【完結】うさぎ亭の看板娘♂は、第1王子の運命の人。

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
13 / 58
第1章

11 接近③

しおりを挟む
あ、不味い。
そう思った時は遅かった。

「こそこそと俺達を見ている理由は何?」

レンドルがフードを下げて顔を見せる。

「レベル上げの為にこちらに来ただけです。戦っている所に出ていけば、獲物の取り合いになってしまうじゃないですか?横取りとか思われたくありませんので。あなた方のレベルも分からないから手を貸すか見極めるために隠れていただけです。逆にあなた方なら横取りをするのですか?」

レンドルがスラスラと正論ウソを述べる。

「なるほどね。そう言う事にしとくよ。行こう」

顔を隠したままのもう1人が気になる。
小柄だ。男なのだろうか?ロイドの恋人か?
だが、剣の腕は相当なものだ。

その時地下から嫌な気配を感じた。

​─────不味い。

出てくるぞ」

すぐにレンドルが反応して高く飛び上がり、陣を作る。
ロイドは、素早く剣を抜き土の盛り上がりかけた所に突き刺す。
だが、手応えがないようだ。

フードの奴が、レイピアに青い炎を纏わせて両手で、地面に剣を突き立てる。そのまま土が盛り上がり突き立てたまま持ち上げられる。

巨大蚯蚓ワームか?だが、変異種にも見える。

剣が抜けないのか?
思わず、地面を蹴り奴の横へ移動する。突き立てている剣の手前を俺の剣でと思った瞬間に蹴りが入ってきた。
慌てて身を翻し、その蹴りを避ける。

「横取りする気はない!」


「​────手を借りなくても倒せる。邪魔だ!」

魔力が膨れ上がる。


「ジェイ!離れて!」
レンドルが叫ぶ。

距離を置くと、直ぐにレンドルが防御壁シールドを展開した。

ロイドも片手で多分防御壁シールドを展開している。

巨大蚯蚓ワームが膨れ上がり破裂しかけると同時に膜が張られた。その中でグシャリと潰れ体液が飛び散った。

膜が縮んで、コロンと胡桃大の魔石が転がった。

これを少年1人で倒せるのか。

「思ったより、魔石が小さいな」
ロイドが呟くと、奴が魔石を握りしめてカバンに押し込む。

「でも、純度が高そうだよ」

少し低めだが、この声は​───
まさか。そんなはずはない。華奢なあののはずがない。
ロイドのバディの貴族ののはずだ。

「行くぞ」
2人が背を向ける。

「待て」
思わず止めに入ってしまう。この声は、低めに装っているとかじゃないよな?
声変わり途中の男の子だよな?

「しつこいな?」
ロイドが殺気を纏わせている。

ぞわり……嫌な感じがした。

。警鐘がなる。

思わず、剣を構えた。

「​────何のつもりだ?」

「動くな」
ロイドの怒りは、分かる。だが、駄目だ。

「ジェイ?」
レンドルには伝わるはずだ。

「まだ、いる」

「なんの気配もしない!いい加減にしろ。俺達に構うな!」

いるんだ。俺は、探索サーチの範囲が広い。

「ジェイがと言ったら絶対に魔獣はいます!気を抜かないで下さい」

その一声で静まり返った。
「​───頼む。動かないでくれ」



少年の後ろだ!

彼の背後へ移動を開始した直後に向きを変えた。
「バカヤロっ!動く、な」

遅かった。

触手魔獣ローパーだ。奴の触手が伸びて、少年が慌ててレイピアを振りかざした。

「駄目だ!よせっ!触手は駄目だ。本体を狙え。体液が飛び散る!!」

遅かった。フードの所々が溶けて行く。

不味い。体液だけじゃない。その液は催淫効果が強いんだ。直に浴びたのなら…反応をし始めるはずだ。

「早く、ローブを脱げ」

「嫌だ」
思わず、ロイドより先に奴の傍に瞬間移動してローブを剥ぎ取った。


頬がピンクに染まり、潤んだ青い瞳がこちらを見ていた。




しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~

ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。 ――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ! ※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...