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44.魔法師シェリル
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「シェリルは、魔法師として魔王討伐の正式なメンバーだ」
突然の事に頭が、真っ白だ。
「───だと、思った」
声のする方を見る。テオ様だ。
「ち、ちが……」
あの話は保留で、僕は従者で雑用係の女性避けだった。
「なるほど、身分が低いが見目が良い。魔法の才能があれば……後々、狙われて面倒だったわけだ。でも、聖遺物までを魅了するテイマーをもう隠しきれなくなった。で、合ってるか?」
キース様がそんな事を言う。
「そんな、大した事は出来ません。この前だって、僕が勝手な事を……」
「あー、やだ。なんで雑用係?って思ってたのよ。隠してるみたいだけど、結構魔力も多いわよね?下手すれば、魔力だけなら、私より多い気がする」
目立たないようにと、カイル様に言われアルト様に色々教わって来た。全く魔力が無いのもおかしいから、調節してきたんだ。アルト様もそうしてたから、上級の方達はそうなんだとも思ってた。
「──情けない勇者だろ? 才能に嫉妬して」
「あれは、子供の頃の話で!! 僕が……調子に乗って、全部台無しにしたんです。伯爵様がカイル様の魔法を楽しみにしてたのに……」
「シェリルも、楽しみだったんだろう? 」
そんなに優しくされてしまうと、今までの事が思い出されて胸が苦しくなる。
怒らせて、嫌われてしまったのだ。ずっと後悔をしていた。
「カイル様……ごめんなさい。魔法を使うのがあの頃は楽しくて、ただそれだけ……だったん、です」
思わず口ごもる。師匠からもらった指揮棒を見せたかった。何もかも失った僕の宝物だったから。
遺されて可哀想──皆が、揃って口にする。僕にも家族がいたんだって、ちゃんと大切にしてもらったんだって、知って欲しかった。
それを自慢げに動いて、手を差し伸べてくれた人を傷付けたんだ。
お母さんとの約束を破って、恩を仇で返すような事をしたのは僕なのに。
涙がボロボロと溢れてきた。縦抱きに抱えられままの僕の頬に、カイル様の手が伸びて来た時、クロがグリンと振り返りその手をパシンと叩いた。
また、僕の方に向きを変えて兎の手で涙を拭いてくれた。
ブハッと吹き出したのは、キース様だ。
笑い声を我慢しながら、こんな事を言った。
「ブハッ……ハッ。その幻影兎は、本当シェリルを大切にしてるんだな。ハハッ……勇者の手をはらうとか……すごい奴だな」
「本当。魔獣なのに……ティムってすごいわね。シェリルを何より大切にしてるのね。私も欲しいかも幻影兎」
沈んだ空気が、クロによって温かいものに変わった。
叩かれたカイル様は、何かブツブツ言っている。
視線が合うと、兎ごと引き寄せられた。
「本当に邪魔な兎だけど、シェリルを守ってくれるならそれでいい。お前、シェリルを守れよ」
そう言って、カイル様が優しく微笑んだ。
突然の事に頭が、真っ白だ。
「───だと、思った」
声のする方を見る。テオ様だ。
「ち、ちが……」
あの話は保留で、僕は従者で雑用係の女性避けだった。
「なるほど、身分が低いが見目が良い。魔法の才能があれば……後々、狙われて面倒だったわけだ。でも、聖遺物までを魅了するテイマーをもう隠しきれなくなった。で、合ってるか?」
キース様がそんな事を言う。
「そんな、大した事は出来ません。この前だって、僕が勝手な事を……」
「あー、やだ。なんで雑用係?って思ってたのよ。隠してるみたいだけど、結構魔力も多いわよね?下手すれば、魔力だけなら、私より多い気がする」
目立たないようにと、カイル様に言われアルト様に色々教わって来た。全く魔力が無いのもおかしいから、調節してきたんだ。アルト様もそうしてたから、上級の方達はそうなんだとも思ってた。
「──情けない勇者だろ? 才能に嫉妬して」
「あれは、子供の頃の話で!! 僕が……調子に乗って、全部台無しにしたんです。伯爵様がカイル様の魔法を楽しみにしてたのに……」
「シェリルも、楽しみだったんだろう? 」
そんなに優しくされてしまうと、今までの事が思い出されて胸が苦しくなる。
怒らせて、嫌われてしまったのだ。ずっと後悔をしていた。
「カイル様……ごめんなさい。魔法を使うのがあの頃は楽しくて、ただそれだけ……だったん、です」
思わず口ごもる。師匠からもらった指揮棒を見せたかった。何もかも失った僕の宝物だったから。
遺されて可哀想──皆が、揃って口にする。僕にも家族がいたんだって、ちゃんと大切にしてもらったんだって、知って欲しかった。
それを自慢げに動いて、手を差し伸べてくれた人を傷付けたんだ。
お母さんとの約束を破って、恩を仇で返すような事をしたのは僕なのに。
涙がボロボロと溢れてきた。縦抱きに抱えられままの僕の頬に、カイル様の手が伸びて来た時、クロがグリンと振り返りその手をパシンと叩いた。
また、僕の方に向きを変えて兎の手で涙を拭いてくれた。
ブハッと吹き出したのは、キース様だ。
笑い声を我慢しながら、こんな事を言った。
「ブハッ……ハッ。その幻影兎は、本当シェリルを大切にしてるんだな。ハハッ……勇者の手をはらうとか……すごい奴だな」
「本当。魔獣なのに……ティムってすごいわね。シェリルを何より大切にしてるのね。私も欲しいかも幻影兎」
沈んだ空気が、クロによって温かいものに変わった。
叩かれたカイル様は、何かブツブツ言っている。
視線が合うと、兎ごと引き寄せられた。
「本当に邪魔な兎だけど、シェリルを守ってくれるならそれでいい。お前、シェリルを守れよ」
そう言って、カイル様が優しく微笑んだ。
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