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88.遭遇①
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連れてこられたのは、僕の部屋。
少し僕から距離を置いて、クロが何かを呟くと魔法陣が浮かび上がる。何十もの円に繊細な模様が廻る。
高位詠唱だ。
光に包まれたクロが、静かに目を伏せて立っている。魔法陣から出てきたクロには、角があった。
「怖くないか? お前と一緒にいる時は隠してても構わない」
多分結界を張ってる……それでもピリピリとした空気が伝わる。
これがクロの魔力?
角を隠す事で、これも隠してるんだ。姿を見せたから、部屋とクロにも結界を施して、カイル様たち気付かれないようにしてる。それでも近くにいるから、僕の肌には魔力の圧が伝わって来た。
そしてまた、何を呟くと角が消えた。
空気が軽くなる。
少し眉毛が下がったような顔をして、じっと僕を見つめてくる。
「魔王城にいる相手に勝つなら、元の姿のほうがいいんでしょう?相手は強そうだし……」
そばに来たクロの腕の中に収まると、ギュッと背中に手を回してピタリとくっついた。
「シェリル?」
「きっと、本当のクロは強いよね。大丈夫だよね……死んだりしないよね?」
「ああ、約束する」
「クロが魔力を隠す結界をしてなかったら皆に影響がある?」
「聖遺物が付いてるから、カバーはするだろう」
「そっか」
くっつき過ぎて顔が見えない。背中に回した手を緩めると、クロも同じようにしてくれた。
少し離れて、クロを見上げたら自然と顔が近づいてきたので目を閉じる。
唇が触れ合って、離れた。
もう一度、キスをと思った瞬間に床に魔法陣が浮かび上がる。
「クロ?」
クロとの間に何か壁のようなものが出来て、クロに触れる事が出来ない。
何かを言ってるのに聞こえない。
詠唱を始めたクロの動きが止まるのと同時に僕の首に何かが巻きついた。
「クロフィスの魔力を検知出来なかったのは、角を隠してたからか。しかも、人族の為にか」
「誰?」
「人族ごときが、俺に話しかけるな」
蔦なのか分からないものが、グッと強く巻き付いた。
「うぐっ」
外そうともがいていると、足が宙を浮く。持ち上げられた瞬間に体重により首の締めつけが増す。
(息が出来ない……)
視界がどんどん狭まっていく。
(クロ……逃げて……)
「こんなモノの為に、角まで隠して無様だな」
張り詰めた空気の中、突然光が見えた。
「──お前、いい加減にしろよ」
光の中、聞こえたのはカイル様の声だ。
蔦が双剣により切り落とされ、宙ずりされていた体が落ちる。
が、その僕を受け止めたのは、角のある漆黒の髪を一つに束ねた男だ。
「へぇ、勇者の剣は、こいつも切れるのか」
ゲホゲホとむせて、上手く魔法が使えない。
足手まといになってしまう。
クロの姿を必死に探す。角を隠したままだ。
カイル様が本気になれば。
クロが元に戻りさえすれば、きっとこんな奴倒してくれる。
「クロ……ぼ、僕ごと倒して!!んぅ」
口を奴の唇で塞がれて、抵抗しようとしたが体一つ指先も動かせなくなった。
(何かの魔法? 嫌だ、離して)
「分が悪い……か。でもま、お前達はコイツが居たら攻撃一つ出来ないって事は分かった。魔王城で歓迎してやる。待ってるよ、魔王様に勇者様」
また、魔法陣が現れ始めた。
嫌だ嫌だ嫌だ……足手まといになるくらいなら、僕は───
少し僕から距離を置いて、クロが何かを呟くと魔法陣が浮かび上がる。何十もの円に繊細な模様が廻る。
高位詠唱だ。
光に包まれたクロが、静かに目を伏せて立っている。魔法陣から出てきたクロには、角があった。
「怖くないか? お前と一緒にいる時は隠してても構わない」
多分結界を張ってる……それでもピリピリとした空気が伝わる。
これがクロの魔力?
角を隠す事で、これも隠してるんだ。姿を見せたから、部屋とクロにも結界を施して、カイル様たち気付かれないようにしてる。それでも近くにいるから、僕の肌には魔力の圧が伝わって来た。
そしてまた、何を呟くと角が消えた。
空気が軽くなる。
少し眉毛が下がったような顔をして、じっと僕を見つめてくる。
「魔王城にいる相手に勝つなら、元の姿のほうがいいんでしょう?相手は強そうだし……」
そばに来たクロの腕の中に収まると、ギュッと背中に手を回してピタリとくっついた。
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「そっか」
くっつき過ぎて顔が見えない。背中に回した手を緩めると、クロも同じようにしてくれた。
少し離れて、クロを見上げたら自然と顔が近づいてきたので目を閉じる。
唇が触れ合って、離れた。
もう一度、キスをと思った瞬間に床に魔法陣が浮かび上がる。
「クロ?」
クロとの間に何か壁のようなものが出来て、クロに触れる事が出来ない。
何かを言ってるのに聞こえない。
詠唱を始めたクロの動きが止まるのと同時に僕の首に何かが巻きついた。
「クロフィスの魔力を検知出来なかったのは、角を隠してたからか。しかも、人族の為にか」
「誰?」
「人族ごときが、俺に話しかけるな」
蔦なのか分からないものが、グッと強く巻き付いた。
「うぐっ」
外そうともがいていると、足が宙を浮く。持ち上げられた瞬間に体重により首の締めつけが増す。
(息が出来ない……)
視界がどんどん狭まっていく。
(クロ……逃げて……)
「こんなモノの為に、角まで隠して無様だな」
張り詰めた空気の中、突然光が見えた。
「──お前、いい加減にしろよ」
光の中、聞こえたのはカイル様の声だ。
蔦が双剣により切り落とされ、宙ずりされていた体が落ちる。
が、その僕を受け止めたのは、角のある漆黒の髪を一つに束ねた男だ。
「へぇ、勇者の剣は、こいつも切れるのか」
ゲホゲホとむせて、上手く魔法が使えない。
足手まといになってしまう。
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カイル様が本気になれば。
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「クロ……ぼ、僕ごと倒して!!んぅ」
口を奴の唇で塞がれて、抵抗しようとしたが体一つ指先も動かせなくなった。
(何かの魔法? 嫌だ、離して)
「分が悪い……か。でもま、お前達はコイツが居たら攻撃一つ出来ないって事は分かった。魔王城で歓迎してやる。待ってるよ、魔王様に勇者様」
また、魔法陣が現れ始めた。
嫌だ嫌だ嫌だ……足手まといになるくらいなら、僕は───
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