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第2章
6 ライラと王子①
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「───水を下さい」
水の入ったボトルから、グラスに注がれる。それを受け取り一気に飲んでしまった。声が少しだけ、かすれていると思う。
ベッドに大きめのクッションを置いて背もたれにしている。そう、動ける気がしない。
「啼かせ過ぎたかな?声が、かすれたね。水より蜂蜜水にしようか?」
肌触りの良さそうな光沢のあるズボン履いて、上半身裸のせいで何処を見ていいのか分からない。
なんか───綺麗な筋肉のつき方で色っぽい。
筋肉がつきにくくて、嫌になる。
手馴れた感じで氷をグラスに落としていく。
果実水に蜂蜜を足して、カランカランと混ぜてくれている。その綺麗な指を目で追ってしまう。
あの指で……開かれていったんだな俺。
て、何、言ってんだ俺。何を考えて……思い出してるんだよ。
「どうした?」
グラスを差し出されて、直ぐに受け取り一気に飲むと小さな氷が喉へ入り込んでしまった。
ゴホッゴホッとむせてしまう。その手が何も着ていない俺の背を撫でてくる。
俺だけ、何も身につけていない。
ブランケットだけあるけど、下着もない。
「いいから!触らないで。変な感じが……するから!」
「朝だから、感じてきたか?」
な、に言ってんの?
「違う!服をちょうだい。俺だけ何も着てないのって……いやだ」
「ごめん。魔術で、汚れは綺麗にしたんだよ。でも朝起きたら、すぐにお風呂に入りたいかと思って」
何この気遣い……
まさに、甲斐甲斐しく……世話をされているそんな状況だ。
それも、この国の第1王子殿下が平民の男オメガにだ。
「───そんなに、してもらわなくても……いいです」
平民なんだ、よ。俺。
手が伸びて来て頭を撫でられた。
「気にしなくて大丈夫。2人の時は、好きなようにしてていいよ。名前もジェイって呼んで欲しいし、敬語もいらない」
甘い、声。その優しげな表情。その綺麗な顔が、形の良い唇が俺に向けられている。
運命って、本当に何?って思うんだ。
匂いの相性?体の相性?優秀なアルファを産むかもしれない胎内のこと?
運命じゃなくても、アルファなら俺に迫ってきた。全部兄さんが対応してくれてたから強く在りたくて……鍛えてきたのに。
なんで、あんなに俺のって思ったんだろう?気の迷いだ。王子とか、ありえないだろう?
ここに来てからずっと、抱き合っていた事を証明されているようで、嫌になる。
何も身につけてない身体。シーツは、いつの間にか綺麗になってたりするから、王子が取り替えてくれているのか、魔術を使ってるのか分からない。ただ、めちゃくちゃ世話になっているとしかいいようがない。
途中に果物とか、スープとかもらった記憶はある。覚えている事もあるけれど……身体中の所有印が、こんなに付いてるとかは、覚えていない。だから、羞恥があるのは仕方がないと思う。
どれだけ、この人俺に口付けしたんだよ。
ジェイクと名乗ったこの人の背中には、引っ掻き傷いっぱいある。それは、どう見ても俺のせいだし。
痛々しくて、思わず……手が伸びる。指でなぞれば、振り返り嬉しそうに笑った。
「あ、触ってごめん……なさい。痛かったよね?治療は、苦手で」
「いや、嬉しかったよ。たくさん求めてくれたから」
完全なヒート状態から、体の奥まで気持ちよくされたせいか、ヒートを1人で過ごす時の狂おしく、切なくなるような気持ちにはならなかった。1人で戦うようなこともなくて、繋いだ指が安心出来てたのは確かだ。
もどかしさとか、身体の熱さから解放された3日間と思えば楽な発情期だった。
この人じゃなくても、そうだったりしないのかな?
