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45.休息日① sideカイル
しおりを挟む遺跡を無事に出た俺達は、数日休息日を設ける事にした。
昔からの友人でもなく、同じ目的の為に集められ後は直ぐに移動させられた。知らず気を遣い、疲弊しているのも当然だった。
魔族領も静けさを保ち、各国のダンジョンでも特に異常はないと連絡も入った。聖遺物も色々と問題はあったが、早々に三つも手に入ったのだ。これは考えると順調な方だろう。
キースは、軽く汗をかく為にダンジョンに向かった。身軽に自由に動きたいのだろう。
テオは、部屋でゆっくりしたいと言って読書中だ。控えめなエルフで、人間との接触も好まない彼らしい。
マリアは髪色を変えて、お忍びと称して街へと出かけている。唯一の女性である。買い物など行きたかったはずだ。
俺は、景色が良いと評判の湖へ行こうとしている。自然のある所の方がきっと喜ぶと思ったからだ。
いつも、身分の事を気にして遠慮をしてしまうシェリルを楽しませてあげたかった。
前日の夜に声をかけて、二人で行きたいと誘った。戸惑っていたが、小さく頷いた。
シェリルの琥珀は、人も動物も魔獣さえも惹きつけていく。テイマーのシェリルにとってそれは、武器であり、魅力の一つだ。
「自信を付けさせたいが、全部俺のせいだな。目立つな……なんて、単なる独占欲だった」
優しくしたい。もっと笑って欲しい。
勇者として歓待を受けてしまったので、目立たぬように髪色を茶にして、部屋の前で待つ。シェリルも色を変えてくるはずだ。
綺麗な深緑の髪、美しい琥珀の瞳。どうしたって目立つ。そんな事を考えながら待っていると、扉が開いてシェリルが出て来た。
ちょっと明るい茶色の髪に、瞳の色も茶色に変えている。
「あ、お待たせしました。すみません。時間間違えましたか?」
「いや、大丈夫だ。今来たばかりだ。シェリル行こうか?」
「僕とで良かったのですか?」
「もちろん。自由のきかない旅だ。少しでも気分転換になればと誘ったんだ。それにシェリルは、旅行などほとんど行った事無かっただろう? 休みもダンジョンばかりと聞いていた」
少し驚いた顔をして、それからふわりと笑った。
「そうですね……伯爵領に来てから、領内視察に少しだけ連れて行って頂いて。後は、アルト様とダンジョンに行く事がほとんどでした」
討伐のメンバーになってしまったからには、いつ命を落とすのか分からない。だから不安は消えない。何よりシェリルは、すぐに自分を犠牲にしようとする。もちろん、死なせる気はない。全力で守る。
少し心配そうにこちらを見ている事に気づいた。
黙ってたら、怒ってるとか勘違いされそうだな。
今は、ただ想い出を共有したい。シェリルが笑えるように。
「俺も初めて行くんだ。綺麗な所らしい」
「楽しみです」
分かっていたが、黒兎がシェリルの肩のところから顔を出した。
「兎は、置いて行かないのか?前にティムした……蛇蜥蜴鳥獣は、ほら普段は呼ばないだろう?」
特別だと言われれば仕方がないのだが……邪魔なのだ。ことごとく、邪魔をしてくる。
「クロは、今回は留守番です。ダンジョンに行くみたいなので、ちょっと心配ですが……」
ティムした魔獣にまで、嫉妬してどうするんだ。
「そうか……だが、黒兎は特別な能力がありそうだから、ちゃんと戻って来るだろう。お前を必死に守る、まるで守護獣みたいに」
不安そうな、シェリルの手をとる。
「折角の休みだ。急いで行こう。時間がもったいない。馬で移動する」
シェリルと指を絡めて、急ぎ厩舎へと移動した。
別に乗りたいと言うシェリルを説得して、前に乗せる。
幻影兎は、消える前にシェリルの額にキスを落とした。
本当に黒兎は、嫌な奴だな。
その仕草は、俺を牽制しているように見えた。
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