10 / 58
第1章
8 運命の人
しおりを挟む
あの子が、本当にオメガだとしたら?
あの時、離れたくないと思ったのも。
しつこく、引き止めようとしたのも。
俺のだって思った事もそれなら説明がつく。
もう一度、会わないと駄目だ。
もし、ヒート中に誰かに襲われて番われたら終わってしまう。
「身分よりも、運命のオメガなら…きっと父上達も反対しないはずだ。後継ぎも上位アルファが必ず産まれてくるか、ら」
──違う。そんな理由じゃない。
俺があの子が欲しいんだ。
華奢で儚げで、何より綺麗で可愛い。照れ屋な所もいい。
甘く優しい香りが、忘れられない。
弱々しいあの子を父親や兄に変わって護ってやりたい。
「一目惚れか?俺って面喰いだったんだな」
平民でも、かまわない。
「何をぶつぶつ言ってるんですか?気持ち悪い」
すっかりその存在を忘れていた。
「レンドル……お前俺の扱い雑じゃないか?」
睨んでみたが、全く怯む様子はない。
「戻って来てから、普段美形だとか言われている…ご尊顔が百面相で面白いです」
執務室で手の動きを止めること無く口を挟んでくるのは流石だ。
「仕方がないだろう?もう一度お嬢さんと話がしたいと言ったら店主が『うちの娘に個人的に会わせる事はない!』って言って暗器をチラつかせて来たんだ」
動かすことを止めていたガラスペンをペン立てに戻す。つい頬杖をついたら、残念そうな目を向けてきた。
「口は動かしても手を止めないで下さい。私は時間通り終わらせたいのですから。父親ですよね?執拗いって思われただけで、評価最悪でしょう?女性の口説き方を勉強したらどうですか?もう諦めて下さい」
凄い速さでペンが進んでいく。
「───諦めろって、まだ始まってもないだろう?」
「始まる前に家族に嫌われたから終わりです。ほら、執務をこなして下さい」
「───嫌だ」
「何駄々こねているんですか?」
心底、残念な生き物を見ている顔だ。
「運命の人かも知れないんだ。他の誰かに取られたくないんだ」
「あのS級モンスター一家ですよ?それとも身分をばらして連れて来ますか?」
「そんなことをしたら、益々嫌われるだろうが!それじゃあ、何処ぞの貴族がオメガを監禁するようなものだろ?俺はそんな無理やりなんて嫌なんだよ」
「だとしたら、誠意を見せるしかないでしょう?初めて会ったのに印象悪すぎです。本当に中身が残念すぎますね。先ずは仕事を終わらせて下さい。それから作戦をねりましょう」
仕方ないだろう?言い寄られたことは多くても、まだ誰のことも好きになったことなんてないのだから。
期限付きなんだ。もしかしたら運命の相手かも知れない。
気持ちばかり焦っている。
こんなに、ヘタレなんて自分でも思わなかったよ。
まだ、彼らの守りが固いはずだ。
ライラを迎えに行くまで守っていて欲しい。
そればかり、考えている。
「本当に、ヘタレで残念ですね」
余計な一言をレンドルがボソリと言った。
煩い。
なら、相応しくある為に彼らより鍛えるだけだ。
あの時、離れたくないと思ったのも。
しつこく、引き止めようとしたのも。
俺のだって思った事もそれなら説明がつく。
もう一度、会わないと駄目だ。
もし、ヒート中に誰かに襲われて番われたら終わってしまう。
「身分よりも、運命のオメガなら…きっと父上達も反対しないはずだ。後継ぎも上位アルファが必ず産まれてくるか、ら」
──違う。そんな理由じゃない。
俺があの子が欲しいんだ。
華奢で儚げで、何より綺麗で可愛い。照れ屋な所もいい。
甘く優しい香りが、忘れられない。
弱々しいあの子を父親や兄に変わって護ってやりたい。
「一目惚れか?俺って面喰いだったんだな」
平民でも、かまわない。
「何をぶつぶつ言ってるんですか?気持ち悪い」
すっかりその存在を忘れていた。
「レンドル……お前俺の扱い雑じゃないか?」
睨んでみたが、全く怯む様子はない。
「戻って来てから、普段美形だとか言われている…ご尊顔が百面相で面白いです」
執務室で手の動きを止めること無く口を挟んでくるのは流石だ。
「仕方がないだろう?もう一度お嬢さんと話がしたいと言ったら店主が『うちの娘に個人的に会わせる事はない!』って言って暗器をチラつかせて来たんだ」
動かすことを止めていたガラスペンをペン立てに戻す。つい頬杖をついたら、残念そうな目を向けてきた。
「口は動かしても手を止めないで下さい。私は時間通り終わらせたいのですから。父親ですよね?執拗いって思われただけで、評価最悪でしょう?女性の口説き方を勉強したらどうですか?もう諦めて下さい」
凄い速さでペンが進んでいく。
「───諦めろって、まだ始まってもないだろう?」
「始まる前に家族に嫌われたから終わりです。ほら、執務をこなして下さい」
「───嫌だ」
「何駄々こねているんですか?」
心底、残念な生き物を見ている顔だ。
「運命の人かも知れないんだ。他の誰かに取られたくないんだ」
「あのS級モンスター一家ですよ?それとも身分をばらして連れて来ますか?」
「そんなことをしたら、益々嫌われるだろうが!それじゃあ、何処ぞの貴族がオメガを監禁するようなものだろ?俺はそんな無理やりなんて嫌なんだよ」
「だとしたら、誠意を見せるしかないでしょう?初めて会ったのに印象悪すぎです。本当に中身が残念すぎますね。先ずは仕事を終わらせて下さい。それから作戦をねりましょう」
仕方ないだろう?言い寄られたことは多くても、まだ誰のことも好きになったことなんてないのだから。
期限付きなんだ。もしかしたら運命の相手かも知れない。
気持ちばかり焦っている。
こんなに、ヘタレなんて自分でも思わなかったよ。
まだ、彼らの守りが固いはずだ。
ライラを迎えに行くまで守っていて欲しい。
そればかり、考えている。
「本当に、ヘタレで残念ですね」
余計な一言をレンドルがボソリと言った。
煩い。
なら、相応しくある為に彼らより鍛えるだけだ。
36
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。


新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる