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94.選ぶのは。
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「ルシエラ、ルシエラ……」
ルシエラを助けなきゃいけないのに。魔王に捕まってしまうなんて。
ルルーは、魔王の作った障壁のような結界を通過出来ないと言った。
一瞬で消滅します。これは、無理です。シェリル様が死んでしまう。そんな心配をしてきた。
でも、大丈夫……自分なら行っても大丈夫と言う不思議な安心感があった。
止めるルルーを振り切って飛び降りた。
ルシエラが僕を受け止めてくれると思ったのに、魔王がルシエラを蹴り飛ばしてしまうし。
なぜ、敵の魔王の腕の中にいるんだ。どう言う事だろう?
逃げたくて、暴れるのに……知ってる匂いがして、安心感がある事に戸惑う。
一生懸命に睨むのに、少し口元が笑って見えた。
ルシエラの声が聞こえた。
「シェリル。魔王を殺せ。お前はその為にいるんだろがっ。俺だけを護ればいいんだ。殺せ!出来なければ、お前に価値などない。出来損ないのクズがっ。さっさと殺れ」
僕は指揮棒に魔力を込める。
僕の価値……僕の存在の意味。
大切な人に貰った、僕の宝物。
魔力をルシエラの為に……使うの?ルシエラは、大切な人?
魔王を倒すのは、なんでだっけ?
勇者パーティと、世界を守るために。勇者は、カイル様だ。子供の頃からずっと仕えてきた人。
だから目の前の人は、悪い人のはずなんだ。
「シェリルの気が済むまで攻撃していい。みすみす目の前で連れ去られたのは、俺のせいだ。許さなくていい」
───シェリル。
「も、もう一回」
「なんだ? もう一回とは?」
「名前……呼んで」
「──シェリル」
ルシエラの為に僕は、戦わないといけない。その為にここにいる。それなのに。ずっと憎いって思ってたのに。
なんで、なんで……
「騙されるなシェリル。俺に従え!」
指揮棒を振りさえすれば、いいはずなのに。
師匠……僕はどうしたらいいのですか?
嫌だ。嫌なのに。でもやらないと……僕の価値がなくなってしまう。
震える手で、魔王の腕に指揮棒の先を押し当てた。
魔王は避ける様子もない。
ジューと、肌を焼くような嫌な音がして、思わずその棒を落としてしまう。宝物で何やってるんだろう?
違う。違う。こんなの、おかしい。何で。どうして。どうして、僕に攻撃しないんだろう。
悲しそうな顔をしていて、胸が痛む。
誰か教えて。誰か……神様は……いないから助けてはくれない。
いつも、何も出来ない。
僕は、僕は。この人にこんな事したくないのに。
───雨音がする。
思わず、空を見上げる。
結界の天井の方から、ザァァァァーと聞こえる程の雨の音がする。
銀色の雨が、魔王の結界を溶かしていく。
雨が降らせる事が出来る人は、神に愛されているんだよ。
そんなはず、僕が愛されるはず……は、きっとない。でも、この雨は、懐かしいような、苦しいようなそんな記憶。
怪我をさせたのに、優しく心配そうに微笑んでる。
涙が流れて落ちる。
クロ。クロフィス……だ。
僕を好きだと言ってくれる人。
「───クロ。ごめん、ごめんなさい。僕は、なんて事を。怪我を……クロが僕のせいで」
「お前のせいじゃない」
「治療、は、はやく。僕が洗脳されて、お願い僕を!!殺して……うわぁぁぁ……ごめ、ごめんなさい」
「シェリル───俺が迂闊で、バカだったからだ。お前のせいじゃないんだ」
強く、強く抱きしめられた。
しばらくして、人の気配がする事に気が付いた。
「シェリルは何も悪くない。そこにいる魔王がバカだからだ」
何故か不機嫌なカイル様が、そばに来ていた。
「カイル様? それに、ルルー?」
ルルーがルシエラを捕まえていた。
「ルルー、そいつを連れていかないでくれ。魔族として、責任もって対処する。レノア、ルシエラを地下牢へ。魔導拘束具を」
「洗脳を二度と使えぬ様にしても良いですか?」
「ああそうだな」
何かの魔道拘束具をルシエラの目の周りつけて、いつの間にか現れた魔族の騎士のような人達と共に消えた。
でも、一瞬でレノアが戻ってきた。
「こっちが楽しそうなので」
と言ってたけど、何が楽しいのだろう?
