【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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46.休息日② side クロ

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 よく分からないが、勇者に誘われたとかで、外出するらしい。
 シェリルは、俺が魔物だから勇者のそばにいる事を心配している。

 聖遺物レリックに選ばれたのだから、まあまあ勇者の才能はあるのだろう。だが……まだまだだ。

 死に急がなくても良いのに、まあ勇者とはそう言う生き物なのだろう。
 そこは、どうでもいい。

 雑に扱っていたシェリルのそばに、やたら来たがるようになった。何のために?
 俺の大切なものだ。触れさせたくない。シェリルは、カイルの従者として、主を立て健気に尽くしている。俺より優先だと言った。

 従者か……
 俺が役割を押付けてきたアレは、どうしているだろうか?
 一度、様子を見に行くか?

 何やら、いつもと髪色まで違う。少し嬉しそうにしているのも、気になる。

「一体、何処に行くんだ? 次の聖遺物レリックを探しに行くのだろう?それはいいのか?」

 とっととそれを集めたらどうなんだ。

 シェリルは、黒兎の姿を抱きしめて寝たいと言う。もふもふして癒しなのだと。
 それをお願いされれば、キスの後なら兎になってやると伝える。
 嬉しそうに笑うから、つい黒兎になってやる。

 本当に……どうかしている。

 だが俺との契約印が、聖遺物レリックをあれほど拒むとは思わなかった。あれが強引に契約をしたのも、問題があった。

 苦しい思いをさせた。そのせいで勇者がシェリルを抱きかかえて移動した。
 (俺のものに触るな)

 ここで、元の姿に戻れば……魔族である事がバレるだろう。討伐に行くと意気込んでいるのだ。俺が負ける要素は無いが、シェリルがまた責められかねない。泣かせたくない。
 聖遺物レリックさえ集め終われば、離脱出来る予定なのだ。

「──本当に、面倒だな」
 さっさと、連れて行けば済むのではないか? 無垢な身体を、俺だけのものにしたい。
 あの瞳と、あの甘い魔力。早く閉じ込めてしまいたい。
 だがそんな事をしたらシェリルは、ずっと隠れて我慢して泣くのだ。それは、見たくない。

「なぜそこまで、カイルを優先するのだ」

 虐げられてきたのではないのか?
 何故そんなに嬉しそうなんだ。

 お前は、俺のものになったのに。やたらと、留守番して欲しいと言って来た。

「なぜ? 俺が行かない方がいいんだ?」
「カイル様は、勇者だよ? 聖遺物レリックも付いてる。僕にある契約印と聖遺物レリックの相性が悪かった事を考えたら……クロに影響あるんじゃないかって思うから」

「あの程度……問題ない」
「みんな、黒兎姿のクロを認識してて魔獣だと思ってるよね? でも、実際は人型を取れる魔物だから……討伐対象になりそうで怖いんだ。今は、大丈夫かもだけど……全員聖遺物レリックでレベルが上がったら、クロが傷つくかも知れない」

 不安気な顔して、俺を抱き締めて来た。
 思わず、人型に戻って抱き締め返す。兎の手では、届かないからだ。
 大切な人達を亡くしたのだと言っていた。

「俺は強い。シェリルを置いていなくならない」
「そんなの、分かんないよ。アルト様が言ってた。油断大敵だって」

 顔を寄せその口を塞ぐ。
 この俺の心配などするのは、シェリルくらいだ。

「油断はしない。俺は、お前を遺したりしない。泣かしたりもしない」

 勇者と二人きりにする方が心配なんだ。

「──なら、あの時作ったチェーンを付けてくれ」

 シェリルの細い首にチェーンを付ける。賢者の指輪リング ではなく、俺の魔力を込めた深紅の魔石をチェーンに通した。

 契約印もあるが、念の為だ。
 それに一度、魔族領に戻って来よう。

「いいか。遠慮はしないでくれ。何でも良い、不安な時、苦しい時、会いたい時は直ぐに呼んで、シェリル」

「うん。約束する」

 そう言って、部屋の外にいる勇者にシェリルを預ける事にした。



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