【完結】うさぎ亭の看板娘♂は、第1王子の運命の人。

Shizukuru

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第1章

12発情①

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ドクンと心臓が跳ねる。
念の為の薬は飲んでる。
熱い……

触手魔獣ローパーの触手を思わず斬ってしまった。

核を狙わなきゃだめだったのに。
目の前に、近づいたら駄目なアイツがいるのに。

どうしたら、いいのか分からない。
まだ、触手魔獣ローパーが生きている。でも、足が震えて立っていられない。

変だ。お腹が疼き始めた。

兄さんって呼んだら、バレてしまう。今は男の格好もしてる。バレたくない。逃げないと駄目だ。

兄さんが黒剣を構えている。触手を避けながら核を狙っているみたいだ。こっちに来たそうだが、触手が邪魔して来れないみたいだ。

どうする?魔術の展開も、頭が回らない。

考えろ。


この辺りの魔獣が最近変異種になっていると聞いた。
冒険者が襲われて対応が難しいようだと、クエストが兄さんに来たんだ。

兄さんは強い。魔術も剣も魔道具も使える。だから、お願いしたんだ。

もっと鍛えてって。

まさか、アイツが来るとか。

「勘弁してよ」
思わず、呟く。


触手がこっちにきてる。だけど、剣を掴む手に力が上手く入らない。

駄目だ。間に合わない。
兄さんの叫んでる声が聞こえる。

目の前に何かが現れて何かに包まれる。

「我慢しろよ?」
あの男が、着ていたローブを俺に着せたみたいだ。
縦抱きに抱えられる。

バレたくないんだ。

「触るな」
「直接触らないように着せたんだ。この位我慢しろ」
フードまで被せられる。なんで?


何?この服……いい匂い。また、心臓が跳ねる。

この服……欲しい。
心臓が煩くて、でもこの中に居たくて。
この人の服が欲しくて堪らない。

な、何考えて…俺、変になった?
お腹が疼いてたのに今度は後ろからドロリと何か溢れてくるみたいだ。

体が変だ。
熱くて胸が苦しくなっていく。

「しっかり、しがみついてろ」

触手魔獣ローパーを避ける為に、アイツが移動を始める。
振り落とされないように首の所にしがみつく。

アイツの首元に顔を埋める形になって、直に皮膚と皮膚が触れ合った。

温かい。

兄さんとは、匂いが違う。思ったより胸板が厚い気がする。喉仏が、色っぽくて胸が苦しくなる。

素早く動いている筈なのに体幹がブレない。

めちゃくちゃ鍛えてる?俺抱えたままなのに縦横無尽に動いてる。

大丈夫、兄さんが触手魔獣ローパーをやっつけてくれる。
それに、魔術師っぽい人かなり凄そうだ。

悔しい。俺コイツに庇われて


俺は、お荷物になんてなりたくない。


​───────ザン

兄さん?
だめだっ意識が飛びそう。
体が熱くて、全部脱ぎ捨てたい。

脱いでしまいたい。
この人の匂いに包まれたい。

思わず、首筋を甘噛みしてしまう。

ビクンと、震えたのが伝わる。噛んだの分かった?
もっと、触れたい。

駄目だ。
これ以上は、駄目。

ドクン。


​─────彼が欲しい。

「抱いて」

何を言ってるんだろう?
でも、彼が欲しくてたまらない。




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