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第1章
6 オメガの俺①
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「ライラ大丈夫か?」
自室に連れて来られて、ベッドに寝かされる。
「───う、ん」
横になっても熱っぽさが残る。
「薬、用意するから待ってろ」
ドアの方に向かう兄を引き留めた。
「兄さん。変だよね?まだ、ヒートが来るはずない…風邪かな?」
振り返ったロイドが、静かに答えた。
「風邪とは違うと思う。どう見てもヒートの始まりっぽい。
俺には匂いが分からないけど。母さんに聞けば分かるかも知れない」
「───ごめん。俺」
「謝るな。ライラは、何も悪くない」
「ありがとう。兄さん」
悔しくて泣きそうになってしまう。
「言ったろ?俺が守るって」
「俺も、兄さん達を守れる様になりたい」
「ライラ。お前は、十分強いよ。3投目のナイフはライラだろ?しかも傷が残らないギリギリ狙って投げてる。相手が女だから庇ったのか?」
「脅しには、十分…だからね」
「こわっ。お前意外に腹黒だよな。薬を持ってくるから待ってろ、苦しかったら処理を手伝うよ」
「い、いいよ。その時は、自分でやるから。薬をお願いします」
笑って肩が震えている。また、からかわれた。
「待ってろ」
兄さんが手を振った後、出て行った。
小さい頃は、女の格好も平気だった。似合うって言われてたしね。
途中で、嫌になった時期もあったけど。
母さんに、一緒にいる為だからと何度も説得されたんだ。
『大人になるまで、自身で身を守れるまでは、我慢してね』
何故あんな所にいたのかは、覚えてない。
ロイド兄さんに抱き締められて、泣いた所からしか覚えてないんだ。
一緒にいたい。それだけは、変わらない。
特別な髪色が問題みたいで、しかもオメガって分かってからは、ずっと母さんと兄さんが、ヒート用の薬を研究開発し続けている。
少しでも負担がない様に。貴族にバレない様に。
父さんの剣を習い。母さんの魔術を学ぶ。
全て、俺が自由に生きられるようにって。
こんな厄介な俺を守るために冒険者を早々に引退したんだ。
『料理が好きだったんだよ。あの時のライラは、妖精みたいに可愛くて、スミレうさぎにも見えた。だから、うさぎ亭にしたんだ。寂しがりのライラにピッタリだろ?』
なんて言って父さんは笑う。
『もう年だから、若い人が地下迷宮を攻略すればいいのよ。
美容の薬も開発したいから、薬師は楽しいわ。冒険者より儲かるわよ。魔術師のスキルは2人に全部教えるからね』
母さんも笑う。
S級になれるはずの兄さんが『魔道具師は面白いんだよ。俺の天職だから心配するな』
頭を撫でながら、抱き締めてくる。
俺、厄介者じゃない?
いつか、全部返すから。俺、強くなるから。
絶対にアルファとか、貴族とかに負けない。やり返せるくらいなってやる。
叩きのめす。
俺…S級…チャレンジしたい。
強制クエストが問題なんだよね。きっと1人では反対される。
兄さんと2人ならいいのかな?
いや駄目だ。この先ずっと、兄さんを縛り付けることになるし、これ以上犠牲にしたくない。
それでも。今は、甘えてごめん。
母さんに躾られたから、貴族令嬢並みの振る舞いも出来た。だから、女の子には見えると思う。
でもまさか、こんなに言い寄られるとは思わなかったんだ。
母さんみたいなら、色っぽいし分かるんだけど、俺チビなだけで柔らかさとかないんだよ。
はぁ…
「あぁ、もう、熱い。熱っぽいのかな?あの冒険者…意外にしつこかったな。ナイフを投げたの、バレてないよな?
アイツの視線何度か感じたし。
何度も引き留めようとするし、匂いがとか…香水とかそんなもの付けてないのに。匂い…」
匂い?
「ちょっと、待って…最初に匂いの事言い出したの…アイツ?」
一目惚れとか告られたりしたら、面倒だし直ぐに距離を置いたのに。
「あいつ…アルファか?」
魔道具付けてたけど…それだけじゃだめだった?
薬は、この間のヒートから2週間程度だったから飲んでない。
「やばい?」
そんな気持ちがグルグル回る中、
トントンとノックの音がした。
自室に連れて来られて、ベッドに寝かされる。
「───う、ん」
横になっても熱っぽさが残る。
「薬、用意するから待ってろ」
ドアの方に向かう兄を引き留めた。
「兄さん。変だよね?まだ、ヒートが来るはずない…風邪かな?」
振り返ったロイドが、静かに答えた。
「風邪とは違うと思う。どう見てもヒートの始まりっぽい。
俺には匂いが分からないけど。母さんに聞けば分かるかも知れない」
「───ごめん。俺」
「謝るな。ライラは、何も悪くない」
「ありがとう。兄さん」
悔しくて泣きそうになってしまう。
「言ったろ?俺が守るって」
「俺も、兄さん達を守れる様になりたい」
「ライラ。お前は、十分強いよ。3投目のナイフはライラだろ?しかも傷が残らないギリギリ狙って投げてる。相手が女だから庇ったのか?」
「脅しには、十分…だからね」
「こわっ。お前意外に腹黒だよな。薬を持ってくるから待ってろ、苦しかったら処理を手伝うよ」
「い、いいよ。その時は、自分でやるから。薬をお願いします」
笑って肩が震えている。また、からかわれた。
「待ってろ」
兄さんが手を振った後、出て行った。
小さい頃は、女の格好も平気だった。似合うって言われてたしね。
途中で、嫌になった時期もあったけど。
母さんに、一緒にいる為だからと何度も説得されたんだ。
『大人になるまで、自身で身を守れるまでは、我慢してね』
何故あんな所にいたのかは、覚えてない。
ロイド兄さんに抱き締められて、泣いた所からしか覚えてないんだ。
一緒にいたい。それだけは、変わらない。
特別な髪色が問題みたいで、しかもオメガって分かってからは、ずっと母さんと兄さんが、ヒート用の薬を研究開発し続けている。
少しでも負担がない様に。貴族にバレない様に。
父さんの剣を習い。母さんの魔術を学ぶ。
全て、俺が自由に生きられるようにって。
こんな厄介な俺を守るために冒険者を早々に引退したんだ。
『料理が好きだったんだよ。あの時のライラは、妖精みたいに可愛くて、スミレうさぎにも見えた。だから、うさぎ亭にしたんだ。寂しがりのライラにピッタリだろ?』
なんて言って父さんは笑う。
『もう年だから、若い人が地下迷宮を攻略すればいいのよ。
美容の薬も開発したいから、薬師は楽しいわ。冒険者より儲かるわよ。魔術師のスキルは2人に全部教えるからね』
母さんも笑う。
S級になれるはずの兄さんが『魔道具師は面白いんだよ。俺の天職だから心配するな』
頭を撫でながら、抱き締めてくる。
俺、厄介者じゃない?
いつか、全部返すから。俺、強くなるから。
絶対にアルファとか、貴族とかに負けない。やり返せるくらいなってやる。
叩きのめす。
俺…S級…チャレンジしたい。
強制クエストが問題なんだよね。きっと1人では反対される。
兄さんと2人ならいいのかな?
いや駄目だ。この先ずっと、兄さんを縛り付けることになるし、これ以上犠牲にしたくない。
それでも。今は、甘えてごめん。
母さんに躾られたから、貴族令嬢並みの振る舞いも出来た。だから、女の子には見えると思う。
でもまさか、こんなに言い寄られるとは思わなかったんだ。
母さんみたいなら、色っぽいし分かるんだけど、俺チビなだけで柔らかさとかないんだよ。
はぁ…
「あぁ、もう、熱い。熱っぽいのかな?あの冒険者…意外にしつこかったな。ナイフを投げたの、バレてないよな?
アイツの視線何度か感じたし。
何度も引き留めようとするし、匂いがとか…香水とかそんなもの付けてないのに。匂い…」
匂い?
「ちょっと、待って…最初に匂いの事言い出したの…アイツ?」
一目惚れとか告られたりしたら、面倒だし直ぐに距離を置いたのに。
「あいつ…アルファか?」
魔道具付けてたけど…それだけじゃだめだった?
薬は、この間のヒートから2週間程度だったから飲んでない。
「やばい?」
そんな気持ちがグルグル回る中、
トントンとノックの音がした。
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