【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
86 / 98

84.カイルとクロフィス①

しおりを挟む
「ひっ」
 目の前の美形に驚く。裸のままだった。落ち着つかないと。
下着……どこ?穿かずに寝てたなんて。
そっと離れようとして、身じろぐと抱き締められる。まるで逃げるなと言うみたいに。

「起こしてごめんね」
優しく微笑むこの人の手が、僕を優しく撫でてくれる。

 まあ、昨日のクロは意地悪? だった気もする。
初めての経験だから……普通の行為なのか比べようもない。何となく顔をそらして考えていた。

 ふと強く視線を感じて、クロの顔を見るとフッ笑った顔が近くなる。

うん───キスと抱きしめられるのは大好き。
触れるだけのキスも。
啄まれるキスも。

そして、深く深く繋がるキスも。
「だいぶ、上手くなったな」

 ───この人が好き。

「クロ、おはよう」
 覚悟の一日が始まる。

 せっかく仲良くなった勇者一行に、魔族と生きて行くって言ったら……受け入れて貰えるとは思えない。聖遺物レリックの反応から、魔王城には行けると思うけど。彼らがそもそも僕を信用してくれるだろうか?

 カイル様を失望させるかもしれない。
もう一度だけ、領地の皆に会いたい。それさえも、叶わなくなるかも知れない。

「あいつら……まあ、レノアは面白がってるみたいだが。聖遺物レリックは怒ってるな。本当に色んな物を魅了する」

 魅了と言われると、胸が痛むのだ。

「──この瞳のせい?」
これがなかったら……もしかしたら。クロを縛り付けたりしなかったのかもしれない。

「シェリルだからだ。シェリルだから惹かれるんだ」
本当に欲しい言葉をくれる人。

「大好き、クロ」
自分からもキスをする。また何かがお腹に……

「クロ……えっ」
「たくっ、お前は。次は容赦しないからな」
「は、はいっ」

 裸のままが不味すぎなんだと思う。だって、ほんの少しだけど。抱かれたいって思ってしまったのだから。

「ふ、服。早く着替えるね」

 あわてて、あれこれ片付けると結界が消える。途端にレノアが現れる。
そして、足首に妖精の足飾りアンクレットが淡く輝いた。

 「──シェリル様、今日は一段と綺麗ですね」
そんな事を美形のレノアに言われても、信じられない。
今は真っ白の兎姿だけど。美形と魔力は比例する。二人は上位の魔族だ。

 足飾りアンクレットも、受け入れてくれてる。魔王城に一緒に行くのは、問題ないはず。行く理由がある。そう言ってた。魔族同士で何かあるのかも知れない。

 それに、レノアはあの時何かに巻き込まれていたみたいで。クロの様子もおかしかった。
少し首を横に振り、それは後だと思い直す。

「今日は、ちゃんとカイル様に話すからね。クロ達は悪い魔族じゃないって信じてもらえるように」

「ああ───お前がそうしたいなら」
「うん」

「どう言ったとしても、俺たちが魔族であるのは間違いない。お前が傷つかなければそれでいい」

 クロも黒兎の姿になった。

「二度とお前を泣かせたり、離れたりしない」

 食事も片付けも全て済ませ、カイル様との約束の時間になった。
クロを抱き抱える。レノアは小さくなってポケットの中にいる。

 カイル様に会いに、休んでる部屋へと向かう事にした。

「お待たせしました」
「構わない。シェリルこっちへ」
ティーセットが用意されていた。

「頼めるか? 俺よりシェリルがいれてくれると美味しいから」
「はい」
穏やかな雰囲気の中、お茶の用意をする。勧められてソファに腰をおろした。

 たわいのない話をしてばかりで、中々本題に入れなかった僕の手をクロが優しくさすってくれた。深く息を吐き、カイル様を見つめる。

ほんの少しカイル様の表情が、曇ったように思えた。

「僕は、本当の事を話す為にここに来ました。嘘をついていてすみませんでした」

「嘘……?それは、幻影兎ラビィアの黒兎と白兎が魔族か何かだと言うことか?」

まさかカイル様に、先に言われるとは思わなかったんだ。






しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【完結】地獄行きは確定、に加え ~地獄の王に溺愛されています~

墨尽(ぼくじん)
BL
地獄の長である獄主に、何故か溺愛されてしまった34歳おっさんのお話 死んで地獄に行きついた霧谷聡一朗(34)は、地獄の長である獄主の花嫁候補に選ばれてしまう 候補に選ばれる条件は一つ「罪深いこと」 候補者10人全員が極悪人の中、聡一朗だけは罪の匂いがしないと獄主から見放されてしまう 見放されたことを良いことに、聡一朗は滅多に味わえない地獄ライフを満喫 しかし世話役の鬼たちと楽しく過ごす中、獄主の態度が変わっていく 突然の友達宣言から、あれよあれよと聡一朗は囲い込まれていく 冷酷無表情の美形×34歳お人好し天然オジサン 笑ったことのない程の冷酷な獄主が、無自覚お人良しの聡一朗をあの手この手で溺愛するストーリーです。 コメディ要素多めですが、シリアスも有り ※完結しました 続編は【続】地獄行きは~ です

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru
BL
弟が消えた。記憶消去? スマホの画像も何もかも残っていない。 両親には、夢でも見たのかって……兄の俺より背が高くてイケメンで本当に兄弟?って言われてたけど。 弟は、存在してなかったなんて、そんなはずがない。 記憶が消される前に、探すんだ。 辿り着いた古書店。必ずその人にとって大切な一冊がそこにある。必要な人しか辿り付けないと噂されている所だ。 「面白い本屋を見つけたんだ」 弟との数日前の会話を思い出す。きっとそこに何かがある。 そして、惹かれるままに一冊の本を手にした。登場人物紹介には、美形の魔法騎士の姿が……髪色と瞳の色が違うけれど、間違いなく弟だ。 聖女に攻略されるかもしれない、そんなの嫌だ。 ごめん。父さん母さん。戻れないかも知れない。それでも、あいつの所へ行きたいんだ。 本を抱きしめて願う。神様お願い、弟を取り戻したい。 本だけ残して……時砂琥珀は姿を消した。 年下魔法騎士(元弟)×神使?(元兄) 微R・Rは※印を念の為につけます。 美麗表紙絵は、夕宮あまね様@amane_yumia より頂きました。 BL小説大賞に参加しています。 応援よろしくお願いします。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...