ネックガードをなぞる。まだ番じゃない。
まだ、愛とか……愛情なんて……分からない。
ヒートせい。きっと、大丈夫。
きっと今なら、離れられる。
水の入ったボトルから、グラスに注がれる。それを受け取り一気に飲んでしまった。声が少しだけ、かすれていると思う。
ベッドに大きめのクッションを置いて背もたれにしている。そう、動ける気がしない。
「啼かせ過ぎたかな?声が、かすれたね。水より蜂蜜水にしようか?」
肌触りの良さそうな光沢のあるズボン履いて、上半身裸のせいで何処を見ていいのか分からない。
なんか───綺麗な筋肉のつき方で色っぽい。
筋肉がつきにくくて、嫌になる。
手馴れた感じで氷をグラスに落としていく。
果実水に蜂蜜を足して、カランカランと混ぜてくれている。その綺麗な指を目で追ってしまう。
あの指で……開かれていったんだな俺。
て、何、言ってんだ俺。何を考えて……思い出してるんだよ。
「どうした?」
グラスを差し出されて、直ぐに受け取り一気に飲むと小さな氷が喉へ入り込んでしまった。
ゴホッゴホッとむせてしまう。その手が何も着ていない俺の背を撫でてくる。
俺だけ、何も身につけていない。
ブランケットだけあるけど、下着もない。
「いいから!触らないで。変な感じが……するから!」
「朝だから、感じてきたか?」
な、に言ってんの?
「違う!服をちょうだい。俺だけ何も着てないのって……いやだ」
「ごめん。魔術で、汚れは綺麗にしたんだよ。でも朝起きたら、すぐにお風呂に入りたいかと思って」
何この気遣い……
まさに、甲斐甲斐しく……世話をされているそんな状況だ。
それも、この国の第1王子殿下が平民の男オメガにだ。
「───そんなに、してもらわなくても……いいです」
平民なんだ、よ。俺。
手が伸びて来て頭を撫でられた。
「気にしなくて大丈夫。2人の時は、好きなようにしてていいよ。名前もジェイって呼んで欲しいし、敬語もいらない」
甘い、声。その優しげな表情。その綺麗な顔が、形の良い唇が俺に向けられている。
運命って、本当に何?って思うんだ。
匂いの相性?体の相性?優秀なアルファを産むかもしれない胎内のこと?
運命じゃなくても、アルファなら俺に迫ってきた。全部兄さんが対応してくれてたから強く在りたくて……鍛えてきたのに。
なんで、あんなに俺のって思ったんだろう?気の迷いだ。王子とか、ありえないだろう?
ここに来てからずっと、抱き合っていた事を証明されているようで、嫌になる。
何も身につけてない身体。シーツは、いつの間にか綺麗になってたりするから、王子が取り替えてくれているのか、魔術を使ってるのか分からない。ただ、めちゃくちゃ世話になっているとしかいいようがない。
途中に果物とか、スープとかもらった記憶はある。覚えている事もあるけれど……身体中の所有印が、こんなに付いてるとかは、覚えていない。だから、羞恥があるのは仕方がないと思う。
どれだけ、この人俺に口付けしたんだよ。
ジェイクと名乗ったこの人の背中には、引っ掻き傷いっぱいある。それは、どう見ても俺のせいだし。
痛々しくて、思わず……手が伸びる。指でなぞれば、振り返り嬉しそうに笑った。
「あ、触ってごめん……なさい。痛かったよね?治療は、苦手で」
「いや、嬉しかったよ。たくさん求めてくれたから」
完全なヒート状態から、体の奥まで気持ちよくされたせいか、ヒートを1人で過ごす時の狂おしく、切なくなるような気持ちにはならなかった。1人で戦うようなこともなくて、繋いだ指が安心出来てたのは確かだ。
もどかしさとか、身体の熱さから解放された3日間と思えば楽な発情期だった。
この人じゃなくても、そうだったりしないのかな?
ネックガードをなぞる。まだ番じゃない。
まだ、愛とか……愛情なんて……分からない。
ヒートせい。きっと、大丈夫。
きっと今なら、離れられる。
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