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58.再会
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魔獣を倒しながら、先へと進む。何体倒したか分からない。やけに数が多い気がする。
回復ポーションを飲むように薦めた方がいいのかな?
休憩が取れないままだ。
「そっちに行った!シェリル気を付けろ」
「はい!」
指揮棒を使って、雷光を飛ばす。
さらに飛び出してきた魔獣には、テオ様の矢が突き刺さっていく。
「しつこいわね。一旦、範囲回復をかけるから。ちょっとだけ、私を守って」
細長杖でトンと地面を叩く。
詠唱と共に魔法陣が描かれた。淡く光が輝くと、先程の疲労感がスッと軽くなった。
「マリア、よくやった。ここを乗り越えたら休憩だ」
キース様の動きが良くなり、魔獣達を薙ぎ払って行く。
「よし、こちらも一気に倒す」
カイル様の双剣も、まるで舞うかのように魔獣を倒して行った。
そして、ようやくこのエリアの魔獣がいなくなった。
「はぁーーーー疲れた」
「テオ!少し安全な場所は近くにないか?」
「あっちかな」
テオ様が指を指した方へと向かう。その場所をマリア様が結界を張った。
「やっと、お茶が飲める~」
簡易式のテーブルと椅子を用意する。お茶を口に含むと、気持ち楽になった。
「まだ、弱い方の魔獣だが……数が多すぎるな。進むのに時間がかかるし消耗が激しいな」
キース様の言う通り、発生数が多い。
前にも、こんな事があって。それから勇者の話が出てきた気がする。
もしかして魔族領で何か起き始めたのかも知れない。
「クロ……無事かな」
空気の振動を感じる。皆が一斉に武器を手にした。
黒いローブ、フードを深く被った何かが見えた。その腕に白銀の獣を抱きかかえて結界ギリギリの所に立っていた。
片手がマリア様の結界を通過する。神官のマリア様の結界は、そんな簡単に通過出来るものじゃない。
その様子に、皆固まっている。でも、あれは……もしかして。
テオ様が弓を構えた。
「待って下さい」
思わず両手を広げて、テオ様を止めた。
「クロ……かも。ごめんなさい」
振り返り、その手を取りにいく。結界を壊すことなく、入ってきた。
「クロ?」
がっしりと抱き締められた。
『──中々の、結界だな』
『もしかして魔力が……足りないの?』
少し疲れて見えるし、何かあったのかもしれない。
『少し移動の回数が……まぁ、ワケありだ』
クロの腕に抱かれてるのは、兎?
『この、白いの……兎?』
『レノアだ』
『この子弱りすぎてない? クロも兎に戻れる?』
フードで、クロの表情は見えない。でも、考えている暇はなかった。クロの頬を引き寄せて、唇を重ねて魔力を送る。少しビクッとしたみたいだったけどあっという間に、主導権がクロに移る。割と多めに、魔力を取られたけど。ポーションがカバンにある。大丈夫。そう思ったのに、引き剥がされた。
「シェリル、やめろ!!魔力が減りすぎだ!」
クロが幻影兎の姿に戻った。その横に、白兎が弱々しく横たわっている。その子も助けたいのに。クロに魔力を渡し過ぎたかも。
「シェリル、そんなに無理して無茶苦茶でしょう!ああもう……あんたって」
細長杖を地面に置き、膝をついてマリア様が白兎の幻影兎を抱えた。
「黒兎の方は、回復してきてるけど……この子は、危ないわね。黒兎はこの子を助けたくて無理して来たの?こっちは、私が回復させるから。シェリルはポーション使って」
カイル様が、僕のカバンからポーションを取り出した。
白兎は、マリア様に抱き締められている。
クロは、僕にしがみついて首元に鼻を寄せていた。僕に魔力を返したら、結局クロが弱ってしまう。
『大丈夫だよ。ポーションがあるから』
そうクロに言い聞かせた。
力が上手く入らないせいで、ポーションを上手く持てない。クロが手を伸ばそうとして、カイル様に止められた。
「黒兎……シェリルを困らせるな」
そんな言葉が聞こえる。
ポーションを開け、カイル様がそれを口にして、それから口移しで流し込まれた。
回復ポーションを飲むように薦めた方がいいのかな?
休憩が取れないままだ。
「そっちに行った!シェリル気を付けろ」
「はい!」
指揮棒を使って、雷光を飛ばす。
さらに飛び出してきた魔獣には、テオ様の矢が突き刺さっていく。
「しつこいわね。一旦、範囲回復をかけるから。ちょっとだけ、私を守って」
細長杖でトンと地面を叩く。
詠唱と共に魔法陣が描かれた。淡く光が輝くと、先程の疲労感がスッと軽くなった。
「マリア、よくやった。ここを乗り越えたら休憩だ」
キース様の動きが良くなり、魔獣達を薙ぎ払って行く。
「よし、こちらも一気に倒す」
カイル様の双剣も、まるで舞うかのように魔獣を倒して行った。
そして、ようやくこのエリアの魔獣がいなくなった。
「はぁーーーー疲れた」
「テオ!少し安全な場所は近くにないか?」
「あっちかな」
テオ様が指を指した方へと向かう。その場所をマリア様が結界を張った。
「やっと、お茶が飲める~」
簡易式のテーブルと椅子を用意する。お茶を口に含むと、気持ち楽になった。
「まだ、弱い方の魔獣だが……数が多すぎるな。進むのに時間がかかるし消耗が激しいな」
キース様の言う通り、発生数が多い。
前にも、こんな事があって。それから勇者の話が出てきた気がする。
もしかして魔族領で何か起き始めたのかも知れない。
「クロ……無事かな」
空気の振動を感じる。皆が一斉に武器を手にした。
黒いローブ、フードを深く被った何かが見えた。その腕に白銀の獣を抱きかかえて結界ギリギリの所に立っていた。
片手がマリア様の結界を通過する。神官のマリア様の結界は、そんな簡単に通過出来るものじゃない。
その様子に、皆固まっている。でも、あれは……もしかして。
テオ様が弓を構えた。
「待って下さい」
思わず両手を広げて、テオ様を止めた。
「クロ……かも。ごめんなさい」
振り返り、その手を取りにいく。結界を壊すことなく、入ってきた。
「クロ?」
がっしりと抱き締められた。
『──中々の、結界だな』
『もしかして魔力が……足りないの?』
少し疲れて見えるし、何かあったのかもしれない。
『少し移動の回数が……まぁ、ワケありだ』
クロの腕に抱かれてるのは、兎?
『この、白いの……兎?』
『レノアだ』
『この子弱りすぎてない? クロも兎に戻れる?』
フードで、クロの表情は見えない。でも、考えている暇はなかった。クロの頬を引き寄せて、唇を重ねて魔力を送る。少しビクッとしたみたいだったけどあっという間に、主導権がクロに移る。割と多めに、魔力を取られたけど。ポーションがカバンにある。大丈夫。そう思ったのに、引き剥がされた。
「シェリル、やめろ!!魔力が減りすぎだ!」
クロが幻影兎の姿に戻った。その横に、白兎が弱々しく横たわっている。その子も助けたいのに。クロに魔力を渡し過ぎたかも。
「シェリル、そんなに無理して無茶苦茶でしょう!ああもう……あんたって」
細長杖を地面に置き、膝をついてマリア様が白兎の幻影兎を抱えた。
「黒兎の方は、回復してきてるけど……この子は、危ないわね。黒兎はこの子を助けたくて無理して来たの?こっちは、私が回復させるから。シェリルはポーション使って」
カイル様が、僕のカバンからポーションを取り出した。
白兎は、マリア様に抱き締められている。
クロは、僕にしがみついて首元に鼻を寄せていた。僕に魔力を返したら、結局クロが弱ってしまう。
『大丈夫だよ。ポーションがあるから』
そうクロに言い聞かせた。
力が上手く入らないせいで、ポーションを上手く持てない。クロが手を伸ばそうとして、カイル様に止められた。
「黒兎……シェリルを困らせるな」
そんな言葉が聞こえる。
ポーションを開け、カイル様がそれを口にして、それから口移しで流し込まれた。
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