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77.妖精の足飾り③
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「うわっ」
移動した先は雨が降っていたのか、ぬかるんでいた。思わずバランスをくずしてしまう。
でも、転ばずに済んだのは……クロが人型になって支えてくれているから。
「ま、待ってクロ。不味くない? 監視されてるかも」
「幻影兎が、幻想を見せていると思うだろう。それにフードで顔は認識される事はない」
「本当に?」
距離が近い。抱きしめられている形なので、だんだん気不味くなって視線をそらしてしまった。 クロの綺麗な顔を間近で見てしまうと……どきどきしてしまうから少しだけ押し返した。
「触られるのも嫌か?」
「違う!」
思わず声が大きくなる。
「ご、ごめんなさい。大きな声だして。本当に違うから」
「シェリル様? クロフィス様?」
レノアまで、心配そうに覗き込んで来た。
「クロフィス様に触られるのが嫌なら、私が支えましょうか? ──あ、嘘です。クロフィス様、顔が怖いですよ」
「レノアはそのまま、隠れてろ」
「はい」
レノアは出した頭を引っ込めた。
「クロ……本当に嫌じゃないよ。妖精の足飾りを見つけて、無事に戻ったら聞いて欲しい事があるんだ。でも今は皆を待たせているから。早く行こう」
首輪が着けられている。クロなら外せる気がする。でも勝手に外したら、カイル様達に何が起きるか分からない。なるべく早く見つけてカイル様達の所に戻りたい。
「分かった」
そう言った後に、クロが何か呟いた。少し泥の跳ねた服が綺麗になり、進む方向の道の水分が抜けて歩きやすく変わる。
そうしてくれたのは、全部クロだ。
「ありがとう」
魔族とか関係ない。この人は、本当に優しいのだ。
先を歩き始めようとしたクロの手に触れる。
(手を繋ぎたい)
振り返らずに握り返されて、胸が苦しい。
皆が見てるかも知れない。それでも、離したくなかった。それに何となく場所が分かる気がするのだ。
「この先に……あると思う」
「シェリルが、そう思うなら間違いない」
「うん」
しばらく歩いて行く。空気は悪くない。鳥のさえずりに、心地よい風が吹いている。このまま……何事もなく行くといいのに。
バァン!!!何かの衝撃を受け、クロが膝をついた。地面に血がポタポタッと落ちて行く。
「クロ!!」
クロに触れようと手を伸ばすと、視界が暗転した。闇色の森に変わって、突然の暗闇に何も見えない。離れたとはいえ、そんなに遠くないはず。ほんの二、三歩だ。慌てて探すと、すぐに手が握り返された。
「──クロ。大丈夫?」
良かった……そう思ったのに。何かがおかしい。急に引き寄せられたので、慌てて灯火と呟く。目の前に現れたのは琥珀色の目の深い緑色の長い髪の人だ。背も高い。
「──誰? ク、クロは?クロはどこに?」
暴れていると、さらに強く抱きしめられた。
「止めっ」
「──会いたかった」
そう言いながら、抱きかかえられそうになった。
「嫌だ。クロがいない!何したの?ねぇ、クロは!血が……血が出てた。離して!」
「あれは魔族だ。何か弱みでも握られているのか? それとも魔法で隷属の契約でもされてないだろうな? とにかく聖遺物を早く手に入れた方が良い」
契約は……してた。
それは、隷属とかそんな扱いじゃなくて。
「クロとは、弱みとかそんなことで一緒に居るわけじゃない。僕の何よりも大切な人だから!聖遺物は、カイル様達に必要な物だから。一緒に探してるだけだ」
魔族だから、全員悪者じゃない。
そんなの、人間だって……最低な人がいるのに。
「シェリルは、魔族の仲間になるのか?世界を陥れる気か? 」
「──そう言う事じゃない。 僕は、カイル様達も、お世話になった人達も皆大切だよ。 だけど、ずっと僕を守ってくれたのはクロだった。辛くて苦しい時に寄り添ってくれたのも。魔族だから皆悪いとかないでしょう? それにクロは、意味もなく世界を壊したりしない」
「シェリルは、まさかさっきの魔族を愛しているのか? ありえない」
「だから!魔族とか関係なくて!!」
言い返そうとして、我に帰る。この人は、どうして僕の名前を知っているんだろう?
琥珀色の瞳は、精霊族──?なんでこのタイミングでここに来たの?
「──貴方は、一体? 」
ポケットが白く光始めた。
移動した先は雨が降っていたのか、ぬかるんでいた。思わずバランスをくずしてしまう。
でも、転ばずに済んだのは……クロが人型になって支えてくれているから。
「ま、待ってクロ。不味くない? 監視されてるかも」
「幻影兎が、幻想を見せていると思うだろう。それにフードで顔は認識される事はない」
「本当に?」
距離が近い。抱きしめられている形なので、だんだん気不味くなって視線をそらしてしまった。 クロの綺麗な顔を間近で見てしまうと……どきどきしてしまうから少しだけ押し返した。
「触られるのも嫌か?」
「違う!」
思わず声が大きくなる。
「ご、ごめんなさい。大きな声だして。本当に違うから」
「シェリル様? クロフィス様?」
レノアまで、心配そうに覗き込んで来た。
「クロフィス様に触られるのが嫌なら、私が支えましょうか? ──あ、嘘です。クロフィス様、顔が怖いですよ」
「レノアはそのまま、隠れてろ」
「はい」
レノアは出した頭を引っ込めた。
「クロ……本当に嫌じゃないよ。妖精の足飾りを見つけて、無事に戻ったら聞いて欲しい事があるんだ。でも今は皆を待たせているから。早く行こう」
首輪が着けられている。クロなら外せる気がする。でも勝手に外したら、カイル様達に何が起きるか分からない。なるべく早く見つけてカイル様達の所に戻りたい。
「分かった」
そう言った後に、クロが何か呟いた。少し泥の跳ねた服が綺麗になり、進む方向の道の水分が抜けて歩きやすく変わる。
そうしてくれたのは、全部クロだ。
「ありがとう」
魔族とか関係ない。この人は、本当に優しいのだ。
先を歩き始めようとしたクロの手に触れる。
(手を繋ぎたい)
振り返らずに握り返されて、胸が苦しい。
皆が見てるかも知れない。それでも、離したくなかった。それに何となく場所が分かる気がするのだ。
「この先に……あると思う」
「シェリルが、そう思うなら間違いない」
「うん」
しばらく歩いて行く。空気は悪くない。鳥のさえずりに、心地よい風が吹いている。このまま……何事もなく行くといいのに。
バァン!!!何かの衝撃を受け、クロが膝をついた。地面に血がポタポタッと落ちて行く。
「クロ!!」
クロに触れようと手を伸ばすと、視界が暗転した。闇色の森に変わって、突然の暗闇に何も見えない。離れたとはいえ、そんなに遠くないはず。ほんの二、三歩だ。慌てて探すと、すぐに手が握り返された。
「──クロ。大丈夫?」
良かった……そう思ったのに。何かがおかしい。急に引き寄せられたので、慌てて灯火と呟く。目の前に現れたのは琥珀色の目の深い緑色の長い髪の人だ。背も高い。
「──誰? ク、クロは?クロはどこに?」
暴れていると、さらに強く抱きしめられた。
「止めっ」
「──会いたかった」
そう言いながら、抱きかかえられそうになった。
「嫌だ。クロがいない!何したの?ねぇ、クロは!血が……血が出てた。離して!」
「あれは魔族だ。何か弱みでも握られているのか? それとも魔法で隷属の契約でもされてないだろうな? とにかく聖遺物を早く手に入れた方が良い」
契約は……してた。
それは、隷属とかそんな扱いじゃなくて。
「クロとは、弱みとかそんなことで一緒に居るわけじゃない。僕の何よりも大切な人だから!聖遺物は、カイル様達に必要な物だから。一緒に探してるだけだ」
魔族だから、全員悪者じゃない。
そんなの、人間だって……最低な人がいるのに。
「シェリルは、魔族の仲間になるのか?世界を陥れる気か? 」
「──そう言う事じゃない。 僕は、カイル様達も、お世話になった人達も皆大切だよ。 だけど、ずっと僕を守ってくれたのはクロだった。辛くて苦しい時に寄り添ってくれたのも。魔族だから皆悪いとかないでしょう? それにクロは、意味もなく世界を壊したりしない」
「シェリルは、まさかさっきの魔族を愛しているのか? ありえない」
「だから!魔族とか関係なくて!!」
言い返そうとして、我に帰る。この人は、どうして僕の名前を知っているんだろう?
琥珀色の瞳は、精霊族──?なんでこのタイミングでここに来たの?
「──貴方は、一体? 」
ポケットが白く光始めた。
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