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89.遭遇②
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クツクツと面白そうに笑う顔に、ただ怒りを覚える。
僕一人と王国とか人族の全てを比べれば、何方が大事か分かるはずなのに。見捨てるのとは違うのだ。
今の僕は魔法がうまく使えない状態だ。さっき何かを吹き込まれたせいだ。妖精の足飾りも傍にいない。
クロは優しすぎる。カイル様も……そんな顔しないで。
指揮棒に触れる事が出来さえすれば、少しは抵抗出来るのに。動けず頭痛がする。気持ちが悪くなって、目の前が霞んできた。意識を失う訳にはいかない。
顎を捕まれ前を見るように固定され、指揮棒側の片腕を後ろに捻るように押さえつけられていた。まるで魔王と勇者に攻撃させないように、盾のように見せつけられている。
躊躇わないで欲しいのに、二人とも動かない。
離れたいのに少し寄りかかる事で、やっと体を支えている。
ただ上手く力の入らない空いた片手側には、指揮棒はない。
魔法は使えない訳じゃないが、それがあるかどうかで威力が違うのだ。
「クロフィスの大切なモノが、俺に服従したら面白いよな。早く来いよ、俺の魔王城に。それまでにコイツが生きて……」
指揮棒はないけれど。
皆が楽に動けるように、隠し持っていた反対側のダガーナイフを最後の力を振り絞り突き立てる。
顎を押さえられていた、この魔族の手に向かってだ。
顎を掴んでいた手を慌てて離そうとする。少し手には掠ったけど……狙い通りちゃんと僕には刺さったのだ。
これで、僕を置いて行けばいい。瀕死の状態ならこの人にとっても足手まといだからだ。
「シェリル!!」
カイル様が、双剣をかざしこちらへ向かってくる。出来れば、僕ごと斬って欲しい。
それなのに、蔦がカイル様の腕を突き抜けた。
僕は片腕の締めあげから解放され、肩に担がれる。
「は、お、降ろして。どうせもう時期に死ぬから……ここに捨てて」
「お前が怪我してくれなかったら、勇者に隙が出来なかったな。本当にお前は役に立つ」
「──シェリルを離せ」
「クロフィスが気に入るだけある。俺にも遊ばせてくれてもいいだろ?」
マリア様達も駆けつけて、カイル様の手当を始めている。
マリア様の治癒が追いつかない。カイル様の顔色が悪くなっていく。
「まさか、この蔦に毒? カ、イル、さま。ユニコーン……ぐああああああああ」
僕自身は首の近くに傷を負っている。また首の所に蔦が巻きついた。
「煩い。ユニコーンの角など簡単に手に入るものか。勇者はこれで死ぬ。魔王は手も足も出せずに、土下座しに魔王城に来るんだ。お前の従者が死んだ時と同じにしてやるよ」
「貴様……」
「それとも、味わいつくして調教してもいいな。何時でも、魔王城に来るがいい。ただ抵抗すれば、失うものも大きいだろうな」
馬鹿にした下品な笑い声が響く。
連れ去られる事だけは、したくなかったのに。
魔法陣の中、ユニコーンの角しか助ける方法がない事ともう僕を見捨てて欲しいとだけ言の葉蝶に乗せるのがやっとだった。
間に合って、そう願いながら魔法陣の中、僕は意識を失った。
僕一人と王国とか人族の全てを比べれば、何方が大事か分かるはずなのに。見捨てるのとは違うのだ。
今の僕は魔法がうまく使えない状態だ。さっき何かを吹き込まれたせいだ。妖精の足飾りも傍にいない。
クロは優しすぎる。カイル様も……そんな顔しないで。
指揮棒に触れる事が出来さえすれば、少しは抵抗出来るのに。動けず頭痛がする。気持ちが悪くなって、目の前が霞んできた。意識を失う訳にはいかない。
顎を捕まれ前を見るように固定され、指揮棒側の片腕を後ろに捻るように押さえつけられていた。まるで魔王と勇者に攻撃させないように、盾のように見せつけられている。
躊躇わないで欲しいのに、二人とも動かない。
離れたいのに少し寄りかかる事で、やっと体を支えている。
ただ上手く力の入らない空いた片手側には、指揮棒はない。
魔法は使えない訳じゃないが、それがあるかどうかで威力が違うのだ。
「クロフィスの大切なモノが、俺に服従したら面白いよな。早く来いよ、俺の魔王城に。それまでにコイツが生きて……」
指揮棒はないけれど。
皆が楽に動けるように、隠し持っていた反対側のダガーナイフを最後の力を振り絞り突き立てる。
顎を押さえられていた、この魔族の手に向かってだ。
顎を掴んでいた手を慌てて離そうとする。少し手には掠ったけど……狙い通りちゃんと僕には刺さったのだ。
これで、僕を置いて行けばいい。瀕死の状態ならこの人にとっても足手まといだからだ。
「シェリル!!」
カイル様が、双剣をかざしこちらへ向かってくる。出来れば、僕ごと斬って欲しい。
それなのに、蔦がカイル様の腕を突き抜けた。
僕は片腕の締めあげから解放され、肩に担がれる。
「は、お、降ろして。どうせもう時期に死ぬから……ここに捨てて」
「お前が怪我してくれなかったら、勇者に隙が出来なかったな。本当にお前は役に立つ」
「──シェリルを離せ」
「クロフィスが気に入るだけある。俺にも遊ばせてくれてもいいだろ?」
マリア様達も駆けつけて、カイル様の手当を始めている。
マリア様の治癒が追いつかない。カイル様の顔色が悪くなっていく。
「まさか、この蔦に毒? カ、イル、さま。ユニコーン……ぐああああああああ」
僕自身は首の近くに傷を負っている。また首の所に蔦が巻きついた。
「煩い。ユニコーンの角など簡単に手に入るものか。勇者はこれで死ぬ。魔王は手も足も出せずに、土下座しに魔王城に来るんだ。お前の従者が死んだ時と同じにしてやるよ」
「貴様……」
「それとも、味わいつくして調教してもいいな。何時でも、魔王城に来るがいい。ただ抵抗すれば、失うものも大きいだろうな」
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連れ去られる事だけは、したくなかったのに。
魔法陣の中、ユニコーンの角しか助ける方法がない事ともう僕を見捨てて欲しいとだけ言の葉蝶に乗せるのがやっとだった。
間に合って、そう願いながら魔法陣の中、僕は意識を失った。
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