね。陛下を倒せなければ、跡取りと認めて貰えないんだ。ああ見えて脳筋なんだよね……あの人」
ライラが、変な顔をしているが……陛下が賢王とか策略家等と言われているからだろうか?
「───脳筋……」
「そうなんだ。だから、身分とかあまり気にしない人なんだ。心配ないよ」
安心してくれただろうか?
36
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!


婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。


転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる