15 / 58
第1章
13 発情②
しおりを挟む
潤んだ瞳に見つめられて、抑えが効かない。
だが、触手魔獣を殺らないと駄目だ。
ここに入ってから見る魔獣が全ておかしい。
変異種に見える…何かが起きているのだろうか?
動きが読めない。知っている奴の動きではない。
突然伸びてくる触手を避ける為、ロイドもレンドルも核を狙いにくいみたいだ。
アイツらは強い。核は任せられるだろう。
なら、俺がライラを護るだけだ。
ローブを着せてフードも被せる。
こんな表情を誰にも見せたくない。
────俺のだ。
「しっかり、しがみついてろ」
意図が伝わったのか、首筋にしっかりと捕まってくれた。
柔らかな頬が、俺の首筋に触れる。
愛しさが溢れてくる。
抱えている手に力が入り過ぎそうになるのを、必死で抑えて触手を避ける。
小柄な体は、軽すぎて巨大蚯蚓を倒した剣士には思えない。だからレイピアなんだろうな。重い剣は素早さを殺してしまうし、体が小さいが故に魔術と素早さで魔獣を倒しているのだと納得する。
なんで、男の振りをするんだ?
母親も魔術師でS級なんだから、それを目ざしても良いはずだ。
親に反対されているなら、兄が連れてくるとは思えない。
─────オメガだから?
自分を守る為に強くなろうとしているのか?
皆にバレないように、男装までしてここにいるのか?
俺が、護るのに。
そう思っていたら、突然首筋を軽く食まれる。
柔らかな唇に、その感触に思わずビクついた。
可愛い。
たまらなくて、抱きしめる腕に力が入ってしまった。
駄目だ。
潰してしまいそうだ。
壊さないように、大切に抱き直す。
ロイドが黒剣を核に突き立てた。
───斬。
それをレンドルが氷で固め始める。剣を抜き離脱したロイドを確認すると一気に圧縮した。
急激に魔力が高まるが、レンドルの魔術の方が遥かに強い。本体が粉砕し拳大の魔石がコロンと転がった。
それを見向きもせずに、ロイドがこちらに寄ってくる。
渡さない。
こんな状態のライラを譲る気はない。
「離れろ」
低い声が地下に響く。
離したくない。
だが、彼にとっても大切な妹だ。無理やり奪う訳には行かない。
「地上────うさぎ亭まで連れていく。発情し始めている。事情を話して欲しい」
「お前!」
「ロイドさん。落ち着いて下さい。私も匂いが分かり始めてます。このままより、貴方の家に戻るべきだと思います」
「──くそ」
「俺…の、この人は……俺のもの」
彼女の声がする。
その声に、言葉にロイドの顔が歪んだ。
「そうだよ。ライラ、俺はお前の物だ」
「違う!今は触手魔獣のせいだ!家に……転移するから魔道具の傍に来てくれ」
ロイドの怒りが伝わって来る。だが、俺も譲れない。
「とにかく、両親の許可なく勝手に噛んで番なよ!酩酊状態のライラを犯したりしたら、貴族だろうが……躊躇わないからな」
「大切な彼女を傷つけたりしない」
「お前、きっと振られるよ。早くこっちに来い」
そして、安否連絡の為にレンドルが言の葉蝶をギルドに飛ばした。
俺達は、1度うさぎ亭に戻ることになった。
だが、触手魔獣を殺らないと駄目だ。
ここに入ってから見る魔獣が全ておかしい。
変異種に見える…何かが起きているのだろうか?
動きが読めない。知っている奴の動きではない。
突然伸びてくる触手を避ける為、ロイドもレンドルも核を狙いにくいみたいだ。
アイツらは強い。核は任せられるだろう。
なら、俺がライラを護るだけだ。
ローブを着せてフードも被せる。
こんな表情を誰にも見せたくない。
────俺のだ。
「しっかり、しがみついてろ」
意図が伝わったのか、首筋にしっかりと捕まってくれた。
柔らかな頬が、俺の首筋に触れる。
愛しさが溢れてくる。
抱えている手に力が入り過ぎそうになるのを、必死で抑えて触手を避ける。
小柄な体は、軽すぎて巨大蚯蚓を倒した剣士には思えない。だからレイピアなんだろうな。重い剣は素早さを殺してしまうし、体が小さいが故に魔術と素早さで魔獣を倒しているのだと納得する。
なんで、男の振りをするんだ?
母親も魔術師でS級なんだから、それを目ざしても良いはずだ。
親に反対されているなら、兄が連れてくるとは思えない。
─────オメガだから?
自分を守る為に強くなろうとしているのか?
皆にバレないように、男装までしてここにいるのか?
俺が、護るのに。
そう思っていたら、突然首筋を軽く食まれる。
柔らかな唇に、その感触に思わずビクついた。
可愛い。
たまらなくて、抱きしめる腕に力が入ってしまった。
駄目だ。
潰してしまいそうだ。
壊さないように、大切に抱き直す。
ロイドが黒剣を核に突き立てた。
───斬。
それをレンドルが氷で固め始める。剣を抜き離脱したロイドを確認すると一気に圧縮した。
急激に魔力が高まるが、レンドルの魔術の方が遥かに強い。本体が粉砕し拳大の魔石がコロンと転がった。
それを見向きもせずに、ロイドがこちらに寄ってくる。
渡さない。
こんな状態のライラを譲る気はない。
「離れろ」
低い声が地下に響く。
離したくない。
だが、彼にとっても大切な妹だ。無理やり奪う訳には行かない。
「地上────うさぎ亭まで連れていく。発情し始めている。事情を話して欲しい」
「お前!」
「ロイドさん。落ち着いて下さい。私も匂いが分かり始めてます。このままより、貴方の家に戻るべきだと思います」
「──くそ」
「俺…の、この人は……俺のもの」
彼女の声がする。
その声に、言葉にロイドの顔が歪んだ。
「そうだよ。ライラ、俺はお前の物だ」
「違う!今は触手魔獣のせいだ!家に……転移するから魔道具の傍に来てくれ」
ロイドの怒りが伝わって来る。だが、俺も譲れない。
「とにかく、両親の許可なく勝手に噛んで番なよ!酩酊状態のライラを犯したりしたら、貴族だろうが……躊躇わないからな」
「大切な彼女を傷つけたりしない」
「お前、きっと振られるよ。早くこっちに来い」
そして、安否連絡の為にレンドルが言の葉蝶をギルドに飛ばした。
俺達は、1度うさぎ亭に戻ることになった。
37
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。


新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる