【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
61 / 98

59.シェリル

しおりを挟む
 何度か分けて口に流し込まれた。
 キース様が、何故か口笛を吹いたが、マリア様の細長杖ロッドでゴンと音がする位小突かれている。

 ようやく、魔力が回復してくる。白兎もマリア様に回復をかけてもらったようで、呼吸が安定してきた。今は眠っているようだ。クロも僕の胸の所にしがみついたまま眠ってるみたいだ。
 その僕は、カイル様の腕の中にいた。

「あの、もう大丈夫です」
「シェリル……むりを」
「あんた、バカなの!」
 マリア様が、カイル様の声を遮った。

「本当に……もう。ティムした魔獣をそんなに必死に守らなくてもいいでしょう? そう言うところが、聖遺物レリックに気に入られる所かも知れないけど。自己犠牲が過ぎるわよ。ちょっとは、自分の体を大切にしなさいよ!」

 ポンポンとキース様が、マリア様の肩を叩き何か言っている。

「マリア様……ごめんなさい」
「ああ、もう。謝って欲しいんじゃなくて。ちょっと、ポーション頂戴」
 そう言って、カイル様から受け取ると一気飲んでしまった。

「ここの結界強くするわ。シェリルの回復を優先しないと、先に行けないから。それに、白兎も休ませたい……可愛いすぎるわ」

「え、あの白兎も、魔獣ですよ?」
「黒兎の大切な子なんでしょ? ほら」
 マリア様から受け取って二匹を抱きかかえる。
 なんとなく、クロが不機嫌みたいだけど。白兎は、ピッタリと張り付いた。

 同じく、カイル様も機嫌が悪くなる。
「あ、重いですよね?何処か岩壁を背にするので」

「このままでいい。キース、この先にセーフティポイントが無かったか? どうせなら、そこまで移動して結界を張り野営をしよう。シェリルに弱った魔獣に……このままじゃ厄介だ。休息をしっかり取れば、こいつらが聖遺物レリックを見つけるのを手助けしてくれるはず」

 キース様の指示に従い、移動を始める。キース様とテオ様についていく。白兎はマリア様が抱え、クロを抱いた僕をカイル様が縦抱きにして運ぶ。

 こうなったら、聞いてくれないので。バランスを取りやすくするのに首の所に抱きついた。

 マリア様の結界が二重がけされた。仮眠が出来るようにそれぞれに天幕が用意された。テオ様とキース様、カイル様が交代で見張りをするようだ。
 僕はクロと横になる。白兎は、マリア様が一晩様子を見るからと連れて行ってしまった。
『白兎も、魔物?』
『──そうだな』
『マリア様に、酷いことしないよね?』
『手を出すなと、釘は刺しておいた』
 ついクロを抱きしめた。

『シェリル。遅くなった……だが勇者がやたら、近くないか?』
 魔力が急激に取られた身だ。
 疲れていて、うつらうつらとしてしまう。
『そう、かな?』
『ポーションだって、あんな飲ませ方』
『しー。ごめん。今日……もう、ねむいから……ごめんね。明日はなす、ね』

『悪かった。だが人型に少しだけ戻る。許せ』
『?』
    久しぶりの、美形の顔が近付いて来た。思わず目をつぶる。優しく触れた唇が、あっという間に深く口付けられていく。優しく甘く……安堵の中、意識が落ちていった。






しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【完結】地獄行きは確定、に加え ~地獄の王に溺愛されています~

墨尽(ぼくじん)
BL
地獄の長である獄主に、何故か溺愛されてしまった34歳おっさんのお話 死んで地獄に行きついた霧谷聡一朗(34)は、地獄の長である獄主の花嫁候補に選ばれてしまう 候補に選ばれる条件は一つ「罪深いこと」 候補者10人全員が極悪人の中、聡一朗だけは罪の匂いがしないと獄主から見放されてしまう 見放されたことを良いことに、聡一朗は滅多に味わえない地獄ライフを満喫 しかし世話役の鬼たちと楽しく過ごす中、獄主の態度が変わっていく 突然の友達宣言から、あれよあれよと聡一朗は囲い込まれていく 冷酷無表情の美形×34歳お人好し天然オジサン 笑ったことのない程の冷酷な獄主が、無自覚お人良しの聡一朗をあの手この手で溺愛するストーリーです。 コメディ要素多めですが、シリアスも有り ※完結しました 続編は【続】地獄行きは~ です

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru
BL
弟が消えた。記憶消去? スマホの画像も何もかも残っていない。 両親には、夢でも見たのかって……兄の俺より背が高くてイケメンで本当に兄弟?って言われてたけど。 弟は、存在してなかったなんて、そんなはずがない。 記憶が消される前に、探すんだ。 辿り着いた古書店。必ずその人にとって大切な一冊がそこにある。必要な人しか辿り付けないと噂されている所だ。 「面白い本屋を見つけたんだ」 弟との数日前の会話を思い出す。きっとそこに何かがある。 そして、惹かれるままに一冊の本を手にした。登場人物紹介には、美形の魔法騎士の姿が……髪色と瞳の色が違うけれど、間違いなく弟だ。 聖女に攻略されるかもしれない、そんなの嫌だ。 ごめん。父さん母さん。戻れないかも知れない。それでも、あいつの所へ行きたいんだ。 本を抱きしめて願う。神様お願い、弟を取り戻したい。 本だけ残して……時砂琥珀は姿を消した。 年下魔法騎士(元弟)×神使?(元兄) 微R・Rは※印を念の為につけます。 美麗表紙絵は、夕宮あまね様@amane_yumia より頂きました。 BL小説大賞に参加しています。 応援よろしくお願いします。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...