「シェリル、すまなかった」
「そんな事……だって、ここまで助けに来てくれたんでしょう? それよりクロの手当をしたい」
手の傷は、僕のせいだ。
「ならしばらくシェリルを借りる。勇者一行は、レノアと話し合いをしてその後の和平でも調整……して帰ってくれ」
「ちょっ、クロフィス様」
「おい、お前……ああ、くそっ。シェリルをそれ以上泣かせたら許さない」
「ああ。シェリルを休ませたら、ちゃんと王国に挨拶に行く」
そう言って、二人で この場を後にした。
ルシエラを助けなきゃいけないのに。魔王に捕まってしまうなんて。
ルルーは、魔王の作った障壁のような結界を通過出来ないと言った。
一瞬で消滅します。これは、無理です。シェリル様が死んでしまう。そんな心配をしてきた。
でも、大丈夫……自分なら行っても大丈夫と言う不思議な安心感があった。
止めるルルーを振り切って飛び降りた。
ルシエラが僕を受け止めてくれると思ったのに、魔王がルシエラを蹴り飛ばしてしまうし。
なぜ、敵の魔王の腕の中にいるんだ。どう言う事だろう?
逃げたくて、暴れるのに……知ってる匂いがして、安心感がある事に戸惑う。
一生懸命に睨むのに、少し口元が笑って見えた。
ルシエラの声が聞こえた。
「シェリル。魔王を殺せ。お前はその為にいるんだろがっ。俺だけを護ればいいんだ。殺せ!出来なければ、お前に価値などない。出来損ないのクズがっ。さっさと殺れ」
僕は指揮棒に魔力を込める。
僕の価値……僕の存在の意味。
大切な人に貰った、僕の宝物。
魔力をルシエラの為に……使うの?ルシエラは、大切な人?
魔王を倒すのは、なんでだっけ?
勇者パーティと、世界を守るために。勇者は、カイル様だ。子供の頃からずっと仕えてきた人。
だから目の前の人は、悪い人のはずなんだ。
「シェリルの気が済むまで攻撃していい。みすみす目の前で連れ去られたのは、俺のせいだ。許さなくていい」
───シェリル。
「も、もう一回」
「なんだ? もう一回とは?」
「名前……呼んで」
「──シェリル」
ルシエラの為に僕は、戦わないといけない。その為にここにいる。それなのに。ずっと憎いって思ってたのに。
なんで、なんで……
「騙されるなシェリル。俺に従え!」
指揮棒を振りさえすれば、いいはずなのに。
師匠……僕はどうしたらいいのですか?
嫌だ。嫌なのに。でもやらないと……僕の価値がなくなってしまう。
震える手で、魔王の腕に指揮棒の先を押し当てた。
魔王は避ける様子もない。
ジューと、肌を焼くような嫌な音がして、思わずその棒を落としてしまう。宝物で何やってるんだろう?
違う。違う。こんなの、おかしい。何で。どうして。どうして、僕に攻撃しないんだろう。
悲しそうな顔をしていて、胸が痛む。
誰か教えて。誰か……神様は……いないから助けてはくれない。
いつも、何も出来ない。
僕は、僕は。この人にこんな事したくないのに。
───雨音がする。
思わず、空を見上げる。
結界の天井の方から、ザァァァァーと聞こえる程の雨の音がする。
銀色の雨が、魔王の結界を溶かしていく。
雨が降らせる事が出来る人は、神に愛されているんだよ。
そんなはず、僕が愛されるはず……は、きっとない。でも、この雨は、懐かしいような、苦しいようなそんな記憶。
怪我をさせたのに、優しく心配そうに微笑んでる。
涙が流れて落ちる。
クロ。クロフィス……だ。
僕を好きだと言ってくれる人。
「───クロ。ごめん、ごめんなさい。僕は、なんて事を。怪我を……クロが僕のせいで」
「お前のせいじゃない」
「治療、は、はやく。僕が洗脳されて、お願い僕を!!殺して……うわぁぁぁ……ごめ、ごめんなさい」
「シェリル───俺が迂闊で、バカだったからだ。お前のせいじゃないんだ」
強く、強く抱きしめられた。
しばらくして、人の気配がする事に気が付いた。
「シェリルは何も悪くない。そこにいる魔王がバカだからだ」
何故か不機嫌なカイル様が、そばに来ていた。
「カイル様? それに、ルルー?」
ルルーがルシエラを捕まえていた。
「ルルー、そいつを連れていかないでくれ。魔族として、責任もって対処する。レノア、ルシエラを地下牢へ。魔導拘束具を」
「洗脳を二度と使えぬ様にしても良いですか?」
「ああそうだな」
何かの魔道拘束具をルシエラの目の周りつけて、いつの間にか現れた魔族の騎士のような人達と共に消えた。
でも、一瞬でレノアが戻ってきた。
「こっちが楽しそうなので」
と言ってたけど、何が楽しいのだろう?
「シェリル、すまなかった」
「そんな事……だって、ここまで助けに来てくれたんでしょう? それよりクロの手当をしたい」
手の傷は、僕のせいだ。
「ならしばらくシェリルを借りる。勇者一行は、レノアと話し合いをしてその後の和平でも調整……して帰ってくれ」
「ちょっ、クロフィス様」
「おい、お前……ああ、くそっ。シェリルをそれ以上泣かせたら許さない」
「ああ。シェリルを休ませたら、ちゃんと王国に挨拶に行く」
そう言って、二人で この場を後にした。
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