【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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93.魔王 sideカイル

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「ねぇ、邪魔」
 突然雰囲気が、変わったのはシェリルだった。

「シェリル?」

「ルシエラを助けないと……ルルー、魔王を殺して」

「な、にを。何言ってるんだシェリル?」
「貴方には関係ありません」

「シェリル様は、もしかしたら洗脳を受けたのではありませんか?」
「レノアか?」

 白兎が顔をだした。
(さっきの?あの一瞬で?)

「クロフィスから、シェリルを引き離すぞ。ルルー俺の声を聞け、ここから離れる」

『───』
「ルルー?」

『私は、契約者のシェリル様の言葉が優先なのです。魔王を殺します』
「ルルー。それはダメだ」

「ルルー彼らを振り落として」
『はい』

「シェリル!!」

「ルルー行くよ」

 ルルーが、シェリル以外を振り落とす。レノアが人型をとり、俺の腕を掴み建物の屋上へと移動した。

「レノア、シェリルは……いったい」
「まあ……ギリギリまで近くに寄りましょうか?」

「レノア?」

  クロフィスの前で、ルシエラは膝をついて睨み続けている。

 あいつの怒りは相当なものだ。簡単に許さないだろう。レノアの角を折り、仲間を殺されている。

 何よりも、シェリルを連れ去られた。俺も解毒の後、飛び出す所をマリアや聖遺物レリック達に罵られたところだった。計画を立ててからだと。

 だが、今……シェリルが洗脳されてしまった。

 どうする? ルルーはシェリルの言うことしか聞かない。


「レノア……あの男を殺れば、シェリルは元に戻るのか?」
「どうでしょうか?」

 魔王の魔力の圧が大きすぎて、ギリギリの所で様子を伺っている。

 ルルーがその上空を巡回していた。

「そう簡単に黒飛竜ブラックドラゴンのルルーでも、あのクロフィスの所には降りられないな」

「いいえ。シェリル様は行くようです」

「は?」
 黒飛竜ブラックドラゴンの背から、シェリルが飛び降りた。

「嘘だろ。クロフィスの魔力で吹き飛ばされるぞ」

瞬間移動テディト……を。
レノアに口を塞がれ、体を拘束される。

「貴方が死んでも、シェリル様は泣くのですよ!」

「だがっ」
「大丈夫。クロフィス様は、シェリル様を守ります」

 クロフィスの魔力の境界が見える。銀色の魔力の残渣が……シェリルを包み込む。
 シェリルは消える事無く、魔王の戦いの場にゆっくりと落ちていく。

 ルシエラが反応して、シェリルの傍に寄ろうとして、クロフィスに蹴り倒された。

 シェリルは、クロフィスに捕まっているように見える。
ものすごく、暴れている。
それは、もう……両手両足を使ってだ。

「何て言ってるんだ?」
「駄目ですよ。クロフィス様の結界の中に許可のない者は、入れません。勇者とは言え、消されます。多分、私でさえ一瞬で」


「だが、シェリルは洗脳されているのだろう? このままでは……」
「まあ、そうですね」

「なんでそんなに落ち着いているんだ!クロフィスに怪我でもさせたら、シェリルが落ち込むだろうが!」

「本当に、貴方は……シェリル様を大切にしているのですね。それに……まぁ仕方がないですね。後で怒られそうですが、盗み聞きしましょうか?」

 そう言って、何かの呪文のような言葉をレノアは紡いだのだ。












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