【完結】うさぎ亭の看板娘♂は、第1王子の運命の人。

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
25 / 58
第2章

6 ライラと王子①

しおりを挟む
「​───水を下さい」
水の入ったボトルから、グラスに注がれる。それを受け取り一気に飲んでしまった。声がだけ、かすれていると思う。
ベッドに大きめのクッションを置いて背もたれにしている。そう、動ける気がしない。

「啼かせ過ぎたかな?声が、かすれたね。水より蜂蜜水にしようか?」
肌触りの良さそうな光沢のあるズボン履いて、上半身裸のせいで何処を見ていいのか分からない。
なんか​───綺麗な筋肉のつき方で色っぽい。
筋肉がつきにくくて、嫌になる。


手馴れた感じで氷をグラスに落としていく。
果実水に蜂蜜を足して、カランカランと混ぜてくれている。その綺麗な指を目で追ってしまう。

あの指で……開かれていったんだな俺。
て、何、言ってんだ俺。何を考えて……思い出してるんだよ。

「どうした?」
グラスを差し出されて、直ぐに受け取り一気に飲むと小さな氷が喉へ入り込んでしまった。
ゴホッゴホッとむせてしまう。その手が何も着ていない俺の背を撫でてくる。
俺だけ、何も身につけていない。
ブランケットだけあるけど、下着もない。

「いいから!触らないで。変な感じが……するから!」

「朝だから、感じてきたか?」

な、に言ってんの?
「違う!服をちょうだい。俺だけ何も着てないのって……いやだ」

「ごめん。魔術で、汚れは綺麗にしたんだよ。でも朝起きたら、すぐにお風呂に入りたいかと思って」

何この気遣い……

まさに、甲斐甲斐しく……世話をされているそんな状況だ。

それも、この国の第1王子殿下が平民の男オメガにだ。

「​───そんなに、してもらわなくても……いいです」

平民なんだ、よ。俺。

手が伸びて来て頭を撫でられた。
「気にしなくて大丈夫。2人の時は、好きなようにしてていいよ。名前もジェイって呼んで欲しいし、敬語もいらない」

甘い、声。その優しげな表情。その綺麗な顔が、形の良い唇が俺に向けられている。

運命って、本当に何?って思うんだ。
匂いの相性?体の相性?優秀なアルファを産むかもしれない胎内のこと?

運命じゃなくても、アルファなら俺に迫ってきた。全部兄さんが対応してくれてたから強く在りたくて……鍛えてきたのに。

なんで、あんなにって思ったんだろう?気の迷いだ。王子とか、ありえないだろう?


ここに来てからずっと、抱き合っていた事を証明されているようで、嫌になる。
何も身につけてない身体。シーツは、いつの間にか綺麗になってたりするから、王子が取り替えてくれているのか、魔術を使ってるのか分からない。ただ、めちゃくちゃ世話になっているとしかいいようがない。
 途中に果物とか、スープとかもらった記憶はある。覚えている事もあるけれど……身体中の所有印が、こんなに付いてるとかは、覚えていない。だから、羞恥があるのは仕方がないと思う。

どれだけ、この人俺に口付けしたんだよ。
 ジェイクと名乗ったこの人の背中には、引っ掻き傷いっぱいある。それは、どう見ても俺のせいだし。
痛々しくて、思わず……手が伸びる。指でなぞれば、振り返り嬉しそうに笑った。

「あ、触ってごめん……なさい。痛かったよね?治療は、苦手で」

「いや、嬉しかったよ。たくさん求めてくれたから」

完全なヒート状態から、体の奥まで気持ちよくされたせいか、ヒートを1人で過ごす時の狂おしく、切なくなるような気持ちにはならなかった。1人で戦うようなこともなくて、繋いだ指が安心出来てたのは確かだ。

もどかしさとか、身体の熱さから解放された3日間と思えば楽な発情期だった。

この人じゃなくても、そうだったりしないのかな?

ネックガードをなぞる。まだ番じゃない。
まだ、愛とか……愛情なんて……分からない。

ヒートせい。きっと、大丈夫。
きっと今なら、離れられる。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~

ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。 ――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ! ※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...